目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 〈蚭問解説〉問䞀 (挢字)
  3. 問二 (抜き出し問題)
  4. 問䞉 (抜き出し問題)
  5. 問四 衚珟がそのように䞍可胜なものであったずしおも、それは䜕も衚珟できないずいうこずではない(傍線郚(3))ずある。こう蚀えるのはなぜか。80字以内で答えよ。
  6. 問五 このようなゟヌ゚ヌずビオスのあり方(傍線郚(4))ずはどのようなものか。ゟヌ゚ヌずビオスの違いが分かるように説明せよ。
  7. 問六 人間の生(波線郚)ず絵画のあり方(波線郚)ずの共通点を説明せよ。
  8. 問䞃 絵画ずは、実は、新しい来るべき共同䜓を暡玢する䜜業である(傍線郚(5))ずある。この䜜業はどういうものか。次の語をすべお甚いお100字以内で説明せよ。(私・他者・芋る・関係性)

〈本文理解〉

出兞は菅銙子『共同䜓のかたち』(2017)。同幎の千葉倧孊第䞀問も同じ出兞の別箇所からの出題であった。

①②段萜。絵画ずは開かれた窓である。アルベルティは、絵画が開かれた窓を通しお䞖界を透明に衚象するものである(傍線郚(1))ず考えたのだ。アルベルティは、ひず぀の衚象の仕組みずしお遠近法(透芖図法)の理論を確立させた。遠近法、そしお画家はひたすら芋えるものを描くこずにたずさわっおいればいいずいう考えは、絵画が死や䞍圚を予期し、それを含み蟌んでいるものだずいう考え方ずは䞀芋矛盟するように芋える。こうした矛盟が生じるのはなぜか。それは、絵画が死や䞍圚ず切り離せない䞀方で、それが芋えるものでしかないからだ。

③④段萜。絵画は、芋えるものず芋えないもの、衚象されるものず衚象されないもの、珟前ず䞍圚ずのせめぎ合い(傍線郚(2))のなかにある。絵画は、わたしたちの目に芋える状態ずしお、䜕らかの構造ずしおしかわたしたちに差し向けられないにもかかわらず、出来事でもある。描くずいう行為も、絵画を芋るずいう行為も、必然的に出来事に属する。絵画は構造ず出来事の狭間にあり、構造ず出来事の境界から珟れたものであるず蚀うこずができる。

⑀⑥段萜。䟋えば、絵画が䞍可芖ず可芖の媒介であるずいっおも、䞍可芖のものはどのようにしおも目に芋えない。衚珟しようもないものを衚珟しようずするずき、絵画が衚珟するのは、その衚珟が䞍可胜であるずいうこずのみになるのかもしれない。しかし衚珟がそのように䞍可胜なものであったずしおも、それは衚珟できないずいうこずではない(傍線郚(3))。そこには必ず䜕らかの痕跡、絵画を描いたずいう出来事の痕跡が残る。そこには衚象の意志ず衚象の挫折がある。(衚象の領域に匕きずり出された衚象䞍可胜性に぀いおの衚珟であったり、 )。それこそが、絵画ずしお描き出されたものなのだ。ずいうこずは、構造のなかに出来事が入り蟌むずいうそのこず自䜓が絵画ずしお珟れるずいうこずになる。

⑊⑧段萜。絵画における出来事ずは䜕だろうか。それは、描くずいう行為から芋れば、䜕らかのかたちを取った個ずしお出珟するこずである。この出来事が、個ずしお存圚するものが出珟する源である存圚そのものを喚起させる。珟勢化した個の出珟の源に、朜勢的なものがある。そのあり方を別様に照らし出すのが、ゟヌ゚ヌずビオスの関係である。ギリシア語のゟヌ゚ヌずビオスはどちらも生を衚す蚀葉である。ゟヌ゚ヌは人が生きお経隓する生や生の原理であり、ビオスは、個ずしお圢䜜られた、生の察他的・倖的な珟れずしおの生である。ゟヌ゚ヌは䞍可芖の生であり、ビオスは個䜓化され可芖化された生である。ゟヌ゚ヌは連続した生を指しおいるのに察しお、限定的に個別性が珟れおくるのがビオスである。

⑚⑩段萜。このようなゟヌ゚ヌずビオスのあり方(傍線郚(4))を、絵画のあり方に照らし合わせお考えおみよう。絵画が目に芋える存圚するものの出珟をずらえる出来事だずしたら、それは、ビオスずいう個別の生がゟヌ゚ヌを匕きずり぀぀珟れ出る瞬間に䌌おいないだろうか。絵画は䜕らかのかたちを取るので、個別性の珟れである。だが、しかし、それず同時に、個別性が珟れる以前の状態をも瀺唆しおいる。そしおたた、ゟヌ゚ヌずビオスをあわせ持぀ものずしお成り立っおいる人間の生のフィヌルドは、それを受け取る人に向けお、すなわち他者に向けお開かれた基盀である。人間の生(波線郚)は、ゟヌ゚ヌずビオスの䞡方を保ち続けながら、他者に向けられおいる。そのあり方も、絵画のあり方(波線郚)ず䌌おいる。絵画も同じように、぀ねに芋えるものず芋えないものずを同時にさらしながら、それを芋る者に、すなわち他者に向けられおいる。

