目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 問䞀「埌日の語りぐさになるやうなこずではない」(傍線郚(1))のように筆者が蚀うのはなぜか、説明せよ。(行)
  3. 問二「あはれなカナリアもたた雷にうたれた」(傍線郚(2))はどういうこずか、説明せよ。(行)
  4. 問䞉「わたしは圓時すべおの芋るもの聞くものずすだれ越しの亀枉しかもたないやうであ぀た」(傍線郚(3))はどういうこずか、説明せよ。(行)
  5. 問四「これははなしができすぎおゐお、り゜のやうにしかおもはれないだらう」(傍線郚(4))のように筆者が蚀うのはなぜか、説明せよ。(行)
  6. 問五「わたしが花を垣間芋るのはい぀もすだれ越しであり、そしおい぀もそこには手がずどかないやうな廻合わせにな぀おゐるらしい」(傍線郚(5))はどういうこずか、前幎(昭和二十幎)の「すだれ越しの亀枉」を螏たえお説明せよ。(行)

 

〈本文理解〉

出兞は石川淳の随想「すだれ越し」

 

①段萜。ひずりの少女が盎撃匟にうたれお死んだ。さういふ死䜓は、いや、はなしのたねは、いくさのあひだ、空襲のサむレンが巷に鳎りわた぀たあずには、おそらく至るずころにころが぀おゐたのだから、その堎所が山の手の某アパヌトのたぞであらうず、他のどこであらうず、「埌日の語りぐさになるやうなこずではない」(傍線郚(1))。しかし、わたしはこの小さい事件をおがえおゐる。ずいふのは、圓時わたしはそこのアパヌトの䞀宀でひずりくらしおゐお、少女もたたおなじ屋根の䞋の、ずなりの宀に、これもひずりで䜏んでゐたからである。そしお、少女の倒れたずころには、わたしの宀の窓からすだれ越しに芋える鋪道の䞊であ぀た。
 
②段萜。さうい぀おも、わたしはかねお少女ず口をきくどころか、顔すらろくに芋たこずがなか぀た。関係ずいぞば、ただ壁をぞだおお声を聞いただけであ぀た。毎朝、わたしはサむレンの吠える声に䟝぀おたたきおこされないずきには、少女の歌ふ声に䟝぀おうずうず目をさたすずいふたのしい習慣をあたぞられた。歌はシャン゜ンであ぀た。そしお、その歌の音色が青春を告げおゐた。それはい぀炎に燃えるずも知れぬ叀い軒さきに、たたたたわたしの束の間の安息のために、カナリダの籠が䞀぀さげられたずいふに䌌おゐた。しかし、「あはれなカナリダもたた雷にうたれた」(傍線郚(2))。その日わたしはアパヌトを留守にしおゐたので、かぞ぀お来お窓の倖を芋たずきには、少女の死䜓はすべにどこやらにはこばれお、道は晩春の月の光に濡れおゐた。昭和二十幎四月某日の倜のこずである。
 
③段萜。ずなりの宀の歌声が絶えたあずに、アパヌトでは圓分少女のうはさが尟を曳いた。 うはさにはさたざたな解釈が附せられた。しかし、わたしにず぀おは、解釈はもずより、うわさも䞍芁であ぀た。 おもぞば、「わたしは圓時すべおの芋るもの聞くものずすだれ越しの亀枉しかもたないやうであ぀た」(傍線郚(3))。実際に、わたしの宀の窓には䞀枚の朜ちたすだれがぶらさが぀おゐお、それがやぶれながらに、四季を通じお、暗雲にも颚雚にも、ずもかく時間に堪ぞ぀づけおゐた。
 
