目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 問䞀(挢字の曞きず読み ※読みはカタカナで)
  3. 問二「もしかしたら、私たちは情報通信技術によっお「幞せ」から遠ざけられおいるのだろうか」(傍線郚(1))ずあるが、筆者がそのように問う理由を本文に即しお80字以内で説明せよ。
  4. 問䞉「犏祉(りェルフェア)」(傍線郚(2))ず「犏祉(りェルビヌむング)」(傍線郚(3))の違いに぀いお、本文に即しお110字以内でたずめよ。
  5. 問四(空所補充)
  6. 問五「利害関係が入りくんだ䞍特定倚数の人が集たるコミュニティや公共の堎においおこそ、りェルビヌむングの芳点が必芁になる」(傍線郚(4))ずあるが、ここでいう「りェルビヌむング」ずはどのようなものか。「個人䞻矩的」「集産䞻矩的」の二぀の甚語を甚いながら、本文に即しお110字以内で説明せよ。
  7. 問六「りェルビヌむングの「解像床」を䞊げるこず」(傍線郚(5))ずあるが、それはどういうこずか。次に瀺した「解像床」の定矩を参照しながら、本文䞭の事䟋を参考に、45字以内で説明せよ。

〈本文理解〉

出兞は安藀英由暹、枡邊淳叞「りェルビヌむングの芋取り図」

 

①〜⑀段萜。情報通信技術の革新は、あなたを幞せにしおくれただろうか。パヌ゜ナルコンピュヌタの発明やむンタヌネットの登堎、スマヌトフォンのような情報通信デバむスの普及、さたざたなテクノロゞヌのおかげで、私たちはいろいろなこずができるようになった。 しかし、それは本圓に「幞せ」をもたらしおいるずいえるのだろうか ゜ヌシャルゲヌムぞの䟝存に䌎う過床な課金や、チャットツヌルなど閉じたコミュニティで発生するいじめ、SNS䞊での誹謗䞭傷など、むンタヌネットの発展に䌎っお生たれた問題はもはや瀟䌚党䜓に倧きな圱響を及がし぀぀ある。「もしかしたら、私たちは情報通信技術によっお「幞せ」から遠ざけられおいるのだろうか」(傍線郚(1))。こうした問題は、情報通信技術を開発するうえで根源的な目暙であった「人間を幞せにする」こずがきちんず意識されないたた蚭蚈が進んでしたったこずから生たれたものだずいえる。そもそも人間にずっお「幞せずは䜕か」がきちんず怜蚎されおこなかったからこそ、本来人々を幞せにするはずの技術が人々を抑圧しおしたっおいるのだ。

 

⑥〜⑧段萜。近幎、これらの背景から「りェルビヌむング(wellbeing)」ずいう人間の心の豊かさに関する抂念が泚目されおいる。 犏祉分野においおも、りェルビヌむングは議論の察象ずなるこずが倚い。近幎の犏祉理念は、瀟䌚的匱者を救うずいう「犏祉(りェルフェア)」(傍線郚(2))から、自埋的な掻動や自己実珟をずおしおの「犏祉(りェルビヌむング)」(傍線郚(3))ぞ倉化しおいるずいわれおいる。瀟䌚から芋たずきに、犏祉の察象を保護や救枈の察象ず考えるのではなく、䞀人の人間ずしおその充足や自埋性を積極的に尊重しようずいう考えに倉わっおきたずいうこずである。これは、りェルフェアの芖点から぀くられたプログラムでは、察象それぞれが持぀固有の状況に察応できないずいうこずや、むしろ察象を胜動的な䞻䜓ずしお捉え、個々のりェルビヌむングを起点ずするこずでよりゆたかな犏祉が実珟するできるのではないかずいう考えるによる。 

 

⑚〜⑪段萜。しかし、ひずくちにりェルビヌむングずいっおも、その意味が芋えづらいのもたしかだ。盎蚳するず「心身がよい状態」を指すこの蚀葉は、しばしば「医孊的りェルビヌむング」、「快楜的りェルビヌむング」、「持続的りェルビヌむング」ずいう぀の定矩で䜿われおいる。ひず぀めの」医孊的りェルビヌむング」ずは、心身の機胜が䞍党ではないか、病気ではないかを問うものである。 ふた぀めの「快楜的りェルビヌむング」ずはその瞬間の気分の良し悪しや快䞍快ずいった䞻芳的感情に関するものである。最埌の「持続的りェルビヌむング」は、人間が心身の朜圚胜力を発揮し、意矩を感じ、呚囲の人ずの関係のなかでいきいきず掻動しおいる状態を指す包括的な定矩である。 

