全体概要
化学は概ね例年と同じような傾向であった。今年は高校化学の内容が大きく変わる年であったが、共通テストの難易度、出題傾向ともに大きな変化は見られなかった。
難易度的には例年と大きな差はないが、平均点が大きく下がっている。これは出題形式に受験生が大きく左右されているものと考えられる。聞かれている知識や理解は基本的なものだが、問題文に見慣れない単語を入れたり、初見の図やグラフを取り入れたりするだけで現役生の平均点は下がる。たとえ問題に全く必要のない単語だったとしても、見慣れないものが問題に含まれているだけで今までとは全く異なる問題だと誤認する現役生は多い。
いくつか例を挙げて説明したい。例えば大問1-4だ。基本的なコロイドの問題だが、2番の選択肢に懸濁液という単語が入っている。化学に勉強時間をかけていない生徒は恐らく見なれない、覚えていない単語だろう。しかしそのほかの選択肢は塩析、電気泳動、ブラウン運動、チンダル現象と絶対に抑えていなければならない基本的な選択肢だ。冷静に問題を見れば十分消去法で正解を選べる問題である。
SNSで話題となった大問2-1の問題も同じである。ホタルの発光がルシフェリンルシフェラーぜ反応であることは基本的な知識である。迷うとしたら2番のケミカルライトと3番のネオンサインだが、知識は必要ない。ケミカルとわざわざ名前がついているのだから2番は化学発光だと判断できる。
最後に大問1-5b、逆浸透に関する問題を取り上げたい。一見普通の浸透圧の問題と異なるものに見えるが、平衡状態という言葉に目をつけるとそこまで難解な現象ではない。物理選択の生徒は特に理解しやすい問題だ。左右からの圧力差と浸透圧が等しい時にピストンが止まり平衡状態になると考えられる。一見難解な現象に見えても、基本的な現象の組み合わせで成り立っていることが多い。ただ、基本的な現象の理解が浅かったり、現象を組み合わせる練習を行う必要はある
共通テストではこれらのような外見だけが難しそうな問題がほとんどだ。不要な情報に騙されず、必要な情報を集める能力を測る問題を出し続けている。
GVでの対策
共通テストで必須の読解力と現象理解。これらを徹底的に高めていくのがGVでの対策だ。この2つをしっかり固めることで上位層から低位層まで安定した点数を取ることができている
多くの生徒は化学で習う現象を単語として記憶してから本番に臨んでいる。これは英語で例えると英単語のスペルだけ覚えて日本語訳を全く覚えていないのと同じである。そんな状態で知識問題も考察問題も解けるわけがない。現象を理解する最初のステップとして、まずは現象の定義を覚えること。定義を覚えていくにつれて、始めて「なんで?』という疑問が出てくる。このなんでを解決していくことで現象を深く理解できるようになる。インプットが足りてない状態で疑問を出せる生徒は少数だ。まずは疑問を持てるだけの知識をつける。
その後、十分な知識と現象理解ができている生徒は読解力の強化を行なっている。数字が数多く含まれている文章や知らない現象をテーマにしている問題を解き、数式の日本語訳を行う。ただの数字ではなく、数字の中には意味が含まれていることを意識して解いていく。