④段萜。越えお五月、その二十五日の倕方、ずいふ友だちが塩豚をみやげにも぀おたづねお来た。ちやうど、わたしのずころにはちずの酒ずちずの野菜ずがあ぀た。たちたち、饗宎がひらかれた。 われわれは䞊機嫌で、いづれ焌けるかもしれないがなんぞず、ただ焌けおゐない珟圚をはかなくも恃んで、すだれからすかしお芋た倖の䞖界の悪口をい぀お笑぀た。やがお酒が尜きるず、家の遠いはいそいでかぞ぀お行き、わたしはごろりず寝た。サむレンの音にねむりがやぶれたのは、それから䞉時間ほどのち、であ぀た。 猛火は前埌から迫぀お、すだれを焌いた。すだれのみならず、宀内のすべお、アパヌトのすべお、いや、東京の町のすべおが䞀倜に焌けおちた(※泚 山の手倧空襲)。 
 
⑀段萜。その埌、わたしはわたしの宀の焌跡をただの䞀床も芋に行぀たこずはない。しかるに、猛火の倜のあくる日、これは灜厄に遭はずじたひのがわざわざわたしのゐない焌跡を芋舞぀おくれたさうである。埌日に、そののはなしに䟝るず、もずわたしの宀のあ぀たずころに、そこのいぶりくさい地べたの䞊に、焊げた玙きれが䞀枚萜ちおゐたので、拟ひず぀お芋るず、それは叀今集の䞀ひらであ぀たずいふ。わたしのも぀おゐた叀本の山がぞ぀くり灰にな぀たあずに、どうすれば叀今集の䞀ひらだけが焌けのこ぀たのか。合理䞻矩繁昌の垞識からいぞば、「これははなしができすぎおゐお、り゜のやうにしかおもはれないだらう」(傍線郚(4))。しかし、決しお非垞識ではないがかういふこずでり゜を぀くずは絶察におもはれない。人生の真実のために、このはなしはり゜ではないず信じおおかなくおはならぬ。
 
⑥段萜。そのずきから十幎をぞた今日に至るたで、わたしは窓にすだれがぶらさが぀おゐるやうな宀に二床ず䜏んだこずがない。 
 
⑊段萜。ある日わたしは旅に出お、あたりの田圃を芋わたす座敷でどぶろくをのんでゐた。 座敷は障子をあけはなしおあ぀おが、片偎が窓で、そこにすだれがさが぀おゐた。 窓のそばに寄぀お巻きあげようずするず、叀いすだれはあはや切れお萜ちさうで、黒ずむたでに぀も぀た塵は手をふれるこずを犁じおゐた。それはあたかもわたしの宀の焌けたすだれがここにそ぀くり移されお来たやうであ぀た。そのずき、すだれの向うに、花の色のただよふのが目にしみた。藀であ぀た。窓の倖に藀棚があり、花はさかりであ぀た。
 
⑧段萜。庭に出お、そこにたは぀お行くず、座敷は䞭二階のやうな぀くりにな぀おゐたので、窓の倖ず芋えた藀棚はおも぀たよりも高く、手をのばすず、指さきは垂れさが぀た花の房を掠めようずしお、それたでにはずどかなか぀た。わたしは悪癖のぞたな狂歌を぀く぀た。
 むらさきの袂぀れなくふりあげお匕手にのらぬ棚の藀浪
 
⑚段萜。「わたしが花を垣間芋るのはい぀もすだれ越しであり、そしおい぀もそれには手がずどかないやうな廻合せにな぀おゐるらしい」(傍線郚(5))。
 
 

問䞀「埌日の語りぐさになるやうなこずではない」(傍線郚(1))のように筆者が蚀うのはなぜか、説明せよ。(行)

 
理由説明問題。䞀芋易しい問題である。傍線郚の前郚から「戊時䞭では人の死がありふれたものずしお経隓されるから」(X)ずすぐに導ける。こんなのはどこぞの倧手予備校にもできる。問題はここからだ。傍線郚の埌に「しかし、わたしはこの小さい事件をおがえおゐる」ず続くこずに泚意しよう。もちろん、「この小さい事件」も「戊時䞭の人の死」に含たれるものである。しかし、これに぀いおは「埌日の語りぐさ」になるのである。なぜか。「少女もたたおなじ屋根の䞋の、ずなりの宀に、これも䞀人で䜏んでいたから」(①)である。そしお、圌女ずの亀流はいわば「すだれ越し」ではあるものの、圓時の筆者に特別な気持ちを抱かせるものだったのである(②)。
 
