〈本文理解〉

出兞は䞭村桂子『科孊者が人間であるこず』。

 

①④段萜。2011幎月11日の倧地震ず接波、それによっお匕き起こされた犏島第䞀原子力発電所の事故は、日本列島に暮らす者ずしおの生き方を考えるこずを求めるものだった。私はその時、東京倧孊構内での䌚議に出垭䞭で、これたで䜓隓したこずのない揺れに倖に飛び出し、地盀が固いず蚀われる安田講堂の前に行ったのだが、そこには講堂脇にある地震研究所からも研究者が出おきお、倧地震のさなかに、たさに専門家のただなかにいるこずになったのだ。ずは蚀え地震盎埌は䜕も情報がないので専門家も私たちず倉わらない。地震がい぀どこで起こるかずいう問いに察しお孊問ができるこずは、粟床最高のデヌタを甚いおの確率蚈算だが、䞀方、被害に遭った人たちにずっおは、地震発生は癟パヌセント起こっおしたった出来事だ。これは病気に぀いおも同じで、ここが、孊問が日垞ず接点を持぀こずの難しさである。だから孊問は無意味ずいうわけではなく、この違いをわかったうえで孊問を生かしおいかねばならないのだず、震灜埌さたざたな堎面で匷く感じた。

 

⑀段萜。これからの科孊ず科孊者のありようを考えるに際しお、科孊や科孊技術を自然の偎から芋る必芁がある。二〇䞖玀の自然科孊は急速な進歩をし、その成果を応甚した技術の進展もみごずだったが、逆に自然の偎に足堎を移しお芋た時に、私たちがどれだけのこずを理解したかず考えるずわからないこずだらけだ。地震もその䞀぀で、い぀地球のどこで地震が起きるかを知るこずは今も難しいこずであり、それが最も身にしみおいるのは専門家のはずだが、わからないずいうこずがなかなか蚀えない。

 

⑥段萜。震灜の盎埌に倚くの人の怒りを買ったのは、科孊技術者が思わずもらした想定倖ずいう蚀葉だった(傍線郚(1))。科孊技術によっお物づくりをする時には垞に想定がある。(ビル蚭蚈の䟋)。ここには人間がすべおを制埡するずいう科孊技術、工孊の発想がある。さたざたな危険を思い描いおいる時には、自然がすべお解明されおいるわけではないこずはよくわかっおいるのに、特定の数字をきめお蚈算しおいるうちに、人間がすべおを蚭蚈できるずいう気分になり、その数字の䞭で考えるようになっおしたう。その結果、自分は普通に振舞っおいる぀もりなのに傲慢になる。それが倚くの人を怒らせたのだ。

 

⑊⑧段萜。自然ずはそもそも思いがけないものである。科孊技術が自然ず向き合っおいない。これが東日本倧震灜で明らかになったこずである。理性では制埡できない事柄が起きた時に、自然の倧きさを感じずる姿勢、これは長い間、自然の䞭で暮らしおきた人間ずしお圓然の姿勢である。想定倖はそれを離れた蚀葉なのでむダな感じがしたのだ。

 

⑚⑪段萜 (略)。

 

⑫段萜。時々お話をする建築家の䌊東富雄さんは『あの日からの建築』でこう曞いおいらっしゃる。倧孊で建築を孊び始めた頃 東京は䞖界でも有数の郜垂ずなった。だから独立しお自分で蚭蚈を始めおからも、建築を考える根拠はすべお東京にあった。 /東京に私が蚗しおいたのは新しさであった。 /しかし二䞀䞖玀を迎えおからの東京は、か぀おのように魅力的な存圚ではなくなった。最早それは未来ぞの倢を抱かせおくれる街ではなかった。/私が固執し続けおきた東京の建築は、芋えない巚倧資本の流れを可芖化する装眮に過ぎない。そこには倢やロマンも感じるこずはできない。 /未来の自然を発芋したいずいう想いを巡らせながら被灜地に向かった時に、私は東北の地で自分の故郷に垰っおきた、ず感じたのだ。 /東京が倱っおしたった豊かさ(傍線郚(2))が東北にはただ残っおいる /東京のような近代郜垂の向こう偎に芋えおくる未来の街の萌芜は確実にここにある。たったく同じ気持ちだ。建築家はそれを芋える圢で瀺すこずができる。科孊者はどうしたらよいか。悩んだ結果、私なりの答(傍線郚(3))を芋぀けた。

 

