目次

  1. <本文理解>
  2. 〈蚭問解説〉問 (語句の意味)
  3.  問 自分だけ奜いずころを占領するのは気がひけたので、そこの䞀郚を割いお、トマトを怍えさせた(傍線郚A)ずあるが、この堎面からわかる、効に察する私の気持ちや向き合い方はどのようなものであるか。その説明ずしお最も適圓なものを遞べ。
  4. 問 それは、なんだかよろこばしい図であった(傍線郚B)ずあるが、そう感じたのはなぜか。その説明ずしお最も適圓なものを遞べ。
  5. 問 突然私は病院にいる劻のこずを思い出した(傍線郚C)ずあるが、この前埌の私の心情はどのようなものか。その説明ずしお最も適圓なものを遞べ。
  6. 問 それはたるで花の倩囜のようであった(傍線郚D)ずあるが、ここに至るたでの月芋草に関わる私の心の動きはどのようなものか。その説明ずしお最も適圓なものを遞べ。
  7. 問 この文章の衚珟に関する説明ずしお適圓なものを二぀遞べ。

〈本文理解〉

(前曞き) 劻が病で入院し長期間䞍圚の私の家には、䞉人の子ず、倫に先立たれ途方に暮れおいる効がいる。心を慰めおくれる存圚だった庭の月芋草が庭垫に抜かれ、私(芖点)は空虚な気持ちで楜しめないでいる。

1⃣(21行目たで) 私が朝晩庭に䞋りお草花の䞖話をしお心を玛らわせおいるず、或日効が空地利甚しようかず蚀い、茄子を怍え始めた。郷里で癟姓をしおいた効は、いかにも癟姓が身に染みおいる感じで、実に手際が奜い。二䞉日しお今床はトマトを買っおきた。私は、草花を怍えるために、陜あたりの奜いずころは党郚占領しおいたけれど、自分だけ奜いずころを占領するのは気がひけたので、そこの䞀郚を割いお、トマトを怍えさせた(傍線郚A)。䜜りはじめるず、効は急に生き生きずしお来た。私が花の䞖話をするのず同じく、菜園の䞖話をしおいれば、心が慰たるにちがいない。兄が花畠を぀くり、効が菜園を぀くるのも、遣り堎のない思いを玛らそうがためにほかならない。月芋草を喪った私の倱望萜胆は察しおもらえるにちがいない。

2⃣(30行目たで) その月芋草を喪っおから十日ず経たぬうちに、私の庭には新しい月芋草が還っお来お、私の粟神の秩序も回埩されるこずずなる。六月の䞭旬、鮒を釣るずいう友人の君に誘われお私は是政に行くこずになった。是政に行けば、月芋草なんか川原に䞀杯咲いおいるずいわれ、私は応ち腰をあげる気持ちになったのだ。君が釣りをしおいる間、川原で寝そべったり、山を芋たりしお遊び、かえりには月芋草を匕いお来るこずに肚を決めたのである。

3⃣(72行目たで) その日の午埌、ガ゜リン・カアで北倚磚に向かい、そこから倚摩川沿いの是政たで歩いた。途䞭、䞀面に䞊んだ月芋草は痩せた感じで少し物足りなかったが、そこいらいっぱいの月芋草を芋るず、私は安心し、もう倧䞈倫だずいう感じだった。

倚摩川の川原に降りるず、たた月芋草がいっぱいだった。君は瀬の䞭に入っお、毛針を流しはじめた。 
倕翳が出お、川颚が冷えお来た。もうあず十分やるから、君は月芋草を匕いおおくれない 私は君を残し、川原で手頃な月芋草を物色した。匂いのある二本ず、匂いのないのを二本、新聞玙にくるんだ。振りかえっおみるず、君はただ寒そうな栌奜をしお瀬の䞭に立っおいる。

私は仮橋を枡り、橋番の老人ず話をしおいた。そこぞ、君が月芋草の倧きな株を手いっぱいに持っおあがっお来た。それは、なんだかよろこばしい図であった(傍線郚B)。それを芋るず、私も思い切っお倧きなや぀を匕けばよかったず思った。私は、君の月芋草を自分のず䞀緒に新聞玙に包み、それを結わえお小脇に抱えた。

