【第1問】

 

[1]対数関数、領域
対数関数のグラフの概形、および対数で与えられた等式、不等式の領域を表す問題であった。対数の基本を理解していれば解答は難しくない。

 

[2]整式の除法
余りが定数となる条件、またその逆について論理を進めていく問題。計算は基本的であるが、論理の部分は扱うのが文字だけであり、誘導に従い解答していくだけでは混乱してしまうだろう。目指している結論を意識して選択肢を判断する必要がある。

 

【第2問】微分・積分

(1)定積分で定義された関数についての計算問題であった。基本的な内容である。

 

(2) f(x)がS(x)の導関数であることを利用してグラフの概形を考える問題。具体的な数値計算ではないが、積分により面積を求めめるのがどういう過程か分かれば解ける。

 

(3) 3次関数の対称性を導く問題であり、難関大学の2次試験で扱われることもある内容である。誘導は丁寧であるが、文字で表された抽象的な表現が多いため難しい。結論として出てくるのは3次関数の変曲点であることが分かれば問題全体が見通せる。

 

【第3問】確率分布と統計的推測

(1)日曜日が晴れか晴れでないかという確率変数について、標本の標準偏差から母比率の信頼区間を求める問題。誘導に従って解けばよい。

 

(2)晴れが3週続く期待値を計算する問題。内容は難しいものではないが、設定の理解に苦労するかも知れない。「一つの直線上にある」ことは難しく考えずにそのまま利用して解いていく。

 

【第4問】数列

(1)(2)は基本的な漸化式から一般項を求める問題。

 

(3)複雑な漸化式について考察を進めていく問題。数学的帰納法の本質的な意味を理解していれば、計算もないためほとんど時間をかけずに解答できる。逆に言えば理解不足だと苦労するかも知れない。

 

【第5問】空間ベクトル

ねじれの位置にある2本の直線について、その最短距離を2通りの方法で求める問題。典型問題であり、誘導もあるので解きやすいが計算量は多くなるので計算ミスに注意が必要だ。

 

【全体概要】

第1問(2)、第2問(2)(3)、第3問(1)、第4問(3)などは計算は少ないが抽象的な内容が多く、本質的な理解を問われていた。また問題の誘導を理解することが難しく、何度も読み返すことになり時間的に焦ってしまった受験生も多くいただろう。問題が何を問いかけているのか、何を導きたいのか、を考えながら解き進めていかないといけない。

 

【今後の学習】

来年から新課程となるため、今回までの選択問題から大きな変化が起こる。第3問の確率分布と統計的推測は今までは選択してない人も多かっただろうが、来年からは文系の人の多くが必要になるだろう。また、理系の人であれば、複素数平面といろいろな曲線を選択する人も多いだろう。
共通テストになってからの数学は難しくなっている、さらに範囲が増えて大変という感想を持つ人も多いだろう。だが公式や解法を覚えて意味も考えず計算練習を行っていく勉強ではなく、基本を理解しどういう応用が出来るのかについて具体例とともに考えていくようにすれば理解が深まっていく。数学のどの分野も私たちの生活と無関係ではない。自然科学のみならず、政治や経済といった分野でもデータ分析は必要であるし音楽、美術などの芸術分野でも数学的な解析は使われる。どの分野がどう関わるのか、興味を持って取り組んで行こう。

 

数学・理科担当 砂川多津男