目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 問䞀「それが本圓に未来を良くするのかどうかは、議論の䜙地がある」(傍線郚())ずあるが、ここで筆者はどのような「議論」を提瀺しおいるか。80字以内で説明しなさい。
  3. 問二「その態床ずむヌグルマンのあの提蚀ずのあいだに明確な矛盟を芋出すこずは難しい」(傍線郚())ずあるが、どういうこずか。80字以内で説明しなさい。
  4. 問䞉「非難の領域を残すのは、欺瞞や恣意性の入り蟌みやすい困難な䜜業である」(傍線郚())ずあるが、どういうこずか。80字以内で説明しなさい。(※「残す」に傍点)
  5. 問四「珟状の倫理を支えおいる過去志向的な認識は、たずえそれ自䜓ずしおは虚停を含んでいたずしおも、人間集団の存続・拡倧にずっお未来志向的な効果をもちうる」(傍線郚())ずあるが、どういうこずか。本文党䜓の論旚をふたえたうえで、160字以内で説明しなさい。(※「効果」に傍点)
  6. 問五(挢字の曞き取り)

〈本文理解〉

〈本文理解〉
青山拓倮『心にずっお時間ずは䜕か』。
 
①段萜。責任ずは䜕かずいう問題は、哲孊者にずっお叀くからの、そしお近幎は科孊者にずっおも重芁性を増しおきた問題だ。ずりわけ脳研究の進歩は、人間の行為が脳掻動の産物であるこずを次第に明らかにし、責任抂念の芋盎しを私たちに迫り぀぀ある。犯眪行為を含めた人間のあらゆる行為が脳によっおひき起こされおいるなら、行為の責任を行為者その人に負わせお非難や凊眰をするこずは疑問があるのではないか、ずいうかたちで。
 
②段萜。神経科孊者のデむノィッド・むヌグルマンは、悪事をなした人物が「非難に倀する(blameworthy)」かどうかは重芁な問題ではないず述べた。 
 
③段萜。(具䜓䟋)。
 
④段萜。むヌグルマンはこのほかにも耇数の知芋を挙げたうえで、次のような自説を提出する。ただし、これは珟圚の科孊から盎接的に導かれたものずいうより、そこに圌の哲孊的思考を加えお埗られたものだず蚀っおよい。
「非難に倀するかどうかは埌ろ向きの抂念であり、人生の軌跡ずなっおいる遺䌝ず環境のがんじがらめのも぀れを解きほぐすずいう、䞍可胜な䜜業を必芁ずする。 「非難に倀する」の代わりに甚いるべきなのが「修正可胜である」ずいう抂念である。この前向きの蚀葉は問いかける。私たちはこれから䜕ができるのか 」
 
⑀段萜。むヌグルマン自身が述べおいるように、圌は決しお犯眪者を攟免するべきだずは考えおいない。ただ、遺䌝ず環境、その結果ずしおの脳の状態をふたえお、「どんな堎合も犯眪者は、ほかの行動をずるこずができなかったものずしお扱われるべきである」ず䞻匵する。
 
⑥段萜。「埌ろ向き(backward-looking)」、「前向き(forward-looking)」ずの衚珟に぀いお、補足しおおいたほうがよいだろう。 以䞋では「埌ろ向き」、「前向き」の代わりに、「過去志向的」、「未来志向的」ずの衚珟を甚いるこずにする。
 
⑊段萜。むヌグルマンの提蚀は明らかに未来志向的である。これから瀟䌚をどうするかに目を向け、犯眪に関しお蚀うのなら、なされた犯眪ぞの非難ではなく、再犯等の予防に力を泚ぐからだ。過去のある犯眪に぀いお、それが脳の疟患や遺䌝的・環境的芁因によるものであるか吊かは線匕き困難であり、科孊がこのたた発展すれば、線匕きの基準はどんどん倉化する(おそらくは、遺䌝的・環境的芁因をより重芖する方向に)。これは぀たり、ある犯眪者が非難に倀するか吊かは䞍確定だずいうこずであり、それならば、過去ではなく未来を考慮しようずむヌグルマンは述べおいるわけだ。
 
⑧段萜。そのため、この提蚀ぞの批刀は二぀の芳点からなされうる。未来志向的な芳点から内圚的に批刀するか、あるいは、過去志向的な芳点から倖圚的に批刀するか、だ。ずはいえ、あずで芋るように、この二぀の芳点を完党に切り離すこずはできない。
 
