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傾向と対策
2021年度本試験(第1日程)は、全体的に共通テストという新しい形式を惜しみなく示すものであった。今年度から始まる新しい試験は「旧来の試験とは違うぞ」と、殊更にアピールする目的があったのだろう。 今年度試験を一言で表すなら、「長くてつらい、情報処理問題の連続」という印象だった。特に、同一テーマについて書かれた2つの文章を読み比べながら、さらに、図表などの付属の資料を利用しつつ解答にたどり着かせる、非常に時間と手間を要する問題(第4問)は、センター試験にはなかった、高い情報処理能力を問う問題であった。 もう一つ、印象的な問題は、文章中の記述を質的に、fact / opinionで区別して答えさせる問題(第2問に登場)だ。単に和訳するのではなく、文の質を内容的に判断することは、文章における当該箇所の重要度を考える際に必須である。(この問題は、英作文に繋がる視点を鍛えることができる、という意味で個人的に注目している。)
センター試験の読解分野と比較して端的に言えば、共通テストは①語彙数の激増、②語彙・構文の易化、③問いのほぼ全てが情報処理問題、というのが主たる特徴だと言える。 つまり、平易な英文を大量に読みながら、問いの答えを探すという、非常に作業感の強い単調な問題だったと思う。一方で、センター試験のような、段落全体、文章全体の論旨を問うような「王道の読解問題」、そして、中位層と上位層を識別する「高度に言い換えられた選択肢」がほぼ姿を消していたのも印象深い。 来年度以降の共通テストはどのようなものになるだろうか?
これからの数年間は試行錯誤の作問が続くはずだが、個人的には、今年度の第1日程と第2日程の試験を参考に、「王道の読解問題の復活」、つまり、「情報処理問題と大意把握問題の両立」に向かうのではないかと予想している。その方が多様な読解力を測定できるという点で、公開されている「作問の意図」と合致するということもある。 したがって、来年度の試験に向けては、
②複数の記述を比較し、総合して処理する力
③まとまりのある文章を読み、各段落の要旨、全体の主旨を把握する力、これら3つを合わせた、バランスの取れた、骨太な読解力をつけることが必要である。
新しい試験では作問者もあの手この手で、問題の質を高める工夫をし続けるはずである。当然、今年度の試験が決定的な形式ではないと心得なければならい。よって、受験生は単なる一過性の「形式・傾向」に左右されず、しっかりとした読解力をつけるように努力して欲しい。
英語担当 與那城大輔