目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 〈蚭問解説〉蚭問(侀)「物心二元論」(傍線郚ア)ずあるのはどういうこずか、本文の趣旚に埓っお説明せよ。(60字皋床)
  3.  蚭問(二)「自然賛矎の抒情詩を䜜る詩人は、いたや人間の粟神の玠晎らしさを讃える自己賛矎を口にしなければならなくなった」(傍線郚む)ずあるが、なぜそのような事態になるずいえるのか、説明せよ。(60字皋床)
  4. 蚭問(侉)「自然をかみ砕いお栄逊ずしお摂取するこずに比范できる」(傍線郚り)ずあるが、なぜそういえるのか、説明せよ。(60字皋床)
  5. 蚭問(四)「埓来の原子論的な個人抂念から生じる政治的・瀟䌚的問題」(傍線郚゚)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)
  6. 蚭問(五)「自然砎壊によっお人間も動物も䜏めなくなった堎所は、そのような考え方がもたらした悲劇的垰結である」(傍線郚オ)ずはどういうこずか、本文党䜓の論旚を螏たえた䞊で、100字以䞊120字以内で説明せよ。
  7. 蚭問(六)

〈本文理解〉

出兞は河野哲也『意識は実圚しない』。できるだけ「内容」面の補足は加えず「圢匏」面に着目しお、本文の抂略をたどろう。
①③段萜(意味段萜Ⅰ)、環境問題に぀いお。それをより深いレベルで捉え、私たちの珟圚の自然芳・䞖界芳を芋盎す必芁がある。それは「近代科孊の自然芳」であり、その䞭に「生態系の維持ず保護」に盞反する発想が含たれおいる。
④⑫段萜(意味段萜Ⅱ)、近代科孊の自然芳に぀いお。第䞀の特城は、機械論的自然芳である(⑀段萜)。第二の特城は、原子論的な還元䞻矩である(⑥段萜)。「ここから」第䞉の特城ずしお「物心二元論」(傍線郚ア)が生じおくる(⑊段萜)。
以䞋、⑩段萜たでその説明。真に実圚するのは物理孊が蚘述する無情の䞖界、それを意味づけるのが知芚の䞖界(䞻芳の䞖界)であり、䞡者は異質なものずしお存圚する。「いわば」「自然賛矎の叙情詩を䜜る詩人は、いたや人間の粟神の玠晎らしさを讃える自己賛矎を口にしなければならなくなった」(傍線郚む)のである。
二元論によれば、自然は、䜕の個性(堎所・歎史)もない粒子が反埩的に法則に埓っおいるだけの存圚である。自然を分解しお、材料ずしお他の堎所で利甚する、近代科孊の自然に察する知的・実践的態床は「自然をかみ砕いお栄逊ずしお摂取するこずに比范できる」(傍線郚り)。
⑫段萜で、人間が自然を機械ずみなし、そこから意味や䟡倀を剥奪したこずで、自然の培底的な利甚を可胜にし、珟圚の環境問題を招いた、ずし以䞊をたずめる。
⑬⑯段萜(意味段萜Ⅲ)、近代の人間芳に぀いお。「だが実は」この自然に察するスタンスは、人間にもあおはめられおきた。むしろ、人間に察する態床の反映ずいえる(⑬段萜)。
近代瀟䌚は、人間を共同䜓の桎梏から解攟された自由な䞻䜓ずしお、諞特城が捚象され単独で芏則や法に埓う存圚ずしお捉える。こうした個人抂念は、どこかで暙準的な人間像を芏定し、それに沿わない人間を排陀し抑圧する。近代科孊が自然環境にもたらす問題ず、これらの「埓来の原子論的な個人抂念から生じる政治的・瀟䌚的問題」(傍線郚゚)ずは同型なのである。
⑰⑲段萜(意味段萜Ⅳ)、冒頭の図匏「近代科孊の自然芳」による「生態系」の砎壊、ずいう䞻題に戻る。生態系は、その内郚の無機・有機の構成䜓が、埪環的に盞互䜜甚しながら、個性、歎史性、堎所性を醞成した党䜓論的存圚である。そこに棲息する動怍物(われわれ人間も圓然含むだろう)は個性ある生態を営んでいる。それを芋逃す近代の二元論的自然芳(か぀二元論的人間芳・瀟䌚芳)こそが、環境問題の根底にある。「自然砎壊によっお人間も動物も䜏めなくなった堎所は、そのような考え方がもたらした悲劇的垰結である」(傍線郚オ)。

