〈本文理解〉

出兞は暺山玘䞀『情報の文化史』。
前曞きに䞭䞖のペヌロッパ瀟䌚でさたざたな情報がいかに䌝達され、共有されたかを考察した文ずある。

①②段萜。マむクロフォンずスピヌカヌによっお、人声を同時に倚人数に䌝達ができるようになるたえ、ひずはいったいどうやっお意思を぀うじあっおいたのだろうか。 盎接、肉声をもっお語りかける挔説や説教ずなるずどうだろう。はたしお、発蚀の趣旚は正確に䌝えられたのか。 適切な文曞による䌝達が存圚しなかった䞭䞖の時代ずなれば、たすたす絶望的だ。人々は、䞍正確な理解にもずづき、むやみず感動したり、䟮蔑を発したりしおいたこずになろうか。 

③④段萜。だが、蚘録が蚌蚀しおいるずころによれば、肉声による音声通信は、かなり効果的におこなわれたらしい。(扇圢に声の通信が拡倧しおいく䟋)。けれども、盎接の肉声告知のケヌスも倚い。(犁什を觊れたわる圹人、魂の内面を語る聖職者の䟋)。

⑀⑥段萜。想像するずころ、かれら䞭䞖人たちは、いたのわたしたちず段違いの耳をもっおいたようだ。そのころ、人間瀟䌚は音にみちた䞖界をいずなんでいた。䞭䞖の路䞊には、家畜の鳎き声も子䟛たちのはしゃぎ声も、乞食する蚎え声も、時を぀げる鐘の音も。どれもが、雑然ず空間を぀たわっおいった。けれども、人びずは、その音ず声のすべおを子现に聞きわける胜力をずぎすたせおいた。どんなに倚数の音源があっおも、雑音・隒音ずいうべきものはありえなかった(傍線郚(1))。私語する倧衆泣きむずかる赀児などたるで関知せぬがごずくに、かれらは説教垫のこずばを択びわけおいた。音声ひず぀ひず぀に意味がみちあふれおいた時代、そのずきこそ、音声の通信は機械的方法の揎けをうけずに、数癟、数千人の耳をずらえたのであろう。

⑊⑧段萜(写本)。むろん、そのころ、情報を正確に蓄蔵し、空間ず時間ずをこえお䌝達する手段は、ないわけではなかった。たずえば、曞物。矊皮玙やパピルス玙は、しっかりずした文字を盛られお、重甚された。専門の筆写生たちは、䞁寧なペン䜿いで、写本を耇補しおいった。軜量化された玙は、運搬され、愛蔵されお、遠い堎所、遠い時間のかなたに送達される。写本は通信手段ずしお、かなり掗緎された利噚ずなった。もっずも、写本はただの通信手段ではない。䞭䞖写本には、しばしば、みごずな现密挿画がくわえられた。むニシャル文字には、凝った装食が぀けられた。写本はそれ自䜓、ひず぀の芞術品である。備忘録のように走り曞きされた玙片ずはちがっお、写本はモノずしおの重みを兌備した財宝である。矎しさず䟿利さずは、分離できぬ䞀䜓ずなっおいたのである(傍線郚(2))。

⑚⑩段萜(曞簡)。そのころ、特別な知的胜力をも぀ものは、みずからも著䜜を曞いた。その著䜜は、写本ずしお耇補され、流通しおいった。けれども、このような顕著な思想䌝達のほかに、もっず倚くの通信が䞭䞖瀟䌚をずびかったはずだ。おそらく、文字が䜿甚される堎合のほずんどは、著䜜ではなく、曞簡であっただろう。自分では満足に文字を぀かいかねる王䟯貎族たちは、祐筆(代筆者)をはべらせお、手玙を぀づらせた。か぀おの時代の手玙を、いた目前にするず、堎ず時ずを異にする盞手にたいしお、意を正確に䌝えようずする、぀よい通信欲求が、うかびあがっおくる。

⑪⑫段萜(絵画)。写本ず曞簡のように、文字ばかりが通信甚の蚘号ではなかった。絵がある。矊皮玙や教䌚堂の壁のうえに、絵は物語を衚珟しおいた。近代の絵画のように、絵そのものが察象を描写するずいうこずはたれだった。絵には明瞭な語りが秘められおいた。絵画は鑑賞されるものではなく、解読されるものだった。あたりに皚拙な衚珟もあるが、しかしそれは画家の胜力䞍足のゆえではない。画家にずっおの関心は、忠実な察象写圱にはなく、蚘号ずしおの物語衚珟に集䞭されおいた(傍線郚(3))。

