〈本文理解〉

出典は八木雄二『1人称単数の哲学』
 

〈設問解説〉 問一 (漢字/読みはカタカナ指定)

a.イヤ(癒) b.シ(占) c.把握 d.響 e.ワ(湧) f.築 g.抵抗 h.ソゴ(齟齬) i.ギンミ(吟味) j.普遍

 

問二「そのときわたしたちは孤独を感じる」(傍線部(1))における「孤独」とはどのようなことを指すのか、本文に即して50字以内で説明せよ。

〈GV解答例〉
ことばを介して複数の理性が協働する共同世界に参入できていないことから生じる、他者と切り離された状態。(50)
 
〈参考 S台解答例〉
他者のことばの意味を理解できずに、相手の属する共同世界から自分が切り離されていると感じるということ。(50)
 
〈参考 K塾解答例〉
他者のことばを理解できないとき、他者が属している共同世界から自分が切り離されることになるということ。(50)
 
〈参考 Yゼミ解答例〉
他者のことばが理解できず、その他者が属している共同世界から自分自身が切り離されていると感じること。(49)
 

問三「人は知的であるほど、じつは騙されやすい」(傍線部(2))とはどういうことか、本文に即して100字以内で説明せよ。

 
〈GV解答例〉
知的で理性的であろうとする人ほどことばを大事にし、相手の理性の現れであることばをそれが意味するままに聞き取り、自らの理性を相手の理性と同様に構成しようとするので、相手のことばに騙されがちだということ。(100)
 
〈参考 S台解答例〉
ことばがはたらくところに理性のはたらきがある以上は、理性的であればあるほどことばを大事にするので、他者のことばを聞く人は、実際、無意識に相手の理性をそのまま自分の理性の真理として信じがちだということ。(100)
 
〈参考 K塾解答例〉
ことばには理性のはたらきがあるため、知的で理性的な人ほどことばを理解しようとして、他者のことばにある理性によって自己の理性を再構成してしまい、かえって他者のことばに支配されやすくなるということ。(97)
 
〈参考 Yゼミ解答例〉
わたしたちは他者のことばを理解しようとするが、ことばのはたらきは理性のはたらきなので、理性的な人ほど、他者のことばが自分の心のなかで再構成されることを許し、他者のことばに支配されやすくなるということ。(100)
 

問四「第三者から見れば、夢遊病者のように見えるとしても、本人の理性は、人類の理性の設計通り協働的にはたらいているのであって、きわめて健全なのである」(傍線部(3))において、「きわめて健全なのである」と筆者が言うのはなぜか、その理由を本文に即して130字以内でまとめよ。

 
〈GV解答例〉
人類には原初より協働によって生き残ってきた歴史があり、ことばを介して理性を一致させ協働を目指すのは遺伝的な条件でもあり、人間にとって健全であるので、自分の理性の判断で他者に言われた通りに考え行動することは、第三者から異常に見えても正当なあり方と考えられるから。(130)
 
〈参考 S台解答例〉
生存のため集団内でことばによって複数の理性を一致させて協働していた人類が、文明が発達した今も、この傾向を強力に維持している以上、理性で判断している人が、疑問がなければ、他者に言われた通りに考え行動しているとしても、それは人として自然な性であると考えられるから。(130)
 
〈参考 K塾解答例〉
人間が自分の理性の判断で、他者に言われた通りに考え、疑問がなければ、その他者のことば通りに行動するということは、かつて人類が集団の共有することばを通じて協力し合うことで、大自然の中で生き残る道を見つけてきた理性の原初的なあり方に従っていることになるから。(127)
 
〈参考 Yゼミ解答例〉
当事者以外の人から見れば、理性を失って他者のことばに騙されている状態に見えるとしても、当人は他者のことばを受け取り自分のものとすることで相手と理性を協働させているのであり、それは人類の心のなかで原初から継承されてきたごく自然で本能的なあり方であるといえるから。(130)
 

問五「ことば抜きに、臭いや絵や音楽だけで、人を騙すことはむずかしい」(傍線部(4))とあるが、その理由を本文に即して100字以内でまとめよ。

 
〈GV解答例〉
ことばは心を内から動かし、それを介して自己の認識や他者との理解の共有も可能になり、他者の心を支配するという状態も成り立ちうるので、外から感覚刺激を与え心を動かすことは、ことば抜きでは完遂できないから。(100)
 
〈参考 S台解答例〉
ことばの場合、人は自分の心の内側に相手と同じ考えが再構成されることをすすんで許す結果、相手のことばに支配されて動かされうるが、外部からの感覚刺激だけの場合、人が心にぼやけた感覚像をもつにとどまるから。(100)
 
〈参考 K塾解答例〉
名付けによって感覚刺激を明瞭にして心を内側から動かすとともに、人の理性を再構成しその心を支配することも可能にすることばを伴わなければ、臭いや絵や音楽は感覚刺激によって外から心を動かすにすぎないから。(99)
 
〈参考 Yゼミ解答例〉
臭いや絵や音楽は人の心を外から動かす感覚刺激であるが、ことばは理性そのものであり、人はことばで世界を認識し思考するので、ことばで理性を内から支配することで相手に間違った判断や行動を促しやすくなるから。(100)
 

問六 (内容一致問題)

〈答〉ウ、オ