目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 〈蚭問解説〉
    問䞀「生掻の䞭にかかる虹の橋づめに埋たっおいる金の壺がわたしの文孊である」(傍線郚(1))はどのようなこずを蚀っおいるのか、説明せよ。(䞉行)
  3. 問二「芞術家にはこの皮の独創性は必芁ではない」(傍線郚(2))はどのようなこずを蚀っおいるのか、説明せよ。(䞉行)
  4. 問䞉　䜜者が本文䞭で甚いる「自然」はどういうものか、芞術家の関係を螏たえ、説明せよ。(䞉行)

 

〈本文理解〉

出兞は倧庭みな子の随想「創䜜」。倧庭みな子は小説家で、京倧お銎染みの「内向の䜜家」に含たれるこずもある。
 
①段萜。嵐にゆれ動いおいる朚や、波立っおいる海を芋お、あの朚のゆれ方はあたり良くないずか、波の圢がなっおいないずか批評する人はいない。同様に優れた䜜品は、䜜家の手぀きが芋えないたたに、読者をのめり蟌たせる。傑䜜は぀らなり合うものが動いお、吹く颚に䌌た音をたおる。
 
②段萜。創䜜ずいう蚀い方があるが、䜜家は䜕もないずころから䜕かを創り出すわけではない。自分の力で創り出すずいうよりは、思わず知らず、えたいの知れない力に抌されおそうなっおしたう時、その䜜品は比范的たずもなものである。
 
③段萜。たた、べ぀の蚀い方をすれば、創䜜ずは、䜕かを創り出すずいうよりは、そこにもずもず埋たっおいるものを掘り出す䜜業なのだ。もずもずそこにないものは、いくら䞀生懞呜掘っおも突き圓たらないし、䞋手な掘り方をすれば、像の圢が欠けたり壊れたりするこずもある。
 
④段萜。぀たり、自分の掘り圓おたい像はどこに埋たっおいるか、たた、どのような掘り方をすればよいのか、ずいうようなこずが、䜜家の䜜業なのだろう。
 
⑀段萜。わたしはい぀のころからか、文孊は、生掻の䞭にしか埋たっおいないず思うようになった。「生掻の䞭にかかる虹の橋づめに埋たっおいる金の壺がわたしの文孊である」(傍線郚(1))。
 
⑥段萜。恋人たちが茝く目ずバラ色の頬で埮笑むずき、圌らは虹の橋づめに立っおいるのだし、うづくたっおすすり泣く幌児の足の䞋にも金の壺は埋たっおいる。怒る人、闘う人、䞍思議な衝動にかられお立ちすくんでいる人、そうした人の背埌には虹の橋がかかっおいる。
 
⑊段萜。この人間瀟䌚で、蚀いたいこずを蚀えずに、口ごもっお生きおいる人びずが、䜕かのずきにふず掩らしおしたう蚀葉は無数の氎滎になり、倪陜の光が圓たるず虹の橋になるのだ。
 
⑧段萜。わたしは、生きおいるうちにめぐり䌚った人びずの呟いた蚀葉を拟い䞊げお、小説を曞いおいるから、めぐり䌚った人びずはわたしの文孊䞖界を築いおくれた恩人である。䜜品は自分の力で創り出すわけではないずは、そういうこずだ。
 
⑚段萜。自分を文孊の専門家だず思い蟌んでいる人たちの蚀葉は、ほずんど、わたしの心を打たない。 䞀玚の人は、自分のやっおいるこずを、自分の人生だず思い、話をするずきは、自分の人生の話をする。
 
⑩段萜。圌は、圌のたわりにうごめいおいるものをじっず芋぀め、「自然」の䞭にひそんでいるものを自分自身の䞭に芋぀けようずする。
 
⑪段萜。芞術家は独創的であらねばならない、ずいった蚀い方があるが、これは浅薄に䜿われやすい蚀葉である。たずえば、昌間眠っお、倜目ざめお仕事をするのを独創的だず思ったりする。それはただ、珍しい習性が、なんらかの理由で぀けられおしたっただけの話である。この習性をこっけいで悲劇的だず思うのは芞術家の感性だが、独創的だず思う人は、芞術家の玠材ずなるに適した人である。
 
⑫段萜。「芞術家にはこの皮の独創性は必芁ではない」(傍線郚(2))。必芁なのは「自然」が内包する生呜である。そこにある生呜を掘り出すのが芞術家で、芞術家は生呜を無から創り出すわけではない。
 
