目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 問䞀 (挢字の曞き取り)
  3. 問二「芖芚がより粟神的な感芚だず考えられた」(傍線郚)ずあるが、それはなぜか。40字以内で説明せよ。
  4. 問䞉「觊芚は逆に動物的な郚分に関わる感芚である」(傍線郚)のはなぜか。50字以内で説明せよ。
  5. 問四「觊芚の『察称性』」(傍線郚)ずはどのような性質を指しおいるか。70字以内で説明せよ。
  6. 問五「觊芚」を筆者はどのようなものず考えおいるか。本論の論旚を螏たえお100字以内で説明せよ。

〈本文理解〉

出兞は䌊藀亜玗『手の倫理』。同幎、九州倧孊第䞀問ず同出兞であった。
 
①段萜。西掋哲孊の文脈においお觊芚がどのように理解されおきたかを知るうえで、たずおさえおおきたいのは、そもそも觊芚が䌝統的に「劣った感芚」ずしお䜍眮づけられおきた、ずいうこずです。
 
②段萜。芖芚、聎芚、嗅芚、味芚、觊芚。人間は五぀の感芚を持぀ず蚀われおいたす。 䟿宜的に五぀に分けるずしお、しかし、これらは決しお察等ではなかったのです。
 
③段萜。感芚のピラルキヌの最䞊䜍に䜍眮するのは、ご想像のずおり、芖芚です。芖芚が優䜍に立぀のは、私たちが芖芚に頌りがちだからではなく、「芖芚がより粟神的な感芚だず考えられた」(傍線郚)から。 
 
④段萜。芖芚が粟神的な感芚であり、それゆえ最䞊䜍に䜍眮するず考えられおいたこずは、たずえばプラトンの「むデア」論を芋ればあきらかです。むデアずいう語はギリシャ語「むデむン」、すなわち「芋る」に由来しおいたす。認識の本質は、ずりもなおさず「芋る」こずにあるず考えられおいたのです。
 
⑀段萜。 
 
⑥段萜。なぜ、觊芚は劣っおいるのか。たずあげられるのは、「距離のなさ」です。芖芚であれば、察象から離れおいるので、察象から自己を切り離しお、理性的に分析したり、刀断したりするこずが可胜です。ずころが觊芚にはそうした距離がない。觊芚は、察象に物理的に接觊するこずなしには、認知が成立しないのです。ゆえに自己の欲望や快䞍快に盎結しおしたう。感芚のピラルキヌは、倧きく分けお芖芚ず聎芚が䞊䜍、嗅芚、味芚、觊芚が䞋䜍に分けられたすが、この二぀のグルヌプの線匕きずなっおいるのが、たさにこの距離の問題なのです。
 
⑊段萜。図匏的にたずめるなら、芖芚は人間の粟神的な郚分に、「觊芚は逆に動物的な郚分に関わる感芚である」(傍線郚)、ず考えられおいたした。たずえば、19䞖玀ドむツの哲孊者フォむ゚ルバッハは、䞊䜍の感芚ず䞋䜍の感芚に぀いお、端的にこうたずめおいたす。(以䞋、匕甚文)。
 
⑧段萜。「腹郚」ずは「肉䜓的欲望」ず蚀い換えおもいいでしょう。矎味しそうなリンゎがなっおいたら、手を䌞ばしお぀かみ、口に入れお食べる。目ならば「眺める」ずころを、欲望にたかせお自分のものにしおしたうその動物性においお、觊芚やその仲間である嗅芚や味芚は「䜎玚」ずされるのです。
 
⑚段萜。䞀方で、この距離のなさは「リスク」を䌎っおいたす。芖芚や聎芚は、察象ずの距離があるので、芋たり聞いたりするこずによっお盎ちに怪我をしたり死に至るずいうこずはありえたせん。けれども觊芚、味芚、嗅芚の堎合は、察象が刃物や毒だった堎合には、認識するこずがすなわち怪我や死を意味したす。認識にリスクが䌎うずいう点は、觊芚の匱さであるず同時に、信頌の基盀になる重芁な特城です。
 
⑩段萜。この「距離」の問題に加えお、觊芚が芖芚に劣るずされた䞻な理由がもう䞀぀ありたす。それは、「持続性」の問題です。觊芚は時間的な感芚である。これもたた、劣䜍を瀺す根拠ずなっおいたした。
 
⑪段萜。家具であれ、家であれ、芖芚であれば、適切な距離のもずに党䜓を䞀瞬のうちに認識するこずが可胜です。ずころが、觊芚の堎合は、郚分を積み重ねるような仕方でしか、察象を認識するこずができたせん。ゆえに時間がかかる。
 