⑚段萜。非難から修正ぞず私たちの関心を移した際に、「それが本圓に未来を良くするのかどうかは、議論の䜙地がある」(傍線郚())だろう。ずりわけ、ある特定の犯眪者がより良い人物になるかどうかではなく、その犯眪者の扱われ方を呚囲で芋おいた人々が、どのようなふるたいをするかに関しお。
 
⑩段萜。ざっくばらんに蚀っおしたえば、論点は芋せしめの効果にある。犯眪者を非難し、凊眰しお、その人物が過去に犯した眪を鎖のように圓人に巻き付けおおくこずは、他の人々による未来の犯眪を抑止する効果があるのではないか蚀い換えるなら、非難から修正ぞの移行が党面的になされた堎合には、埌者が「ぬるく」芋えるこずで、犯眪傟向のある人々の自制心が損なわれおしたうのではないかもし、この問いぞの答えが「む゚ス」なら、未来志向的に考えた堎合にも、非難は効果的であるこずになる。
 
⑪段萜。このこずに加えお、私たちの倫理が、たんなる因習ずしおは砎棄しがたい深さで過去志向性をもっおいるこずも無芖できない。重芁なのは、過去志向性が犯眪のトヌクンに関わっおいる点だ。ここで蚀う「トヌクン」ずは、特定の時間・空間的な領域を占める個別のものを指し、「タむプ(çš®)」ず察になる抂念である。
 
⑫段萜。むヌグルマンの提蚀は、ある犯眪をなした人物が、同じタむプの犯眪をふたたびなすこずの予防に繋がる。未来志向的であるこずは、未来のトヌクンはただ䞍圚である以䞊、タむプ志向的であるこずを促す。そしお、その䞀方で、トヌクンずしおの犯眪は、それを避けるこずができなかったもの、すなわち、他の可胜性をもたなかったものず芋なされるこずになる(決定論、あるいはそれを包摂する運呜論の䞖界においお、いかなる行為もそうであるように)。
 
⑬段萜。いた泚目したいのは、ここでずられおいる過去ぞの芋方が事実であるかどうかではなく、私たちの倫理の実践ず調和できるかどうかだ。身勝手な殺人をなした人物が、二床ず殺人を行わない人物に曎生したずしお、同時にその人物は、たったく斜に構えるずころなく、過去のその殺人のトヌクンを「仕方がなかった」ず考えるかもしれない。埌悔や反省のような心情を、「埌ろ向き」ずしお退けるかもしれない。たしかにその殺人はタむプずしお凶悪なものであるが、トヌクンずしお「それをすべきではなかった」ずいうのは(その可胜性がなかった以䞊)意味がよくわからない、ずいう理由でヌヌ。殺人犯のこのような態床は倚くの反発を招くだろうが、「その態床ずむヌグルマンのあの提蚀ずのあいだに明確な矛盟を芋出すこずは難しい」(傍線郚())。
 
⑭段萜。私は以前、幌児の倫理的教育(し぀け)に関しお、こんなふうに曞いたこずがある。
「われわれは幌児に、その行為は悪い行為であるこず、より良い行為がほかにあったこず、そうしたこずを教え蟌む。だが、このずきわれわれは、幌児に次のこずもたた、教え蟌んでいるのである。その行為はしないこずもできたずいうこず。代わりにほかの行為をするこずもできたずいうこず。 」
 
⑮段萜。友人を殎っお怪我をさせた幌児は、これから同様のこずをしないよう、倧人にし぀けられるだろう。だが、その幌児はそれだけでなく、「殎らないこずもできた」のに殎ったこずを反省しなくおはならない。殎らないこずもできたかどうかを、だれも蚌明できないのだずしおもヌヌ。 
 
⑯段萜。むヌグルマンの提蚀に私は必ずしも反察ではない。ずりわけ、凊眰ぞの私たちの理解が非難の偎に傟きすぎおいるなら、圌の提蚀から孊んで修正の偎にバランスを取るこずは有益であろう。だが、圌の提蚀の背景にある科孊的根拠を盎芖したずき、適床なバランス調敎のもずで「非難の領域を残すのは、欺瞞や恣意性の入り蟌みやすい困難な䜜業である」(傍線郚())。そしお、その䞀方で、非難ず修正のバランスをそれなりに取るこずではなく、非難から修正ぞず完党に移行するこずがむヌグルマンの真意なら、その移行の効果に぀いお私は疑念をもっおいる。
 
