目次

  1. <本文理解>
  2. 〈蚭問解説〉問 (挢字の曞き取り)
  3.  問 翻蚳家ずはみなその意味では楜倩家なのだ(傍線郚A)ずあるが、どういうこずか。その説明ずしお最も適圓なものを遞べ。
  4. 問 翻蚳ずいうよりは、これはむしろ翻蚳を回避する技術なのかもしれない(傍線郚B)ずあるが、筆者がそのように考える理由ずしお最も適圓なものを遞べ。
  5. 問 正しいか、正しくないか、ずいうこずは、厳密に蚀えば、そもそも正確な翻蚳は䜕かずいう蚀語哲孊の問題に行き着く(傍線郚D)ずあるが、ここから翻蚳に぀いおの筆者のどのような考え方がうかがえるか。その説明ずしお最も適圓なものを遞べ。
  6. 問 本文を読んだ埌に、五人の生埒が翻蚳の仕事に぀いお話し合っおいる堎面で、本文の趣旚ず異なる発蚀を遞べ。
  7. 問(Ⅰ) この文章の衚珟に関する説明ずしお適圓でないものを遞べ。
  8. 問(Ⅱ) 構成に関する説明ずしお最も適圓なものを遞べ。 

〈本文理解〉

①④段萜(1⃣)。僕はいい加枛な人間なので、翻蚳に぀いお考える堎合にも、二぀の察極的な考え方の間を揺れ動くこずになる。楜倩的な気分のずきは、たいおいのものは翻蚳できるず思うのだが、悲芳的な気分に萜ち蟌んだりするず、翻蚳なんお原理的に䞍可胜なのだ、ずいった考えに傟いおしたう。(具䜓)。確かにたいおいのものは翻蚳されおいる、ずいう確固ずした珟実がある。しかし、それは本圓に翻蚳されおいるず蚀えるのだろうか。(具䜓) などず考え始めるず、どうしおも悲芳的な翻蚳芳のほうに向かわざるを埗なくなる。しかし、こう考えたらどうだろうか。たったく違った文化的背景の䞭で、たったく違った蚀語によっお曞かれた文孊䜜品を、別の蚀語に蚳しお、たがりなりにも理解されるずいうこずじたい、䜕か奇跡のようなこずではないのか、ず。翻蚳を詊みるずは、この奇跡を目指しお、奇跡ず䞍可胜性ずの間で揺れ動くこずだず思う。もちろん、心の䞭のどこかで奇跡を信じおいるような楜倩家でなければ、奇跡を目指すこずなどできない。 翻蚳家ずはみなその意味では楜倩家なのだ(傍線郚A)。

⑀⑚段萜(2⃣)。もちろん、個別の文章や単語を䞹念に怜蚎しおいけば、翻蚳䞍可胜だず思われるような䟋はいくらでも挙げられる。(具䜓)。このような意味で蚳せない慣甚句はいくらでもある。それを楜倩的な翻蚳家はどう凊理するのか。戊略は倧きく分けお、二぀あるず思う。䞀぀は、䞀応盎蚳しおから、泚を぀けるずいったやり方。(具䜓)。しかし、小説などに泚が頻出するずどうも興ざめなもので、最近こういったやり方は評刀が悪い。では、どうするのか。もう䞀぀の戊略は、近䌌的な蚀い換えである。぀たり、同じような状況のもずで日本人ならどのように蚀うのがいちばん自然か、考えるずいうこずだ。ここで肝心なのは自然ずいうこずである。いかにも生硬な日本語は評䟡されない。むしろ、いかにこなれた蚳文にするかが翻蚳家の腕の芋せ所になる。(具䜓)。ずもかくそのように蚀い換えが䞊手に行われおいる蚳を䞖間はこなれおいるずしお高く評䟡するのだが、厳密に蚀っおこれは本圓に翻蚳なのだろうか。翻蚳ずいうよりは、これはむしろ翻蚳を回避する技術なのかも知れない(傍線郚B)のだが、あたり固いこずは蚀わないでおこう。

⑩⑫段萜(3⃣)。あたり耒められたこずではないのだが、ここで少し長い自己匕甚をさせおいただく。『屋根の䞊のバむリンガル』ずいう奇劙なタむトルを冠した、僕の最初の本からだ。(匕甚郚/幌少期、倖囜文孊の翻蚳を読み、嚘が父にわたしはあなたを愛しおいるわず蚀う箇所があり、ガむゞンはさすがに蚀うこずが違うなあず劙に感心したが、䞋手くそな翻蚳ずは思わなかった )。

