以下では、2025年度共通テスト「地理探究」について、2024年度・2023年度の分析と同様の体裁でまとめています。各大問の分野構成や出題形式、難易度などを参考に、全体像を把握してください。

 

2025年度 共通テスト地理の概要

2025年度の共通テスト「地理探究」は、昨年度までと同様、知識だけでなく思考過程の重視や多角的な資料の読み取りを問う形式が特徴的でした。大問数は1題増加して全6題となり、設問数およびマーク数は30と変化はありません。

 

出題形式は、組み合わせ式問題がマーク数全体の約6割を占める一方、8択問題の登場など、より細かい判定を要求する問題も含まれています。図版(図・表・複合資料)の総数は例年よりやや減少しましたが、依然として各大問で図やデータを活用した考察が求められました。

 

共通テスト地理の特徴(全体)

【問題傾向】
前年度までと同様、複数の資料や統計、地図を組み合わせて考察する問題が中心です。基礎知識を活かしつつ、与えられたデータを分析・判断する情報処理能力が要求されます。
6択・8択を含む組み合わせ式問題では、選択肢間の微妙な違いを慎重に見極める必要があり、時間管理と冷静な思考が鍵となります。

【出題分野】
大問1・2は「地理総合」の内容と共通しており、食料の生産・消費や地域調査が扱われました。大問3以降は自然環境や災害、エネルギー・産業、都市、地誌など「地理探究」の内容を幅広く網羅しています。世界各地の多様な地理的事象が登場し、特定の分野への偏りは見られませんでした。

【難易度と時間配分】
全体として、基礎知識を正確に理解していれば対応可能な問題が多い一方、取り上げる地域・指標が多岐にわたるため、資料を素早く読み取り、設問の意図を正確に把握する力が求められます。特に大問3(自然環境と自然災害)や大問6(地誌)などは、初見の指標・国名が複数登場するため、焦らず丁寧に読み解き、基本知識を使いながら問題を解く必要がありました。

 

大問構成

1. 第1問:産業(食料の生産や消費)
「地理総合」との共通問題。世界各地域の食文化や農業生産の特徴、食品ロスなど、複数の単元を横断する総合的な内容。

2. 第2問:地域調査(愛知県東三河地域)
「地理総合」との共通問題。

3. 第3問:自然環境と自然災害
「地理探究」の中心的内容。やや難

4. 第4問:エネルギーと産業

5. 第5問:産業構造の変化に伴う都市の変容

6. 第6問:地誌(インド洋周辺の地域)

共通テスト地理の特徴(大問別)

第1問:食料の生産や消費
世界の食文化や生産・消費構造に加え、食品ロスといった地球規模課題が取り上げられました。コーヒーや茶、イモ類など多様な作物が扱われ、自然環境と結びつけて理解する必要があります。

第2問:地域調査(愛知県東三河地域)
豊橋市の中心部を例に、地形図の読み取りや製造業の立地特性、近隣県との交通結節の様子などが問われました。比較的やさしめの問題構成ですが、設問形式が組み合わせ式である点に注意が必要。資料を丁寧に読むことが求められます。

第3問:世界の自然環境と自然災害
正規化植生指数(NDVI)の分布やラニーニャ現象など、見慣れない指標や地球的規模の気候現象を扱った問題が中心。北半球と南半球の気温上昇の差異を考えさせる設問や、GISを利用した津波の被害推定など総合的に考察する力が試されました。慌てて解くと誤りやすいため、知識の整理と資料のヒントを活かした落ち着いた対応が必要です。

第4問:エネルギーと産業
日本や世界各国の発電方式、ウェーバーの工業立地論、ファブレス企業のサプライチェーンなど、比較的出題頻度の高いテーマが目立ちました。統計や注釈から読み取れるキーワードを正しく結びつける力が問われ、国際分業や貿易構造を踏まえた理解が重要です。

第5問:産業構造の変化と都市の変容
三大都市圏と地方圏の工業用地の推移や、首都圏周辺の市区における人口と土地利用の変化など、近現代の日本社会の動きを反映した設問が多く出題されました。地域の具体例をイメージしながら、大都市と地方の産業・人口動向の違いを整理することが求められます。

第6問:インド洋周辺の地誌
インド洋沿岸国のサイクロン上陸頻度や宗教人口、移民と貿易額、モルディブやモーリシャスの地理的特徴など、多様な要素を含む大問です。なじみの薄い国・地域が登場したため、資料のヒントや基本的な地理知識(赤道付近の熱帯低気圧の発生状況など)を活用して正確に判断する必要がありました。

 

おわりに

2025年度の共通テスト「地理探究」は、大問数の増加や組み合わせ式問題の割合上昇などにより、一見すると煩雑さが増しています。しかし、各大問の設問自体は、適切な基礎知識と丁寧な資料読解力があれば十分に対応できる難易度設定です。

日頃から多面的な資料や図表に慣れ、各地域・分野の基本事項を定着させることが得点アップの鍵となるでしょう。また、国際情勢や日本各地の地域特性など、身近なニュースを通じて地理的事象をイメージする習慣づくりも、共通テストでの得点向上につながります。

 

地歴・英語担当 大城祥太