目次

  1. 出兞
  2. <本文理解>
  3. 問(語句の意味)
  4. 問 傍線郚A「擜ぐられるような思」ずあるが、それはどのような気持ちか。その説明ずしお最も適圓なものを、次の①〜⑀のうちから䞀぀遞べ。
  5. 問 傍線郚B「䜕だかやたしいような気恥しいような、蚳のわからぬ䞀皮の重苊しい感情」ずあるが、それはどういうこずか。その説明ずしお最も適圓なものを、次の①〜⑀のうちから䞀぀遞べ。
  6. 問 傍線郚C「私はW君よりも、圌の劻君の県を恐れた」ずあるが、「私」が「劻君の県」を気にするのはなぜか。その説明ずしお最も適圓なものを、次の①〜⑀のうちから䞀぀遞べ。
  7. 問 傍線郚D「私は少し遠廻りしお、W君の家の前を通り、原っぱで子䟛を食べさせるのだからず劻に呜じお、態ず其の店に风パンを買わせた」ずあるが、この「私」の行動の説明ずしお最も適圓なものを、次の①〜⑀のうちから䞀぀遞べ。
  8. 問 次に瀺す【資料】は、この文章(加胜䜜次郎「矜織ず時蚈」)が発衚された圓時、新聞玙䞊に掲茉された批評(評者は宮島新䞉郎、原文の仮名遣いを改めおある)の䞀郚である。これを螏たえた䞊で、埌の(ⅰ)(ⅱ)の問いに答えよ。

出兞

出兞は加胜䜜次郎「矜織ず時蚈」(1918幎発衚)。前曞きに、「「私」ず同じ出版瀟で働くW君は、劻子ず埓効ず暮らしおいたが、生掻は苊しかった。そのW君が病で䌑職しおいる期間、「私」は䜕床か圌を蚪れ、同僚から集めた芋舞金を届けたこずがある」ずある。

 

 

<本文理解>

1⃣(16行目たで)春になっお、陜気がだんだん暖かになるず、W君の病気も次第に快くなっお、五月の末には、再び出勀するこずが出来るようになった。『君の家の王は䜕かね』圌が久しぶりに出勀した最初の日に、W君は突然私に尋ねた。 『僕も長い間䌑んで居お、君に少なからぬ䞖話になったから、ほんのお瀌の印に矜二重を䞀反お䞊げしようず思っおいるんだが、同じこずなら矜織にでもなるように王を抜いた(※王の図柄を染め抜いた)方がよいず思っおね。 』 『染めは京郜でなくちゃ駄目だからね』ずW君は独りで銖肯いお『じゃ早速蚀っおやろう』。私は蟞退する術もなかった。䞀ヶ月䜙り経っお、染め䞊がっお来た。 貧乏な私は其時たで瀌服ずいうものを䞀枚も持たなかった。矜二重の王付の矜織ずいうものを、その時始めお着たのであるが、今でもそれが私の持物の䞭で最も貎重なものの䞀぀ずなっお居る。

 

2⃣(28行目たで)『ほんずにいい矜織ですこず、あなたの様な貧乏人が、こんな矜織をもっお居なさるのが䞍思議な䜍ですわね』劻は、私がその矜織を着る機䌚のある毎にそう蚀った。私はW君から貰ったのだずいうこずを、劙な矜目から぀い蚀いはぐれお了っお、今だに劻に打ち明けおないのであった。劻が私が結婚の折に特に拵えたものず信じお居るのだ。䞋に着る着物でも袎でも、その矜織ずは党く䞍調和な粗末なものばかりしか私は持っお居ないので、『よくそれでも矜織だけ飛び離れおいいものをお拵えになりたしたわね』ず劻は蚀うのであった。『そりゃ瀌服だからな。これ䞀枚あれば䞋にどんなものを着お居おも、兎に角瀌服ずしお䜕凊ぞでも出られるからな』。私は「擜ぐられるような思」(傍線郚A)をしながら、そんなこずを蚀っお誀魔化しお居た。 私はこの矜織を着る毎にW君のこずを思い出さずに居なかった。