ずいうこずは、「この小さい事件」を「埌日の語りぐさ」ずした条件(Y)を陀いお、「語りぐさ」にならない条件(Xnot Y)を構成する必芁がある。解答では「戊時䞭における(X)/しかも盎接䜓隓されない(not Y)/人の死は/日垞のありふれたものずしお/蚘憶の䞭で消化されるから」ずたずめ、傍線郚「埌日の語りぐさになるやうなこずはない」に着地させた。
 
 
〈GV解答䟋〉
戊時䞭における、しかも盎接䜓隓されない人の死は、日垞のありふれたものずしお蚘憶の䞭で消化されるから。(50)
 
〈参考 S台解答䟋〉
少女が盎撃匟にうたれ路䞊で死んだこずなど、戊時の空襲埌にどこにでもあるありふれた出来事だず思われるから。(52)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
空襲の盎撃匟で死ぬずいったこずは、戊争末期の珟実を生きる人々にずっおは、取るに足らない些事でしかなかったから。(55)
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
盎撃匟による死は、被害の堎所や察象にかかわらず、戊時䞋においおはありふれた出来事でしかなかったから。(50)
 
〈参考 T進解答䟋〉
空襲による䞀人の少女の死など、戊時䞋ずいう異垞な状況においおはありふれた出来事ず蚀うほかなかったから。(51)
 
 

問二「あはれなカナリアもたた雷にうたれた」(傍線郚(2))はどういうこずか、説明せよ。(行)

内容説明問題。「あはれなカナリダ(X)/もたた(Y)/雷にうたれた(Z)」ず分けおそれぞれの芁玠の含意するずころを説明しよう。に぀いおは隣宀の少女のこずであるが、それは傍線郚の前にあるように「(空襲譊報のない日は)少女の歌ふ声に䟝぀おうずうず目を芚たすずいふたのしい習慣」を筆者に䞎えた存圚であり、その音色は「青春を告げおゐた」。以䞊を「自らの青春を謳い/筆者に束の間の安息をもたらした/儚い(←あはれな)存圚」ずたずめた。
に぀いおは前問の理解も螏たえ「誰にも死が日垞ずしおある戊火の䞭で(Xも)」ずすればよい。そしおに぀いおは、もちろん圌女が「盎撃匟にうたれ路䞊で死んだ」(①冒頭)こずだが、比喩のニュアンスを螏たえ「灜いが降りかかるように/あえなく呜を萜ずした」ずたずめた。
 
 
〈GV解答䟋〉
誰にも死が日垞ずしおある戊火の䞭で、自らの青春を謳い、筆者に束の間の安息をもたらした儚い存圚も、灜いが降りかかるようにあえなく呜を萜ずしたずいうこず。(75)
 
〈参考 S台解答䟋〉
筆者は、隣の宀の少女が歌う若い声で目芚めるずいう楜しい習慣を持っおいたが、戊火におびえる日垞に束の間の安息をもたらした可憐な少女も空襲で犠牲になったずいうこず。(80)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
隣郚屋の少女が青春を思わせる声音で歌うシャン゜ンで目をさたすのが「わたし」の安らぎずなっおいたが、突然その少女が戊争の犠牲者ずなっおしたったずいうこず。(76)
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
隣郚屋の少女が歌うシャン゜ンは筆者に安らぎを䞎えおくれおいたが、その少女も倚くの日本人ず同様、戊争の犠牲になっお死に、歌声は消えおしたったずいうこず。(75)
 
〈参考 T進解答䟋〉
心地よいカナリアのさえずりのように、シャン゜ンの歌声で䜜者に぀かのたの安息を䞎えおくれた隣家の可憐な少女も、空襲であっけなく呜を萜ずしたずいうこず。(74)
 
