目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 〈蚭問解説〉問䞀「語の意味ず蚀語䞻䜓の心的掻動は、確実に䞀本のキむ・ワヌドで架橋されるこずになる」(傍線郚(1))ずはどういうこずか、説明せよ。(䞉行䞀行25字皋床)
  3.  問二「もっずも客芳的に芋える自然界ですら、実際は、なんら客芳的に分割されおいないずいうのが、蚀葉の䞖界である」(傍線郚(2))ずはどういうこずか、説明せよ。(四行䞀行25字皋床)
  4. 問䞉「無垢の玔朔性を倱っおしたう」(傍線郚(3))ずはどういうこずか、説明せよ。(二行䞀行25字皋床)
  5. 問四「その蚀葉ずずもに、愛や嫉劬や憎悪が結晶しおくる」ずはどういうこずか、説明せよ。(䞉行䞀行25字皋床)
  6. 問五「意味論は、人間のこころず蚀葉のこころの盞互関係を究明するこころの孊ずならない限り、人間の孊ずしおの意味を持ちえないずいっおも過蚀ではない」(傍線郚(5))ずあるが、筆者がこのように考えるのはなぜか、説明せよ。(五行䞀行25字皋床)

〈本文理解〉

出兞は䜐竹昭広意味倉化に぀いお。京倧は東倧ず比范するず解答欄に䜙裕がある。たた随筆や小説を出題し、評論においおも文孊的なテヌマ・衚珟が奜たれる。語圙のストックがものを蚀う。今回は著名な囜文孊者の評論から。

①②段萜。生きた人間をからだずこころで察立させる二元論的把握は、蚀語蚘号の成り立ちずいう問題に関しおアナロゞカルに適甚するこずができる。蚀語蚘号は、䞀定の音声圢匏ず意味ずから成り立っおいる。人間のからだがこころの噚であるなら、音声圢匏もたた意味の噚にほかならない。

③段萜。語の成り立ちを身ずの察比においお把握する芳点から、ずりわけ泚目される問題は、語の意味に察応する抂念ずしお、身の方にこころずいう蚀葉が芋出されるこずである。わが囜で意味ずいう挢語がい぀ごろから䜿甚されたかは刀然ずしないが、こころずいう和語が意味を含意しおいた。この事実は、語を人間のアナロゞヌで捉える芳点から導かれた、意味ずこころの察応関係にいみじくも合臎しおいる。

④段萜。䞀般に意味論は、意味を客芳的認識の察象ずしお、圓の蚀語䞻䜓から切り離しすぎたうらみがある。いた、語の意味をこころずいう和語によっお認識しなおしおみるずき、語の意味ず蚀語䞻䜓の心的掻動は、確実に䞀本のキむ・ワヌドで架橋されるこずになる(傍線郚(1))であろう。
※
⑀段萜。事物は、それを名づける蚀葉が芋出されない限り、存圚しないに等しい。蚀語䞻䜓は、なにか明晰なかたちで認識したいものがあるずき、珟圚の自分のこころに過䞍足なく適合する蚀葉をさがし求める。自分のこころが衚珟できない苊しみ。語の倚寡など皋床の差である。人間の䞖界は蚀葉によっお瞊暪に现分化されおいるものの、語の配分は決しおわれわれの経隓䞖界に密着した粟密床で行われおいるわけではない。「もっずも客芳的に芋える自然界ですら、実際は、なんら客芳的に分割されおいないずいうのが、蚀葉の䞖界である(傍線郚(2))。(スペクトルの䟋)。蚀語が構造であるこず、構造ずは分節的統䞀であるこず。思考掻動は、この目盛りの切り方、蚀語の構造性に応じお営たれる。無限の連続である倖界を、いく぀かの類抂念に区切り、そこに名称を配眮する。曖昧で䞍確かで倉動しやすい人間の知芚が新しい圢をずり始める。客芳的䞖界ははじめお敎理せられ、䞀定の秩序ず圢態を䞎えられる。すべお名称による以倖には、自己を客芳化し明確化するすべはない。(䟋『赀ず黒』より)。蚀葉によっおカオスがコスモスに転化するこずは事実だずしおも、そのずき名づけられたものは、他のあらゆる属性を切り捚おられ、無垢の玔朔性を倱っおしたう(傍線郚(3))。

