第1問 小問集合

(1)モーメント (2)熱サイクル (3)運動量と力学的エネルギーの保存 (4)ローレンツ力 (5)光電効果

いずれも基本的な内容であり、それぞれの現象についてしっかりとした理解をしていれば解答は容易であった。 しかし、複合的に判断して解答する設問が多く、表面的な暗記だけに頼った勉強では間違った方向で解答してしまい、出来たつもりでも間違っていた、という人も多かったかもしれない。 (2)は典型的な熱を仕事に変える熱機関ではなく、仕事を熱に変えるヒートポンプの熱サイクルであった。グラフの向きがよく見る時計回りではなく、半時計回りであることに気付かないといけない。 (4)は電荷の種類でローレンツ力の向きを決めるのは「電磁気」の分野で学ぶフレミングの左手の法則であるが、回転半径を決めるのは「力学」で学ぶ等速円運動の知識であった。それぞれの公式は覚えていても組み合わせて用いることが出来なければ、正解にはたどり着かない。 (5)は原子物理の勉強を始めるときに最初に学習する内容であるのでほとんどの人は正解できたと思われる。昨年はついに大問として出題された原子分野が、今回は小問としてこの問題だけの出題であった。最も学習量に差がつく分野なだけに、苦手な人は助かったかもしれない。 (1)はちょっとした計算があるが小学生でも答えられる問題、(3)は力学の基本とも言える運動量と力学的エネルギーの保存に関する問題であった。読み間違えなどせずにこの問題が出来ていないのであれば、物理基礎からの復習が必要である。

 

第2問

空気抵抗を伴う自由落下運動に関する考察、をテーマとする問題であった。 扱う現象としては決して珍しいものではない。しかし問われていることは、重力と空気抵抗がつりあって等速になる、という単純な結果のみではない。速度を時間経過とともに観測していくと、どういう変化をするのか。これにより、抵抗力は何に依存するとわかるのか。これを生徒と先生が会話しながら考察する、という問題であった。 数値計算の解答で指数が「0」となる意地悪な問題もあったが、理解を深めていたならば「0」以外は定性的に考えてもおかしいと判断出来たので自信を持って解答出来ただろう。またグラフからの考察は、日常の学習で実験結果をレポートとしてまとめるなどの経験があれば、明らかに違うものを消去していき正解を導けたであろう。

 

第3問

音源が等速円運動を行う、観測者が等速円運動を行う、それぞれについてのドップラー効果についての問題であった。今回の問題の中で最も容易な問題であり、物理を得意とする生徒であれば5分もかからずに解答出来たと思われる。物理の平均点が他科目と比べて高くなった原因の一つとなった問題であろう。 とはいえ、(1)の向心力のする仕事は他分野の内容であり、間違えやすい。ドップラー効果については公式を覚えて、類題を解いた経験があれば問題なかったであろう。最後の設問は図3、図4を組み合わせて答える問題なので正しい結果は理解出来ても、正確を導くことが出来なかったということがあるかもしれない。

 

第4問

コンデンサーの充電過程についての問題であった。(1)はガウスの法則を用いて電気容量を導く問題であり、仮にガウスの法則が使えなくても電気容量の公式から導けたであろう。(2)、(3)はグラフからの読み取りと計算で少々難しい内容であった。しかし、I -tグラフの面積が電気量であることは問題文で示唆しているし、原子核の半減期と同様に考えればよいことに気付ば解答出来る。最後の設問は考察問題であり、ヒントとなる部分もなく難しかった。安易に解答せず問題の問いかけをしっかりと考察すれば、グラフで微小近似していることから正解にたどり着けた。

 

今後の共通テストに向けての勉強について

物理を勉強するということは、物理現象の結果を覚えるのではなくその原因を考えること、そしてどこを変えると結果はどう変わるのか、を考えることである。また、共通テストが旧センター試験から変更した最も大きな特徴が、実際の人間の活動とのつながりを重視することである。その点を意識して勉強しないといけない。普段から身の回りの物理現象について注意深く観察し、その応用について考察する必要がある。

 

共通テストの内容と、大学個別試験の内容が異なるというわけではない。しかし、共通テストの特徴を普段から意識しておかないと本番で点数を伸ばすことはできない。物理共通テストは2年連続で理科教科で最も平均点が高かった。得点調整が行われるという事態には何らかの是正が入る可能性があるし、入るべきであろう。物理選択を決めたなら、来年以降は今年より難化するのは当然といった覚悟を決めて日々の勉強を頑張っていこう。