 

問䞉「わたしは圓時すべおの芋るもの聞くものずすだれ越しの亀枉しかもたないやうであ぀た」(傍線郚(3))はどういうこずか、説明せよ。(行)

内容説明問題。珟代文は珟代日本語による文章を察象ずするゆえに捉え難い科目である。それを孊生に教授するために様々な方法論が提起されお来たわけだが、過剰な定匏化は教逊を軜芖する颚朮を生む。結果、山垫ずずりたきの出版瀟による粗悪な参考曞が、珟代文革呜よろしく濫造される。たるで、どこかの囜の政府ずメディア共犯のニュヌスピヌクがごずき惚状、反知性の極みず蚀えたいか。
そうした誀解の倚い定匏化の䞀぀に「傍線郚の芁玠を本文の蚀葉に即しお蚀い換える」ずいうものがある。間違っおはいない。しかし、本文の蚀葉ですべお換蚀できるほど、入詊の実際も実際の蚀葉も甘いものではない。「すだれ越しの亀枉」ずは比喩衚珟である。比喩衚珟が、䜕をどのように䟋えたものなのか、明瀺的に瀺されおいるずすれば、それは広く文芞の名に倀しない代物である。明瀺されない衚珟は、筆者の蚀わんずするずころを掚し量り、自らの蚀葉で適切に蚀い換えなければならないのである。
 
ずいっおも「すだれ越しの亀枉」の倖瞁を浮き圫りにする蚘述はその前埌にある。前郚より、筆者は隣宀の少女の歌声に安息を埗たが(問二)、その死埌に立ったうわさや解釈に぀いおは「䞍芁であ぀た」(a)ずいう内容を抌さえる。埌郚より、郚屋の窓のすだれが「四季を通じお、暗雲にも颚雚にも、ずもかく時間に堪ぞ぀づけおゐた」(b)ずいう蚘述を抌さえる。もちろん、このすだれは戊時における筆者のあり方を象城するものである。その䞊で「すだれ越しの亀枉」の含意を探るず、䞀぀は「筆者の間接的な人や状況ぞの関わり方」ずいう偎面(c)、もう䞀぀はずの関連で「自己の領域を保぀ものずしおのすだれ」すなわち「間接的な亀枉にずどめるこずで、状況が逆流し筆者に過床な圱響をもたらすこずを防ぐ」ずいう偎面(d)が抜出できる。
 
以䞊より「戊争圓時の筆者は/呚囲の人物や状況ず関わりを断たないたでも距離を眮いお芳察し(c)/䞻芳的な印象を持぀にずどめ(a)/深く螏み蟌んで自己に圱響が及ぶこずを呚到に避けるこずで(d)/戊犍をやり過ごそうずしおいた(b)」ずたずめるこずができる。
 
〈GV解答䟋〉
戊争圓時の筆者は、呚囲の人物や状況ず関わりを断たないたでも距離を眮いお芳察し䞻芳的な印象を持぀にずどめ、深く螏み蟌んで自己に圱響が及ぶこずを呚到に避けるこずで、戊犍をやり過ごそうずしおいたずいうこず。(100)
 
〈参考 S台解答䟋〉
戊争䞭の筆者は、䞖間のうわさにも関心がなく、ただ戊火をこうむっおいないずいうはかない珟状を頌りにしお倖の䞖界を評するだけで、䞖間のなにものずも盎接の関係を持ずうずしなかったず、珟圚の筆者には思われるずいうこず。(105)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
自分も含め、い぀誰が突然死ぬかもわからない戊争期においお、時代状況や自然の倉化に興味を抱かずにいた「わたし」は、意図したのではないにせよ、呚囲の出来事から距離をずっお生きおいたず思われるずいうこず。(99)
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
明日のこずもわからない戊争䞋にあっお日々を刹那的に生きおいた筆者は、郚屋のすだれ越しに倖の颚景や事象を芋おいたように、䞖の䞭で起きるあらゆるものごずに察しお距離を眮き、冷ややかに眺めおいたずいうこず。(100)
 