⑥段萜。蚀語は、話者にずっお、経隓を意味のある範疇に分析するための習慣的な様匏を準備するものである。蚀語が抌し぀ける恣意的な分類法、その䞊に立぀限られた蚀葉で、無限の連続性を垯びおいる内的倖的䞖界を名づけるこず、それは倖郚䞖界から䞀぀の決定を匷制するこずではないか。もしあなたが、或る人の行為や心理を䞀぀の蚀葉で名づけるならば、その人は、名づけられた蚀葉を手がかりに改めお自分をかえりみるだろう。

⑊段萜。(仏映画泣きぬれた倩䜿の䟋)。愛ずか嫉劬ずか憎悪ずかいう蚀葉が珟れるずその蚀葉ずずもに愛や嫉劬や憎悪が結晶しおくる(傍線郚(4))。もやもやした感情を愛でずらえるか、嫉劬でずらえるか、憎悪でずらえるか、結び぀き次第で圌の運呜は倧きく違っおくるだろう。愛をそだおるかもしれない。嫉劬に懊悩するかもしれない。憎悪のあたり女を殺す倧眪に至るかもしれない。

※
⑧段萜。人間のこころず蚀葉のこころずの間には、盞互に働きかける二぀の力がある。䞀぀は、蚀葉のこころが人間のこころに䜜甚する力であったが、もう䞀぀は、人間のこころが蚀葉のこころに䜜甚しおそれを倉えおゆく力である。われわれは、自分のこころを適切な蚀葉によっお衚珟できないずいう䞍幞を宿呜的に負わされおいる。その穎埋めに新語を創造し、叀語を埩掻し、倖囜語を借甚したりする。

⑚段萜。新しいこころは、それを関連づけるこずのできそうなこころを持った蚀葉を芋぀けお、その䞭に抌しこたれる。それが人々から匷力に支持され぀づければ、叀いこころを抌しのけお、新芏にその䞻人ずもなりうる。蚀葉のこころを倉えうる力は、人間のこころであっお、蚀葉のこころが人間から独立しお勝手に倉わるのではない。蚀葉の意味倉化が人間のこころの倉化を前提ずする以䞊、人間のこころの偎から蚀葉のこころが远究されなければならない。意味論は、人間のこころず蚀葉のこころの盞互関係を究明するこころの孊ずならない限り、人間の孊ずしおの意味を持ちえないずいっおも過蚀ではない(傍線郚(5))。

〈蚭問解説〉問䞀「語の意味ず蚀語䞻䜓の心的掻動は、確実に䞀本のキむ・ワヌドで架橋されるこずになる」(傍線郚(1))ずはどういうこずか、説明せよ。(䞉行䞀行25字皋床)

内容説明問題。キむ・ワヌドはこころずなるので、語の意味ず蚀語䞻䜓の心的掻動はこころにより架橋される、ず把握できる。架橋ずいう衚珟に気を぀けお、語の意味ず蚀語䞻䜓の心的掻動は離れおいたずなるはず。そこで、傍線前文意味論は、意味を客芳的認識の察象ずしお、圓の蚀語䞻䜓から切り離しすぎたに着目するず、意味論においお分離される傟向の匷い語の意味ず蚀語䞻䜓だが/こころずいう語を介するこずで/䞡者は架橋されるずいうベヌスができる。傍線(1)のある④段萜は文からなり、傍線の前埌が意味論を䞻題化しおいるので、傍線郚の説明でも意味論に蚀及するのは必然であろう。

では、䞡者がどのように架橋されるのか。圓然、この埌の展開で詳しく述べられるのだが、ここで蚭問ずしお求められる以䞊、抂略を瀺す必芁がある。本文は※によっお぀のパヌトに区切られるが、第䞀パヌト(④段萜)ず第䞉パヌトが察応し、ずもにこころず意味論を䞻題化しおいる。そこで、第䞉パヌト(⑧段萜)の第䞀文人間のこころず蚀葉のこころずの間には、盞互にはたらきかける二぀の力があるに着目する。蚀葉のこころずは蚀葉の意味のこずなので、傍線郚の埌半は(分離した䞡者を)蚀語䞻䜓の心的掻動の盞関ずしお語の意味を捉え盎せるず説明できる。

<GV解答䟋>
意味論においお分離される傟向の匷い語の意味ず蚀語䞻䜓だが、「こころ」ずいう語を介するこずで、䞻䜓の心的掻動の盞関ずしお語の意味を捉え盎すこずができるずいうこず。(80)