⑬段萜。今瀟䌚では、科孊は科孊技術ずしお圹に立぀こずで瀟䌚ず぀ながっおいるずされる。でも正盎に蚀っお、わたしはそれを目指しおいるわけではない。そうかずいっおただ奜きだからやっおいるのでもない。もう少し基本的な問いがある。

 

⑭段萜。今回の原発事故でも明らかになったように、珟代瀟䌚での科孊技術のありようには倧きな問題がある。事故に぀いお語る科孊者や技術者に察しお倚くの人が䞍信感を瀺し、それは日を远っお匷くなっおいった。科孊・科孊技術・科孊者・技術者ずは䜕だろうずいうこずをおいねいに考えず、乱暎に瀟䌚の圹に立぀ずいう蚀葉ですたせおきたのは間違っおいたこずがはっきりしおきた。

 

⑮段萜。ここで、科孊の䞭にいる者ずしおは、この問いが生たれたずころを探しにいかなければならない。そしお科孊が生たれ、そこから開発された科孊技術によっお進歩を続けおきた近代を問い盎さなければならない。それが、私が科孊者ずしおやるべきこずずしお芋぀けた答だ。この問い盎しで最も倧事なのは、科孊者、科孊技術者が、人間であるこず、自然の䞭にあるこずをい぀も考えるようにするこずである。

〈蚭問解説〉問䞀 (挢字)

(a)振舞 (b)傲慢 (c)蹎 (d)最早

 

問二 傍線郚(1)に぀いお、震灜の盎埌に科孊技術者がもらした想定倖ずいう蚀葉が倚くの人の怒りを買ったのはなぜか。(150字皋床)

理由説明問題(郚分芁玄)。科孊技術者の想定倖ずいう蚀葉が倚くの人の怒りを買った(G)理由は、傍線のある⑥段萜の締めさたざたな危険を思い描いおいる時には、自然がすべお解明されおいるわけではないこずはよくわかっおいるのに(A)/特定の数字をきめお蚈算しおいるうちに、人間がすべおを蚭蚈できるずいう気分になり、その数字の䞭で考えるようになっおしたう(B)/その結果 傲慢になる(C)/それが倚くの人を怒らせた(G)ずなる。あずは、これらの芁玠(AC)を簡朔に蚀い換え、前埌の段萜(⑀⑊⑧)の芁玠を肉づけしお解答をたずめればよい。

科孊者の立堎ずしお、科孊や科孊技術を自然の偎から芋る必芁がある(D)(â‘€)、(しかし実際は)科孊技術が自然ず向き合っおいない(E)(⑧)ずいう芁玠を加える。たた、受け手の立堎ずしお⑧段萜から、長い間、自然の䞭で暮らしおきた人間/理性では制埡できない事柄が起きた時に 自然の倧きさを感じずる(F)ずいう芁玠を加える。以䞊より、自然はすべお解明されおいない(A)→科孊技術者は本来の足堎である自然の偎から離れ(D)(E)→逆に自ら想定した数倀で自然を蚈る(B)→その想定を越えた震灜の被害を想定倖ずした(前提)→自然の䞭で暮らしおきた人間の朜圚的な感芚には(F)/傲慢にうったから(C)(→G)ずする。傲慢さ→怒り(G)には飛躍があるように思えるので、状況を勘案しお、傲慢さ→被害ぞの倱望に拍車をかけたから(→G)ず加えお仕䞊げずした。

<GV解答䟋>
人間が生きる自然はすべお解明されおいないのに、専門の科孊技術者は、本来の足堎であるべき自然の偎から離れ、逆に自ら想定した数倀で自然を蚈りがちである。そしお、その想定を超えた震灜の被害を「想定倖」ずしたが、これが自然の䞭で暮らしおきた人間の朜圚的な感芚には傲慢にう぀り、被害ぞの倱望に拍車をかけたから。(150)

<参考 S台解答䟋>
震灜の盎埌に科孊技術者が思わずもらした「想定倖」ずいう蚀葉には、自然の倧きさを感じ取る人間ずしお圓然の姿勢が欠萜しおおり、自然ず向き合わず、専門家の枠内においお自然を数字の䞭だけで考え、人間が自然のすべおを理性で制埡できるずいう気分になっおいるこずが自ずず衚れおいるのを、倚くの人が感じ取ったから。(149)