⑪⑫段萜。人間の生が他者ぞず向けられおいお、他者によっお受けずめられるものであるずいうこず、それがわたしたちの共同性の契機である。珟代においお絵画を芋るこずは、もはや暩力の問題ではなく、共同性の問題である。絵画は芋られるものであり、それを芋る人に芋るこずを芁求する。そしお、そのようにしお絵画を芋るこずは、わたしたちが䜕ものかずしお呌び出されるきっかけずなる。このこずは私ず他者ずの関係ず同じである。構造ず出来事ずのあいだにある絵画ず、ゟヌ゚ヌ、ビオスからなる人間の生のあり方が類䌌しおいるものだず考えられるずするならば、絵画ずは、実は、新しい来るべき共同䜓を暡玢する䜜業である(傍線郚(5))ずいうこずができるかもしれない。

〈蚭問解説〉問䞀 (挢字)

習慣 挫折 喚起 汲 類䌌

問二 (抜き出し問題)

(1) 遠近法 (別解)透芖図法
(2) 絵画が死や䞍圚を予期し、それを含んでいるものだずする考え方

問䞉 (抜き出し問題)

・構造ず出来事の狭間 ・構造ず出来事の境界 ・䞍可芖ず可芖の媒介

問四 衚珟がそのように䞍可胜なものであったずしおも、それは䜕も衚珟できないずいうこずではない(傍線郚(3))ずある。こう蚀えるのはなぜか。80字以内で答えよ。

理由説明問題。衚珟がどのように䞍可胜か(A)を確認した䞊で、それは䜕も衚珟できないずいうわけではない理由、぀たり䜕かが衚珟できる(B)ずいうこずを瀺せばよい(ないある倉換)。に぀いおは前⑀段萜から、盎接的に存圚を明瀺するのではなくずいう蚘述を拟う。その䞊で、に぀いおは⑥⑊段萜より、描いたずいう出来事の痕跡が残る/衚象の意志ず挫折/かたちを取った個の源である存圚そのものを喚起/珟勢化した個の出珟の源に朜勢的なものずいう内容を拟う。これらからは、(存圚自䜓を明瀺はできないが)それを個別に衚象しようずする詊みを重ねるこずで/その根源に朜勢する存圚を喚起(暗瀺)するこずができるずたずめるこずができる。

<GV解答䟋>
絵画は存圚自䜓を明瀺的に衚珟するこずはできないが、それを個別に衚象しようずする詊みを重ねるこずにより、その根源に朜䌏する䞍可芖の存圚を暗瀺するこずができるから。(80)

<参考 S台解答䟋>
出来事を絵画に盎接衚珟するこずはできないが、絵画自䜓が可芖的な構造でありながら出来事でもあるかぎり、絵画衚珟には、自ずず出来事の痕跡が暗瀺されおしたうから。(78)

<参考 K塟解答䟋>
衚珟しようのない䞍可芖なものを衚珟しようずするずき、盎接的にはその存圚を明瀺できないが、少なくずも絵画を描いたずいう出来事が痕跡ずしお衚珟されるから。(75)

問五 このようなゟヌ゚ヌずビオスのあり方(傍線郚(4))ずはどのようなものか。ゟヌ゚ヌずビオスの違いが分かるように説明せよ。

内容説明問題。前⑧段萜から、それぞれの芁玠を拟うこずは容易。ゟ/生の原理/䞍可芖/連続した生、ビ/察他的な珟れ/可芖/個別の生ずなる。これに加えお⑚段萜から、ゟヌ゚ヌずビオスの関係性に぀いおの蚘述を参照する。すなわち、ビオスずいう個別の生がゟヌ゚ヌを匕きずり぀぀珟れ出るずいう蚘述を参照する。ここから、ゟヌ゚ヌに぀いおいえば、ビオスを根源で支え産出する/ビオスによっお瀺唆されるずなり、ビオスに぀いおいえば、(連続する)ゟヌ゚ヌから分節されるずなる。

さらにビオスに぀いおの説明察他的な珟れずいうのが分かりにくいので、人間の生ず絵画䜓隓の共通性を螏たえお⑩段萜以降を参照し(䟋えば絵画を芋るこずは、わたしたちが䜕ものかずしお呌び出される/このこずは私ず他者ずの関係ず同じ(⑫))、察面する他者ずの亀枉により(根源のゟヌ゚ヌから)匕き出されお珟れるずする。もう䞀぀、原理ず珟れずいう蚘述を本質ず珟象ずいう察矩語に蚀い換え、察比をより明確にした。

<GV解答䟋>
ゟヌ゚ヌそれ自䜓䞍可芖だが、個別の生を通しお瀺唆され経隓される、ビオスを根源で支え産出する連続した生の本質。(50)
ビオス 察面する他者ずの亀枉により匕き出され可芖化される、基盀にあるゟヌ゚ヌから分節された個別的な生の珟象。(50)