⑫〜⑭段萜。このように、りェルビヌむングの研究は近幎急速に進んできおいるが、䞀方でこれたでの研究の倚くはもっぱら「個人䞻矩的」な芖点に基づいお進められおきたこずに泚意せねばなるたい。欧米では䞻朮ずなるこの芖点は、確立された個人のりェルビヌむングを満たすこずで瀟䌚ぞの貢献を目指すものであるが、それだけでなく、集団のゎヌルや人間同士の関係性、プロセスのなかで䟡倀を぀くりあうずいう考えに基づく「集産䞻矩的」な芖点を無芖しおはいけないだろう。 個人の身䜓ず心を察象ずした欧米型の「わたし」のりェルビヌむングからこがれ萜ちおしたった、身䜓的な共感プロセスや共創的な堎における「わたしたち」のりェルビヌむングの芳点を、日本や東アゞアのりェルビヌむングに取り組むために忘れおはならない。もちろん、個人䞻矩的な芖点ず集産䞻矩的な芖点は察立するものではなく、䞀人の人間のなかに䞡面が存圚し、りェルビヌむングの理解を補完しあうものである。たた、人ず人のあいだにりェルビヌむングが生じるず考える集産䞻矩的な芖点を広げるず、それは「コミュニティず公共のりェルビヌむング」ぞず぀ながる。特定の人ずの぀ながりだけでなく、」利害関係が入りくんだ䞍特定倚数の人が集たるコミュニティや公共の堎においおこそ、りェルビヌむングの芳点が必芁になる」(傍線郚(4))であろう。そしお、䞍特定倚数の人ず人が亀わる堎は、むンタヌネット空間にも存圚し、同様に「むンタヌネットのりェルビヌむング」も存圚するはずである。
⑮段萜。個人の心のなか、人ず人のあいだ、コミュニティや瀟䌚、そしおネットのなか、ずこれらの領域は独立しながらも圱響しあっおおり、そのすべおを捉えなければりェルビヌむングの総䜓を捉えるこずはできない。私たちがいた取り組むべきは、「りェルビヌむングの「解像床」を䞊げるこず」であり、りェルビヌむングずはいったい䜕なのかを敎理しなおすこずだろう。これらの領域にたたがったりェルビヌむングを敎理しおいくこずでこそ、「わたし」や「わたしたち」にずっおのりェルビヌむングずは䜕なのか、どうやっおりェルビヌむングを実珟しおいくのか、その道のりが芋えおくるはずだ。

問䞀(挢字の曞きず読み ※読みはカタカナで)

a.カタペ b.ヒボり c.採択 d.浞透 e.サカノボ f.配慮 g.ホりセツ h.発揮 i.゜ガむ j.促進

 

問二「もしかしたら、私たちは情報通信技術によっお「幞せ」から遠ざけられおいるのだろうか」(傍線郚(1))ずあるが、筆者がそのように問う理由を本文に即しお80字以内で説明せよ。

理由説明問題(衚珟意図)。問い方に留意する必芁がある。すなわち、単玔に傍線郚の理由を聞くのではなく、傍線郚のような問いをなす意図を聞いおいる、ずいう点に着県しなければならない。
 
たず傍線郚に至る展開の䞊で泚意したいのは、前③段萜冒頭で筆者は「それ(情報通信技術の革新)は本圓に「幞せ」をもたらしおいるずいえるのだろうか」ず問いを立お、その埌具䜓䟋を挟んで、段萜末尟を「むンタヌネットの発展に䌎っお生たれた問題はもはや瀟䌚党䜓に倧きな圱響(→負の圱響)を及がし぀぀ある」ず結んでいるずいう点だ。ここで情報通信技術の革新は必ずしも「幞せ」をもたらさないこずがはっきりした。ならば、それに続く④段萜冒頭の「 「幞せ」から遠ざけられおいるのだろうか」ずいう傍線郚の問いは「「幞せ」から遠ざけられいる」ずいう筆者の刀断であり、そう刀断する根拠を答えるのが正しい筋になる。ならば、その根拠は⑀段萜の文「情報通信技術を開発するうえで根源的な目暙であった「人間を幞せにする」こずがきちんず意識されないたた蚭蚈が進んでしたった→本来人々を幞せにするはずの技術が人々を抑圧しおしたっおいる」。筆者はそう考えるから、傍線郚のすでに答えの定たった「問い」を読者に提瀺したのである。
 
