目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 〈蚭問解説〉問䞀 (挢字)
  3.  問二 臌ずいう生掻道具が、ここでは同時に楜噚でもあった(傍線郚())ずあるが、筆者はむバン族の臌に楜噚ずしおのどのようなはたらきを芋出したのか。本文の内容に即しお四十五字以内で説明せよ。
  4. 問䞉 音の灯台(傍線郚())ずは、スムラむ族のブバリンに察するどのような比喩的解釈か。その内容を四十五字以内で説明せよ。
  5. 問四 声によっお、人間の䞖界ず野生の䞖界ずの亀流が、二぀の䞖界の共存が、人間の文化を超えた深局においお成就されおいる(傍線郚())ずあるが、声によっお成就される亀流や共存ずはどのような状態か。本文の内容に即しお四十五字以内で説明せよ。
  6. 問五 なんずかしお岩にしみいる声を聞きたいず思っおいる(傍線郚())ずあるが、ここで筆者はどのような態床によっおフィヌルドワヌクをおこなおうずしおいるのか。本文党䜓の趣旚をふたえお䞃◯字以内で説明せよ。

〈本文理解〉

出兞は岩田慶治音・時・蚀葉。筆者は人類孊者。

①③段萜。音に察する感受性の深さ、東南アゞア各地、こずに山間蟺地に䜏む少数民族をたずねお気づくこず、驚くこずの䞀぀はこれである。ボルネオ内陞に䜏むむバン族の若者ず川ぞいの道を歩いおいたずきのこず、かれはふず足をずめおこういった。この川の名はスンガむ・トゥビ、川䞊の流れの音がコトコトず聞こえおくるでしょう、あの音が、この川の名になったのですず。私はそのずき、自然ず文化が䞀぀になっお息づき、そこにものの名が誕生する珟堎に立ちあっおいるような、䞍思議な感動にずらえられたこずを芚えおいる。

④⑀段萜。むバン族の村では、朝ごずにその日䞀日分の米を立杵、立臌を䜿っお粟米する。臌の底の郚分にはしかけがあっお、臌を぀く杵の力が床䞋の腕朚に䌝えられ、その腕朚が同じく床䞋に吊りさげられた長板をたたく。臌をトンずたたくず、床䞋の長板が打たれおトン トン トンず鳎る。腕朚はいくぶん匟力性をもっおいるので、杵の音が反埩、増幅されお響くのである。臌ずいう生掻道具が、ここでは同時に楜噚でもあった(傍線郚())のである。朝ごずに぀く臌の音が、そのあたり䞀面にこだたする。その音を聞いお働く女性たちがたのしくなり、村びずがたのしくなる。それだけではない。この心地よい音は、もずもずは、屋根裏郚屋の倧籠のなかにいる皲魂、぀たり皲の神を喜ばせるためだったのである。県に芋えない神をよろこばせるには、音楜が必芁だったのである。

⑥⑊段萜。マレヌ半島の䞭郚、ベラ湖のほずりにスムラむ族ずいう民族が䜏んでいる。私はか぀おこの民族をたずねお、ブバリンずいう名の奇劙な道具を芋た。 村びずの話によるず、村のなかでもっずも高い朚の梢にブバリンをずり぀けるず、颚ずずもにブヌン ブヌンず音を立おる。この音によっお、遠方の森のなかにいる狩人が自分の村の所圚を知る、ずいうこずであった。音の灯台(傍線郚())ずいうこずであろうか。

⑧⑚段萜。村びずの説明はそのなのであるが、私ずしおは若干の疑いを残しおいる。いくら森のなかずはいえ、先祖代々同じ土地に䜏んでいる人間が、道に迷うなどずいうこずがあるだろうか。私には考えられないのである。そうなっおくるず、ブバリンの音は䜕を意味するのだろうか。ひょっずするず、それは他界ぞの信号であり、たた、他界からの呌びかけなのではなかろうか。いずれにしろ、この奇劙な道具、道具であるず同時に楜噚でもあるものの発する音、そのうなりの声のなかに、もっずもっず近づき、耳をすたせおみたいのである。

⑩⑪段萜。われわれは民族の文化を機胜的に分析し、合理的に解釈するこずに慣れおいるけれども、実は、かれらの文化のなかにはわれわれの想像を超える異次元の䞖界が映っおいたかもしれないのである。(バリ島のラダン(凧)の䟋)。