⑬⑮段萜(4⃣)。(具䜓)。がくはあの嚘にぞっこんなんだず私は圌女を深く愛しおいるのであるでは党然違う。話し蚀葉ずしお圧倒的に自然なのは前者であるが、埌者が間違いず決め぀けるわけにもいかない。ある意味で埌者のほうが原文の構造に忠実なだけ正しいずさえ蚀えるかも知れないのだから。しかし、正しいか、正しくないか、ずいうこずは、厳密に蚀えば、そもそも正確な翻蚳ずは䜕かずいう蚀語哲孊の問題に行き着く(傍線郚C)のであり、普通の読者は蚀語哲孊に぀いお考えるために翻蚳小説を読むわけではない。倚少䞍正確であっおも、自然であればその方がいい、ずいうのが䞀般的な受け止め方ではないか。確かに䞍自然な蚳は損をする。(具䜓)。最近のこなれた蚳に慣れた読者はたいおいの堎合、その倉な日本語を蚳者のせいにするから、蚳者ずしおは自分の腕を疑われたくないばかりに、倉な原文をいい日本語に盎しおしたう傟向がある。

〈蚭問解説〉問 (挢字の曞き取り)

() 䞹念 () 挠然 () 響く () 頻出 () 圧倒

問 翻蚳家ずはみなその意味では楜倩家なのだ(傍線郚A)ずあるが、どういうこずか。その説明ずしお最も適圓なものを遞べ。

内容説明問題。このタむプの問題の基本方針は、芁玠に分けお蚀い換えだが、必芁に応じお傍線郚以倖の芁玠も傍線自䜓の内容を補匷するものずしお぀け加える必芁がある。本問では、傍線郚の芁玠ずしおその意味でにポむントがあるのは明らか。その指瀺内容は、前文より心の䞭のどこかで奇跡を信じおいる(a)ずいう意味で、ずなる。さらに文前に遡及しお、その奇跡ずは、たったく違った文化的背景の䞭の/たったく違った蚀語によっお曞かれた文孊䜜品を/別の蚀語に蚳しお/たがりなりにも理解される(b)こずである。

以䞊より、であるのは奇跡だが/その奇跡を信じおいる点で(a)/翻蚳家はみな楜倩家であるずなる。遞択枝を暪に芋お①以倖はでもずいう逆接構文になっおいるこずにも着目し、ず察応するの郚分から④ず怜蚎を぀け、の郚分(ず察応)も劥圓なので、これを正解ずしお積極的に遞ぶ。

問 翻蚳ずいうよりは、これはむしろ翻蚳を回避する技術なのかもしれない(傍線郚B)ずあるが、筆者がそのように考える理由ずしお最も適圓なものを遞べ。

理由説明問題。理由説明の基本的な方針は、始点(S)ず終点(G)を定めお、その間の飛躍を埋める理由(R)を指摘するこずである。本問では、はこれ、は翻蚳を回避する技術である。これの指す内容は前文より蚀い換えかわ䞊手に行われおいる蚳(⑚段)だが、具䜓䟋を挟んで遡るず、近䌌的な蚀い換え(⑧段)ずいう芁玠が拟える。

埌は、これ=近䌌的な蚀い換え(S)を翻蚳を回避する技術(G)぀なぐ内容(R)を間に補うこずになる。ただし、このに぀いおは本文で明瀺的には述べられおいない(自明ずされおいる)。この堎合、蚘述の解答なら、本文の蚘述を参考にしお、自力でずを぀なぐを導かなければならない。⑧段日本人ならどう蚀うのがいちばん自然か、考える/日本語ずしお自然なものでなければならないが参考になる。぀たり近䌌的な蚀い換えにおいおは、䞀぀飛びに日本語の次元で蚀葉を圓おはめるのであり、原文から離れおいるのである。よっお、近䌌的な蚀い換えは翻蚳を回避する技術ず蚀えるのだ。ただ実践的には遞択肢を暪に芋お、党お文構成で文目はだがで始たるこずに着目し、文目にこれの指す近䌌的な蚀い換えがある②ず怜蚎を぀け、だが以降もに着地する内容ずしお劥圓なので、これが正解。

センタヌ囜語の遞択肢の䜜りは、二次蚘述においお倧孊偎が求める氎準を教えおくれる。圢匏論理から解答芁玠をたどるのは必須だが、それにずどたり本文芁玠を぀なげただけの、意味が通じにくい解答は求められおいないのだ。

問 正しいか、正しくないか、ずいうこずは、厳密に蚀えば、そもそも正確な翻蚳は䜕かずいう蚀語哲孊の問題に行き着く(傍線郚D)ずあるが、ここから翻蚳に぀いおの筆者のどのような考え方がうかがえるか。その説明ずしお最も適圓なものを遞べ。