⑬段萜。わたしがただ䞖間に䜜品を発衚しおいないころ、そしお、わたしが文孊に぀いおひず蚀も語らないころ、わたしを「自然」から䜕かを掘り出すこずのできる人間ずしお扱っおくれた二、䞉の友人がいたが、そういう人たちは真正の芞術家だった。぀たり、圌らは、独自の䜜品䞖界ずいうべきものを持っおいた。「自然」を映した圌らの生掻そのものが芞術品だった。
 
⑭段萜。圌らの人生にた぀わる独特の衚珟の䞭には、それをそのたたテヌプにずっおおけば、立掟な文孊䜜品になるものがあった。そしお、わたしは今でもそれらの話を思い出しお、぀づり合わせお小説を曞いおいるに過ぎない。
 
⑮段萜。䜜家ずしお暮らし始めるず、人びずの䜕気ない蚀葉を聞く機䌚が少なくなったような気もしおいる。
 
⑯段萜。小説に曞いおもらいたくおする人の話や、曞かれたいずしお甚心しおいる人の話は、あたり面癜くないのが普通である。
 
⑰段萜。そういう話には、吹く颚の音がない。たた芋䞊げおも、決しお虹はかかっおいない。もちろん、金の壺も埋たっおいない。
 
 

〈蚭問解説〉
問䞀「生掻の䞭にかかる虹の橋づめに埋たっおいる金の壺がわたしの文孊である」(傍線郚(1))はどのようなこずを蚀っおいるのか、説明せよ。(䞉行)

内容説明問題。「筆者の考える文孊ずは〜」の圢で答えるずよい。「かかる虹の橋づめ(→橋のきわ)」「埋たっおいる金の壺」ずいう比喩衚珟を語矩ず文脈に即しお衚珟する力も問われおいる。
 
参照されるのは、傍線郚の埌、「虹の橋づめ」「金の壺」の具䜓䟋(⑥⑊)を挟んだ、⑧段萜冒頭「わたしは、生きおいるうちにめぐり䌚った人びずの呟いた蚀葉を拟い䞊げお、小説を曞いおいる(a)」。さらに⑥段萜の具䜓䟋で「虹の橋づめ(b)」ず「金の壺(c)」は䞊列関係になっおいるから、傍線郚の「〜橋づめに/埋たっおいる金の壺」ずいう栌関係は衚珟䞊の遊びず芋お、䞊列関係でたずめる。以䞊より、「筆者の考える文孊ずは/生掻の䞭でめぐり䌚う人々の䜕気ない蚀葉や態床を契機ずしお(a)/想像を広げたり(b)/真意を掘り䞋げたりした内から生たれる(c)/ものだずいうこず」ず解答した。
→「至高の珟代文/解法探究29」「. 自明性の蚀語化(比喩など)」参照
 
 
〈GV解答䟋〉
筆者の考える文孊ずは、生掻の䞭でめぐり䌚う人々の䜕気ない蚀葉や態床を契機ずしお、想像を広げたり、真意を掘り䞋げたりした内から生たれるものだずいうこず。(75)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
筆者にずっおの文孊ずは、暮らしにおける人々の折々の哀歓や蚀葉に衝き動かされ、その感応にふさわしい生きた衚珟を䞎え埗たずきに成り立぀ものであるずいうこず。(76)
 
〈参考 T進解答䟋〉
䜕げない日垞を生きる人々がふず垣間芋せた感情や、呟いた蚀葉の䞭から、生呜の茝きを芋぀けお拟い集めた玠材によっお、筆者の文孊䞖界は築かれおいるずいうこず。(76)
 
 

問二「芞術家にはこの皮の独創性は必芁ではない」(傍線郚(2))はどのようなこずを蚀っおいるのか、説明せよ。(䞉行)

内容説明問題。「ないある倉換」により「芞術家に必芁なのはである」ずたずめればよいが、内容説明(芁玠の換蚀)であり、「この皮の」ずいう指瀺語の明確化も必須であるから、䜵せお「この皮の独創性(X)」も具䜓化しお瀺す。
 
に぀いおは、「この皮の」ずいう指瀺語は広がりを蚱容する受け方ずなるので、盎前の⑪段萜(→芞術家に特異な習性(a))に加え、⑚段萜(→専門家ずしおの自負(b))の内容も螏たえる。に぀いおは、傍線郚盎埌の「必芁なのは「自然」が内包する生呜である(c)/そこにある生呜を掘り出すのが芞術家(d)」ず、⑩段萜「圌(䞀玚の人)は、圌のたわり(→生掻の䞭)にうごめいおいるものをじっず芋぀め(e)/「自然」の䞭にひそんでいるものを自分自身の䞭に芋぀けようずする(f)」を参照する。以䞊より、「芞術家に必芁なのは/生掻から離れお専門性を自負し(b)/特異な習性を気取るこずではなく(a)/生掻を通しお珟れる真実を(ce)/自らの内に発芋しお(f)/圢にしおいく姿勢だずいうこず(d)」ず解答した。
→「至高の珟代文/解法探究29」「20. ないある倉換」参照
 
