傾向と対策

共通テストも2年目となり、その目指している方向もはっきりしてきたかと思われる。センター試験からの変更点を中心に検証していきたい。

 

第1問は例年通り小問集合だった。いずれも基本問題であり、複雑な計算を要する設問もなく解くのは容易だったと思われる。ただ、設問1の波源が逆位相であること、設問2の光源の矢印の方向、設問4の熱サイクルで状態BC間が断熱変化であること、など軽率な判断をしてしまうと出来ているつもりでも間違ってしまう問題があった。定性的な判断を行うためにはその前提条件が必要であり、問題文や図表などからしっかりと読みとることが重要である。

 

第2問は間違った仮説の検証という目新しい問題となった。間違った仮説に基づく物理量の関係、正しい関係を導くための実験方法、実験結果から得られる内容など単に知識を問われる問題ではなく、思考力を問われる問題となっている。物体に力を加えるとき、物体の速さは何によって決まるのか?という単純な内容について、力の大きさ、物体の質量、力を加えた時間、そして初期条件について考察していく。運動量と力積、そして時間との関係などは普段問われることはないため、傾きが力Fで一定であることに気づくのは難しいかも知れない。

 

第3問は電磁誘導と物体の運動について複合的に考察していく問題となっている。それぞれの現象は基本的であるが、両方の現象を同時に考えなければグラフの選択を誤ってしまう。だが、複雑な計算もなく題意を把握できれば時間をかけずに解答出来たであろうと思われる。

 

第4問はボーア水素原子モデルをテーマとする問題であった。今までは原子分野は選択問題や小問集合だったので、原子全般の対策が間に合ってないと難しかったかもしれない。十分に対策していれば内容は基本的であった。

 

全体としては、これまでのセンター試験と同じように物理量の関係を公式などから導いていくことも疎かには出来ないが、物理現象をどう考察していくかも重要になっていく。物理の諸公式も天下り的に暗記するのではなく、実験観察により得られるもの、数学的な手法で導かれるものを理解し、自分で導出を行う必要がある。そして物理現象が自分の身の回りでどう起こっているか、どう利用されているかを普段から考察していく姿勢が重要である。

 

数学・理科担当 砂川多津男