傾向と対策

率直に言うと解いていて楽しい問題が多かった。数学をやる中で「解いていて楽しい」というのは、複数の別々のように見えているものが実は共通性が存在し、うまくまとめあげることができたり、導いた事柄を一般化して他の事柄に適用できたり、ある問題を解くのに用いた発想が他の問題にもうまく当てはまったり、一見するとよくわからない事柄が基本的な事柄の積み重ねによって一気に見通しがよくなったり、こういう風なことに由来する。これが数学の「楽しさ」であろう。

 

具体的に問題の中から取り上げていく。第1問では三角関数と指数関数の中にある共通性が題材で、この共通性は高校の数学の先でうまくまとめあげられる。高校数学の先をのぞき見る楽しみがある。加法定理に類似した性質を導く際には、三角関数の加法定理から二倍角の定理を導くのと同様の発想が用いられる。第2問の微積分では与えられた二次関数の共通性をもとに接線について考え、それを三次関数へと拡張する。思わず四次関数なら?n次なら?と発想が拡がっていく。第4問の数列では3種類の似たような形だが、係数が文字になったり未知数が増えたり、少しずつ抽象度が高まる漸化式を解いていく。3つも解いているうちに自分でももう少し抽象度を上げた漸化式をつくって解いてみたくなる。第5問のベクトルは最終的に行き着く先は正十二面体の断面の中にある図形についてという難しい印象を受けるテーマ。それを導いていく手法は少し計算が面倒だが非常に容易い。容易い操作の先に難しそうに見えたテーマがあっさり解けてしまう。

 

受験生の中にはcosの合成に戸惑った方もいたであろうが、三角関数の合成をきちんと導く原理を理解していると容易い。小手先の解法暗記、公式丸暗記ではなく、その公式がどのように成立するのか、どんな原理から成るのか、そこをきちんと勉強することが大切である。共通テストの問題を解く中で、色々な箇所に上に述べたような「数学的な楽しさ」が顔をのぞかせる。数学の本来的な良さを普段から感じとれるように勉強することが対策といえる。もう少し詳しく述べると、数学の問題を解く際に解き方をそのまま丸暗記してしまうのではなく、少し設定を変えてみたらどうだろうか?異なるように思えるいくつかの問題との共通性はどこにあるか?いくつかの解法をまとめて整理するとしたら、どのようにまとめられるか?平面から空間へ、2変数から3変数へというように、より一般に適用できる公式をつくりあげるとしたらどうしたらよいか?他にももっとうまい解き方はないだろうか?こういうことを普段の学習の中で意識したい。これは計算処理に関しても同様だ。簡潔にうまく処理することが数学では美徳であり、普段から意識したい。今回の問題セットでももちろん差がつく。

 

数学を教える立場からすると、題材として扱うのが楽しくなる問題が豊富で、これを材料として色々と生徒に話をしたくなる問題ばかりであった。数学を楽しむことが試験対策になるという状況は非常に喜ばしいことである。

 

数学科担当 玉城陽平