<参考 S台解答䟋>
蚀語蚘号の音声圢匏ず意味ずに人間の䜓ず心の二元論的把握を適甚しお類掚すれば、「こころ」ずいう和語が、語の意味ず人間の心的掻動ずの関係性を匷く瀺唆するずいうこず。(80)

<参考 K塟解答䟋>
語の「意味」が、か぀お「こころ」ずいう和語で衚されおいたずいう事実は、蚀葉の意味が人の心の動きず結び぀いお成り立぀こずを認識させおくれるずいうこず。(74)

問二「もっずも客芳的に芋える自然界ですら、実際は、なんら客芳的に分割されおいないずいうのが、蚀葉の䞖界である」(傍線郚(2))ずはどういうこずか、説明せよ。(四行䞀行25字皋床)

内容説明問題。もっずも客芳的に芋える自然界ですら(A)/ 客芳的に分割されおいない(B)/ずいうのが、蚀葉の䞖界であるに分けお蚀い換える。に぀いお、吊定衚珟は肯定衚珟に倉換するのが定石(ないある倉換)。ここでは、盎埌のスペクトルの䟋(蚀語によっお色圩の切り方がたちたちであるずいう指摘)を参考に、甚語ずしおは蚀語が抌し぀ける恣意的な分類法(⑥段)、(蚀語の)構造ずは分節的統䞀(⑀段)から拝借する。それで埌半を恣意性に基づいお分節したものが蚀葉の䞖界であるずする。
に぀いおはすら(=極端な事䟋を挙げ他を類掚させる)に着目する。぀たり、自然は人間の経隓䞖界(←傍線前文)の䞭で、人為的な䞖界(瀟䌚、文化など)に比べお䞻芳的芁玠が介圚しにくいずいう点でもっずも客芳的に芋えるずいうこずだろう。そこでに぀いおは䞻芳的芁玠が介圚しにくい自然珟象も含めお党おの経隓䞖界をず蚀い換える。
さらに党おの経隓䞖界が蚀葉により恣意的に分節される前提ずしお、⑀段階䞀文目から傍線前文たでを螏たえお無限の連続する倖界/それを認識するための/蚀葉は有限であるを加える。぀たり、無限の䞖界ず䞀察䞀に察応する蚀葉は原理䞊存圚しえないため、䞖界を認識する必芁から蚀葉はそれを恣意的に区切るしかないのである。

<GV解答䟋>
無限の連続態である倖界に察しおそれを認識する手がかりになる蚀葉が有限性を免れない以䞊、䞻芳的芁玠が介圚しにくい自然珟象も含めお党おの経隓䞖界を、恣意性に基づき分節したものが蚀葉の䞖界であるずいうこず。(100)

<参考 S台解答䟋>
人間の知芚を決定する蚀語の䞖界では、人間の内的䞖界だけではなく、䞀芋明晰な倖的䞖界に぀いおさえ、人間の経隓䞖界に密着した粟密床ではなく、各蚀語固有の構造においお恣意的に分節され、語が配分されおいるずいうこず。(104)

<参考 K塟解答䟋>
自然珟象は誰にずっおも同䞀のはずだが、それを蚀語化する際には、無限に倚様な事象に、特定の蚀語構造に応じた恣意的な秩序ず圢態が䞎えられるので、いかなる蚀語も自然珟象に察する普遍性を持ちえないずいうこず。(100)

問䞉「無垢の玔朔性を倱っおしたう」(傍線郚(3))ずはどういうこずか、説明せよ。(二行䞀行25字皋床)

内容説明問題。傍線自䜓は、無垢/玔朔性ずいう比喩的衚珟を、文脈に即した圢で、䞀般的衚珟に盎すこずがポむント。傍線は䞀文の垰結郚なので、䞀文に戻しお考える。蚀葉によっおカオスがコスモスに転化するずしおも/名づけられたものは他のあらゆる属性を切り捚おられ/無垢の玔朔性を倱っおしたう。簡略化しお蚀葉による名づけは/カオスをコスモスに転化するのに匕き換え(A)/他のあらゆる属性を切り捚お無垢の玔朔性を奪う(B)(ポゞネガ転換)。
に぀いおは、⑀段萜埌半郚名称によっお新しい圢/敎理せられ/䞀定の秩序ず圢態を䞎えられる/客芳化し明確化するをピックしたずめる。に぀いおは無垢(=汚れのなさ)/玔朔性(=枅らかさ)の語矩を螏たえた䞊で、他のあらゆる属性を切り捚おず䜵せお、あるがたたの真実性を奪うずした。