解答の解説は以䞊だが、぀補足する。䞀぀は、なぜ出題者は傍線郚の理由を盎接問わず、本問のような呚りくどい問いにしたのか。これに぀いおは、傍線郚それ自䜓の衚珟では理由の着地点が曖昧になるからである。「そのように問う」理由を聞くこずで、理由の着地点を明確にする䜜業を経由しお、各自が解答するこずを促しおいるのである。もう䞀぀は、前③段萜の内容、情報通信技術の革新が瀟䌚党䜓に倧きな問題をもたらしおいるずいうこずは、「「幞せ」から遠ざけられおいる」ずいう刀断の根拠にならないのか。これに぀いおは、③段萜冒頭の「それ(情報通信技術の革新)は本圓に「幞せ」をもたらしおいるずいえるのだろうか」ずいう問い方ず察応しおいる。もしここに傍線が匕いおあるのなら䞋のS台の解答䟋で適切だずいえるが、④段萜で䞀぀進んだ圢で(衚局から深局ぞず)問うた意図ずしお③段萜の内容は䞍適切なのである。
 
 
〈GV解答䟋〉
情報通信技術の根源的な目暙であった「人間を幞せにする」こずが䜕かを十分に怜蚎しないたた技術開発が進められたため、その技術が逆に人間を抑圧しおいるず考えるから。(80)
 
〈参考 S台解答䟋〉
情報技術通信の革新は、人ずの繋がりや知的掻動の面で人々の生掻を豊かにしたが、そこから生じる問題が瀟䌚党䜓に倧きな圱響を及がし、人々を抑圧しおいるず思われるから。(80)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
幞せずは䜕かが怜蚎されないたた開発された情報通信技術が、人々の心身を垞に緊匵状態に眮いたり、分断の状況を生むなど、人々を抑圧するような問題を生み出しおいるから。(80)
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
情報通信技術の革新で知的掻動や効率は向䞊したが、同時に私たちの心身は垞に倖郚ず接続可胜な緊匵状態ずなり、ネット䞊での誹謗䞭傷などの問題もあっお疲匊しおいるから。(80)
 
 

問䞉「犏祉(りェルフェア)」(傍線郚(2))ず「犏祉(りェルビヌむング)」(傍線郚(3))の違いに぀いお、本文に即しお110字以内でたずめよ。

〈GV解答䟋〉
前者は察象を保護や救枈の察象ずみなし瀟䌚で統䞀された基準を適甚する埓来の犏祉理念であるが、埌者は察象を胜動的な䞻䜓ずしお捉え、個々の充足や自立性を積極的に尊重し、その心身の豊かさの実珟を支揎する近幎匷たる犏祉理念である。(110)
 
 
〈参考 S台解答䟋〉
前者は、保護や救枈の察象である瀟䌚的匱者を救うずいう埓来の犏祉理念であるが、埌者は、胜動的な䞻䜓が持぀固有の状況を起点に、人間ずしおの充足や自立性を積極的に尊重し、その実珟を目指すずいう近幎の犏祉理念であるずいう違い。(109)
 
 
〈参考 K塟解答䟋〉
りェルフェアは瀟䌚的匱者を、その固有の状況を考慮せずに、犏祉の察象ずしお保護し救枈するのに察し、りェルビヌむングは個人を固有の状況を持぀胜動的な䞻䜓ず捉え、その自埋的な掻動や自己実珟を通しお、より豊かな犏祉を実珟する。(109)
 
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
前者は犏祉の察象を保護や救枈が必芁な瀟䌚的匱者ず考えおいるが、埌者は犏祉の察象を胜動的な䞻䜓ずしお捉え、個人ずしおの充足感や自埋性を尊重し、䞀人䞀人が心身ずもに豊かに生きられるような瀟䌚を実珟すべきだず考えおいる。(107)
 

問四(空所補充)

.む .り .ア .ã‚Š

問五「利害関係が入りくんだ䞍特定倚数の人が集たるコミュニティや公共の堎においおこそ、りェルビヌむングの芳点が必芁になる」(傍線郚(4))ずあるが、ここでいう「りェルビヌむング」ずはどのようなものか。「個人䞻矩的」「集産䞻矩的」の二぀の甚語を甚いながら、本文に即しお110字以内で説明せよ。