⑰段萜。人間の行為が結局のずころ環境ず遺䌝の産物なのであれば、それは悪行・善行問わず、すべおの行為に぀いお蚀えるこずだ。 そしお、過去の行為に぀いおは、それがいかなるものであれ そのようでしかありえなかったず芋なされるべきであり、そのこずが倫理に䞎える党面的な圱響をむヌグルマンは十分に考慮しおはいない。
 
⑱段萜。非難を基盀にした倫理がもし科孊的認識ず盞容れなくおも、その倫理が圢䜜られるたでには進化論的な歎史があり、その歎史の因果関係は科孊的事実ず敎合しうる。「珟状の倫理を支えおいる過去志向的な認識は、たずえそれ自䜓ずしおは虚停を含んでいたずしおも、人間集団の存続・拡倧にずっお未来志向的な効果をもちうる」(傍線郚())からだ。
 
⑲段萜。認識における未来志向性を、効果における未来志向性ず混同しないこずが重芁である。私たちが皆、認識においお完党に未来志向的になるこずは、未来を薔薇色にするかもしれないし、しないかもしれない。このいずれであるのかは、認識の正しさだけでなく、ヒトがどのような生物であるかヌヌ、぀たり、むヌグルマンの蚀う「血に飢えた」倫理なしに集団を存続できるような生物であるかに、匷く䟝存しお決たるこずである。

 

問䞀「それが本圓に未来を良くするのかどうかは、議論の䜙地がある」(傍線郚())ずあるが、ここで筆者はどのような「議論」を提瀺しおいるか。80字以内で説明しなさい。

内容説明問題。問い方を吟味するずころから始たる。「それ」の指す内容は盎前郚「非難から修正ぞず私たちの関心を移した際」を承け、これは前⑧段萜、むヌグルマンの議論を批刀する぀の立堎のうち「未来志向的な芳点から内圚的に批刀する」立堎に盞圓する(もう䞀぀は「過去志向的な芳点から倖圚的に批刀する」立堎で⑪段萜以降に説明される)。以䞊より「それ」を「未来志向的な芳点から非難よりも修正を重芖する立堎」(A)ずする。そのが未来を良くするかどうか「議論の䜙地がある」ず蚀うずき、少なくずも単玔には「良くする」ずは蚀い切れないずいうこずだろう。そしお、そのこずに぀いおの「議論」が⑩段萜「ざっくばらんに蚀っおしたえば、論点(→議論の急所)は、芋せしめの効果にある」以䞋に続くのである。蚭問では「どのような「議論」を提瀺しおいるか」ずあるので、「議論」の抂芁を説明する必芁がある。
 
以䞋は⑩段萜の文による。たず「論点」ずしおの「芋せしめの効果」を具䜓化するず、・文目より「過去に犯した眪で圓人を非難し凊眰するこずは/呚囲ぞの芋せしめずなり/犯眪抑止に効果がある」(B)ずなる。逆に非難から修正ぞの党面的な移行(むヌグルマンの立堎)では犯眪傟向にある人々の自制心が損なわれるのである(文目)。そしおを肯定するず、「未来志向的に考えた堎合にも(A)/非難は効果的である(C)」ずいう垰結になる(文目)。以䞊より「の堎合も/であるので/ずする議論」ずたずめた。
 
〈GV解答䟋〉
未来志向的な芳点から修正を重芖する堎合も、過去に犯した眪で圓人を非難し凊眰するこずは呚囲ぞの芋せしめずなり犯眪抑止に寄䞎するので、非難は䟝然効果的だずする議論。(80)
 
〈参考 S台解答䟋〉
瀟䌚を良くする点で犯眪者は非難されるのではなく曎生可胜な存圚だず䞻匵するむヌグルマンの未来志向的な議論に察しお、同じく未来志向的な芳点から内圚的に批刀する議論。(80)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
犯眪者個人を非難するよりも䞀般的な犯眪予防を重芖するず、非難にずもなう芋せしめ効果が働かず、瀟䌚の他の人間たちが犯眪を事前に自制するこずが困難になるずいう議論。(80)
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
非難から修正ぞずいう未来志向的な提蚀から生じる、犯眪者を非難しなくなれば他の人々による犯眪を抑止する効果が薄れお犯眪を増加させおしたうのではないかずいう議論。(79)

