【出典】

山口裕之『「みんな違ってみんないい」のか? 相対主義と普遍主義の問題』。

 

【課題文内容】

「正しさは人それぞれ」「みんな違ってみんないい」という相対主義は、両立しない意見の中から、どうにか一つに意見を決めなければならない場合においては意味をもたない。

 

 「科学」は過去に合意が形成されて研究が終了した問題に対しては「客観的(普遍的)な正しさ」を説明できるが、今目の前の問題については「人それぞれ」「自分が正しいと思う答え」を述べているに過ぎない。

 

 権力者たちは「みんな違ってみんないい」や「科学の普遍主義的考え」を自分たちの都合の良いように利用して自らの主張や行動を正当化し、多様性や異なる見解を力(時には暴力)で切り捨てる社会にしてしまっている。

 

 このような社会の中で、若いみなさんには、「正しさは人それぞれ」「みんな違ってみんないい」と相手との対話を終了せずに、相手ととことん付き合い、自分の考えを変えたりプライドが傷つくことを恐れずに対話を続けて、相手とともに「正しさ」を作って(知って)成長してほしい。

 

【レヴュー】

問いは「上記の内容を踏まえた上で何らかの具体的な事象を取り上げながら、1000字以上1200字以内で述べよ」というものだった。

生徒の皆さんとの小論文対策を通して、「具体的な事象」を考えつく(置き換える)ための社会(自分の身の回りや地域、沖縄・日本・海外の今と過去・未来)への意識(興味)や考察、それを論理的に表現する(答える)ための経験・訓練が必要ということを感じている。
今回の出題でもその経験・訓練の差が生じたのではないかと思われる。

 

推薦・二次試験で小論文が課される皆さんは、GVでの小論対策授業を受講するだけでなく、現代文・社会科科目、新聞・ニュースの内容に対しての疑問や考察と、言語化・文章化の訓練を意識して行ってもらいたい。

 

 課題文の「多様な他者(相手)」は「人間(の価値観)」はもちろん、「歴史・文化」「学問」「生物・自然」など本当に多様である。
今回の出題はテーマに対する社会的な考察はもちろんのこと、琉球大学人文学部社会学科での学びを希望している者として、課題文でも述べている「今の自分の考え方を否定して、今の自分でないものになる」=「学ぶことで新たな正しさを作り(知り)、成長する」ために、「とことん相手と付き合う面倒」や「自分のプライドが傷つくことを恐れない」姿勢も問われていると思われる。