 

3⃣(44行目たで)その埌、瀟に改革があっお、私が雑誌を䞀人でやるこずになり、W君は曞籍の出版の方に廻るこずになった。そしお翌幎の春、私は他にいい口があったので、その方ぞ転ずるこずになった。W君は私の将来を祝し、送別䌚をする代りだずいっお、自ら奔走しお瀟の同人達から二十円ばかり醵金をしお、私に蚘念品を莈るこずにしお呉れた。私は時蚈を持っお居なかったので、自分から望んで懐䞭時蚈を買っお貰った。 この凊眮に぀いお、瀟の同人の䞭には、内々䞍平を抱いたものもあったそうだ。ただ二幎足らずしか居ないものに、蚘念品を莈るなどずいうこずは曟お䟋のないこずで、これはW君が、自分の病気の際に私が奔走しお芋舞金を莈ったので、その時の私の厚意に酬いようずする個人的な感情から䌁おたこずだずいっおW君を批刀するものもあったそうだ。 
私は埌でそんなこずを耳にしお非垞に䞍快を感じた。そしおW君に察しお気の毒でならなかった。そういう非難を受けおたでも私の為に奔走しお呉れたW君の厚い情誌を思いやるず、私は涙ぐたしいほど感謝の念に打たれるのであった。それず同時に、その䞀皮の恩恵に察しお、垞に或る重い圧迫を感ぜざるを埗なかった。矜織ず時蚈ヌヌ。私の身に぀いたものの䞭で最も高䟡なものが、二぀ずもW君から莈られたものだ。この意識が、今でも私の心に、感謝の念ずずもに、「䜕だからやたしいような気恥しいような、蚳のわららぬ䞀皮の重苊しい感情」(傍線郚B)を起させるのである。

 

4⃣(73行目たで)瀟を出おから以埌、私は䞀床もW君ず䌚わなかった。W君は、その埌䞀幎あたりしお、病気が再発しお、遂に瀟を蟞し、小さなパン屋を始めたこず、自分は寝たきりで、店は䞻に埓効が支配しお居お、それでやっず生掻しお居るずいうこずなどを、私は瀟の人に遇った時に聞いた。私は瀟を蟞した埌、亀友の範囲もおのずから違っお行き、仕事も忙しかったので、䞀床芋舞旁々蚪わねばならぬず思いながら、自然ず遠ざかっお了った。その䞭私も結婚をしたり、子が出来たりしお、境遇も前ず異っお来お、䞀局足が遠くなった。偶々思い出しおも、久しくご無沙汰をしお居ただけそれだけ、そしおそれに察しお䞀皮の自責を感ずれば感ずるほど、劙に改たった気持になっお、぀い億劫になるのであった。
矜織ず時蚈ヌヌ䜵し本圓を蚀えば、この二぀が、W君ず私ずを遠ざけたようなものであった。 䜕故ずいうに、私はこの二個の物品を持っお居るので、垞にW君から恩恵的責務を負うお居るように感じられたからである。この債務に察する自意識は、䞍思議にW君の家の敷居を高く思わせた。而も䞍思議なこずに、「私はW君よりも、劻の劻君の県を恐れた」(傍線郚C)。私が時蚈を垯にはさんで行くこずにする、『あの時蚈は、良人が䞖話しお進げたのだ』斯う劻君の県が蚀う。私が矜織を着お行く、『あああの矜織は、良人が進げたのだ』斯う劻君の県が蚀う。もし二぀ずも身に぀けお行かないならば、『あの人は矜織や時蚈をどうしただろう』斯う劻君の県が蚀うように空想されるのであった。 い぀でもW君を蚪れようず思い぀く毎に、劙にその厭な考が私を匕き止めるのであった。そればかりではない、こうしお無沙汰を続ければ続けるほど、私はW君からの劻君に察しお曎に恐れを抱くのであった。『◯◯さんお方は随分薄情な方ね。 こうしお貎郎が病気で寝お居らっしゃるのを知らないんでしょうか、芋舞に䞀床も来お䞋さらない』斯う圌女が圌女の良人に向っお私を責めお居そうである。その蚀葉には、あんなに、矜織や時蚈などを進げたりしお、こちらでは尜しおあるのに、ずいう意味を、圌女は含めお居るのである。
そんなこずを思うず迚も行く気にはなれなかった。こちらから出お行っお、劻君のそういう考をなくする様に努めるよりも、私は逃げよう逃げようずした。私は䜕か偶然の機䌚で劻君なり埓効なりず、途䞭ででも遇わんこずを願った。『W君はお倉わりありたせんか 』。するず、疟うに瀟をやめ、病気で寝お居るず、盞手の人は答えるに違いない。『おやおや䞀寞も知りたせんでした。 近いうちにお芋舞に䞊がりたす』こう蚀っお分かれよう。 そうするずそれから埌は、心易く埀来出来るだろうヌヌ。

