〈傾向〉
今年は長い論述もなく、標準的な難易度の問題であった。論述の量も少なく、例年よりは回答時間も短く済ませることができたのではないだろうか。 しかし、例年とは異なり計算過程を記述させる問題が出題されているため、不慣れな生徒は戸惑ったかもしれない。全大問に共通する傾向として、前半部分は穴埋めや単純な計算が多く、難易度が低めな問題が多かった。しかし、後半にはやや複雑な計算や、自身で対策を考える論述など時間のかかる問題が多かった。
〈大問1〉
1.1 抗体 2 B細胞 3 樹状細胞など 4 一次応答 5 二次応答 6 免疫記憶 7 予防接種
2. イ
3. ウ
4. 樹状細胞 マクロファージなど
5. 65×25×6=9750 9750通り
6. κ領域の組み合わせ 30×4=120 λ領域の組み合わせ 40×5=200 H鎖とL鎖の組み合わせ 9750×320=3120000通り
7. 欠失 置換
8. ウ
大問1は免疫に関する問題であった。免疫グロブリンの組み合わせに関する計算がやや複雑ではあるが、よく問題集などで取り上げられている問題なので正解したい。 問7は単純に考えられるとすぐに思い浮かぶと思うのだが、教科書や資料集にはかなり地味に記載されているだけなので知らなかった生徒も多いだろう。暗記ではなく考察で答えを導きたい問題だ。
〈大問2〉
1. 細胞内共生説
2. 1 e 2 e 3 f 4 d 5 a
3. (100-20×2)÷2=30
アデニンの割合は30%である
16万塩基対には32万塩基が含まれている 320000×0.3=96000塩基
4. 環状DNAでは複製起点から両方向にDNAが複製されるため 800×2=1600塩基/秒で複製が起きる。よって 160000÷1600=100秒
5. 1 ア 2 Ⅰ ベクター 2Ⅱ DNAリガーゼ
6. ミトコンドリアや葉緑体は雌性配偶子から遺伝する。花粉が野生の植物と受粉することを防ぐため、ABCモデルにおけるB遺伝子をノックアウトし、雄蕊を持たない遺伝子組み換え植物を作成する。
大問2は遺伝子分野に関する問題が多く出題された。もっとも難しいのは問6の記述問題だろう。遺伝子組み換え生物の遺伝子が外に広がらないようにするためには、花粉をなくせばいいという発想が必要である。それ以外は容易な問題が多かった印象だ。計算問題もよく問題集に取り上げられているもので、共通テストを乗り越えた生徒なら容易だったのではないだろうか。
〈大問3〉
1. 1温室効果 2外胚葉 3内胚葉 4相利共生 5生態系
2. (1) 6CO2+6H2O → C6H12O6+6O2 (2) 2 (3) 22 (4)光合成速度と呼吸速度が一致し、見かけ上二酸化炭素の出入りがなくなった状態
3. 解糖系 クエン酸回路 電子伝達系
4. 同一群体に由来するサンゴの断片は、遺伝的にほとんど差異がないクローンである。これにより、集団の遺伝的多様性が著しく低下し、病気などの撹乱に対しての抵抗性が弱く、個体数が急激に減少する可能性が考えられる。
大問3はサンゴを題材に光合成速度と生態系の問題が出題された。この大問でも難しいのは最後の論述だろう。遺伝的多様性の低下が撹乱への抵抗性を低下させることがわかっていれば論述できたと思う 。
〈大問4〉
1. 1種分化 2大進化 3小進化 4霊長類 5類人猿 6直立二足
2. イ
3. 1細菌ドメイン 2古細菌ドメイン 3真核生物ドメイン タンパク質の合成に関わるrRNA遺伝子はすべての生物で共通してみられる遺伝子であり、変異が少ないため
4. 適応放散
5. コケ植物 シダ植物 種子植物
大問4は進化と分類に関する問題であった。霊長類と類人猿の違いはやや難しめではあると思うが、前後の文章を読めば推察できるだろう。問3の論述問題はrRNAが全生物に共通であることと、生存に必須なため変異が少なく、より古くに分化した生物の分類に用いることが多いことがポイントであった。おそらくどちらか片方が書けていれば点数をもらえると思う。この問題は類題が少なく、苦戦した生徒が多いのではないだろうか。
〈今後の対策〉
琉大生物を解く上での対策は
1.生態系、進化、分類の分野は完璧にしておく
2.現象のバックグラウンドを理解する の2点につきます
まず、琉球大学では、生態系、進化、分類の分野は頻出です。この範囲は授業で習う時期が遅く、比較的苦手になっている方も多いと思います。ですが、毎年出るほど頻出なので苦手なまま挑むのは勿体無いです。生物を使用する学科は理学部、農学部の方が多いかと思います。生態系、進化、分類は生物学を専攻する生徒の多くが得意とする分野で、ライバルたちは高得点を取ってくるでしょう。負けないようにしっかりと対策する必要があります また、文字数の多い論述も出題されることが多いです。特に生態系や進化などの分野の論述では、その現象がなぜ起きているのか、起きることでどんな影響があるのか、周りの環境との相互作用は、など関連する情報まで頭に入れておくとこが必要です。例えば、今回の大問3の論述のように、遺伝子多様性の定義だけではなく、なぜ遺伝子多様性が必要なのかを理解していないと解けない問題です。
【GVの対策は?】
GVでは琉大対策として、生態系、進化、分類分野の論述問題を解くことはもちろん、琉球大学が頻出する亜熱帯の生態系や生物に関する知識を生徒とともに深めます。サンゴ礁の現状やサンゴ現象はなぜ起こっているか、悪役にされがちなオニヒトデを高校生物の視点で考えてみるなど、沖縄の身近な自然に対する知見を深めることでより琉球大学に特化した対策を行なっています。