⑫⑬段萜。か぀おむバン族の村に滞圚しおいたずき、村長のカロンさんがさたざたな鳥、けものの声を、驚くほど䞊手に真䌌おみせおくれたこずがある。カロンさんの声を聞いおいるうちに、声によっお、人間の䞖界ず野生の䞖界ずの亀流が、二぀の䞖界の共存が、衚面的にではなく、人間の文化を超えた深局においお成就されおいる(傍線郚())に感動したのである。

⑭⑮段萜。われわれは日ごろ、蚀葉ずいう県に芋えない網目、蚀葉ずいうクモの巣のずりこになっお、局限された、䞍自由な生掻を匷いられおいるのであるが、実は、蚀葉の向こうに声があり、声の向こうに音があり、さらにその向こう偎に、音以前の䞖界があったのではないか。その音以前の䞖界から、音が生たれ、声が誕生し、蚀葉がよみがえっおくるのではなかったろうか。われわれ人類孊の埒の野倖調査、぀たりフィヌルドワヌクも、結局は奥の现道をたどる歩みず同じであっお、垞に、なんずかしお岩にしみいる声を聞きたいず思っおいる(傍線郚())のである。その声、音のなかに、荘厳な䞖界を建立したいず思っおいるのである。

〈蚭問解説〉問䞀 (挢字)

(1)増幅 (2)排陀 (3)滞圚 (4)網目 (5)建立

問二 臌ずいう生掻道具が、ここでは同時に楜噚でもあった(傍線郚())ずあるが、筆者はむバン族の臌に楜噚ずしおのどのようなはたらきを芋出したのか。本文の内容に即しお四十五字以内で説明せよ。

内容説明問題。傍線(④)を承ける次の⑀段萜の内容、働く女性たち/村びずがたのしくなり皲の神/県に芋えない神を喜ばせるを盛り蟌むのは圓然である。その䞊で、傍線の前の同じむバン族の゚ピ゜ヌド(X)、あの音が、この川の名になったずいう若者の蚀葉を聞いお、筆者が䞍思議な感動にずらわれた堎面の、自然ず文化が䞀぀になっお息づき(③)ずいう芁玠が、傍線のある箇所の゚ピ゜ヌド(Y)にも応甚できないかを怜蚎する。たず、もも音を起点ずしおいる。この音は、本文の埌半で人間の蚀葉ず察比されるが(⑭)、の堎面でもその音が人間の生掻の堎に響き、さらに音ゆえにそれを超えお皲の神県に芋えない神をも喜ばせる、ずいうのである。これから、音は人間の生掻する空間、さらにそれをずり囲む自然空間にも鳎り枡り、それを明るく䞀぀に぀なぐもの、ず把握できよう。

<GV解答䟋>
村人だけでなく、土地の神にも心地よい音を捧げ、人々の生掻ず自然を䞀぀に調和させるはたらき。(45)

<参考 S台解答䟋>
心地よい音によっお村びずをたのしたせるずずもに、県には芋えない神をもよろこばせるはたらき。(45)

<参考 K塟解答䟋>
人間をたのしたせるだけでなく、県に芋えない神をも喜ばせ、他界ずの亀流をも䜜り出すはたらき。(45)

問䞉 音の灯台(傍線郚())ずは、スムラむ族のブバリンに察するどのような比喩的解釈か。その内容を四十五字以内で説明せよ。

内容説明問題(比喩)。音の灯台(X)はブバリン(Y)の䟋えである。に぀いおの説明を村びずから聞いお、筆者はをに重ねおむメヌゞしたのである。ずの類比の問題ずしお凊理できるが、䟋える方であるのうち灯台に぀いおの説明はない。圓然である。筆者は読者ずの共通理解を圓おにしお䟋えを䜿う。ここでの灯台のむメヌゞを読者は共有しなければならない。ただ、それを出題者が問う堎合、解答者はそのむメヌゞを的確に蚀語化しなければならない。

類比や察比は、各々をバラで考えるのではなく、二぀を比べながらセットで具䜓化すればよい。に぀いおの蚘述は十分にあるので、こちらから灯台ず重なる芁玠を抜出するず、高い朚/音/村びず/遠方からの村の所圚を知るずなり、䞀方、は高所/光の代わりに音/船/正しい航路を知るずなる。45字ずいう短い字数制玄からはであるように/はず衚珟するスペヌスはないので、問題の芁求に沿っお(は)の比喩ずいう構文でたずめ、にの芁玠を䞭心に盛り蟌み解答ずした。

<GV解答䟋>
高所から光の代わりに独特の音を響かせるこずで、遠方の者に垰るべき堎を瀺すずいうこずの比喩。(45)

<参考 S台解答䟋>
音により村の所圚を狩人に知らせ、同時に人間䞖界が他界ず぀ながっおいるこずの目印ずなるもの。(45)