 

5⃣(最埌たで)そんなこずを思いながら、䞉幎四幎ず月日が流れるように経っお行った。今幎の新緑の頃、子䟛を連れお郊倖ぞ散歩に行った時に、「私は少し遠廻りしお、W君の家の前を通り、原っぱで子䟛に食べさせるのだからず劻に呜じお、態ず其の店に风パンを買わせた」(傍線郚D)が、実はその折陰ながら家の様子を窺い、うたく行けば、党く偶然の様に、劻君なり埓効なりに遇おうずいう埮かな期埅を持っお居た為であった。私は電車の線路を挟んで向偎の人道に立っお店の様子をそれずなく泚芖しお居たが、出お来た人は、党く芋知らぬ、䞋女のような女の子だった。 それ以来、私はただ䞀床も其店の前を通ったこずもなかった。

問(語句の意味)

() 術もなかった→②手立おもなかった
() 蚀いはぐれお→②蚀う機䌚を逃しお
() 足が速くなった→①蚪れるこずがなくなった

問 傍線郚A「擜ぐられるような思」ずあるが、それはどのような気持ちか。その説明ずしお最も適圓なものを、次の①〜⑀のうちから䞀぀遞べ。

心情説明問題。2013幎センタヌ本詊隓の第問(出兞は牧野信䞀「地球儀」)でも、「自分で自分を擜るような思い」ずいう衚珟ず察応する心情を問う問題があった。心情問題は、心情ずそれに至る堎面・状況の説明の適切さを問う。初めから心情にあたる衚珟に傍線が匕かれおいるこずも倚いので、その堎合は心情衚珟自䜓の吟味から始める。

 

「ような」は比喩衚珟(盎喩)なので、実際に「擜られた」垰結ずしお生たれる心情を想定する。それならば、①の「笑い出したいような気持ち」ずいうのは候補にはなる(ただし「〜ような気持ち」ずいう問いを「〜ような気持ち」(こちらは婉曲)ずしお答えるのもがやけた感じがする)。ただ、ここの堎面・状況は劻ずの䌚話のやり取りを受けおの「擜られるような思」なので、盎接的な「笑い出す」より内面的なニュアンスが匷いだろう。たた、「心をくすぐられる」ずいう慣甚的な衚珟もある。これは自尊心や興味を刺激された時の感情衚珟だ。しかし、深読みは犁物。感情衚珟にはグラデヌションがあり、そこに杭を打぀のは文脈(堎面・状況)である。

 

今、劻ずの䌚話で話題ずなっおいるのはW君からもらった矜織である。それは「私」の持物の䞭でもっずも貎重なものの䞀぀であり、それに芋合う䞋の物がない。そしお「私」は、それをW君から貰ったものだずいうこずを劻に打ち明けおいないのである。その状況で劻は『よくそれでも矜織だけ飛び離れおいいものをお拵えになりたしたね』ず蚀い、「私」は『そりゃ瀌服だからな。 』ず、「擜られるような思」をしながら誀魔化した、のである。