 
〈GV解答䟋〉
芞術家に必芁なのは、生掻から離れお専門性を自負し特異な習性を気取るこずではなく、生掻を通しお珟れる真実を自らの内に発芋し圢にしおいく姿勢だずいうこず。(75)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
芞術家に求められるのは、他人ず異なる習性や専門家意識などではなく、人々の暮らしに宿る生の真盞を芋出す感性ず、それを損なわずに衚珟する力であるずいうこず。(76)
 
〈参考 T進解答䟋〉
芞術家に必芁なのは、独特の習性や専門家意識などではなく、生掻の䞭に埋もれおいる生呜の茝きを発芋し、独自の䞖界芳からそれらを衚珟する力だずいうこず。(73)
 
 

問䞉　䜜者が本文䞭で甚いる「自然」はどういうものか、芞術家の関係を螏たえ、説明せよ。(䞉行)

内容説明問題(䞻旚)。筆者が本文党䜓を通しお述べおいる「自然」の真意を語矩にも沿う圢で答える。たた「芞術家ずの関係」が明確に出るような圢匏で答える必芁がある。「芞術家は〜。(「自然」ずは)そうした芞術家にずっお〜」ずいうように、段階を螏んで答えるずよい。
 
たず筆者は、本文党䜓を通しお、「独創性」ずいう語に象城される䜜為的なあり方に吊定的である。最埌の二段萜「小説に曞いおもらいたくおする人の話や、曞かれたいずしお甚心しおいる人の話は、あたり面癜くないのが普通である。そういう話には、吹く颚の音がない 」が分かりやすい。ここでの「吹く颚の音がない」は、①段萜の「優れた䜜品は、䜜家の手぀きが芋えないたたに、読者をのめり蟌たせる。傑䜜は぀らなり合うものが動いお、吹く颚に䌌た音をたおる」ず察応しおいる。぀たり筆者は、芞術における過剰な䜜為性を排し、自然な衚出こそ傑䜜の条件だずするのである(a)。ここからするず、⑩段萜以降に蚘述される「自然」(「「自然」の䞭にひそんでいるものを自分自身の䞭に芋぀けようずする(→自分自身の䞭にも「自然」はある)」「「自然」を映した圌らの生掻(→圌らの䞭にも「自然」はある)」)も、「自然物」(近代以降の甚法)ずいうよりも「本性、事物のあるがたたの姿」ずいう語源に基づく意味合いが盞応しいずいうこずになろう(b)。
 
そこで改めお「芞術家」ず「自然」の関係ずは第䞀に「「自然」が内包する生呜/そこにある生呜を掘り出すのが芞術家(⑫)」ずあるように「芞術家」にずっお「自然」はその創䜜の源泉である(c)。たた「思わず知らず、えたいの知れない力に抌されおそうなっおしたう時、その䜜品は比范的たずもなものである(②)」「文孊は、生掻の䞭にしか埋たっおいない(â‘€)」「わたしは今でもそれらの話を思い出しお、぀づり合わせお小説を曞いおいるに過ぎない(⑭)」ずあるように、筆者の考える芞術(文孊)は、生掻の䞭から生たれ(d)、察象䟝存的なものである(e)。その意味で、「芞術家」にずっお察象のあるがたたの姿ずしおの「自然」は、その創䜜を動機づけるものでもある(f)。以䞊より、「芞術家は/生掻の䞭で(d)/察象に即しその力に委ねるこずで(e)/䜜為を超えた真の創䜜をなしうる(a)//そうした芞術家を動機づけ(f)/その創䜜の源泉ずなる(c)/察象のあるがたたの姿(b)」ず解答した。
→「至高の珟代文/解法探究29」「. 術語の語矩ぞの配慮」参照
 
 
〈GV解答䟋〉
芞術家は、生掻の䞭で察象に即しその力に委ねるこずで䜜為を超えた真の創䜜をなしうる。そうした芞術家を動機づけ、その創䜜の源泉ずなる察象のあるがたたの姿。(75)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
「自然」ずは、個々の人間の生きようそのものであり、そこに宿る生の真盞ずの感応を通しお芞術家を䜜品創造ぞず衝き動かす、芞術創造の基盀ずいうべきものである。(76)
 
〈参考 T進解答䟋〉
「自然」ずは、個々の日垞を生きる人々の、人生の集成であり、芞術家がそれを芋぀め、䞭に朜む生呜の茝きを掘り出し、独自の䜜品䞖界を構築する源泉ずなるもの。(75)
 
 
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