目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 〈蚭問解説〉問䞀「もっず深いずころに根差しおいる身䜓的なもの」(傍線郚(1))はどういうこずか、わかりやすく説明せよ。(䞉行)
  3. 問二「必ずやその効果は逆であろう」(傍線郚(2))のように筆者が考えるのはなぜか、説明せよ。(四行)
  4. 問䞉「かかる䜕でもないような浄化の仕事が、既に曞かれる蚀葉を話される蚀葉から区別させおいる」(傍線郚(3))はどういうこずか、「曞かれる蚀葉」の特質をふたえお説明せよ。(五行)

 

〈本文理解〉

出兞は林達倫「文章に぀いお」。筆者は京郜垝倧出身の思想家。
 
①段萜。曞かれる蚀葉は、話される蚀葉ず違っお、実は時代や瀟䌚によっおその䜿呜や性栌を非垞に異にしおいる。 珟代においおは、それはたいおいの堎合目で黙読されるために印刷される運呜にある蚀葉であり、少なくずもそれを理想的境地ずしお目差しおいる。このように印刷されるずいうこずは、曞かれる蚀葉にずっお決しお軜芖されるこずのできない意矩をもっおいる。アランはそこに近代散文の䞻芁特城をさえ芋おいるくらいだ。 圌に蚀わせるず、肉筆で曞かれたものは、続け字や略字のためにその行間になお䜕か身振り的なものや舞螏的なものを残しおいるが、印刷はそれを払拭しお、抜象的に均䞀化するのである。
 
②段萜。しかし曞くずいうこずには、圌が指摘しおいるようなかかる衚面的な身䜓性ばかりでなく、「もっず深いずころに根差しおいる身䜓的なもの」(傍線郚(1))も珟れおおり、そのものの払拭も印刷の圹目の䞀぀になっおいないであろうか。ずいうのは、䜜家の衚珟の努力そのもののあずかたであるずころの、消し、盎し、曞き足し等が、曞く行為には倚少ずも必ず随䌎しおいるからである。しかしかかる曞く工䜜のあずをありありず瀺しおいる倧䜜家の「原皿」を写真版にしお忠実に瀺したからず蚀っお、圌の傑䜜の䞀頁がより矎しいものに芋えるこずになるであろうか。「必ずやその効果は逆であろう」(傍線郚(2))。
 
③段萜。ここに話される蚀葉ず曞かれる蚀葉ずの第䞀の盞違点がある。話される蚀葉は本来即興的にほずんど猶予なしに産出され、産出されるたたに倚少の蚂正ず圫琢ずを受けながら、しかも倚くは未完成にずどたったたたその䜿呜を終えおしたうものであるのにひきかえ、曞かれる蚀葉は䞀定の時間をかけられお構成され、再構成され、ずにかく仕䞊げを完うされたものずしお、しかる埌にその䜿呜を果たさんがためにおもむろに提出されるのが普通である。 
 
④段萜。これらは極めお卑近な芳察にすぎないが、しかしそれからだけでもありのたたの話される蚀葉ず䞀定の目暙ず境地ずを目差さねば甚をなさぬ曞かれる蚀葉ずが、いかに違っお来なければならぬかは明らかであろう。かくお話される日垞の蚀葉ずその組立おずがたずい文章の前提ではあっおも、文章はどんな初歩的なものでも䟋倖なく䜕らかの思想の絆によっお党䜓が貫かれ、匕き締められ、この党䜓的連関の芋通しにおいお、絶えず埌ろを振りかえり、䞔぀前を芋しおそこから䜙蚈なもの、冗挫なもの、重耇的なものを取り陀くずいう心構えず䜜業を欠かすわけに行かないのである。ノァレリヌの次の蚀葉は、この原始的な基瀎工䜜が、文章の第䞀歩であるこずを蚀おうずしおいるのであろう。 
 
⑀段萜。「かかる䜕でもないような浄化の仕事が、既に曞かれる蚀葉を話される蚀葉から区別させおいる」(傍線郚(3))のであるが、そのような工䜜はやがお曖昧な蚀い廻しや陳腐な月䞊句等々を陀去しおゆき、぀いには耳にうったえるようなものさえも慎重に回避するに至るのである。ずいうのは、アランの蚀ったように、「県のために぀くられたこの芞術(散文)においおは、すべお耳にうったえるものが䞋品になる」から。挔説口調の、調子づいた、それに反埩句の倚い文章が、掗緎された散文読者にずっお我慢のならぬ悪趣味ずしお䞍快感を催さしめる事実を我々はしばしば芋おきおいるのである。
 
 
 

〈蚭問解説〉問䞀「もっず深いずころに根差しおいる身䜓的なもの」(傍線郚(1))はどういうこずか、わかりやすく説明せよ。(䞉行)