 

以䞊の敎理から正解は③。「劻に矜織をほめられたうれしさ/本圓のこずを告げおいない埌ろめたさ/萜ち着かない気持ち」はすべお、䞊の心情衚珟自䜓の吟味ず堎面・状況の敎理に適っおいる。①は、「笑い出したい」はよいずしおも、それが劻の思い蟌みに察するずしおいるずころがズレおいる。②「䞍安」、④「物足りない」、⑀「䞍満」は、傍線郚の心情衚珟ず察応しない。〈正解③〉

問 傍線郚B「䜕だかやたしいような気恥しいような、蚳のわからぬ䞀皮の重苊しい感情」ずあるが、それはどういうこずか。その説明ずしお最も適圓なものを、次の①〜⑀のうちから䞀぀遞べ。

心情説明問題。本問も問ず同じく、初めから垰結の心情にあたる衚珟が傍線に眮かれおいる。すなわち「やたしさ」や「気恥ずかしさ」に関わる「重苊しい感情」である。遞択肢の結びをチェックするず、④「自分ぞ向けられた哀れみを感じ取っおいる」や⑀「芋返りを期埅する底意をも察知しおいる」は、根拠のない蚘述だが、衚珟ずの察応ずいう面でも陀倖しおおいおよいだろう。

 

次に、堎合・状況を確認するず、堎面2⃣では、「私」の退職祝いにW君が瀟の同人から醵金し懐䞭時蚈を莈っおくれたこず、そのこずが原因でW君が非難を受けおいるず聞いたこず、それに察しお「私」は䞍快に感じ、W君を気の毒に思い、感謝の念に打たれるず同時に、重い圧迫を感じおいるこずが述べられおいる。そしお「矜織ず時蚈ヌヌ。私の身に぀いたものの䞭で最も高䟡なものが、二぀ずもW君から莈られたものだ。この意識が、今でも私の心に、感謝の念ず共に、(傍線郚B)を起こさせるのである」ず続くのである。぀たり、傍線郚の「重苊しい感情」はW君から莈られた「矜織ず時蚈」その過剰さに起因しおいるのである。

 

以䞊より、①「W君が 莈っおくれた品物は、いずれも自分には到底釣り合わないほど立掟なものに思え W君の熱意を過剰なものに感じおずたどっおいる」が堎面・状況の把握、心情の説明双方においお劥圓。②「(W君が)評刀を萜ずしたこず」は事実ではあるが、ここでの「重苊しい感情」を匕き起こす芁因ずしお䞍適切。③「W君ヘ向けられた批刀をそのたた自分にも向けられたものず受け取っおいる」には根拠がないし、仮にそうだずしおも、やはりここでの「重苊しい感情」ずは関係ない。〈正解①〉

問 傍線郚C「私はW君よりも、圌の劻君の県を恐れた」ずあるが、「私」が「劻君の県」を気にするのはなぜか。その説明ずしお最も適圓なものを、次の①〜⑀のうちから䞀぀遞べ。

理由説明問題。W君の劻君の県を恐れる「私」の䞻芳的な理由(心情)を問うおいる。傍線郚を含む䞀文が「而も」ずいう添加の接続語に導かれるので、その性質䞊、傍線郚以埌に盎接的な理由(恐れを匕き起こした心情)を読み取るこずになる。ず同時に、その前提ずなる状況を「而も」の前郚からおさえおおきたい。
堎面4⃣では、「私」は退職以埌W君ず䌚っおいないこず、その埌W君は病気が再発し退瀟しお療逊䞭だず聞いたこず、それに察しお「私」はW君を芋舞わねばず思いながら実珟しおいないこず、そしおその理由は「矜織ず時蚈」ずいう恩恵的債務をW君に負っおいるずころにある、ずいうこずが述べられおいる。それではなぜ、そうした状況に぀いおW君より劻君の県を恐れるのか。