〈蚭問解説〉問䞀 雑音・隒音ずいうべきものはありえなかった(傍線郚(1))はどのようなこずを蚀っおいるのか、説明せよ。(䞉行䞀行25字)

内容説明問題。留意点は぀。傍線の文末がなかったずいう吊定衚珟になっおいるから、ず察応する積極的芏定(B)に反しお答えるのが定石だが(ないある倉換)、ここでは雑音・隒音ずいうべきもの(A)を蚀い換えお説明したいずころ。これず関連しおもう぀は、傍線前(けれどもの前)にどれもが、雑然ず空間を぀たわっおいったずあるこずから、実際は今でいうべきずころの雑音・隒音は珟象しおいるのである。ただ、ペヌロッパの䞭䞖人には、それがずしお認識されおいなかったのだ。

たず同⑀段萜より、ペヌロッパの䞭䞖人は、䞭䞖郜垂の路䞊に/みちた/雑然ず空間を぀たわっおいた音を、子现に聞き分けおいた(B)。これによりは認識されなかったのである。䞀方に぀いおは、雑然ずした/耳障りな/音の塊(語矩)を栞ずしお、同䞀意味段萜④段萜の音声ひず぀ひず぀に意味がみちあふれおいた時代(侭侖)を逆利甚しお、意味を䌝えないずいう圢容を加える。解答の圢は、なので/は存圚しなかった。どのようなこずを蚀っおいるのかずいう問い方の配慮からも、想定字数からも、傍線の逐語蚳的な換蚀ですたせおはならないのは自明であろう。

<GV解答䟋>
ペヌロッパの䞭䞖人は、路䞊に満ちた倚様な音の䞭から必芁な音を子现に聞き分けたので、意味を䌝えず雑然ず聞こえる耳障りな音の塊は存圚しなかったずいうこず。(75)

<参考 S台解答䟋>
珟代人よりはるかに優れた聎力をも぀䞭䞖人は、倚数の音源から雑然ず䌝わる倚様な音を子现に聞きわけ、すべお意味ある音声ずしお把握しおいたずいうこず。(72)

<参考 K塟解答䟋>
肉声による通信や倚様な音声が日々の営みを支え、人々も音声を詳现に聞き分ける胜力を発達させおいた䞭䞖においお、無意味な音声など存圚しなかったずいうこず。(75)

問二 矎しさず䟿利さずは、分離できぬ䞀䜓ずなっおいたのである(傍線郚(2))はどのようなこずを蚀っおいるのか、説明せよ。(䞉行䞀行75字)

内容説明問題。傍線内容ずしおは(䞭䞖写本の)矎しさ(A)ず(䞭䞖写本の)䟿利さ(B)を説明し、それが分離できぬ䞀䜓(C)であるず締める。に぀いおは、特に蚀い換える必芁はないようだが、実はここにポむントがある。ずを䞊べるだけではなく、その必然的な結び付き(C)を説明する必芁があるのだ。本問も問䞀ず同様、問いの圢匏からも想定字数からも、単なる逐語的な換蚀を求めおいるわけではないのである。

たずに぀いおは⑊段萜を参照する。ただ、こちらを芋るだけでは、の内容ずしお盛り蟌むべき範囲は定たらない。あくたで、分離できぬ盞方である(⑧段萜)ずの関係で、の範囲を決めなければならない。ずしおの写本は情報を正確に蓄蔵/空間ず時間ずをこえお䌝達する手段である。それは重甚され/運搬され/軜量化された/利噚でもある。䞀方、ずしおの写本は现密挿画や凝った装食がくわえられた/芞術品/モノずしおの重みを兌備した財宝であった。

そこで䞡者の必然的な関係性(C)だが、備忘録のように走り曞きされた玙片ずはちがっお(⑧)ずいう蚘述が参考になる。備忘録が自分に向けおのものなら、写本は堎ず時ずを異にする盞手(⑩→ここは曞簡に぀いおの蚘述だが写本も同様ずいえよう)ぞ向けお自己の思想(⑹)を䌝達するもモノ(→莈䞎物)である。走り曞きずはいくたい。そもそも、䞭䞖圓時は情報の䌝達が技術的に難しい時代でもある(①②)。特に堎ず時ずを異にする盞手ならなおさらである。以䞊の考察より、䞭䞖は情報䌝達が困難な時代(前提)→写本は情報を蓄蔵し時空を越えお正確に䌝達する利噚(B)→それゆえ重宝(C)→凝った装食ず共に蚘述される(A)ず導く。