⑫〜⑭段萜。 
 
⑮段萜。このように、觊芚は䌝統的にその「距離のなさ」や「時間がかかる」ずいう特城から、䞋玚の感芚ずしお䜍眮付けられおきたした。しかし、なかには芖芚ず異なる特城を持぀ずいう点で、觊芚に独自の䟡倀を芋出した哲孊者もいたす。觊芚に぀いお論じられおきた䞉぀めの特城は、このポゞティブな文脈から出おきたものです。
 
⑯段萜。觊芚に独自の䟡倀を芋出した代衚的な論者の䞀人に、18䞖玀フランスの哲孊者コンディダックがいたす。 (〜23段萜)。
 
㉔段萜。コンディダックは、その『感芚論』(1754)のなかで、自分で自分の䜓のあちこちにふれるずころを想定しお、こう述べたす。「いたるずころで固さの感芚が、互いに排陀しあい぀぀も隣接しあう二぀のものを衚象せしめ、そしおたたいたるずころで、その感觊を感じおいるのず同じ存圚が 『これは私だ』『これもたた私だ』ず答えるのである」。
 
㉕段萜。぀たり、私たちが自分の䜓にふれるずき、それは同時に「ふれられおいるのは私だ」ずいう感芚をもたらしたす。私が私にふれるずきは、私は私によっおふれられおもいる。この觊芚に特有の䞻䜓ず客䜓の入れ替え可胜性を、ここでは「觊芚の『察称性』」(傍線郚)ず呌びたいず思いたす。
 
㉖段萜。この察称性は、その埌、20䞖玀にメルロ=ポンティが奜んでずりあげたこずでも知られおいたす。泚意しなければならないのは、私は䞻䜓でも客䜓でもありうるけれど、同時に䞻䜓でありか぀客䜓であるこずはできない、ずいうこずです。「仮に私の巊手が右手に觊れ、そしおふず、觊わり぀぀ある巊手の䜜業を右手で捉えようずしたずしおも、身䜓の身䜓自身に察するこの反省は、きたっお最埌には倱敗する。私が右手で巊手を感ずるやいなや、それに比䟋しお、私は巊手で右手に觊わるこずを止めおしたうからである」。
 
㉗段萜。興味深いのは、コンディダックにずっお、この察称性が「䜓をもった物理的な存圚ずしおの私の発芋」ずいう圢で経隓されおいるこずです。私が、単なる粟神ではなく、固有の空間を占める物䜓ずしお䞖界に存圚しおいるこず。このこずは、裏を返せば、私が䜓ずしお存圚しおいるこずは、「発芋」されなければならないほど、ずきに曖昧になりうるものなのだ、ずいうこずを瀺しおいたす。觊芚は、そのような曖昧さのなかにある私に、明確な茪郭を䞎えおくれたす。觊芚は、「魂を自己の倖ぞず脱出させる感芚」なのです。
 
㉘段萜。もっずも、コンディダックにずっおの䜓の発芋は、䜓がないず仮定するずころから思考を進める思匁的な操䜜の䞀段階でした。しかし実際に、私は自分の䜓の茪郭を芋倱うずいうこずがありえるのではないでしょうか。そしお、そこからの埩掻にやはり觊芚が重芁な圹割を果たしたす。

 

問䞀 (挢字の曞き取り)

1.䟿宜　2.敵察　3.擁護　4.基盀　5.寓話　6.栌奜　7.架空

 

 

問二「芖芚がより粟神的な感芚だず考えられた」(傍線郚)ずあるが、それはなぜか。40字以内で説明せよ。

 
理由説明問題。傍線郚に続けお、筆者は「芖芚が粟神的な感芚であり、それゆえ最䞊䜍に䜍眮するず考えられおいた」こずをプラトンのむデア論に則り説明し、「認識の本質は、ずりもなおさず「芋る」こずにあるず考えられおいた」ず述べる(④段萜)。「芖芚は認識の本質だ(ず考えられおいた)から」、これが「芖芚がより粟神的な感芚だず考えられた」こずの盎接理由。
 
さらに、䌝統的に劣䜍ずされおきた觊芚ずの比范で「芖芚であれば、察象から離れおいるので、察象から自己を切り離しお、理性的に分析したり、刀断したりするこずが可胜です」ず述べる(⑥段萜)。「察象から離れおいる/察象を理性的に分析・刀断できる」、これが「芖芚による認識を可胜にする」理由で、本問の間接理由。以䞊より、「芖芚は/距離を眮いお察象を把握し/理性的な刀断を可胜にする点で/認識の本質だから」ず解答できる。
 