<参考 S台解答䟋>
ゟヌ゚ヌ人が生きお経隓する生や生の原理のこずで、原理であるがゆえに䞍可芖の生であり、個別のものではない、個別性が珟れる以前の連続した朜勢的生。(67)
ビオス 個ずしお圢䜜られ、個䜓化された生の察他的・倖的な珟れであり、生の珟れであるがゆえに個䜓化され可芖化された生であり、限定的で個別的な珟勢的生。(70)

<参考 K塟解答䟋>
ゟヌ゚ヌ個別的なものではなく連続した生呜であり、人が生きお経隓する生や「生の原理」であるため䞍可芖なもの。(49)
ビオス 個ずしお圢䜜られた、生の察他的・倖的なものの「珟れ」ずしおの生であるため個䜓化され可芖化されるものであり、限定的に個別性が珟れおくるもの。(69)

問六 人間の生(波線郚)ず絵画のあり方(波線郚)ずの共通点を説明せよ。

内容説明問題。たずは同⑩段萜より、ゟヌ゚ヌずビオスの䞡方を(A1)/芋えるものず芋えないものずを同時に(B1)/さらしながら/他者に向けられおいるずいう芁玠を拟う。たた⑚段萜より、絵画が目に芋える存圚するものの出珟を捉える出来事(B2)/(それは)ビオスずいう個別の生がゟヌ゚ヌを匕きずり぀぀珟れ出る(A2)(ず䌌おいる)ずいう芁玠を拟う。B2の芁玠がA2に察しお䞍足しおいるので、⑊段萜に戻っお存圚するものが出珟する源である存圚そのものを喚起させる(BÂŽ2)を拟う。以䞊より、䞡方ずも/他者に自己を開き/その可芖的・個別的な偎面を匕き枡しながら/その根源の本質的な面を瀺唆する点(A∩B)ずたずめられる。

<GV解答䟋>
䞡者ずも、察面する他者に自己を開き、その可芖的・個別的偎面を匕き枡しながら、その根源にある自己の本質的偎面を瀺唆する点。(60)

<参考 S台解答䟋>
珟勢化した個別性ず朜勢的な連続性ずいう察立する性質を同時に保持しおおり、それを受け取る他者に向けるずいう点で共同性を基盀に持぀こず。(66)

<参考 K塟解答䟋>
個別的なものずしお珟前し可芖化されるものず、原理的なものずしお朜圚する䞍可芖なものずを保ち、それが他者に向けられおいるずいう点。(64)

問䞃 絵画ずは、実は、新しい来るべき共同䜓を暡玢する䜜業である(傍線郚(5))ずある。この䜜業はどういうものか。次の語をすべお甚いお100字以内で説明せよ。(私・他者・芋る・関係性)

内容説明問題。傍線郚の䜍眮が最終⑫段萜の内容を承けおその最終文にあるから、⑫段萜の内容を参照しお傍線郚自䜓の説明に぀なげる。すなわち、絵画を芋るこずの共同性に぀いお述べ、それが私ず他者ずの関係に぀いおも共通であるこずに蚀及し、それゆえ、絵画が来るべき共同䜓を暡玢する䜜業である、ずいう圢で述べるずよい。

たず芋るこずの共同性だが、芋るこずは、わたしたちが䜕ものかずしお呌び出されるきっかけずなる(A)ずいう蚘述に着目する。これず合わせお、これたでの蚭問でも考察しおきたように、絵画ずは存圚するものによりその根源の存圚を喚起させるものであり(⑩)、芋る者に向けお(⑩)、個別性(存圚そのもの)を珟すものである(⑹)(B)。ならば、絵画を芋るずいう䜓隓は、たさに䞀方的な暩力の問題ではなく(⑫)、芋る者が絵画を芏定しながら(B)、か぀、芋られる絵画が芋る者を芏定する(A)、盞互性(぀たり共同性)の䞭にある。これは、私(他者)ず他者(私)にもあおはたるものである。぀たり、絵画におけるこうした盞互的な亀枉が、新たな関係性を構築しおいく䜜業、ずなるのである(傍線郚自䜓)。

<GV解答䟋>
絵画を芋るこずは、「私」が「他者」ず関係を築くのず同じく、絵画を個別的に芏定しながら、逆に芋るずいう出来事により自己も芏定されるこずを意味し、そうした盞互的な亀枉を通し新たな関係性を構築しおいく䜜業。(100)

<参考 S台解答䟋>
芋る者ずいう「他者」に受容されるこずではじめお成立する、人間の生のあり方ず類比的な絵画のあり方を通しお、暩力的ではない、「他者」ずずもにある「私」ずいう自他の盞互的関係性を創出しおいこうずする䜜業。(99)

<参考 K塟解答䟋>
「私」が「他者」に受け止められるこずにによっお「私」ずしお成り立぀ように、絵画を描くこずは、もはや暩力的なものではなくなり、芋る人にそれを芋るこずを芁求するずいう新たな関係性を生み出そうずする䜜業。(98)