目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 〈蚭問解説〉問䞀 その危険は danger ずいうよりは thrill であり(傍線郚)ずあるが、筆者はdangerず区別されるthrillの性栌をどのようなものず考えおいるか。同じ段萜の蚀葉を甚いお40字以内で説明せよ。
  3.  問二 存圚論敵な䞍確実性(傍線郚)を説明した箇所を本文䞭から20字以内で抜き出せ。
  4. 問䞉 そう考える(傍線郚)ずあるが、どのように考えるずいうのか。60字以内で説明せよ。
  5. 問四 傍線郚共通の土俵を䜜るずは、䜕をどのようにするこずだず考えられるか。30字以内で説明せよ。
  6. 問五 筆者はリスク論に批刀的な芋解を持っおいるが、どのような点を問題芖しおいるのか、90字以内で説明せよ。

〈本文理解〉

出兞は金森修リスク論の文化政治孊。

①段萜。どれほど熟緎したロッククラむマヌでも滑萜する危険はある。それが嫌ならロッククラむミングをしなければいい。ロッククラむミングは、山䞊での玠晎らしい朝日を芋るため、ずいうような功利的目的だけでは説明しきれない成分を抱え蟌む。それは、或る皋床の危険があるからこそ、それを克服した人に倧きな達成感を䞎える。その危険は danger ずいうよりは thrill であり(傍線郚)、スリルを味わうこずが嫌なら、そもそもそれを行わなければいいだけの話だ。(真倜䞭にかっ飛ばすドラむバヌの䟋)。いずれにしろ、その皮の行為には䞀定の危険が最初から緎り蟌たれおいるが、それは最初から芚悟の䞊で自発的に遞択したもの、危険を行為の劙味ずしお捉え、むしろそれを楜しむだけの䜙裕を孕んだものずいう特城をも぀。

②段萜。(䞀般のドラむバヌの䟋)。

③段萜。このように、われわれの人生には倚くの䞍確実性を䌎う危険がある。だが、通垞の堎合、人はそれをそれほど気に病むずいうほどでもない。それは、そもそも人の生が本性的に抱える偶然性や偶発性の発露に他ならず、それを今曎嘆いおみおもどうにもならないからだ。

④段萜。だが、この存圚論的な䞍確実性(傍線郚)には、充分な共感ずいうか、十党の理解を惜したない人でも、そのこずず、次のような諞事䟋ずの間には、自然な連続性の䞭では䜍眮づけにくい異質な性質が混圚しおいる、ず感じるのではなかろうか。(䟋/䜕十幎に䞀床の河川の氟濫の危険性/ゎルフ堎での突然の萜雷の危険性/原発事故による被爆の危険性/遺䌝子組み換え食品摂取による健康被害の危険性 )。

⑀段萜。いた挙げた事䟋のどれもが、自発性ずいう成分を少なくずも䞭心的にはもっおいない。近代䞖界に特有かどうかの違いはあるが、いずれの事䟋でも、危険を劙味ず捉えるような䜙裕は人にはなく、その意味で誰も自発的にそれらの危険に身を曝そうずは思わないず考えるこずが、ずりあえずは蚱される。

⑥段萜。ずはいえ、近代化の動向は、圓然ながら危険は随䌎物だけをもたらすものではない。自発的ではない危険を匕き受けおもなお、芋返り的な享楜が倧きいからこそ、人は享楜の方に目を向けお、危険には目を瞑る。滅倚に起こらない、たた危険があるずいっおも、ごく小さなもので、それに氞続的に曝されお初めお䞀定の有害な効果をもたらすだけのものだ。人はそう考えお、技術的䞖界の負の偎面には目を瞑ろうずする。

⑊段萜。だが、その皮の心理的合理化にも限界はあるし、技術的䞖界の䞭に生きる党員が、垞にそう考える(傍線郚)ずいうわけでもない。原発も(遺䌝子組み換え食品)も、どうしおも避けられない危険かずいえば、それが自然灜害ではないずいうたさにそれゆえに、その䞭には人為が朜み、その人為をより適切な航路に導けば、危険は危険ではなくなる、ずいう可胜性はあるからだ。原発は必須のものずはいえず、火力、氎力、それが駄目なら颚力、倪陜光発電なども構想しうる。は、危険性が本圓にないずの保蚌が埗られるたでは、あたり倧々的に採甚しない、などずいうように。そこには絶えず代替的な手段がある。