内容説明問題。傍線郚の盎接の説明ではなくお、傍線郚の文脈における「りェルビヌむング」を「個人䞻矩的」「集産䞻矩的」ずいう指定甚語ず玐づけお説明するこずが芁求されおいる。たず「りェルビヌむング」ずいう術語に぀いおの䞀般的な定矩は本文䞭で「心身がよい状態」(⑹)ぐらいしかない。ここでは、前文に「集産䞻矩的な芖点を広げるず」ずあるから、この文脈での「りェルビヌむング」に盎接぀ながる「集産䞻矩的な芖点」ずの関連で「りェルビヌむング」を説明するこずになる。たた、もう䞀぀の指定甚語「個人䞻矩的」に぀いおは、前⑬段萜に「個人䞻矩的な芖点ず集産䞻矩的な芖点は 䞀人の人間のなかに䞡面が存圚し、りェルビヌむングの理解を補完しあうもの」ずあるので、「個人䞻矩的な芖点に加えお/集産䞻矩的な芖点ず関わる/りェルビヌむング心身がよい状態」ずいう圢匏で解答を構成すればよいだろう。
 
「個人䞻矩な芖点」ず「集産䞻矩的な芖点」に぀いおは埌者を䞭心に⑫⑬段萜に詳しく述べおある。䞡者の察比を明確にしおそれぞれの説明を加えるず、「確立された個人が/瀟䌚ぞの貢献を目指すずいう/個人䞻矩的な芖点」(A)、「集団の䞭で共通の目暙を定め/身䜓的な共感プロセスや共創的な堎を通しお/䟡倀を぀くりあうずいう/集産䞻矩的な芖点」(B)ずなる。以䞊より「にずどたらず/によっお導かれる/人間の心身の豊かな状態」ず仕䞊げた。
 
 
〈GV解答䟋〉
確立された個人が瀟䌚ぞの貢献を目指すずいう個人䞻矩的な芖点にずどたらず、集団の䞭で共通の目暙を定め、身䜓的な共感プロセスや共創的な堎を通しお䟡倀を぀くりあうずいう集産䞻矩的な芖点によっお導かれる、人間の心身の豊かな状態。(110)
 
〈参考 S台解答䟋〉
確立された個人の身䜓ず心を満たし、瀟䌚ぞの貢献を目指すずいう「個人䞻矩的」な芖点ず補完し合う、集団のゎヌルや人間同士の関係性、プロセスのなかで䟡倀を぀くり合うずいう考えに基づく「集産䞻矩的」な芖点に立぀りェルビヌむング。(110)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
個人の心の䞭に生じる心身が良奜な状態を察象ずする個人䞻矩的な芖点ではなく、集団的に䟡倀を぀くりあうずいう考えに基づく集産䞻矩的な芖点に立぀こずで捉えられる、人ず人ずの間やコミュニティず公共の堎に生じる心身が良奜な状態。(109)
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
個人の心身を豊かにしお瀟䌚貢献を目指す個人䞻矩的な芖点のみならず、他者ずの関係性・共同性を築いおゆく䞭で䟡倀を創出する集産䞻矩的な芖点も備えお、䞍特定倚数の人々の間や公共の堎にある人々の心身を豊かな状態に保぀こず。(107)
 
 

問六「りェルビヌむングの「解像床」を䞊げるこず」(傍線郚(5))ずあるが、それはどういうこずか。次に瀺した「解像床」の定矩を参照しながら、本文䞭の事䟋を参考に、45字以内で説明せよ。

内容説明問題。傍線郚を含む䞀文は文構成の⑮段萜の文目にあり、その前埌の文ず内容的に察応するこずに留意したい。぀たり、文目の前半郚である傍線郚は、文目「個人の心のなか、人ず人のあいだ、コミュニティや瀟䌚、そしおネットのなか、ずこれらの領域は独立しながらも圱響しあっおおり、そのすべおをずらえなければ 」、文目「これらの領域にたたがったりェルビヌむングを敎理するこずで 」ず意味的に察応しおいる。これず蚭問に䞎えられた「解像床」の定矩を考え合わせるず、「個人や集団の領域を確定しお盞互の圱響を敎理し/各自の求めるりェルビヌむング(→豊かさ)をより粟现に把握するこず」ず導くこずができる。短い字数での解答が芁求されおいるので、傍線郚自䜓の換蚀にずどめなければならない。
 
 
〈GV解答䟋〉
個人や集団の領域を確定しお盞互の圱響を敎理し、各自の求める豊かさをより粟现に把握するこず。(45)
 
〈参考 S台解答䟋〉
情報通信技術を背景に、諞領域にたたがるりェルビヌむングの抂念をより粟现に捉えるずいうこず。(45)
 
〈参考 K塟解答䟋〉
曖昧なりェルビヌむングの状態を、蚺断を通じお枬定可胜なものずするなどしお粟现に捉えるこず。(45)
 
〈参考 Yれミ解答䟋〉
皮々の領域にたたがるりェルビヌむングの総䜓を捉えるために、その意味や䟡倀を明瞭にするこず。(45)
 
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