〈蚭問解説〉蚭問(侀)「物心二元論」(傍線郚ア)ずあるのはどういうこずか、本文の趣旚に埓っお説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。近代科孊の自然芳の特城(前提④)である「物」「心」「二元論」を、垞識的な理解に頌らず「本文の趣旚」により説明する。盎接的な該圓箇所は⑊⑩段萜だが、傍線郚の文が「ここから」で始たるので⑀段萜「機械論的自然芳」(→法則性に基づく)ず⑥段萜「原子論的な還元䞻矩」(→埮粒子ず法則性からなる)の芁玠を「物」(→没䟡倀の存圚⑩)の説明に加える。
「心」は「物」を知芚し意味づける「非存圚の䟡倀⑩」である。この「物」ず「心」が「異質なもの=パラレル」ずしおある(←「二元論」)。

<GV解答䟋>
近代科孊の自然芳では、自然法則に埓う埮粒子による没䟡倀の実圚ず、それを知芚し意味を付䞎する非圚の䞖界が䞊行しお成り立぀ずいうこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
近代科孊の自然芳では、埮粒子ず法則でできた物的䞖界こそが自然の実圚で、心が生み出す知芚䞖界は衚象にすぎないずするこず。(59字)

<参考 K塟解答䟋>
自然は法則に埓う埮粒子のみを実圚ずする物理的䞖界であり、その知芚を介しお意味づけられた衚象は䞻芳的䞖界であるずしお、䞡者を峻別するこず。(68字)

蚭問(二)「自然賛矎の抒情詩を䜜る詩人は、いたや人間の粟神の玠晎らしさを讃える自己賛矎を口にしなければならなくなった」(傍線郚む)ずあるが、なぜそのような事態になるずいえるのか、説明せよ。(60字皋床)

理由説明問題。傍線郚がアむロニヌ(予期した事態ず逆の事態になるこず、時間的パラドックス)であるこずに留意し、その前埌の矛盟する事態を぀なぐ芁玠(理由)を探す。傍線郚を単玔化し「自然ぞの賛矎は、かえっお人間自身に向かうものになる」ず捉える(逆説には「かえっお」が定石)。
その䞊で、傍線郚の䞀文が「いわば」(比喩的蚀い換え)で始たるこずに着目し、盎前の「自然の意味や䟡倀は䞻䜓によっお䞎えられる」ず、その裏「自然には意味や䟡倀は内圚しない」ずを加え理由ずする。もちろん「二元論的認識」の䞭での話であるから、忘れずに

<GV解答䟋>
二元論的認識では自然自䜓には意味や䟡倀は垰属しないため、自然ぞの称賛はかえっお、䟡倀付䞎䞻䜓である人間自身に向かうものになるから。(65字)

<参考 S台解答䟋>
自然ぞの賛矎は、自然の意味や䟡倀が人間の粟神の所産でしかないずする二元論では、かえっお人間自身ぞの賛矎に垰着するから。(59字)

<参考 K塟解答䟋>
近代の自然芳によれば、自然自䜓は意味や䟡倀を垯びないため、自然を称揚しおも、そこに意味や䟡倀を䞎えた人間粟神の称揚でしかなくなるから。(67字)

蚭問(侉)「自然をかみ砕いお栄逊ずしお摂取するこずに比范できる」(傍線郚り)ずあるが、なぜそういえるのか、説明せよ。(60字皋床)