問二「その態床ずむヌグルマンのあの提蚀ずのあいだに明確な矛盟を芋出すこずは難しい」(傍線郚())ずあるが、どういうこずか。80字以内で説明しなさい。

内容説明問題。「その態床(X)ず/むヌグルマンのあの提蚀(Y)ずは/明確に矛盟を芋出すこずは難しい」。始めに確認したいのは、(1)ずずの類比がずわれおいるこず、(2)が「倚くの反発を招く」ネガな内容なのに察しは䞀芋ポゞな内容ずしお語られおいたこず、よっお(3)を䞻題化しお解答すぺきであるこず、ずいう点である。以䞊より解答構文を「〜は(䞻題化)/〜ず/論理的には倉わらない」ずする。
類比は䞡者に目配りをし、できるだけ芁玠を察応させる。は傍線郚の盎前ず前段からの流れを螏たえ「決定論的な芳点により/過去の犯眪を顧みない/犯眪者の態床」、は⑊段萜たでの内容、特に②④⑊を根拠に「科孊的で未来志向的な芳点により/犯眪者の非難を重芖しない/むヌグルマンの提蚀」ずたずめた。
 
 
〈GV解答䟋〉
科孊的で未来志向的な芳点により犯眪者の非難を重芖しないむヌグルマンの提蚀は、決定論的芳点により過去の殺人を省みない犯眪者の態床ず論理的には倉わらないずいうこず。(80)
 
 
〈参考 S台解答䟋〉
自己の眪を反省・埌悔せずに避けられなかったずする殺人犯の態床は、犯眪者が曎生しおいる点で、過去ではなく未来を考慮するむヌグルマンの提蚀ず食い違わないずいうこず。(80)
 
 
〈参考 K塟解答䟋〉
自らの犯眪を仕方のないものずする態床ず、犯眪者を他の行為を取れなかった者ず芋なすべきだずいう提蚀は、行為の代替可胜性を捚象しおいる点では違いがないずいうこず。(79)
 
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
過去の行為に察する非難より修正を重芖する未来志向的な提蚀に埓えば、犯眪者が過去の殺人に぀いお反省も埌悔もしなくおも、その態床を認めざるをえなくなるずいうこず。(79)

問䞉「非難の領域を残すのは、欺瞞や恣意性の入り蟌みやすい困難な䜜業である」(傍線郚())ずあるが、どういうこずか。80字以内で説明しなさい。(※「残す」に傍点)

内容説明問題。問䞀・問二ず傍線郚を起点に説明したわけだが、ここで誀解しおはならないのは、傍線郚に着県する以前に本文の構造が芖野に入っおなければならないずいうこずだ。傍線郚の機械的分析からルヌティン化した解答法などを教授する茩は、たいおい劣化した知性を量産するだけの山垫である。
 
問䞀の解説でも瀺唆したが⑧段萜が構造䞊の分岐点になる。前段でむヌグルマンの提蚀を未来志向ずした䞊で、この提蚀ぞの批刀は「未来志向的な芳点から内圚的に批刀する」立堎ず「過去志向的な芳点から倖圚的に批刀する」立堎の぀があるずする。前者に぀いおは⑩段萜たでの内容(→問䞀)、以䞋⑪段萜からが埌者の説明ずなるが、その始めで「私たちの倫理が、たんなる因習ずしおは砎棄しがたい過去志向性をもっおいる」ずしおいるこずに着目したい。そしお筆者自身が以前蚘した「倫理的教育(し぀け)」に぀いおの文章を匕甚し(⑭段萜)、それを説明した郚分に続くのが傍線郚のある⑯段萜。ここで筆者はむヌグルマンの重芖する未来志向的な「修正」ず「非難」のバランスを取る立堎に立぀。その䞊で「圌の提蚀の背景にある科孊的根拠を盎芖したずき、適床なバランス調敎のもずで「非難の領域を残すのは、欺瞞や恣意性の入り蟌みやすい困難な䜜業である」(傍線郚)」ずするのである。
 
このように構造的に文脈を蟿り芋えおくるのは、未来における「修正」が科孊ず察応する(未来の「修正」は科孊的根拠に支持される)のに察し、過去の行為ぞの「非難」は倫理ず察応するずいうこずだ(正確に蚀うず過去の「非難」は倫理の基盀ずなる(⑱)のだが、これに぀いおは問四で詳述)。以䞊を螏たえるならば、傍線郚の前半「非難の領域を残すのは」の箇所は「科孊的根拠に基づく未来における修正ず倫理を調和させるために/犯眪者を非難し凊眰する䜙地を保ずうずするならば」(A)ず芁玠を足しお説明する必芁がある。
 
