目次
- <本文理解>
- 問一 (漢字の書き取り)
- 問二「刑の重さは、現に生じた実害の重さだけで決まるものではない」(傍線部(1))とあるが、それはなぜか、具体例や比喩的表現を用いずに、簡潔に説明せよ。(35字程度)
- 問三「犯罪ゆえにその行為者に加えられる国家的非難の形式」(傍線部(2))について、筆者はこの「刑罰」の定義について傍線部以降の部分で説明し、「形式」という語を七字でわかりやすく言い換えている。その箇所を抜き出せ。
- 問四「刑罰の内実ないしその本質は何かといえば、それは犯罪を理由とする「国家的非難」なのである」(傍線部(3))について、「刑罰の内実ないしその本質」は「犯罪を理由とする「国家的非難」」であるとはどういうことか、「内実」「本質」という語を用いずに、わかりやすく説明せよ。(70字程度)
- 問五「このような非難という意味の直接の受取り手(意味の伝達の宛先)は犯人自身であるとしても、犯人以外の一般市民もこれをメッセージとして受け取る」(傍線部(4))について、「犯人以外の一般市民もこれをメッセージとして受け取る」とはどういうことか、「これ」が指す内容や、「メッセージ」の具体的内容を明らかにしつつ、わかりやすく説明せよ。(70字程度)
- 問六「マクロの視点」(傍線部(5))・「ミクロの視点」(傍線部(6))について、筆者はそれぞれどのような視点をこのように表現しているのか、わかりやすく説明せよ。(100字程度)
- 問七「はたしてそれでよいのかがいま問われなければならない」(傍線部(7))について、筆者は何をどのような理由で問題視しているのか、本文全体の内容を踏まえてわかりやすく説明せよ。(100字程度)
〈本文理解〉
出典は井田良『死刑制度と刑罰理論ー死刑はなぜ問題なのか』
問一 (漢字の書き取り)
(a)代替 (b)抑止 (c)弁明
問二「刑の重さは、現に生じた実害の重さだけで決まるものではない」(傍線部(1))とあるが、それはなぜか、具体例や比喩的表現を用いずに、簡潔に説明せよ。(35字程度)
〈GV解答例〉
応報刑論において刑の重さは行為者の負う責任の程度により限定されるから。(35)
〈参考 K塾解答例〉
量刑は、法益の損失分だけでなく、現行法の規定により犯罪行為者個人が負う責任の重さの程度も考慮されるものだから。(55)
問三「犯罪ゆえにその行為者に加えられる国家的非難の形式」(傍線部(2))について、筆者はこの「刑罰」の定義について傍線部以降の部分で説明し、「形式」という語を七字でわかりやすく言い換えている。その箇所を抜き出せ。
〈答〉手段ないし方法
問四「刑罰の内実ないしその本質は何かといえば、それは犯罪を理由とする「国家的非難」なのである」(傍線部(3))について、「刑罰の内実ないしその本質」は「犯罪を理由とする「国家的非難」」であるとはどういうことか、「内実」「本質」という語を用いずに、わかりやすく説明せよ。(70字程度)
〈GV解答例〉
いかなる手段を講じるかを問わず刑罰を他の行為と分ける目的となるものは、国家による刑を科す者に対しての非難のメッセージの伝達であるということ。(70)
〈参考 K塾解答例〉
刑罰の意義は、国家の定める現行法の下で犯罪行為者に非難が科され、行為者もその意味を受け止めて将来の違法行為を回避することが望まれる点にこそ見出されるということ。(80)
問五「このような非難という意味の直接の受取り手(意味の伝達の宛先)は犯人自身であるとしても、犯人以外の一般市民もこれをメッセージとして受け取る」(傍線部(4))について、「犯人以外の一般市民もこれをメッセージとして受け取る」とはどういうことか、「これ」が指す内容や、「メッセージ」の具体的内容を明らかにしつつ、わかりやすく説明せよ。(70字程度)
〈GV解答例〉
犯人と同様の罪を犯しうる潜在的行為者は、刑罰を通しての国家による非難の告知を、自らにも適用されうるものとして理解し行動を抑制するということ。(70)
〈参考 K塾解答例〉
犯罪行為者に対する非難の告知を、潜在的に罪を犯しかねない不特定多数の市民が自身への戒めの意味として受け止めることで、犯罪行為が未然に防止される効果が生まれるということ。(84)
問六「マクロの視点」(傍線部(5))・「ミクロの視点」(傍線部(6))について、筆者はそれぞれどのような視点をこのように表現しているのか、わかりやすく説明せよ。(100字程度)
〈GV解答例〉
戦後日本の刑罰制度の運用において量刑全般が寛刑化の傾向から重罰化の傾向へと転じたという通時的な視点と、日々の裁判の運用において被害者側から重罰を求めるか、犯人の責任の軽減を求めるかという共時的な視点。(100)
〈参考 K塾解答例〉
マクロの視点は、戦後以降の刑罰制度の運用における犯罪の被害者への共感と、犯人の犯罪に対する責任の重さの評価とのバランスの推移を俯瞰する視点だが、ミクロな視点は、個別的な刑罰制度の運用における被害者と犯人の立場とのせめぎ合いに焦点をあてる視点である。(124)
問七「はたしてそれでよいのかがいま問われなければならない」(傍線部(7))について、筆者は何をどのような理由で問題視しているのか、本文全体の内容を踏まえてわかりやすく説明せよ。(100字程度)
〈GV解答例〉
実害対応型の応報刑論に立つ日本の刑事裁判制度を、犯罪による具体的な実害に見合う刑罰を要求する立場と、行為者の責任に見合うように刑罰を限定する立場との対立を本質的に調停不能だという理由で問題視している。(100)
〈参考 K塾解答例〉
犯罪の実害と刑罰の均衡を唱える応報刑論の下、被害者と犯人を対立的に捉える理解が支配し、自己責任と、被害者重視の考えに基づいて重罰・厳罰化傾向を強めている現状を、第三者の立場から調停することで犯行の責任に見合う刑罰を科すありうべき応報刑論に基づいていないという理由で問題視している。(140)