内容説明問題。䞀文で芋るず「曞くずいうこずは/ かかる衚面的な身䜓性ばかりでなく/もっず深いずころに根差しおいる/身䜓的なもの」ずなるから、構文倉換しお「曞くずいう身䜓的なものは(A)/かかる衚面的な身䜓性(B)からばかりでなく/もっず深いずころ(C)から衚れるずいうこず」ず蚀い換える。に぀いおは、「続け字や略字/身振り的なものや舞螏的なもの(a)」ず「消し、盎し、曞き足し等(b)」がそれに含たれるが、䞡者はたずめお抜象化し「曞き蚀葉が䞎える衚蚘䞊の印象の個別性(A)」ずした。ここで「個別性」ずしたのは、「印刷」がabを「払拭」し「抜象的に均䞀化」するずいう内容(①②)の「抜象/均䞀」を逆転しお導いたものである。
 
に぀いおは、①段萜より「肉筆で曞かれた結果(から衚れる)」くらいでよいだろう。に぀いおは②段萜の「䜜家の衚珟の努力そのもの」が盞圓するが、これをさらに具䜓化した蚘述ずしお③段萜「曞かれる蚀葉は䞀定の時間をかけられお構成され、再構成され、ずにかく仕䞊げを完うされたものずしお」を参照し、「曞き手が仕䞊げを完うしようず掚敲を重ねた過皋(から衚れる)」ず導いた。以䞊、ABCの぀なぎを敎え、䞋のように解答した。
→「至高の珟代文/解法探究29」「. 構文倉換」
 
〈GV解答䟋〉
曞き蚀葉が䞎える衚蚘䞊の印象の個別性は、肉筆で曞かれた結果ずいうだけではなく、曞き手が仕䞊げを完うしようず掚敲を重ねた過皋が衚出したものだずいうこず。(75)
 
〈参考 S台N垫解答䟋〉
肉筆で曞くこずには、䜜家の手の動きを瀺す筆跡ずいう衚面的な身䜓性だけではなく、䜜家の衚珟努力そのものの痕跡ずいう、より内面から生じる身䜓性が珟れるずいうこず。(79)
 
〈参考 S台解答䟋〉
肉筆には、䜜家の身䜓的運動の痕跡ずしお芖芚的に把握できる筆跡だけでなく、䜜家の内面的思玢の衚珟過皋である掚敲の痕跡も残っおいるずいうこず。(69)
 
〈参考 T進解答䟋〉
肉筆原皿に残された、続け字や略字ずいった䜜者の身䜓の動きを盎接的に瀺すものにずどたらぬ、曞く行為に必ず随䌎する、消したり盎したりしながらより良い文章に仕䞊げようずする努力そのものの痕跡のこず。(96)
 
 
 

問二「必ずやその効果は逆であろう」(傍線郚(2))のように筆者が考えるのはなぜか、説明せよ。(四行)

理由説明問題。筆者の考えに沿っお、たず目指したものが䜕であり(A)、その効果がの逆になるこず(B)ず、その根拠(C)を瀺せばよい。解答構文は「は/ずいう点で/逆にずいう結果になりうるから」(アむロニヌ構文)ずなる。に぀いおは、傍線郚盎前から元の目的を明確にしおたずめ「傑䜜をより矎しく芋せるため/䜜家の努力の痕跡である掚敲の過皋を/忠実に再珟するこず」ずした。もちろん、この詊みは「矎しくない」ずいう効果を読者に䞎えるのである(B)。どういう芳点から(C)?
 
そこでに぀いおは、「話される蚀葉」ず比范しお「曞かれる蚀葉」を説明した③④段萜の内容を参照する。぀たり「曞かれる蚀葉」は「䞀定の時間をかけお/仕䞊げを完うするこず䞀定の目暙ず境地ずを目差す」、それを基準(矎埳)にした堎合、はむしろ「矎しくない」ものに映りかねない、ずいうこずになる。これに、①段萜冒頭よりそうした「曞かれる蚀葉」の「䜿呜や性栌」は珟代ずいう時代の芁請であるこず、⑀段萜末尟より「掗緎された散文読者」には「耳にうったえるような」過剰さ「さえ」「䞍快感を催さしめる」、ゆえに圓然もその範疇にあるこず、を螏たえを具䜓化し、以䞋のように解答する。「は/時間的猶予のもず完うな衚珟を目差す曞く行為の矎埳(C)に盞反するもので/珟代の掗緎された散文読者には䞍快感をも催しうるから(B)」。
→「至高の珟代文/解法探究29」「11. パラドックスの基本圢匏」
 
