〈本文理解〉

出典は藤田直哉『新世紀ゾンビ論』。筆者はSF・文芸評論家。
 

問一 (漢字の書き取り)

1.蓄積 2.皮膚 3.遠隔 4.喪失 5.格闘 6.輪郭 7.魅惑

 

問二「もうひとつの身体」とあるが、何に対して「もうひとつ」と言っているのか。20字以内で説明せよ。

〈GV解答例〉
対象への没入により忘却された生身の身体。(20)
 
〈参考 S台解答例〉
生身の物質として知覚される自分の身体。(19)
 
〈参考 K塾解答例〉
肉体的な感覚を意識化に潜在させた身体。(19)
 
〈参考 Yゼミ解答例〉
電子化されていない生身の物質である身体。(20)
 
〈参考 T進解答例〉
電子化する間には忘却される物質的な身体。(20)
 
 

問三「『ボディ・イメージ』が脳の中で変化している」(傍線部A)とあるが、それはどういうことか。50字以内で説明せよ。

 
〈GV解答例〉
人間は、外界との相互作用の中で、自分自身との境界線を流動的に変えながら、身体像を拡張するということ。(50)
 
〈参考 S台解答例〉
私たちの脳内の身体イメージは、外界と相互作用と調整を繰り返して拡張する流動的なものであるということ。(50)
 
〈参考 K塾解答例〉
脳内で物質的身体を超えて表象される身体像は、外部と自己との境界線を常に調整し、流動的に拡張すること。(50)
 
〈参考 Yゼミ解答例〉
脳内でシュミレーションした自らの身体感覚が、物質的及びデジタル上の環境にも及んで拡張するということ。(50)
 
〈参考 T進解答例〉
脳内で再現された身体イメージの感覚は、付加物や道具に及び、生涯道具を組み込み拡張していくということ。(50)
 

問四「私たちは自己と他者の身体の区別をどうやらつけていないようなのです」(傍線部B)とあるが、それはどういうことか。60字以内で説明せよ。

 
〈GV解答例〉
虚構世界の他者にまで自己の身体像を拡張する人間は、ミラーニューロンでその身体に反応する時、自他は同一視されるということ。(60)
 
〈参考 S台解答例〉
ミラーニューロンが自らの身体だけでなく他者の身体にまで反応し、自他の身体イメージは無意識に同一化されるということ。(57)
 
〈参考 K塾解答例〉
脳の神経細胞により、自己の身体は無自覚的に、他者の現実の身体や虚構の身体にも反応し、他者の身体像を同一化するということ。(60)
 
〈参考 Yゼミ解答例〉
ミラーニューロンの発火による感情の没入は、自己の身体あるいは他者の身体を問わず、どちらに対しても同等に起こるということ。(60)
 
〈参考 T進解答例〉
ミラーニューロンの次元では、虚構の中の他人の身体に対しても、自分自身の身体イメージに対してと同じ反応を示すということ。(59)
 

問五 著者は、ゾンビ作品が流行する理由をどのように捉えているのか。文章全体の論旨を踏まえて120字以内で説明せよ。

 
〈GV解答例〉
虚構でありながら身体性を伴うゾンビは、情報化時代に自己を電子化しその生身の身体を疲弊させた現代人が自己を投影させやすい上、ミラーニューロンで虚構内の身体にも反応する人間に、作中のゾンビと現実の身体を流動的に往復するという魅惑をもたらすから。(120)
 
〈参考 S台解答例〉
対象に没入する情報化時代に忘却される、生身の身体を意識化させつつ、身体であると同時に虚構であるゾンビに、権力に管理・誘導される自分たちの身体イメージを同一化させ投影することで、虚構と現実を流動的に往復する体験を味わわせる魅力がある。(116)
 
〈参考 K塾解答例〉
身体や自己が情報化される社会の中で、ふと不快感を抱く私たちは、苦痛を感じる自己の身体性を意識化させ、私たちと同様に虚構であるゾンビに自らの身体像を投影して同一化し、互いの虚構と現実を流動的に往復させてくれるゾンビ作品に魅力を感じているから。(120)
 
〈参考 Yゼミ解答例〉
現代人が電子化された仮想的身体に自己投影を行うとき、ゾンビは忘却されている身体を表象し、生々しい肉塊としての存在を認識させるが、同時にゾンビも仮想存在であるという二重性をもつため、そこに権力に管理・誘導される人間との類似性を出すから。(118)
 
〈参考 T進解答例〉
ゾンビは、情報化時代において忘却される身体性を意識させる表象であると共に、身体性と虚構性を併せ持つという人間との類似性を持っており、無意識レベルで身体イメージを投影させる虚構的他者として、相互作用の中で現実との流動的な往復を実現するから。(119)