⑧段萜。だが、だからこそ、䞀定の利害関心の䞭で、耇数の代替的手段の䞭でも或る特定の手段を是非ずも受容させたいずいう意図が働き、その意図は、その手段の正圓化のための論理を緎り䞊げようずする行為ずなっお結実する。珟圚、産業界を䞭心に倚様な堎面で䜿われおいるリスク論は、そのような文脈の䞭で機胜する理論装眮だ。それは、䞊蚘に觊れた人間存圚の根源的な䞍確実性ず、先端技術が孕む危うさずを巧みに混淆させ、䞀緒くたの背景に据えおしたう。(䟋/原発は、確かに絶察安党ずはいえない。だが、それは人生そのものの性栌である。ならば、どのくらいの確率でそれが起こるかを芋極めた䞊で、その察凊を決めればいい、ずいう原発掚進の論拠)。

⑚段萜。このような文脈でリスク論は有効性を発揮し぀぀ある。しかも、䟋えば䞉瀬勝利の『遺䌝子組み換え食品のリスク』などを芋れば分かるように、リスク論は、䞀定の偏差をもった意図を隠しも぀にも拘わらず、自分をできる限り䞭立な〈科孊〉ずしお提瀺しようず苊慮を重ねる。䞉瀬は冒頭郚分で、の賛成掟ず反察掟䞡方の議論がたるで噛み合わないずいう珟状を嘆き、それを打開するための共通の土俵を䜜(傍線郚)っおはどうかず提案する。そしおそのために科孊に基づいた食品や医薬品の安党性の皋床(逆からいえばリスク)を蚈るための手法は存圚するのであるずしお、リスク論を持ち出す。賛成するにしろ、反察するにしろ、政治的、たたは感情的な立論をしおいるに過ぎず、それに察しおリスク論は科孊的なリスク評䟡に基づいたリスク管理を提蚀するものずしお、別栌の䞭立性、普遍性を担う、ずいうわけである。

⑩段萜。本章は、䞉瀬に兞型的に芋られるリスク論の䞭立性請求が巧みな自己欺瞞ず他者韜晊に歊装されたむデオロギヌに他ならないずいう刀断を軞に、リスク論に察しお私が感じる〈違和感〉を読者ず共有するために構想されたものである。

問䞀 その危険は danger ずいうよりは thrill であり(傍線郚)ずあるが、筆者はdangerず区別されるthrillの性栌をどのようなものず考えおいるか。同じ段萜の蚀葉を甚いお40字以内で説明せよ。

内容説明問題。同じ段萜の蚀葉を甚いおずあるので、①段萜から該圓箇所を探すず、たずは傍線郚の前文或る皋床の危険があるからこそ、それを克服した人に倧きな達成感を䞎える(P)ず、傍線郚埌の具䜓䟋を挟んで段萜の結びにあたる行為者が最初から芚悟の䞊で自発的に遞択したもの、危険を行為の劙味ずしお捉え、むしろそれを楜しむだけの䜙裕を孕んだもの(Q)が拟える。ここたでは容易。

ただ䞡箇所ずもthrillの説明ではあっおも、その蚀い換えではないこずに泚意しよう。傍線郚に続き、スリルを味わうこずが嫌ならずなっおいるこずから、通垞は避けたいものなのに、それ以䞊の達成感があるから求めおしたうものだ、ず解するこずができる。ここでthrillの語矩から考えお、それはドキドキ(ワクワク、ゟクゟク)の緊匵感のこずである。以䞊より危険を克服する時の達成感を味わうため(P)/自発的に遞択された(Q)/その危険に䌎う緊匵感ずたずめるこずができる。

<GV解答䟋>
危険を克服する時の達成感を味わうために自発的に遞択された、その危険に䌎う緊匵感。(40)

<参考 S台解答䟋>
行為者が芚悟の䞊で自発的に遞択し、危険を行為の劙味ずしお楜しむ䜙裕を孕んだもの。(40)

<参考 K塟解答䟋>
芚悟しお自発的に遞択し、危険を劙味ずしお楜しみ、その克服から達成感を埗るもの。(39)

問二 存圚論敵な䞍確実性(傍線郚)を説明した箇所を本文䞭から20字以内で抜き出せ。

<答> 人の生が本性的に抱える偶然性や偶発性

問䞉 そう考える(傍線郚)ずあるが、どのように考えるずいうのか。60字以内で説明せよ。

内容説明問題(指瀺内容)。傍線郚そう考えるは⑊段萜の冒頭にあり、前⑥段萜の最終文そう考えお(→技術的䞖界の負の偎面には目を瞑ろうずする(P))ず察応する。そのそう考えおは、その前のたたで䞊ぶ文、危険は滅倚に起こらないず考えお/危険は小さなもので、それに氞続的に曝されお初めお䞀定の有害な効果をもたらすだけのものだ、ず考えおを承ける。これは具䜓的で長いので、ず合わせお技術的䞖界のもたらす危険を深刻に捉える必芁性はないず考える(Q)ずたずめる。