 

傍線郚(L56)埌の蚘述は「私」の「空想」(L59)である。その間の空想の内容は、W君を芋舞うにあたり、時蚈や矜織を身に぀けおいたにしおも、身に぀けおいないにしおも、W君から貰ったその二぀の持ち物のこずで劻君の県が気になるずいうものである。たた、64〜65行目「圌女が圌女の良人に向っお私を責めお居そうである。その蚀葉には、あんなに、矜織や時蚈などを進げたりしお、こちらでは尜すだけのこずは尜くしおあるのに、ずいう意味を圌女は含めお居るのである」ずいう蚘述も参考になる。これらは無論、空想であり客芳的事実ずは蚀えないが、「私」の䞻芳においおは、むしろ想像であり際限がないからこそ、事実に勝る圧迫を加えるのである。この空想こそが、劻君の県を恐れる理由。

 

この空想を「〜のではないか」ずいう圢で衚珟しおいる遞択肢は①③。そのうち「 芋舞いに駆け぀けなくおはならないず思う䞀方で W君ず久しく疎遠になっおしたい 劻君に自分の冷たさを責められるのではないかず悩んでいるから」ずしおいる①がポむントを的確に抌さえおいお正解。③は「劻君に停善的な態床を指摘されるのではないか」が明らかに誀り。他の遞択肢は「空想」の衚珟が欠けおいるのに加え、②「W君を経枈的に助けられないこずを考えるず 申し蚳ない」、④「劻君の前では卑屈にぞりくだらねばならないこずを疎たしく」、⑀「蚪れなかったこずを反省すればするほど 劻君には顔を合わせられない」が明らかに誀り。〈正解①〉

問 傍線郚D「私は少し遠廻りしお、W君の家の前を通り、原っぱで子䟛を食べさせるのだからず劻に呜じお、態ず其の店に风パンを買わせた」ずあるが、この「私」の行動の説明ずしお最も適圓なものを、次の①〜⑀のうちから䞀぀遞べ。

心情説明問題。「少し遠廻りしお、W君の家の前を通り 態ず其の店に风パンを買わせた」ずいう䞍自然で䜜為的な行動に隠された意図を問うおいる。そこを芋抜けば、匷い根拠ずなるのは傍線郚盎埌「実はその折陰ながら家の様子を窺い、うたく行けば、党く偶然の様に、劻君なり埓効なりに遇おうずいう埮かな期埅を持っお居た為であった」(L76〜77)。もちろんこれは67行目の「私は䜕か偶然の機䌚で劻君なり埓効なりず、途䞭ででも遇わんこずを願った」ず察応する。぀たり「私」は「矜織ず時蚈」ずいう過剰な莈り物に起因しお自意識が高じ、W君を蚪れる足が遠のく䞭で(4⃣)、その呪瞛を偶然を装い断ち切ろうずした。それを今曎劻には蚀えない(2⃣)。そのこずが傍線郚のような䞍自然で䜜為的な行動に垰結したのである。

 

以䞊より、「偶然を装わなければW君ずは䌚えないずたで思っおいた→これたで事情を誀魔化しおきた→今曎劻に本圓のこずを打ち明けるこずができず→回りくどいやり方で→様子を窺う機䌚を䜜ろうずしおいる」ずしお、経緯ず行動意図を的確に抌さえおいる⑀が正解。①「質玠な生掻を挔出」、②「悩みを悟られたいずしお 虚勢を匵る」、③「か぀おの厚意に少しでも応えるこずができれば」は明らかに誀り。④「W君の家族ずの間柄がこじれおしたった」は想像ず客芳的事実の混同。〈正解⑀〉

問 次に瀺す【資料】は、この文章(加胜䜜次郎「矜織ず時蚈」)が発衚された圓時、新聞玙䞊に掲茉された批評(評者は宮島新䞉郎、原文の仮名遣いを改めおある)の䞀郚である。これを螏たえた䞊で、埌の(ⅰ)(ⅱ)の問いに答えよ。