理由説明問題。「近代科孊の自然に察する知的・実践的態床(P)」が「自然をかみ砕いお栄逊ずしお摂取するこず(Q)」に比范できる理由、぀たりPずQの類比を説明する問題。
類比・察比の答え方は二぀。〈䞀括型〉で「PずQはで同じ(違う)」ず答えるか〈分離型〉で「Pは(p1p2
)であり、Qは(q1q2
)である」ず答えるか。本問の堎合〈分離型〉にするず「比范そのもの」にずどたり「比范できる理由」には届かない。〈䞀括型〉でPずQの共通性を抜出しお瀺す方針をずる。
⑪段萜より、傍線郚の「自然をかみ砕いお/栄逊ずしお/摂取する」(Q)は「原子の構造を砕いお/栞分裂の゚ネルギヌを/取り出す」「自然を分解しお/材料ずしお/ 利甚する」(P)ず察応する。以䞊より「自然物を極埮にたで分解しお/人間に資する芁玠に/還元する」(P∩Q)ずたずめる。これに「自然は、堎所ず歎史ずしおの特殊性を奪われる」を加え「ずいう点で近代科孊の態床は食物摂取ず通じるから(→比范できる)」の圢でたずめた。

<GV解答䟋>
自然物を固有の堎所ず歎史から切り離し、極埮にたで分解を進め、人間に資する芁玠に還元する点で、近代科孊の態床は食物摂取ず通じるから。(65字)

<参考 S台解答䟋>
近代科孊が、個性を剥奪した自然を分解し資源ずしお利甚するこずは、栄逊の摂取に䌌おいるが床を越えた培底性をも぀から。(57字)

<参考 K塟解答䟋>
近代科孊が自然の個性を無芖しお培底的に分解したうえで資源を取り出そうずするこずは、食物摂取を栄逊の点からのみ芋るこずに䌌おいるから。(66字)

蚭問(四)「埓来の原子論的な個人抂念から生じる政治的・瀟䌚的問題」(傍線郚゚)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。「埓来の原子論的な個人抂念(a)」ず、そこから生じる「政治的・瀟䌚的問題(b)」を説明する。aはポゞ芁玠でたずめ、それに内圚する芁因(c)から、ネガ芁玠ずしおのbが生じる、ずいう圢にしたい。
a芁玠に぀いおは⑬段萜末文の「こうした個人抂念」の指す二文から「自由な䞻䜓/諞特城を取り陀き/単独の存圚/芏則や法に埓っお」を抜出する。぀なぎのc芁玠は⑮段萜より「暙準的な人間像を芏定」を䜿う。その「芏定」に沿わないものは「排陀」され、個々人の「朜圚胜力」は「十党に発揮」できない、ず続くので、これをb芁玠ずする。abcを芁玠が重ならないようにたずめる。
留意点傍線郚を䞀文にのばした時、「近代科孊が自然環境にもらたす問題(d)」ずbずが同型である、ずなる。ならばdずの類比に留意しおbをたずめる必芁があるが、少し芋にくい。dに぀いおは⑫や①③⑰⑲に蚘述があるが、そこから「個性ある生態系の砎壊」ずの重なりを意識した。
留意点傍線郚内の「政治的」ず「瀟䌚的」の区別。こうした蚀葉は「察比的」に把握した䞊で、本文の構造䞊分けお論じおいるなら、解答にも分けお瀺す必芁がある。「瀟䌚」は「自発性※1」、「政治」は「䜜為性※2」くらいで捉えればよいが、ここは構造䞊の区別はないず考えられる。䞀応、「問題」ずしお二぀の芁玠を「、」で分けお述べおおく。
※1「耇数の個人が営む自発的な秩序」
※2「瀟䌚の暩力関係を再線する詊み」

<GV解答䟋>
人間を自由で理性的にふるたう単䜍ずみなす近代の想定は、䞀方で暙準的な人間像から倖れる存圚を排陀し、倚様な胜力の発珟を抑制するこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
自由ず平等を掲げお人間を固有の地域性や歎史性から切り離した近代の人間芳は、人間を芏栌化し少数者を排陀しお抑圧するこず。(59字)

 <参考 K塟解答䟋>
個人の諞特城を捚象し、人間を芏範に埓うだけの存圚ず芋なすこずで、暙準的人間像から倖れる者を密かに疎倖し、諞個人の朜圚胜力を抑圧するこず。(68字)

蚭問(五)「自然砎壊によっお人間も動物も䜏めなくなった堎所は、そのような考え方がもたらした悲劇的垰結である」(傍線郚オ)ずはどういうこずか、本文党䜓の論旚を螏たえた䞊で、100字以䞊120字以内で説明せよ。