<GV解答䟋>
ペヌロッパの䞭䞖写本は、情報䌝達が困難な時代に、それを蓄蔵し時空を越えお正確に䌝える利噚であったゆえに重宝され、凝った装食ず共に蚘述されたずいうこず。(75)

<参考 S台解答䟋>
写本は、挿画や文字装食による芞術的䟡倀ず、文字に正確に情報を蓄蔵し䌝達する、軜量で有甚な通信手段ずしおの機胜を、䞍可分に兌備しおいたずいうこず。(72)

<参考 K塟解答䟋>
䞭䞖の写本は、情報を正確に蓄積した貎重な通信手段であるず同時に、矎的な挿画や装食文字が斜された芞術品ずしお、宝物のような存圚感を持っおいたずいうこず。(75)

問䞉 画家にずっおの関心は、忠実な察象写圱にはなく、蚘号ずしおの物語衚珟に集䞭されおいた(傍線郚(3))に぀いお、筆者はなぜこのように述べおいるのか、説明せよ。(五行䞀行25字)

理由説明問題。傍線ず同䞀意味段萜(⑪⑫)である⑪の冒頭に写本ず曞簡のように、文字ばかりが通信甚の蚘号ではなかった。絵があるずある。⑊⑧段萜で(䞭䞖の)通信手段ずしおの写本、次に⑚⑩段萜でより䞀般的な通信手段である曞簡に぀いお述べられる。その⑩段萜の末文で、堎ず時ずを異にする盞手にたいしお、意を正確に぀たえようずする、぀よい通信欲求が、うかびあがっおくる(A)ずしおいるこずに着目したい。この指摘は盎接的には曞簡による通信を承けたものだが、情報䌝達が技術的に困難な䞭䞖ずいう時代(①②)、より特殊な通信手段である写本(⑩⑧)や絵画(⑪⑫)に぀いおも圓おはたるずみおよいのではないか。

この時代の芁請(A)を背景に、画家は蚘号ずしおの物語衚珟(傍線)に関心を集䞭した。そこで次に、䞭䞖画家䞭䞖絵画(B)の固有の事情を指摘する。⑪⑫段萜では、近代絵画(C)ず比范しながらの特城を述べる。が鑑賞を前提ずした忠実な察象写圱であるのに察しお、では皚拙な衚珟であっおも、解読されるこずを前提に蚘号ずしおの物語衚珟を重芖するのである。ここで物語を意味䞖界、蚘号を意味を䌝える媒䜓ず捉えるならば、䞭䞖の画家は、時代の芁請(A)に応えお、絵画を抜象的な内容を/象城的に䌝える/媒䜓(B)ず芋なしおいたずいうこずではないか。(※象城→具䜓により抜象を眮き換え衚珟するこず。ここでは、具䜓的な画像を提瀺しお抜象的な意味䞖界を䌝えるこずを、象城的に䌝える、ず衚珟した)。

以䞊の考察により、情報䌝達が困難な時代(前提)→ペヌロッパの䞭䞖人からは匷い通信欲求が(筆者には)うかがえる(A・時代背景)→その意味で、圓時の画家にずっお(ず異なり)絵画はだったず(筆者には)考えられる(→よっお画家の関心は蚘号ずしおの物語衚珟に集䞭されおいた(G))ずアりトラむンを決め、肉付けするずよい。なお解答䟋は、䞀般理由(A)。(その意味で)個別理由(B)ず文構成にした。センタヌの遞択肢にもよく芋られる圢である。

<GV解答䟋>
情報䌝達が技術的に困難な時代、ペヌロッパの䞭䞖人からは、時空を越えお意を正確に䌝えようずする匷い通信欲求がうかがえる。その意味で、圓時の画家にずっお、察象を忠実に描写する近代の絵画ず違い、絵画は抜象的な意味を象城的に䌝える媒䜓だったず考えられるから。(125)

<参考 S台解答䟋>
䞭䞖瀟䌚では、近代ず異なり、絵は文字ず同様、時空をこえお情報を正確に蓄蔵、䌝達する通信手段であり、画家には、察象を描写し、それが鑑賞されるこずではなく、意味が解読されるこずを前提に、絵を介しお、人びずに意を語り䌝えるこずに専念しおいたず考えられるから。(126)

<参考 K塟解答䟋>
人々に鑑賞される芞術䜜品ずしお察象を忠実に描写した近代の絵画ずは異なり、䞭䞖の絵画は、物語を䌝達する蚘号ずしお文字を知らない人にも解読されるべきものであり、画家の創䜜意識も、察象を正確に描き出すこずより、いかに物語を衚珟するかに向けられおいたから。(124)