傾向と対策

1/19時点での大学入試センターの平均点の中間集計によれば、45.89点である。直近10年間ではほとんどの年の平均点が50点前後(2015年を除く)であったことを考えると1Aの大幅難化の動きに比べると、2Bはやや難しめの年くらいの評価であろう。ただし、昨年の平均点が60点を超えていることから、昨年並みを想定していた受験生にとっては難しく感じたかもしれない。

 

試行調査の時から共通テストの平均点は5割を目指すとして、平均点6割を目指してきたセンター試験よりも難しくなるとのことだったので、それを踏まえると今後もこのくらいの難しさを想定しておく必要がある。

 

また、問題文が多く素早く問題の中で設定されている状況を整理しながら読み取り、必要な数学的な処理を行うことが求められており、時間内に解くのは中々難しい。詳細は各問題の分析の中で記すが、難易度や出題の形式ともに試行調査の頃から言われていた共通テストらしさが存分に出てきたように思われる。一筋縄ではいかない問題ばかりだが、普段から数学の教科書をじっくりと学び、公式の当てはめや解き方の暗記にとどめるのでなく、数学的に考える訓練を十分に積むことが求められている。

 

・第1問[1]について 珍しく図形と方程式がメインで出題され、三角関数は後半に用いる形になった。この問題のように1つの事柄に対して複数のアプローチから考えていく問題は今後も多く出題されると予想される。問題演習をしていく際には他の単元で学んだことを思い出しながら別解を考える訓練をしておきたい。

 

・第1問[2]について 前半部分の特殊な例について考察した事柄をもとに一般化する形で成り立つ関係式を推測し、その正誤を確かめる出題であった。こちらも共通テスト的な傾向といえる。どのような考え方のもとに一般化を図っているのか、読み取ることが必要だが、これも従来通りの問題演習の中では対策が難しい。しかしながら、教科書の中で数学的な概念を拡張していく際に行うことの多い考察でもあるため、教科書をじっくり学ぶことは有効な対策となる。(4)でこれまで考察して得られた結果を具体的な数値計算の中に当てはめて考察することも共通テストらしい傾向である。第4問の最後にも登場する。

 

・第2問について [1]3次関数のグラフと実数解の問題(微分の応用問題)、[2]2つの3次関数の囲む面積を求める問題(積分の応用問題)と2題に分かれた出題であった。

[1]に関して、(1)と(2)は従来のセンター試験対策の中でもよく取り扱われた形式の問題であるが、(3)は共通テストらしいと言えそうだ。y=f(x)とy=pの位置関係を考えることで実数解の個数について考察した後で、その逆として実数解の個数をもとにしてaの値の範囲を考えていくものとなっている。普段の学習の中でも問題で要求されていることを考察した後に条件をひっくり返して考えてみるような考察をしていくとよいだろう。[2]に関して、従来のセンター試験的な問題といえそうだ。積分の問題は毎年の傾向として計算量が多いので、素早くミスなく処理できるように問題演習を積みたい。

今回は微積分の問題は数式的な処理であったが、2021年の1Aの二次関数のような形で身近な事柄を題材にして最大最小を考察するような問題の出題も今後は予想されるので、しっかり対策をしておきたい。

 

・第3問は省略。

 

・第4問について 今年の問題で最も文章量が多く、複雑な設定を読み取るのに時間がかかるものであった。考察するための漸化式も誘導があるとはいえ、連立漸化式で面食らった受験生も多かったと思われる。

問題としては、与えられた歩行者と自転車の状況設定をxy平面上の直線の方程式の関係を考えることで考察していく形である。漸化式を通常の関数のように考えて問題を解いていくことに慣れていなかったり、2次試験には頻出であるが具体的な状況に関する考察をもとに一般化して漸化式を立式していくことに慣れていなかったりする受験生が多いことを考えるとやや高度な問題となっただろう。

とはいえ、共通テストがセンター試験よりも難しくなることを考えると、このようなやや高度な問題も今後は出題されるだろう。特に自然現象や社会的な事象の状況の変遷を捉えるのに漸化式は有用な道具であるので、今回のような漸化式を立式していくような問題はねらわれると思っておく方がよい。漸化式自体の解き方や様々な漸化式の応用に取り組んでおきたい。

ひと通り考察を進めた最後に具体的な状況を数式に当てはめて考えるものが出てくるが、これも共通テストらしいといえる。

 

・第5問について 円上の点の位置ベクトルを考える問題だが、図をもとに考えていくことが非常に重要となった。内積の値やベクトルの係数から、各々の点の場所が把握できるが、このようにベクトルの数式と図形時さの形状を考えていくことを普段から行なっているかどうかで、差がついた問題だったと思われる。(3)も会話文の中で誘導を与えてくれているが、その誘導に則り図形的に考えきれたかどうかが鍵となった。

図形を数式的に考えることでうまく処理できることがベクトルの魅力であるが、数式的な処理を行った後に、そこから得られた結果を図形的な把握に活かすことを普段の学習から行うことが求められる。複数の数学的な道具を組み合わせながら、得られた結果をもとに考えを更に深めていくべく考察対象を往復していくようなプロセスも共通テストらしいと言えるだろう。

 

数学科担当 玉城陽平