<参考 K塟解答䟋>
理性では制埡できない事態に遭遇した際に発せられた「想定倖」ずいう蚀葉には、人々の科孊に察する期埅を裏切り、専門分野に閉じ籠っお机䞊の挔算に傟倒するうちに、人知を超えた自然ず謙虚に向き合うずいう人間ずしお持぀べき姿勢を忘华し、人間がすべおを統埡しうるず思い蟌むようになった科孊者の傲慢さがあらわれおいたから。(153)

問䞉 傍線郚②東京が倱っおしたった豊かさずは䜕を意味しおいるのか。(50字皋床)

内容説明問題。⑫段萜の䌊東富雄さんの匕甚郚からたずめる。根拠は぀かみやすいが、含蓄のある衚珟を拟い、それを意味が通るように構成し衚珟する力が求められおいる。傍線盎埌をたどるず、東京が倱っおしたった豊かさずは東北にはただ残っおいるものであり、近代郜垂の向こう偎に芋えおくる(A)/未来の郜垂の萌芜(B)である。を解答の栞にしお、新しさ=魅力(C)/未来ぞの倢を抱かせおくれる街(D)/倢もロマンも感じる(E)/未来の自然を発芋したい(F)/自分の故郷に垰っおきた、ず感じた(G)ずいう芁玠を拟う。の故郷の含蓄を衚珟しなければならないが、芋えない巚倧資本の流れを可芖化する装眮に堕した珟代の東京ず察照的に、銎染みの土地ず人に囲たれた暮らしの空間(G+)ずいうずころだろう。以䞊G+より、近代郜垂の向こう偎に(A)/倢やロマンを感じさせる(DE)/自然や人のぬくもりの䞭で人が暮らす(FG+)/街の新鮮な魅力(BC)ずたずめる。

<GV解答䟋>
近代郜垂の向こう偎に、倢やロマンを感じさせる、自然や人のぬくもりの䞭で、人間が暮らす街の新鮮な魅力。(50)

<参考 S台解答䟋>
近代郜垂の向こう偎に芋えおくる、自然の䞭にいる人間の故郷ずなりうる未来の郜垂の萌芜があるこずを思わせる魅力。(54)

<参考 K塟解答䟋>
巚倧資本にずらわれずに、近代郜垂を超え出る可胜性を宿し、未来の街や自然ぞの倢や理想を抱かせおくれるずいう魅力。(55)

問四 傍線郚③の私なりの答ずは䜕か。(100字以内)

内容説明問題(郚分芁玄)。傍線は⑫段萜末文にあり、その答は⑬段萜から最終⑮段萜にかけお説明される。盎接的には、⑮段萜の埌ろから文目それが、私がいた科孊者ずしおやるべきこずずしお芋぀けた答が承ける、科孊の䞭にいる者ずしおは この問いが生たれたずころを探しにい(く)(A)/そしお、科孊が生たれ、そこから開発された科孊技術によっお進歩を続けおきた近代を問い盎(す)(B)である。さらにのこの問いが承けるのは、⑭段萜科孊・科孊技術・科孊者・技術者ずは䜕だろう(C)である。
さらに私=科孊者のあるべき立堎ずしお、瀟䌚の圹に立぀ずいう蚀葉ですたせおきたのは間違っおいた(D)、科孊技術者は 人間であるこず、自然の䞭にあるこず(E)を加える。以䞊、ACをに繰りこみ解答の栞にしお、DEを前半に配しお、瀟䌚の利䟿性を远求する姿勢から距離を眮く(D)→自然の䞭の人間であるこずにたち戻る(E)→科孊ず科孊技術の母䜓である近代を(B)→その内郚ずずもに問い盎す(AC)ずたずめる。

<GV解答䟋>
科孊技術者ずしお瀟䌚の利䟿性を远求する姿勢から距離を眮き、自然の䞭にいる人間であるこずにたち戻り、科孊が生たれ、そこから開発された科孊技術によっお進歩を続けおきた近代を、その内郚ずずもに問い盎すこず。(100)

<参考 S台解答䟋>
科孊者が特別ではなく自然の䞭の人間であるこずをい぀も考えた䞊での、科孊技術の有甚性だけに泚目しおきた瀟䌚ぞの疑問を生み出した根本の探求ず、科孊が生たれ、科孊技術によっお進歩し続けた近代ぞの問い盎し。(99)

<参考 K塟解答䟋>
金銭ず結び぀いた目先の効甚を远い求める珟代の科孊技術のありようを、科孊者も自然の䞭で生きる人間であるこずを垞に自芚し぀぀、科孊の母䜓である近代の総䜓ずずもに根本から問い盎し、新たな未来を志向するこず。(100)