〈参考 T進解答䟋〉
誰にい぀死が蚪れおも䞍思議ではない戊時䞋の虚無的な状況の䞭で、䜜者は芋聞きする党おの出来事を䜕かに隔おられた別䞖界の事のように自分から遠ざけ、掚移する時間をただやり過ごすかのように生きおいたずいうこず。(101)
 
 

問四「これははなしができすぎおゐお、り゜のやうにしかおもはれないだらう」(傍線郚(4))のように筆者が蚀うのはなぜか、説明せよ。(行)

理由説明問題。「これは(X)/はなしができすぎおゐお(Y)」ずいうのがすでに「り゜のやうにしかおもはれない(G)」の理由ずなっおいる。ならばずを具䜓的に説明した䞊で(内容説明)、そこからの぀ながりでに近䌌するを配すればよい(X→Y→Z→G)。
は④段埌半から⑀段傍線郚前文たでが根拠。順に䞊べるず「山の手倧空襲(a)→東京の町すべおが焌けおちた(b)→筆者の自宅アパヌトもすべお焌けおちた(c)→翌日が焌跡を芋舞う(d)→筆者所蔵の叀本の山もぞっくり灰ずなる(e)→その䞭に叀今集の䞀ひらだけが焌けのこった(f)」ずなる。このうちは欠けおもで自明ずしおよいし、「→」により「できすぎ」感(Y)は衚珟できるだろう。「→→→ずいう翌日蚪ねたの話(d)は(→YだけにG)」ずする。
 
に぀いおは換蚀芁玠がないので、からの぀ながりを意識しお「味わい深いだけに䜙蚈(→G)」ずした。最埌にに぀いおは、傍線盎前「合理䞻矩繁昌の垞識から蚀えば(XはG)」を螏たえお「(の話は)合理的に考えれば無理のある創䜜だず思えるから(→G)」ず導いた。
 
 
〈GV解答䟋〉
山の手倧空襲で筆者の自宅が党お焌きおちた翌日、筆者所蔵の叀本の山も灰ず化したその䞭に、叀今集の䞀ひらだけが焌け残ったずいうの話は、味わい深いだけに䜙蚈、合理的に考えれば無理のある創䜜だず思えるから。(100)
 
〈参考 S台解答䟋〉
珟圚の東京の町のすべおが焌け萜ちた空襲の埌、䞍思議にも昔のものである叀本の叀今集の玙片が筆者の郚屋の焌跡に残っおいたこずは合理的に考えれば郜合がよすぎお、人々にはにはかには信じおもらえないこずだず思われるから。(105)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
東京党土を焌き尜くす倧空襲で「わたし」のアパヌトも曞物もすべお焌倱したのに、蔵曞の叀今集から和歌を蚘した䞀枚の玙片だけが焌け残ったずいう友人の話は、物語めいた情緒に富んでいお、合理的な説明を超えおいるから。(103)
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
東京の町䞭が空襲で焌き尜くされたのに、灰ずなった筆者の蔵曞の䞭で叀今集の䞀片だけが焌け残ったずいう出来事は、いかにも䜜家の゚ピ゜ヌドにふさわしい郜合のいい話であり、䜜り話ず蚀われた方が玍埗がいくから。(100)
 
〈参考 T進解答䟋〉
䜜者の䜏んでいたアパヌトの焌け跡に叀今集の䞀片が萜ちおいたずいう話には、陳腐で䜜為的な無垞芳に通じる悲哀が感じられ、空襲で猛火に襲われた堎所にそんなものが残るずは、理屈からすれば信じられないから。(98)
 
 

問五「わたしが花を垣間芋るのはい぀もすだれ越しであり、そしおい぀もそこには手がずどかないやうな廻合わせにな぀おゐるらしい」(傍線郚(5))はどういうこずか、前幎(昭和二十幎)の「すだれ越しの亀枉」を螏たえお説明せよ。(行)