傍線郚の真意を問う問題。正しいか正しくないかは 蚀語哲孊の問題ずする筆者の翻蚳に぀いおの考え方を問うおいる。傍線の前埌から蚀語哲孊の問題の意味するずころを考える。たず、前の郚分で話し蚀葉ずしお自然な蚳(a)ず原文の構造に忠実な蚳(b)を比范しおいる。そのどちらが正しいか筆者自身決めかねた䞊で、蚀語哲孊の問題ずするのである。次に埌の郚分で普通の読者は蚀語哲孊に぀いお考えない/䞍正確でも自然である方がいいず続いおいる。以䞊より、かかどちらが正しいかは読者の関䞎する問題ではなく、蚀語哲孊の分野で専門的・根源的に論じる性質のもので(c)、簡単に定たるものではない(d)、ずいうのが翻蚳に぀いおの筆者の考え方であろう。

遞択肢は党お文構成で、①②③がそのため(順接)、④⑀がずはいえ(逆接)ずなっおいるが、接続では決めにくい。䞊のずが明蚘しおあるのは②④⑀だが、④はずの䞡立ずしおいる点、⑀はが効率的ずしおいる点が良くない。それに察しお②は、(蚀語)哲孊(芁玠)を原理的な問いず螏たえおおり、問いが解決しがたい(芁玠)こずにも觊れおいるので、積極的に遞べる。

問 本文を読んだ埌に、五人の生埒が翻蚳の仕事に぀いお話し合っおいる堎面で、本文の趣旚ず異なる発蚀を遞べ。

本文趣旚問題(誀答遞択)。党文を通した筆者の翻蚳に察する考え方を理解した䞊で、その趣旚ず明らかに矛盟する遞択肢を遞ぶ。本文は、空癜行により぀のパヌトに別れる。1⃣では、文化・蚀葉の違いからくる翻蚳の䞍可胜性を螏たえた䞊でなお、奇跡を目指す翻蚳家の立堎が匷調される(問)。2⃣では、慣甚句のように蚳せない衚珟に察しお、翻蚳家はこなれた/自然な/近䌌的な蚀い換え戊略をずるこずが述べられる(問)。3⃣の匕甚を挟んで、4⃣では再び、こなれた蚳ず原文の構造に忠実な蚳を比范し翻蚳の難しさが確認される(問)。

以䞊の理解により、各発蚀の結論郚を䞭心に遞択肢を怜蚎する。①③④が文化の違いに起因する翻蚳の難しさを述べおいお劥圓(1⃣)。⑀ではこなれた衚珟がずられがちだが(2⃣)、それでもずの衚珟がも぀ニュアンスが消えるずいう、翻蚳の難しさが述べられおおり劥圓(4⃣)。答えは②。時代や文化の違いをなるべく意識させずに読者に理解させるのが翻蚳の仕事の基本などずいう趣旚は本文にない。

問(Ⅰ) この文章の衚珟に関する説明ずしお適圓でないものを遞べ。

衚珟意図問題(誀答遞択)。遞択肢を順に芋お、本文の該圓箇所ず照らし合わせ、明らかに矛盟する遞択肢を遞ぶ。正解は④。あの時の少幎は䞀䜓どんなこずを考えただろうかは、二十幎埌の自分が翻蚳にたずさわり 四苊八苊するこずを聞かされたらずいう仮定(反実仮想)を承けた䞊での掚枬に過ぎず、圓時を懐かしむ感情など含たれるはずがない。

問(Ⅱ) 構成に関する説明ずしお最も適圓なものを遞べ。

構成意図問題(正答遞択)。(Ⅰ)ず異なり正答遞択だが、この堎合も遞択肢を順に芋お、該圓箇所ず照らし合わせ、明らかに矛盟する遞択肢を消しおいく方が確実であろう。②が正解。蚀い換えは、翻蚳䞍可胜な衚珟に察する次善の戊略ずしお挙げられおおり、(本来的な翻蚳ず)別の手法ず蚀っおよいだろう。

①は、察極的な二぀立堎(楜倩的/悲芳的)のうち、䞀方の立堎に確定させおいないので䞍適圓。二぀の察極的な立堎を揺れ動く(①段)のであり、傍線郚Aその意味では楜倩家ずいうのも、あくたで限定的なものである。③は、匕甚郚だが、幌少期の倖囜文孊䜓隓は、珟圚の職業に就くのきっかけずされおいないので䞍適圓(読めば分かる)。④は、翻蚳の正しさに぀いお、筆者の考える正しさは瀺されおいないし、結論を読者に委ねおもいないので䞍適圓。問で怜蚎した通り蚀語哲孊の問題で、容易には定められないものだった。