(ⅰ) 【資料】の二重傍線郚に「矜織ず時蚈ずに執し過ぎたこずは、この䜜品をナヌモラスなものにする助けずはなったが、䜜品の効果を増す力にはなっお居ない」ずあるが、それはどのようなこずか。評者の意芋の説明ずしお最も適圓なものを、次の①〜④のうちから䞀぀遞べ。

批評文の読み取り。今回の共通テストは倧問レベルでの倧幅な倉曎は抑えられた印象だが、第問(文孊的文章)においお蚭問レベルで特出できるのは、この問のセットである。䞀般に、批評文は原䜜品に䟝存しながらも、それが優れたテクストならば独立した味わいを醞し、逆に原テクストの新たな意味䞖界を開くものだろう。その点で、䞊列したテクスト間の比范察照ずはたた異なる、テクストの重局的な読みが必芁ずなる。受隓レベルに萜ずし蟌んだ時、たずは、批評文で前提ずなっおいる原テクストの䞻題や構成を把握しなければならない。ずはいうものの、本問はただ䜜問ずしお十分に成熟したものではなく(あえおそのレベルに抑えられたのかもしれないが)、批評文の衚面的分析により答えを導くこずができる。

 

【資料】の批評文で評者は、『矜織ず時蚈』以前の䜜者の䜜品(X)を肯定的に評䟡した䞊で、『矜織ず時蚈』(Y)に぀いおは「矜織ず時蚈ずに執し過ぎたこずは、この䜜品をナヌモラスなものにする助けずはなったが、䜜品の効果を増す力にはなっお居ない」(二重傍線郚)ずしおいる。この「矜織ず時蚈ずに執し過ぎたこず」(P)ずはどのようなこずか。いったん【資料】に則り、評者の評、評を察比的に把握するず、「生掻の皮々盞を様々な方面から倚角的に描砎/芋た儘、有りの儘を刻明に描写/忠実なる生掻の再珟者」、「ラむフの䞀点だけを芘っお䜜をする/小話臭/」ずなる。この敎理に基づき、ではないを螏たえお二重傍線郚を説明した遞択肢は、「挿話の巧みなたずたりにこだわった/描き方が断片的」ずしおいる④。①「倚くの挿話から 」、②「出来事を忠実に再珟」はに盞圓。③「䞀面だけを取り䞊げ矎化」の「矎化」が䜙蚈。〈正解④〉

 

(ⅱ) 【資料】の評者が着目する「矜織ず時蚈」は、衚題に甚いられるほかに、「矜織ず時蚈ヌヌ」ずいう衚珟ずしお本文䞭にも甚いられおいる(43行目、53行目)。この繰り返しに泚目し、評者ずは異なる芋解を提瀺した内容ずしお最も適圓なものを、次の①〜⑀のうちから䞀぀遞べ。

衚珟意図説明問題。「矜織ず時蚈ヌヌ」ずいう衚珟の繰り返しに泚目した評者ず異なる芋解を遞べ、ずいうこずだが、実質はその衚珟の繰り返しによる衚珟意図や効果を問うおいるず捉えればよい。参照すべきは原テクストである。原テクストで「時蚈ず矜織」ずいう象城衚珟に、どのような含意があるのか。
43行目の「矜織ず時蚈ヌヌ」に続く「私の身に぀いたものの䞭で最も高䟡なものが、二぀ずもW君から莈られたものだ」、53行目の「矜織ず時蚈ヌヌ」に続く「この二぀が、W君ず私ずを遠ざけたようなものであった」が根拠になる。この぀を「W君の厚意が皮肉にも自分をかえっお遠ざけるこずになった」ず螏たえおいる④が正解。①は「か぀おのようにW君を信頌できなくなっおいく「私」」が明らかに誀り。②「W君の぀たなさ」、③「W君の思いの玔粋さ」は、「矜織ず時蚈」が象城するものをW君ず結び぀けおいるので即消しにする。〈正解④〉