その䞊で、もう䞀文遡り自発的ではない危険を匕き受けおもなお、芋返り的な享楜が倧きいからこそ(→享楜の方に目を向けお危険には目を瞑る)を拟い、字数を瞮めおの前に眮く。これで解答はできるが、指瀺語の問題は、必ず埌ろぞの぀ながりがスムヌズかを確認したい。埌ろぞは、人々党員がそう考える=技術のもたらす危険を深刻に考えない//わけではないず続き、人為をより適切な航路に導く/代替的な手段をずるに぀ながる。これより、解答の適切さが確認された。

<GV解答䟋>
自発的ではない危険を匕き受けおも芋返り的な享楜が倧きいので、技術的䞖界のもたらす危険を深刻に捉える必芁性はないず考える。(60)

<参考 S台解答䟋>
技術的䞖界が危険を孕んでいおも芋返りの享楜の方が倧きく、その危険の頻床や芏暡は小さく考慮する必芁はないず考える。(56)

<参考 K塟解答䟋>
やむを埗ず危険を甘受した芋返りである享楜を重芖し、危険には目を瞑り぀぀、危険の生起の可胜性や短期的圱響を軜芖しお考える。(60)

問四 傍線郚共通の土俵を䜜るずは、䜕をどのようにするこずだず考えられるか。30字以内で説明せよ。

内容説明問題。蚭問意図を把握するのが難しい。ここではどういうこずか(逐語的蚀い換え)ではなくお、䜕を(P)/どのようにするこず(Q)(だず考えられるか)ず聞いおいるこずに泚意したい。土俵の比喩を䜿えば、土をダンプで運び、円圢で平らに土を固めお 土俵を䜜るではなく、二人の力士を/共通のルヌルに基づき競わせるずいうレベルの説明を求めおいるのだ。これを぀かめれば埌はスムヌズだろう。
たず、傍線郚共通の土俵を䜜っおはどうか、ずいうのは䞉瀬の提案である。䞉瀬は、の安党性(リスク)に぀いおの議論を促すための土俵(リスク論に盞圓)を求めるのである(←傍線次文そしお以䞋)。その土俵では、぀たるずころ、の安党性(リスク)の皋床を(P)、科孊に基づき/䞭立性ず普遍性をもっお刀断する(Q)(←⑚段萜末文それに察し以䞋)こずができるず考えられるのである。以䞊(P/Q)を簡朔にたずめる。

<GV解答䟋>
の安党性を、䞭立的で普遍的な科孊の立堎で評䟡するこず。(30)

<参考 S台解答䟋>
安党性を、䞭立的、普遍的だずする科孊的立堎から評䟡するこず。(30)

<参考 K塟解答䟋>
リスクを䞭立的な科孊ずされるリスク論に基づいお議論するこず。(30)

問五 筆者はリスク論に批刀的な芋解を持っおいるが、どのような点を問題芖しおいるのか、90字以内で説明せよ。

内容説明問題(䞻旚)。筆者の考えるリスク論の問題点に぀いお、該圓箇所を探しおたずめる。たず、⑧段萜冒頭郚䞀定の利害関心の䞭で、耇数の代替的手段の䞭でも或る特定の手段を是非ずも受容させたいずいう意図(a)/その手段の正圓化のための論理を緎り䞊げようずする(b)(その論理がリスク論に盞圓)、続いお⑧段萜文目(リスク論は)人間存圚の根源的な䞍確実性ず、先端技術が孕む危うさずを巧みに混淆させ(c)、さらに⑚段萜文目リスク論は、䞀定の偏差をもった意図を隠し぀぀持぀にも拘わらず、自分をできる限り䞭立な〈科孊〉ずしお提瀺(d)を根拠ずしお、重なりのないようにたずめる。解答䟋では(a)→(d)→(c)→(b)の順でたずめたが、(c)の郚分で人間の根源的な䞍確実性を利甚しお(先端技術の)リスクを自明芖する(人間はどのみちリスクから逃れられないのだから(æ­£)/先端技術のリスクも仕方ない(誀))ず衚珟を工倫し、そこから(b)特定の手段の正圓化を図るに぀なげ締めずした。

<GV解答䟋>
䞀定の利害に基づき、耇数の代替手段から特定の手段を受容させる意図を隠蔜しお科孊的な䞭立性を装い、人間の根源的な䞍確実性を利甚しおリスクを自明芖するこずで、その手段の正圓化を図る点。(90)

<参考 S台解答䟋>
先端技術の孕む危険性を人間存圚の根源的な䞍確実性ず混同させ、リスクの評䟡ず管理を科孊的な䞭立性ず普遍性を装い提蚀し、䞀定の利害関心からなる特定の手段を正圓化しお他者に受容させる点。(90)

<参考 K塟解答䟋>
利害関心の䞋に特定の科孊的手段を受容させる意図を背景に、人間存圚に根源的な䞍確実性ず先端技術が孕む危険性ずを巧みに混淆させ、科孊的䞭立性ず安党性の管理ずを暙抜する䞻矩思想である点。(90)