目次
〈出典〉
藤田直哉『地域アート 美学/制度/日本』
〈問題文内容と設問〉
創造都市(文化芸術と産業経済との創造性に富んだ都市)戦略で行う地域の活性化の取り組みには
(1)創造都市と創造性を基盤とした経済が手を組むと、アートによる①「ジェントリフィケーション」が進行してしまう。
(2)それぞれの地域の②「文化資源には格差」があり、それがそのままさまざまな格差に結びついている。この格差を埋めていくためには、各地域がもっているものと失ったものを③「地域、都市、世代、ジャンルを超えて互いに交換する」ことが求められる。
(3)芸術家・クリエーターの多くは非正規な形で地域活性のさまざまな事業に関わっており、彼らの創造性が地域活性の名の下に回収・搾取されてしまう危険性がある。
といった3つの問題点がある。
これら3つの論点から見えてくる今日の芸術と地域の遭遇は、場合によっては社会の「問題」の根幹にある不均衡な構造(「国・自治体の都合や地域外資本の経済効果が優先される→地域のためと言いながら地域課題の解決には直結しない」など)を温存したまま再生産、正当化してしまうことに加担しかねないものである。
問(1)
問題文にある①「ジェントリフィケーション」について、あなたがそうだと思う事例を、それがジェントリフィケーションだと考える理由を含めて、200字以内で書きなさい。
問(2)
②「文化資源の格差」について、あなたの知る、あるいは「格差」があると思う地域とその具体例について200字以内で書きなさい。
問(3)
「文化資源の格差」を埋めていく手段として問題文の中では、各地域がもっているものと失ったものを③「地域、都市、世代、ジャンルを超えて互いに交換する」ことに求めています。この「交換」とはどのようなものと考えられるのかについて、インターネット、SNS、動画、画像、デジタル(技術)などの言葉、あるいはそれ以外の言葉を用いて、あなたの考えを200字以内で書きなさい。
問(4)
以上の問題文と自身の解答を踏まえて、「グローバリゼーション」について、あなたの考えと600字以内で書きなさい。
〈レビュー〉
国際地域創造学部小論文の設問形式(条件)は2021〜2023年度は設問2つ(問1が内容要約、問2はあなたの考えで、それぞれ500字以上600字以内)でした。
2024年度は問1が「本文の論理展開を参考に『あなたの言葉で』理由を説明(150字〜300字以内)」、問2は「本文の論理展開をもとにあなたの考えを600字以上900字以内で述べる」ものでした。
今年度(2025年)の問題文は、極端に難解な専門用語を避けて、読み手に伝わりやすい簡潔で平易な文章でしたし、さらに出題者が用語に(注)をつけるなどの配慮もあり、本文の内容読解(内容理解)はそれほど難しくなかったと思われます。
一方で、上記のように設問数が4つに増加したことによって、動揺・負担を感じた受験生も多かったのではないでしょうか。
既出の「具体例による説明(具体例の想定)」はもちろんのこと、2024年度の「あなたの言葉で説明する」という条件や、今年度の「指定された言葉やそれ以外の類する言葉を用いて自分の考えを表現する」という条件は、「受験生の論理的で多角的な理解力・考察力・思考力や、文章の構成力・表現力」といった「総合的な力」を、さらに深く問おう(考察を促そう)とする意図が示されているように思われました。
このことから現在の国際地域創造学部の小論文は、過去問をとにかく書きまくるだけの対策では対応しきれないレベルの設問もあり、また、事前に準備した型通りの解答を記述するといったことでなんとかしようという姿勢では、なんともならない可能性が高いと言えます。
「論理的で多角的な理解力・考察力・思考力や、文章の構成力・表現力」を鍛えるために必要なこと(どうすればいいか)を知り、それを正しく訓練することが重要です。
正しい訓練は自分だけではなかなか難しい部分がありますので、ぜひ、GVの小論対策を利用して、小論文の「総合的な力」を身につけていただけたらと思います。