傾向(出典の分析)
共通テストが始まって、3年連続の漢詩の出題とはなりませんでしたが、作者は「長恨歌」「香炉峰〜」「八月十五日夜〜」など、教科書の漢詩単元で学ぶ、詩人の(政治家でもあった)「白居易(白楽天)」でした。官吏登用試験では「漢文」の特徴である「簡潔で要領の良い説明」が強く求められ、漢詩の作詞能力も必要条件です。問題文は官吏登用試験の予想問題とその模擬答案でしたので、「簡潔で要領良く内容がまとめられている」(←省略が多く、説明は短め)のはもちろん、「対句」「比喩」といった、漢詩でも多用される表現を用いて、自らの意見を述べる内容でした。このことが【模擬答案】の部分を読解するにあたり、いつもの演習や模擬試験の漢文とは違って、なかなか内容がつかめない(つかむのに時間がかかった)理由と思われます。
設問の分析
大きく次の二つに分けられます。
(1) 基礎知識(漢文重要語)のみが問われた設問→問1(イ)
(2) 漢字・句法語法の基礎知識+文脈を踏まえる設問→問1(ア)(ウ)・問2〜問7
【今回の特徴的な設問】と【正解にたどりつくために必要なこと】
上記の(2)漢字・句法語法の基礎知識+文脈の設問として
問1
(ア)「無由」の「由」には「理由・原因」と「方法・手段」の意味がありますが、直前の「不得」との対句(対応関係)を利用することで、また、問1(ウ)「弁」でも直前の「求」との対句(対応関係)に気づくことで文中の意味を決定し、それをもとに、それぞれの選択肢の「弁」の意味を確認して、正確を導きます。
問2 傍線部の重要句法は二重否定の表現です。その強調表現で示された「無不思求其賢」の部分は、「君主」が「其賢」を「求ムル」ことの文中での意味を、「官吏登用試験の問題」であること(リード文からの文脈)から読み取る必要があります。 そして、この前半部分を踏まえて、後半の「賢ナル者」が「効ス」ときの目的語である「用」の文中での意味内容を読み取ります。 その際「効」が「力を尽くす・つとめる」の意味をもつことを知っている漢字力や、「官吏登用試験」「君タル者」「賢(タル者)」などの語(漢文の文化)についての知識があることが、正解を早く確実に導くには必要です。
問4 比喩部分の内容説明問題です。直後の「線ハ〜発ス。雖〜也。」の内容から「線」は「針」が、「矢」は「弦」があることで縫ったり射ったりできることを読み取りましょう。 「無クンバ〜不可得」(否定詞を使った仮定表現)の句法の知識を身につけると同時に、「自ラ致ス」の目的語の補足や、逆接を利用した「不可得」の意味内容の読み取りといった文脈力を訓練することが重要です。
共通テスト漢文に対応できる力をつけるために
(1)漢字、漢文重要語・文化、句法・語法を知る+忘れては覚えるを繰り返しましょう!
→参考書を見ているだけでは、なかなか身につかないことも、知る(覚えていく)順番や関連づけを工夫したり、忘れたらまた覚える(思い出す)を繰り返すことで、定着していきます。 その工夫のひとつが「句法帳」と、それに対応した「道場」と呼んでいる教材をつかった「授業」です。
句法や重要語を体系だてて繰り返し学ぶことのできる、これらの教材と授業・個別学習を利用して、本番まで知識を磨きつづけましょう。
(2)授業・個別を受講し、(1)で身につけたことをどう利用して読むか・解くかを訓練し続けて、文脈力をつけましょう! →せっかく身につけた知識も、実際に文章を読んだときに気づかない(使えない)こと(人)も多いようです。 また、省略・短縮された内容、指示内容や文中の語意・文意の読み取りにはコツがあります。 演習の数をこなす、解説を読み込むことよりも、確実にそのコツを身につけるには、授業での読み合わせ時の問いかけに、皆さんが応える回数を増やすことが効果的です。 問いかけに素早く反応する訓練ができる授業・個別学習は、限られた時間内で情報を読解・処理することが必要な共通テストで、必ず皆さんの助けとなります。