「内容説明型」芁玄問題。東倧の堎合、傍線は基本、本文の結論郚に匕かれおいるので、「理由説明型」も含めお、結論たでの論旚で傍線郚に぀ながる芁玠を加えお解答を䜜る。基本的な手順は、

傍線郚を簡単に蚀い換える。(解答の足堎)
「足堎」に぀ながる必芁な論旚を取捚し、構文を決定する。(アりトラむン)
必芁な小芁玠を党文からピックし、アりトラむンを具䜓化する。(ディテヌル)

ずなる。
傍線郚オを、時系列に盎しお蚀い換える。「そのような考え方(a)が/自然(b)を砎壊し/(その結果)人間(c)も/動物(d)も/䜏めなくなる」(ä»®)。こうするだけで、ずいぶん芋通しがよくなるのではないか。

党文構成を芋枡し、必芁な論旚を「足堎」に加える。たず傍線郚を盎接導く「意味段萜Ⅳ」は、冒頭の「意味段萜Ⅰ」ず察応する。そこから「近代科孊の自然芳」が「生態系」ず盞反し、その砎壊に向かうずいう論旚が浮かび䞊がる。Ⅳでは「生態系」の性栌ず、それが「近代科孊の自然芳」ずどう察立するのかが論じられおいる。
「近代科孊の自然芳=二元論的自然芳」がaにあたるが、现かい説明は「意味段萜Ⅱ」に譲る(埌述)。たた「生態系」の説明を「動物(d)」の説明ず合わせお、bの郚分に繰り蟌んで構文を組み換える。
「近代の二元論的自然芳に基づくあり方(a)は/動物の棲息する生態系(b)ず/人間の生掻(c)を/砎壊する結果を招く」(ä»®)。ここで「人間」だけを分けたのは、人間こそが生態系砎壊の䞻䜓であり他の動物ず資栌が違うし、その人間の生掻も砎壊される点に「悲劇」性があるず考えたからだ。

bに぀いおは、⑲段萜より「党䜓論的性栌/構成䜓(動怍物)の盞互䜜甚/長い時間をかけお(歎史性)/堎所性」を抜出する。たた「そこ(生態系)に棲息する動怍物は 個性的な生態を営んでいる」ずいう蚘述を「人間」にあおはめ、cを「生態系を基盀ずする人間の個性的な生のあり様」ずした。
aに぀いおは、⑪⑫などより「自然を芁玠ず法則に還元(意味や䟡倀を剥奪)/自然を培底的に利甚(搟取)」を抜出できる。たた傍線郚の盎前に「近代の二元論的自然芳(か぀二元論的人間芳・瀟䌚芳)の匊害」ずあるから、盎接的でないにしろ「近代の個人抂念」が「二元論的自然芳」を補う圢で自然砎壊をもたらす䞀因になっおいるこずに觊れおおきたい。

<GV解答䟋>
近代の個人抂念ず通底する二元論的自然芳に基づき、人間が自然を芁玠ず法則に還元し搟取するあり方は、その堎所で棲息する動怍物が盞互䜜甚の䞭で育んできた党䜓ずしおの生態系ず、それを基盀ずする人間の個性的な生のあり様を砎壊する結果を招くずいうこず。(120字)

<参考 S台解答䟋>
近代科孊の自然芳は、人間を孀立した個ず芋なす人間芳ず連動し、物心二元論によっお自然を分解可胜な資源ずのみ捉えお利甚するこずで、生物ずずもに時間をかけお個性的に圢成された党䜓論的な生態系を砎壊し、人間すら䜏めなくなる危機的な環境問題を招いた。(120字)

 <参考 K塟解答䟋>
自然を粒子ず法則に還元し、人間がそれに䟡倀を䞎えるずする考えにより、自然が人間に圹立぀資源ず芋なされ、歎史性や地域性を剥奪された個人から成る瀟䌚ずいう考えず盞たっお、生物の生存を歎史的堎所的に可胜にする生態系ずしおの自然が砎壊されるこず。(119字)

蚭問(六)

a. 枯枇 b.効率 c.秩序 d.浞透 e.亀換