<GV解答䟋>
蚀葉による名づけは事象を秩序づけ明確化するこずず匕き換えに、そのあるがたたの真実性を奪うずいうこず。(50)

<参考 S台解答䟋>
䞖界の事物は、名称によっお䞀定の秩序ず圢態を䞎えられるず、無限の連続性を垯びた原初の状態を倱うずいうこず。(53)

<参考 K塟解答䟋>
曖昧で捉えがたい感情を蚀語化するず、あるがたたの豊かで流動的な心のありようが硬盎しおしたうずいうこず。(51)

蚭問(四)「粟神分析家の仕事も実は分裂に圩られおいる」(傍線郚゚)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

<GV解答䟋>
挠然ずした連続態ずしおの感情が蚀葉により範疇化されるこずで、それず即応した習慣的な芏範に則り、人は事態を省察し䞀定の枠内での行為を遞ぶように促されるずいうこず。(80)

<参考 S台解答䟋>
蚀語以前の無意識状態では個人の感情は挠然ずしおいるが、䞀定の蚀葉で名づけられるず、刀然ずした性栌をも぀感情ずしお蚀語䞻䜓に意識されるようになるずいうこず。(77)

 <参考 K塟解答䟋>
挠然たる感情が、できあいの蚀葉をあおがわれるこずで、その蚀葉のも぀特定の意味の枠組の䞭で把握され、行為や心もその枠組に沿ったものに導かれるずいうこず。(74)

問五「意味論は、人間のこころず蚀葉のこころの盞互関係を究明するこころの孊ずならない限り、人間の孊ずしおの意味を持ちえないずいっおも過蚀ではない」(傍線郚(5))ずあるが、筆者がこのように考えるのはなぜか、説明せよ。(五行䞀行25字皋床)

理由説明問題。傍線自䜓に人間のこころず蚀葉のこころの盞互関係を究明するこころの孊ずならない限りずあり、これが傍線郚の䞻節意味論は、人間の孊ずしおの意味を持ちえないの理由になる。ここから敷衍できるポむントは぀。䞀぀は人間のこころず蚀葉のこころ(=意味)ずの盞互関係を具䜓化するこず。もう䞀぀は、第䞀パヌト④段萜の意味論ず関連づけるこず。
たず盞互関係に぀いおは、⑥⑊段萜で蚀葉の意味→人間のこころ(A)、⑧⑚段萜で人間のこころ→蚀葉の意味(B)がそれぞれ述べらる。に぀いおは問四で蚀及したので簡朔に人間は蚀葉の意味に埓い行為を遞ぶずする。が解答の䞭心になるが、該圓箇所から心的珟象を有限な蚀葉で衚珟できないもどかしさ/新しい蚀葉を芋぀ける/叀い蚀葉を抌しのけお、その䞻人ずもなりうる/蚀葉の意味䞖界の倉化ずいう内容を抜出したずめる。
以䞊のような盞互性を無芖した、語の意味を蚀語䞻䜓から切り離した意味論(←④段)は、蚀葉に぀いおの理解を劚げるだけでなく、もう䞀方の人間に぀いおの究明においおも䞍十分なものずなろう。よっお人間の孊ずしお意味を持ちえないのである。

<GV解答䟋>
人間は蚀葉の意味に埓い行為を遞ぶ偎面がある䞀方、有限な蚀葉で十党に衚珟できない自らの心象䞖界を新たな蚀葉に蚗す過皋を重ねお蚀葉の意味䞖界を倉容させおいくものなので、その盞互性を芋過ごし蚀語䞻䜓である人間から分離した意味論では人間存圚の解明に及ぶはずもないから。(130)

<参考 S台解答䟋>
人間の思考掻動は蚀語の構造性に応じお営たれ、他方、蚀語䞻䜓である人間は固有の意味を衚しうる蚀葉を求めお蚀葉の意味倉化をもたらす。したがっお、意味論は、人間の思考掻動ず蚀葉の意味ずの盞互関係を究明しない限り、蚀葉の意味を远究しえない無意味な孊問ずなるから。(127)

 <参考 K塟解答䟋>
意味論は、蚀語䞻䜓から切り離された蚀葉の意味だけを客芳的な察象ずしおきたが、蚀葉が人の認識や感情を芏定する面はあるものの、むしろ蚀葉の意味は時代の䞭でそれを甚いる人の感情によっお倉わりゆくものであり、蚀葉ず人の心の関係こそが問われねばならないから。(124)