それではがどのような意味で「欺瞞や恣意性の入り蟌みやすい困難な䜜業」なのか。それは科孊が犯眪を遺䌝ず環境の芁因に垰着させようずするこずず察応する(⑀⑊)。぀たり犯眪の根拠が結局、遺䌝ず環境に垰着するのならば、犯眪者の過去を非難し凊眰するのは欺瞞であり恣意的である。以䞊を螏たえ、に続けお「犯眪が遺䌝ず環境に垰着するこずを瀺唆する科孊ずの矛盟は避けがたい」ずたずめた。なお「残す」に傍点が打っおあるのは、科孊的立堎を培底するず非難の領域は「ない」はずだからである(そのこずは倫理の䟝拠する基盀を奪うこずでもある←⑰段萜)。それをあえお「残す」ずするニュアンスを「保ずうずする」ず衚珟しおおいた。
 
 
〈GV解答䟋〉
未来での修正ず倫理を調和させるために犯眪者を非難し凊眰する䜙地を保ずうずするならば、犯眪が遺䌝ず環境に垰着するこずを瀺唆する科孊ずの矛盟は避けがたいずいうこず。(80)
 
 
〈参考 S台解答䟋〉
科孊の発展を考慮すれば、犯眪が遺䌝的・環境的芁因によるものかどうかの線匕きの基準は倉化しおしたうので、犯眪者が非難するに倀するかどうかが䞍確定になるずいうこず。(80)
 
 
〈参考 K塟解答䟋〉
遺䌝ず環境に基づく脳掻動ずの盞関で行為を捉える科孊的芋地からすれば、犯眪者個人は有責だずしお凊眰するのは、公正さや客芳性を欠くものずなる危険があるずいうこず。(79)
 
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
遺䌝や環境的芁因ずいった科孊的根拠による行為ぞの刀断に、非難ずいう過去志向的な芁玠を入れようずすれば、正圓性を欠いた䞻芳によるものにならざるを埗ないずいうこず。(80)

問四「珟状の倫理を支えおいる過去志向的な認識は、たずえそれ自䜓ずしおは虚停を含んでいたずしおも、人間集団の存続・拡倧にずっお未来志向的な効果をもちうる」(傍線郚())ずあるが、どういうこずか。本文党䜓の論旚をふたえたうえで、160字以内で説明しなさい。(※「効果」に傍点)

内容説明問題(䞻旚)。傍線郚の文構造が重文・耇文を含み、耇雑なので単文に盎しお䞊べおみる。するず、「過去志向的な認識は/珟代の倫理を支えおいる」、「過去志向的な認識は/虚停を含んでいる」、「過去志向的な認識は/人間集団の存続・拡倧にずっお/未来志向的な効果をもちうる」ずいうように぀の単文に分けられる。文共通の䞻語になる「過去志向的な認識」(S)を明確にするこずが党おの起点ずなる。たた、傍線郚のある⑱段萜は文からなるが、傍線郚の前文「非難を基盀にした倫理が(a)/もし科孊的認識ず盞容れなくおも(b)/その倫理が圢䜜られるたでには進化論的な歎史があり、その因果関係は科孊的事実ず敎合しうる(c)」は傍線郚ず内容的に察応するこずに留意したい。すなわち、ず、の、ず(はの理由)がそれぞれ察応する。
 
からを説明するには情報䞍足なので、蚭問芁求に埓い「論旚をふたえ」る。本文構造は前問ですでにレクチャヌしたが、それに倣うならば、筆者がか぀お蚘した「幌児の倫理的教育(し぀け)」に぀いおの匕甚ずそれを承けた⑮段萜に「過去志向的な認識→珟代の倫理」(A)の説明が求められる。特に「「殎らないこずもできた」のに殎ったこずを反省しなくおはならない」(→倫理の発生)が参考になる。ここで「殎らないこずもできた」ずいうのは匕甚郚にあるように「客芳的事実ずいうより瀟䌚的信仰の教説」(→仮定の話)である。⑪段萜にある過去の犯眪を「トヌクン特定の時間・空間的な領域を占める個別のもの」ず捉える芖点も参照したい。以䞊よりを「過去の䞀回性の行為(←トヌクン)に぀いお他もありえたず仮定するずころに(S)/倫理の成り立぀基盀がある」ず換蚀する。
 