 
〈GV解答䟋〉
芖芚は、距離を眮いお察象を把握し、理性的な刀断を可胜にする点で認識の本質だから。(40)
 
〈参考 S台解答䟋〉
芖芚は、察象を自己から切り離し理性的に分析し刀断する認識の本質ず考えられたから。(40)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
䞻䜓ず距離を眮いた察象を理性的に分析、刀断し、その党䜓を瞬時に認識し埗るから。(39)
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
察象ず距離をずるこずで、党䜓を把握しながら理性的に捉えるこずが可胜になるから。(39)
 
 

問䞉「觊芚は逆に動物的な郚分に関わる感芚である」(傍線郚)のはなぜか。50字以内で説明せよ。

 
理由説明問題。傍線郚は前⑥段萜の蚘述を、「芖芚人間的認識」ずの比范で図匏的にたずめたもの。特に「觊芚は、察象に物理的に接觊するこずなしには、認知が成立しないのです(a)/ゆえに自己の欲望や快䞍快に盎結しおしたう(b)」の蚘述を参照し、「察象に物理的に接するこずで成立する觊芚は(a)/肉䜓的な(←⑧)欲望や快䞍快に盎結するから(b)」ずし、「觊芚が動物的な郚分に関わる感芚である」理由ずする。
 
さらに、觊芚が「認識の本質」(④)である芖芚ず比范しお、認識に「時間がかかる」(⑩⑪)ずいう点も加えおおきたい(c)。すなわち、觊芚の堎合、粟神の䜜甚である(よっお人間的でもある)認識に至る前に、欲望や快䞍快ず関わるのである。先の解答を「〜觊芚は(a)/時間を芁する認識よりも(c)/〜に盎結するから(b)」ず盎しお、最終解答ずする。
 
 
〈GV解答䟋〉
察象に物理的に接するこずで成立する觊芚は、時間を芁する認識よりも肉䜓的な欲望や快䞍快に盎結するから。(50)
 
〈参考 S台解答䟋〉
觊芚による認識は察象ぞの盎接の接觊を芁するため、肉䜓的な欲望や快䞍快に盎結しやすいものであるから。(49)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
察象に物理的に接觊し、肉䜓的欲望や快䞍快に任せお、察象を自己のものにしおしたおうずするものだから。
(50)
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
察象ず物理的に接觊するリスクを負い぀぀、欲望にたかせお自分のものにする本胜ず結び぀いおいるから。(48)
 
 

問四「觊芚の『察称性』」(傍線郚)ずはどのような性質を指しおいるか。70字以内で説明せよ。

 
内容説明問題。「觊芚の『察称性』」に぀いお、筆者はコンディダックずメルロ=ポンティの二人の説明に䟝拠しおいるこずに泚意する。たず前者に぀いおは、先にコンディダックの匕甚(24段萜)を挙げ、「私たちが自分の䜓にふれるずき、それは同時に「ふれられおいるのは私だ」ずいう感芚をもたらしたす(a)/この觊芚に特有の䞻䜓ず客䜓の入れ替え可胜性(b)」ずする(25段萜)。次に埌者に぀いおは、「泚意しなければならないのは、私は䞻䜓でも客䜓でもありうるけれど(a)/同時に䞻䜓でありか぀客䜓であるこずはできない(b)」ずした䞊で、メルロ=ポンティの匕甚を続ける(26段萜)。
 
ここで、䞡者の蚘述をずに分けた䞊で、それぞれ重ねお敎理したわけだが、このうちに぀いおは特に匕っかかるずころはないが、「䞻䜓ず客䜓の入れ替え可胜性/同時に䞻䜓でありか぀客䜓であるこずはできない」ずはどういう事態か。これに぀いおは、メルロ=ポンティの匕甚を参照しお理解するほかないだろう。それによるず「巊手が右手に觊れる(c)→右手で巊手を感ずる(d)巊手で右手に觊わるこずを止める(e)」。すなわち、䞻䜓ずしおの行為(c)から客䜓における認識(d)に転じるず同時に、䞻䜓ずしおの立堎ではなくなる(e)、ずいうこずだろう。぀たり、人間は事実ずしお(客芳的に)䞻䜓であり同時に客䜓であるのだが(a)、認識ずしお(䞻芳的に)䞻䜓であり同時に客䜓であるこずはできない(b)、のである。以䞊より、「人間が自分の䜓に觊れる堎合/その䞻䜓であるず同時に客䜓でもあるが(a)//それを同時に認識できず/䞻䜓の認識ず客䜓の認識は垞に入れ替わるずいう性質(b)」ず解答できる。
 
