〈本文理解〉
出典は石原純『永遠への理想』。前書きに「次の文は、物理学者であり歌人でもある石原純が書いたエッセイの一部である。このエッセイは1925年に出版された本に収められている」とある。
問一「悲しむべき運命」(傍線部(1))のように筆者が言うのはなぜか、説明せよ。(二行)
〈GV解答例〉
芸術の本質的価値はその永遠的な効果に見いだされるのに、自然物で表現する造形芸術は変化を免れないから。(50)
〈参考 S台解答例〉
実在の自然物を用いて造形される美術作品は、文芸音楽とは異なり、経年変化と、破損による永続性の喪失が不可避であるから。(58)
〈参考 K塾解答例〉
実際の自然物を用いる造形技術は、文芸音楽とは違い、自然的変化に伴う破損による永遠性の喪失を免れないから。(52)
〈参考 Yゼミ解答例〉
実在の自然物を素材とする造形芸術は、文芸や音楽とは異なり、時間の経過に伴って変化・破損してしまうから。(51)
問二「美術作品が常に骨董的に取り扱われなければならない」(傍線部(2))はどういうことか、説明せよ。(三行)
〈GV解答例〉
自然現象との交渉より生まれる美術作品は変化を免れないが、その現象は複雑で記号的な再現が困難なため、作品の原型を残すことに注力せねばならないということ。(75)
〈参考 S台解答例〉
美術作品は自然を借用するので、経年に伴う風趣は人為的創作としての芸術の本質やその評価の対象ではないが、経年変化を考慮した保存には一定の価値を置かざるを得ないということ。(84)
〈参考 K塾解答例〉
自然物からなる美術作品は、時代経過の中で破損にもつながる自然的な変化が人を超えた価値を生みもするため、それらを考慮に入れた保存や鑑賞が求められるから。(75)
〈参考 Yゼミ解答例〉
芸術はその永続性に本質的価値が見出される以上、自然物を利用するがゆえに経年変化する美術作品を芸術として扱うためには、丁重な保存が必要であるということ。(75)
問三「科学の共助を待つことを必要とする」(傍線部(3))はどういうことか、説明せよ。(四行)
〈GV解答例〉
変化や破損を免れない芸術は、人間の思惟作用において別個のものである科学が、その形態や性質を精確に再現できるまで発達することを待つことで初めて、その本質的価値を永遠に持続することが可能になるということ。(100)
〈参考 S台解答例〉
人間的思惟の表現による永遠性に芸術の本質的価値があるなら、文芸音楽の記号とは違い、変化する自然物を用いる造形芸術においても、再現性を得、その価値を永遠に保存するため、普遍的永遠的価値を持つ科学の方法の応用が至当であるということ。(114)
〈参考 K塾解答例〉
複雑な自然現象のもとで表現される芸術は、そうした自然現象を解明する科学の普遍的な方法を援用することでこそ、再現が可能となって破損の恐れから救われ、永遠性が保証する芸術の本質的価値を保存できるということ。(101)
〈参考 Yゼミ解答例〉
自然物を素材とし、複雑な自然現象の影響を受けるため経年変化しやすい美術作品を、永続的で本質的な価値のある芸術として保存するには、その作品を理論的に分析して再現する、科学の可能性に期待する必要があるということ。(104)