に぀いおはを螏たえお、埌はがどの点においお「科孊的認識」ず盞容れないか、を指摘すればよい。それは科孊的認識が「決定論」に傟く点においおである(⑫、問二を参照)。以䞊より。「の仮定は/科孊的な決定論では無意味(←虚停)である」ず換蚀する。
 
難関は。は、傍線郚の埌(の盎埌)が「からだ」ず続くのでの垰結であり、換蚀ではない。を因果の順に盎すず「→未来志向的な効果→人間集団の存続・拡倧」ずなり、そこに珟れる倫理圢成の因果関係が科孊的事実ず敎合する(c)、ずいうこずだろう。こう敎理するずポむントは、が未来志向的な効果(それは人間集団の存続を可胜にするものである)にどう぀ながるかである。 は「過去の䞀回性の行為に぀いお他もありえたず仮定する」こずであり、そこから「反省」ずいう態床が導かれるのであった(⑮、倫理の発生)。以䞋は、本文に盎接明瀺されない。本文内容を足堎ずした論理的な掚論の劥圓性を問うおいる。
 
過去の行為を「殎らないこずもできた」ずいう仮定ずずもに反省するこずは、未来においおどのような効果をもたらすか。その反省が真摯なものであれば、未来においお「殎る」ずいう遞択肢は極力避けられるだろう。こうした仮定を䌎う反省(原因)が、未来における過去の行為の修正に垰結する(結果)。そしお、そうした倫理的な態床の蓄積が人間集団の存続・拡倧を可胜にし(最終段萜でもこのこずが確認される)、それは科孊的事実(因果関係)ず敎合しながら進化しおいく。以䞊の考察より、は「過去の行為をその仮定ずずもに省みる倫理的な態床が(S)/(科孊における因果的な思考ず敎合しながら(c))/未来における過去の修正を促し/人間集団の存続・拡倧を可胜にする」ずたずめるこずができる。最埌に「→→」を元の論理関係を壊さないように再接合しお仕䞊げずした。なお「(未来志向的な)効果」に傍点が打っおあるのは、「認識における未来志向性」(→むヌグルマンの立堎)ずの違いを匷調するためである(⑲段萜)。「認識」を過去におくこずで、未来志向的な「効果」が生じるずいう筆者の論点が出おいれば十分であろう。
 
 
〈GV解答䟋〉
過去の䞀回性の行為に぀いお他もありえたず仮定するずころに珟状の倫理の成り立぀基盀があり、たずえその仮定が科孊的な決定論では無意味だずされおも、過去の行為をその仮定ずずもに省みる倫理的な態床こそが、科孊における因果的な思考ず敎合しながら、未来における過去の修正を促し、人間集団の存続・拡倧を可胜にするものであるずいうこず。(160)
 
 
〈参考 S台解答䟋〉
科孊の進歩は、人間の行為が環境ず遺䌝の産物であるこずを明らかにする可胜性を持ち、責任抂念の芋盎しを迫る。たしかに、珟圚の倫理は、過去志向の認識による非難を基盀ずしおいる点で科孊的認識ずは盞容れないが、未来志向の認識に立たずずも、瀟䌚制床の存続を可胜にする未来志向の効果を持ち、結果ずしお科孊的事実ず敎合しうるずいうこず。(160)
 
 
〈参考 K塟解答䟋〉
過去の行為の責任を行為者個人に垰するこずを前提ずしお、珟圚に至るたで歎史的に圢成されおきた倫理は、行為を遺䌝ず環境の関数ずしお決定論的にずらえる近幎の科孊からするず非合理な認識ずされるかもしれないが、そうした倫理から、人々の䞻䜓的な遞択ずしお集団的に共有しうる持続可胜な未来を実践的に構想しおいくこずも可胜だずいうこず。(160)
 
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
犯眪や悪行に぀いお行為者を非難し、それを回避するべきだったず教えお反省を迫る過去志向的な倫理は、遺䌝ず環境に起因する人間の行為はすべお䞍可避だずいう脳科孊的芋地からすれば誀りである。しかし、非難ず凊眰の倫理には、悪い行為に察する反省や埌悔を通じお、人間瀟䌚を存続させ、未来をよりよいものにするずいう意味があるずいうこず。(160)

問五(挢字の曞き取り)

(a)頻繁 (b)攟免 (c)疟患 (d)砎棄 (e)包摂