共通テストの世界史を学ぶ上での視点
共通テストも3回目を迎え、資料問題も単なる国語の問題や資料の読み取りが主で知識は浅いものでもよいといった設問ではなく、しっかりした知識を使って情報を整理する必要のある設問が増えている。ただ相変わらず国語の問題に止まっている設問も見受けられる。今年の世界史の問題は、求められる知識は例年と変わらないが「時間がかかる」のは確かである。受験生に聞いても「資料の読み取りに時間がかかって見直しの時間がなかった。」という声が多数あった。各予備校のレヴューでは「やや難化」としているところが多いが概ね妥当であろう。
やはり思うのは、歴史に関しては知識が最重要ということ。「暗記重視から思考重視へ」というのが共通テスト全体を貫く趣旨であるが、歴史に関しては正確な知識なくしては正しい思考は不可能。なので、世界史に関しては正解に至るための方法論を論じるよりも、まずは知識量を増やし、それを整理することが得点への道筋の基本と言える。「暗記が先か読解力がさきか」ではなく「暗記して整理して読解力」というスタンスが重要である。
大問概観
第1問 A リード文の内容は女性の選挙権の拡大だが、それに関する小問で問われている内容は、全て教科書に記述がある。ただ “BRICS” だけが現代用語で、教科書によっては扱っていない世界史の教科書もある。(現社・政経の教科書には記述あり。) 小問3で扱われているようなテーマ別のアプローチは本番直前には必須。
第1問 B よくあることであるが、対話文のテーマは「中国史の中の女性」でありながら、続く小問自体は女性とは直接関係なく、教科書レベルの中国史の知識があれば十分対処できる問題である。出題の形式にばかり注目してしまうと、問われていることの本質を見失いがちになってしまう。解答する力の基礎は教科書で扱われている知識である。
第2問 A せっかく覚えた知識も整理できていないと応用に使えない。小問7は一見難しく見えるが、フィリップ4世がカペー朝の王であることを考えれば正解は②となる。フィリップ4世はアナーニ事件を起こした人物であり、次にバロア朝が成立することを考えながら家系図を見れば、正解は②であることは明らかである。
第2問 B 小問11・選択肢①(正解)のアブー・バクルは資料集や一部の参考書には出てくるが教科書には載っていない。しかし残りの選択肢の内容は教科書の知識が整理できていれば容易に答えられるので決して難問ではない。題の図がエルバ島脱出後のナポレオンなのは明らかなので、残りは選択肢は一つしかなくなるので簡単。
第3問 A 易しい問題。小問14はハイチとセント・ヘレナ島の位置を問う。セント・ヘレナ島の位置を確認する学生は少ないと思うが、問題文の絵がエルバ島脱出を描いているので、それを除外した残り二つが正解となる。エルバ➡︎セント・ヘレナの順番さえ知っていればすぐ分かる。
第3問 B 問題文の中の顧炎武が明末清初の人物であるのは文化史で扱われている。また17世紀とも書いてあるので問題文は明末のことを述べている。ならば官学は朱子学なのは明白。つまり選択肢は③となる。受験生は文化史まで手が回らないことが多いが、文化史も疎かにできない。
第3問 C 問題文の読み取りと世界史の知識の力の両方を試す問題。中国の文化史に出てくる様々なジャンルの書籍を、本紀・列伝といった形式も含めて知らないと解けない。また中国の木版印刷が唐代から始まったことが選択肢を選ぶ判断材料になるなど、細かい知識が問われている。
第4問 A 小問21では「ローマ法の集大成が行われた」、小問22では「ヴァンダルを滅ぼした皇帝」という記述から正誤りがすぐにわかる簡単な問題。問題文を読む作業に時間を費やしてしまうと損である。
第4問 B 問題文に登場する人物の活躍した年代別に整理できれば正解できる。歴史的事件と文化史が時代順に整理されていないと解けない。
第4問 C 小問27に出てくるカルケドン公会議は教科書でも扱われておらず、あまり出題されたことがない。やや難問といえる。
第5問 A 教科書レベルの知識で簡単に解ける。特に小問29・30は選択肢自体の間違いを指摘するだけでも正解できる。
第5問 B グラフを見て答えるので統計資料の読み取り問題とされているが、小問32・33の正解の選択肢は、ほぼ同じ文言が教科書のそのまま記載されている。なので教科書を熟読して情報を整理できていれば、グラフを精査しなくても解ける。