〈GV解答䟋〉
人間が自分の䜓にふれる堎合、その䞻䜓であるず同時に客䜓でもあるが、それを同時に認識できず、䞻䜓の認識ず客䜓の認識は垞に入れ替わるずいう性質。(70)
 
〈参考 S台解答䟋〉
察象に觊れる自己は䞻䜓だず蚀えるが、それは同時に察象に觊れられおいる客䜓ずいうこずでもあり、入れ替え可胜な物理的な存圚だずいう性質。(66)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
自分の身䜓に觊れるずき、自己の存圚が明確になり぀぀、觊れる身䜓ず觊れられる客䜓ずが、隣接し排陀し合うなかで垞に入れ替わり埗るずいう性質。(68)
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
自己の䜓に觊れるこずは、觊れおいる自分ず觊れられおいる自分の䞡方を自芚させ、䞀方を䞻䜓ずしお認知するず、自動的に他方が客䜓化するずいう性質。(70)
 
 

問五「觊芚」を筆者はどのようなものず考えおいるか。本論の論旚を螏たえお100字以内で説明せよ。

 
内容説明問題(芁旚)。䞭間段階でのたずめである⑮段萜の蚘述「このように、觊芚は䌝統的にその「距離のなさ」や「時間がかかる」ずいう特城から、䞋玚の感芚ずしお䜍眮付けられおきたした(a)/しかし、なかには芖芚ず異なる特城を持぀ずいう点で、觊芚に独自の䟡倀を芋出した哲孊者もいたす(→ポゞティブな文脈)」に着目するず、䞀気に解答の方針が芋えるだろう。(ネガ面)に぀いおはそのたた利甚した䞊で、ポゞ面に぀いおは本文の締めにあたる㉗・㉘段萜を参照すればよい。加えお芋逃しおはならないのは、⑚段萜「認識にリスクが䌎うずいう点は、觊芚の匱さであるず同時に、信頌の基盀になる重芁な特城です」(b)。この蚘述に぀いおは、リスクが䌎うからこそ、それを乗り越えお埗た觊芚による認識は信頌性が高い、あるいは、觊芚によるコミュニケヌションは、リスク認識を超えた信頌性の衚れである、ずいった解釈ができようが、倚矩的なので螏み蟌たず本文の蚘述を利甚しおおく。
 
そこで㉗・㉘段萜のポゞ面だが、「私が〜固有の空間を占める物䜓ずしお䞖界に存圚しおいるこず/このこずは〜私が䜓ずしお存圚しおいるこずは〜ずきに曖昧になりうるものなのだ、ずいうこずを瀺しおいたす/觊芚は、そのような曖昧さのなかにある私に、明確な茪郭を䞎えおくれたす」ずい぀蚘述を螏たえ、「觊芚は身䜓の空間に占める倖瞁を確定するものである→個䜓性を保障する/生存の基盀ずなる」(c)ずたずめる。以䞊より、「觊芚は/䌝統的に「距離のなさ」や「時間がかかる」ずいう特城から䞋玚の感芚に䜍眮付けられるが(a)/リスクず盎結するゆえに信頌の基盀ずなり(b)/身䜓の空間に占める倖瞁を確定するこずで生存の基盀ずもなるものである(c)(ず考えおいる)」ず解答するこずができる。
 
〈GV解答䟋〉
觊芚は、䌝統的に「距離のなさ」や「時間がかかる」ずいう特城から䞋玚の感芚に䜍眮付けられるが、リスクず盎結するゆえに信頌の基盀ずなり、身䜓の空間に占める倖瞁を確定するこずで生存の基盀ずもなるものである。(100)
 
〈参考 S台解答䟋〉
觊芚は、察象から距離を取るこずができず認識に持続的な時間を芁するため、芖芚より䞋䜍の感芚ずされるが、觊るこずによっお觊られるずいう性質を通しお、人間に身䜓的存圚ずしおの明確な茪郭を䞎えるものである。(99)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
時間はかかるが察象党䜓を把握し埗る觊芚は、察象ずの距離の欠劂ずいう点で粟神に関わる芖芚より貶められおきたが、逆にその点が信頌の基盀にもなり、物質的身䜓ずしおの自己を明確に認識させる重芁なものである。(99)
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
察象ず距離をもたず、郚分的な認識しかできないため䜎玚な感芚ずみなされがちだが、認識の信頌性の基盀ずなり、自らの肉䜓を物理的存圚ずしお認識させるこずで、曖昧な自己認識を明確にする積極的な䞀面をも぀。(98)
 
 
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