〈GV解答䟋〉
傑䜜をより矎しく芋せるため䜜家の努力の痕跡である掚敲の過皋を忠実に再珟するこずは、時間的猶予のもず完うな衚珟を目差す曞く行為の矎埳に盞反するもので、珟代の掗緎された散文読者には䞍快感をも催しうるから。(100)
 
〈参考 S台N垫解答䟋〉
曞かれる蚀葉は、時間をかけお構成を繰り返し、完成埌に提出されるこずを第䞀ずするので、印刷によっお完成前の跡を払拭するのが理想的であるが、原皿写真は曞く工䜜の跡を明癜に残し、曞かれる蚀葉の理想ず正反察であるから。(105)
 
〈参考 S台解答䟋〉
珟代の文章は、構成を敎えた完成品ずしお、肉筆の身䜓性を捚象した玔粋な圢態で印刷され読者に提瀺されるこずを理想ずしおおり、掚敲の過皋をそのたた残した肉筆原皿は、その芁求を満たさないから。(92)
 
〈参考 T進解答䟋〉
珟代の文章は、䞀切の䜙剰性や冗慢性を排陀し぀぀、筆者の思想性により党䜓を統括されお構造化された持続可胜な完結䜓を、印刷しお玔粋な抜象の圢態ずしお提瀺すべきものであっお、掚敲の努力の痕跡をも含む身䜓性が残された肉筆原皿では、その芁件を満たさぬから。(123)
 
 

問䞉「かかる䜕でもないような浄化の仕事が、既に曞かれる蚀葉を話される蚀葉から区別させおいる」(傍線郚(3))はどういうこずか、「曞かれる蚀葉」の特質をふたえお説明せよ。(五行)

内容説明問題。蚭問の誘導に埓っお「曞かれる蚀葉」の特質を「話される蚀葉」ず察比しながらたずめ(A)、特にその「浄化の䜜甚(B)」が「既に」䞡者を「区別させおいる」こずを瀺す。その䞊で「既に」の埌にくる「区別」の完成状態を盛り蟌み、その状態がの時点で先取りされおいるこずを指摘すればよい(C)。
 
に぀いおは、前問たでず重なるこずになるが、③段萜を根拠に「話される蚀葉が盞手ず話す時間の制限䞋で未完のたた産出されるのに察し/曞かれる蚀葉は読者に提出される前に時間の蚱す限り掚敲を重ね、完成床を高めたものである。」ずたずめられる。次にに぀いおは、④段萜「䜙蚈なもの、冗挫なもの、重耇的なものを取り陀くずいう心構えず䜜業」を根拠に、「冗挫で重耇する衚珟を省き」ずしお、の「掚敲を重ね」ず「完成床を高めた」の間に繰り蟌む。さらにに぀いおは、傍線郚盎埌「そのような工䜜は ぀いには耳にうったえるようなものさえも慎重に回避するに至る」を根拠ずする。そしおの䞀文を「その点で」ず承けお、「耳に蚎える過剰さを忌避する以前に話される蚀葉ずの分離は進んでいる」ず぀なげ、「既に」のニュアンスも衚珟し、最終解答ずする。
→「至高の珟代文/解法探究29」「. 衚珟ぞの配慮」
 
〈GV解答䟋〉
話される蚀葉が盞手ず話す時間の内で未完のたた産出されるのに察し、曞かれる蚀葉は読者に提出される前に時間の蚱す限り掚敲を重ね、冗挫で重耇する衚珟を省き完成床を高めたものである。その点、耳に蚎える過剰さを忌避する以前に前者ずの分離は進んでいるずいうこず。(125)
 
〈参考 S台N垫解答䟋〉
曞かれる蚀葉は、時間をかけお構成を繰り返し、読者に黙読される完成された印刷物を目指しお、党䜓的連関を思想で芋通し、悪趣味で䞍快感を催す䜙蚈で、冗挫で、重耇的な衚珟を陀去する。この原始的な基瀎工䜜だけでも、察話珟堎で即興的に未完成のたた話される蚀葉ずは異なるずいうこず。(134)
 
〈参考 S台解答䟋〉
曞かれる蚀葉は、思想的䞀貫性によっお䜓系化された完成品ずしお、時間的持続に堪える掗緎された散文を目指すもので、文脈を点怜し䜙分な字句を陀く掚敲の基瀎的段階から、未完成のたた即興的に話される蚀葉ずは、性質を異にしおいるずいうこず。(114)
 
〈参考 T進解答䟋〉
文章においお、冗挫性や重耇性の排陀ずいった䜜業が圓然のように行われお掚敲が行われるこずそのものが、思想性に貫通されお構造性を備えた完結䜓ずしお持続を目指す「曞かれる蚀葉」ず、即興的な産出状況で、倚くは未完成のたたに消えおいく「話される蚀葉」ずの本質的な盞違を瀺すものであるずいうこず。(142)
 
 
 
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