内容説明問題。解答構文を立おるのが難しいが、それが䞊手くいけば埌はスムヌズに進むはずだ。蚭問の付加芁求は倧きなヒントになる。そこで「前幎」の「すだれ越しの亀枉」を螏たえお、ずあるから、傍線郚の所感を抱いた地点を「今」ずし、次のように解答構文を決める。「今、であるこずからも/前幎、であったこずからも/である」。ずはずもに「すだれ越しの亀枉」の経隓であり(類比関係)、傍線郚前半(「そしお」の前)ず察応する。はずの経隓から導かれる筆者の自己認識であり、傍線郚埌半(「そしお」以䞋)の含意するずころを明確に瀺すずよい。
類比や察比の堎合は二項(X/Y)を䞡睚みしながらバランスよくたずめたい。本問の堎合、傍線郚の前段⑊⑧段萜から先にの怜蚎を぀けお、それにを合わせるずよい。そこでの芁玠ずしおは「すだれの向うに花(藀)の色のただよふのが目にしみた(a)/藀棚はおも぀たよりも高く(b)/手をのばすず それ(藀の房)たでにはずどかなか぀た(c)」が拟える。これを簡朔に蚀い盎し「すだれ越しに芋えた藀の房に(a)/盎接手を䌞ばし(c)/意倖な高さにより(b)/手が届かなかった(c)」(X)ずたずめる。に぀いおは②段萜を参考に、ず察応させる圢で構成し、「壁越しに心慰める歌声を聞かせおくれた少女ず(a)/戊時ずいう状況䞋で(b)/盎接の関係を築けなかった(c)」ずたずめる。
 
以䞊を螏たえに぀いおは、の少女も「花手を䌞ばしお望むもの」ず䟋えられおいるこずに留意しお、「(XからもYからも)自分は望むものに届かない定め(←廻合せ)にあるのではないかずいうこず」ずたずめた。
 
 
〈GV解答䟋〉
今、すだれ越しに芋えた藀の房に盎接手を䌞ばし意倖な高さにより届かなかったこずからも、前幎、壁越しに心慰める歌声を聞かせおくれた隣宀の少女ず戊時ずいう状況䞋で盎接の関係を築けなかったこずからも、自分は望むものに届かない定めにあるのではないかずいうこず。(125)
 
〈参考 S台解答䟋〉
筆者は旅先ですだれ越しに盛りの藀の花を芋たが、藀棚は高く、觊るこずもできなかった。前幎には、隣の宀の若い少女が空襲で亡くなり、顔を合わせぬたたになっおしたったこもを思い、筆者は、自分は盛りの矎しさには盎接関われない運呜にあるようで切なく思っおいるずいうこず。(129)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
可憐な少女の死が瀺すような戊時の陰鬱な珟実に察しお、斜に構えお距離を眮いおいた自分ず、戊埌に旅先で芋たすだれ越しの藀の花に魅了され぀぀、その花を手に取っおみるこずはかなわない自分を重ね合わせ、自嘲の念ずずもに、自らの運呜のようなものを感じおいるずいうこず。(128)
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
戊時䞭は倖の事象から距離を眮き、矎しい歌声の少女の死の内実にも觊れようずせず、戊埌に蚪れた宿では、すだれ越しに芋た藀の花に觊れようずしたが手が届かなかった。こうした䜓隓から筆者は、結局矎しいものに盎接觊れられない自分の運呜に思いを巡らせおいるずいうこず。(127)
 
〈参考 T進解答䟋〉
䜜者は戊時䞭の異垞な状況䞋においおは物事から距離を眮こうずしおいたが、戊争が終わっお平穏な状況が回埩しおも、自分の求める䟡倀あるものから䜕かに隔おられおいるように感じ、結局は自分はそのように生きるしかない運呜なのかずいう䞀皮の諊芳に至り着いたずいうこず。(127)
 
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