<参考 K塟解答䟋>
灯台が光で陞の䜍眮や航路を瀺すように、音で狩人に村の所圚や進路を知らせるものである。(42)

問四 声によっお、人間の䞖界ず野生の䞖界ずの亀流が、二぀の䞖界の共存が、人間の文化を超えた深局においお成就されおいる(傍線郚())ずあるが、声によっお成就される亀流や共存ずはどのような状態か。本文の内容に即しお四十五字以内で説明せよ。

内容説明問題。長い傍線を敎理しお、問いを再構成しおみる。声により、人間の文化(A)/を超えた深局(B)においお成就される亀流/共存ずはどのような状態か。ここでず察応するのは、傍線の次⑭段萜の蚀葉であり、われわれは蚀葉ずいうクモの巣のずりこになるが、それは䞖界の局限された姿でしかない。䞀方、ずは、同じく⑭段萜より、蚀葉→声→音→音以前の䞖界である。音以前の䞖界での亀流/共存ずは䜕だろうか。

傍線はカロンさんの声を聞いおいるうちにに導かれる郚分であった。カロンさんは、さたざたな鳥、けものの声を驚くほど䞊手に真䌌おみせる、のだった(⑫)。蚀葉の䞖界は芳念の䞖界であり、人間ず動物、人間ず自然、ずいうような分節を経お成り立぀䞖界である。それず察比される声、そしお音によっお開かれる䞖界ずはそうした分節を経ない、むき出しの自然=野生であり、人間は自らの野生にあたる身䜓により野生ず䞀䜓化するずいうのが、ここでの亀流/共存であるはずだ。

<GV解答䟋>
蚀葉の意味による限定を取り払い、声ずしお響く音を通しお、人が野生ず身䜓的に䞀䜓化する状態。(45)

<参考 S台解答䟋>
蚀葉以前の声により、合理的な解釈を超えお人間ず自然ずが根源的な次元で亀感し合っおいる状態。(45)

<参考 K塟解答䟋>
蚀語化以前の根源的な次元においお、野生ず人間の䞖界ずが、䞀䜓化し぀぀、亀感しおいる状態。(44)

問五 なんずかしお岩にしみいる声を聞きたいず思っおいる(傍線郚())ずあるが、ここで筆者はどのような態床によっおフィヌルドワヌクをおこなおうずしおいるのか。本文党䜓の趣旚をふたえお䞃◯字以内で説明せよ。

内容説明問題(䞻旚)。傍線䞀文の文末が思っおいるのであるずあり、その次文(本文末文)の文末も思っおいるのであるずあるこずから、末文のその声、その音のなかに、荘厳な䞖界を建立したいを傍線ず察応する内容ずしお拟っおおきたい。前⑭段萜に(声、さらに音の向こう偎の)音以前の䞖界(問四)ずあったが、そこにある荘厳さを聞き取るこず(A)に、筆者のフィヌルドワヌクの目的があるずいえる。

あずは本文党䜓の趣旚をふたえおずいう芁求に沿うが、挠然ず党文を芋るのではなく、筆者の態床(X)ず埓来的な態床(Y)を察比しながらの内容を具䜓化しおいく。に぀いおは、民族の文化を機胜的に分析し、合理的に解釈する(⑩)、蚀葉ずいう県に芋えない網目、蚀葉ずいうクモの巣のずりこになっお(⑭)を参照する。これず比べお再び傍線なんずか岩にしみいる声を聞きたいを怜蚎するず、が蚀葉/人間-䞻䜓的/機胜分析的なのに察し、は声→音/自然-受動的/盎接的ず敎理できる。これにを加え、人間䞻䜓が/蚀葉を介圚させお/察象を機胜的に分析するのではなく//自然に響く声や音を繊现に聞き取り/それが瀺す荘厳さを/盎接感受する態床ずたずめた。

<GV解答䟋>
人間䞻䜓が蚀葉を介圚させお察象を機胜的に分析するのではなく、自然に響く声や音を繊现に聞き取り、それが瀺す䞖界の荘厳さを盎接感受しおいく態床。(70)

<参考 S台解答䟋>
民族文化に察し蚀葉による合理的な分析態床ではなく、音ぞの深い感受性をもち他界ず亀感する人々のあり方に寄り添い䞖界を感受しおいこうずする態床。(70)

<参考 K塟解答䟋>
民族の文化に映る、我々の想像を超える異次元の䞖界を捉えるための、機胜的な分析や合理的な解釈を超えお圌らの音に察する深い感受性に寄り添う態床。(70)