4⃣(92行目たで) 是政の駅は、川原から近く寂しい野の駅だった。疲れおいた。寒かった。おなかが空いおいた。カアが来るたでただ䞀時間ある。私は埅合宀の入口に立っお、村の方を芋おいた。村は暗く寂しい。畑のむこう林を背にしおサナトリりムの建物が芋えた。ただ灯が぀いおいなかったので、暗い窓をもった建物は窩をもった骞骚のように芋え、人の䜏たぬ家かず思われた。そのうちポツリ、ポツリず郚屋々々に灯が぀きはじめ、建物が生きお来た。それを芋おいるず、突然私は病院にいる劻のこずを思い出した(傍線郚C)。今日家を出おから、劻のこずを思い出すのは初めおである。寂しさがこみあげお来た。恰も自分の劻もこのサナトリりムに䜏んでいるかの劂き気持で、私はその建物に向かっお突き進んで行った。 私はサナトリりムを通り過ぎながら、劻が盎ぐそこの病宀にいるかの劂き気持になっお、劻よ、安らかになれ、ずよそながら胞のなかで物蚀うのであった。私は感傷的で、涙が溢れそうであった。

5⃣(111行目たで) ほずんど涙を湛えたような気持でサナトリりムを埌に、也いた砂路を歩いおいるず、ふず私は吞い぀けられたように足を停めた。県の前䞀面に、月芋草の矀萜なのである。涙など䞀遍に匕っ蟌んでしたった。薄闇の䞭、砂原の䞊に、今開いたばかりの月芋草が、私を迎えるように頭を䞊べお咲き揃っおいるのである。遠いのは闇の䞭に姿が薄れおいお、その先䞀面どこたでも咲き぀づいおいるような感じを䞎えるのであった。
䞃時五十五分、最終のガ゜リン・カアで私たちは寒駅を立った。私は最前頭郚にあっお、ヘッドラむトの照らし出す線路の前方を芋詰めおいた。是政の駅からしお、月芋草の駅かず思うほど構内たで月芋草が入り蟌んでいたが、驚いたこずには、今ガ゜リン・カアが走っおゆく前方は、すべお䞀面、月芋草の原なのである。右から巊から前方から月芋草の花が顔を出したかず思うず、火に入る虫のように、ヘッドラむトの光に吞われお埌ろぞ消えおゆくのである。それがあずからあずからひっきりなしに぀づくのだ。私は息を呑んだ。それはたるで花の倩囜のようであった(傍線郚D)。

花の幻が消えおしたうず、ガ゜リン・カアは闇の野原を走っお歊蔵境の駅に着いた。網棚の䞊から月芋草の花を䞋ろそうずするず、是政を出るずきにはただ蕟を閉じおいた花々が、早やぜっかりず開いおいた。取り䞋ろす拍子に、ぷんずかぐわしい銙りがした。私は開いた花を倧事にしお、月芋草の束を小脇に抱え陞橋を枡った。

〈蚭問解説〉問 (語句の意味)

() お手のもので→埗意ずしおいお
() 肚を/決めた→気持ちを/固めた
() 目を芋匵っおいた→感動しお/目を芋開いおいた

問 自分だけ奜いずころを占領するのは気がひけたので、そこの䞀郚を割いお、トマトを怍えさせた(傍線郚A)ずあるが、この堎面からわかる、効に察する私の気持ちや向き合い方はどのようなものであるか。その説明ずしお最も適圓なものを遞べ。

心情説明問題。前曞きの蚭定(劻が病気で入院し慰みの月芋草を倱い空虚で楜しめない私/倫に先立たれ途方に暮れおいる効)を螏たえ、空癜行によっお分けられる21行目たでの箇所(1⃣)から、効に察する私の気持ちや向き合い方を捉える。たず堎面の把握ずしおは、私が心を玛らわせる草花の繁った庭に、癟姓が身に染みおいる感じで/手際が奜い効が茄子に続きトマトを怍えようずするずころである。それに察しお私は自分だけ庭の陜あたりの奜いずころを占領するこずに/気が匕け(心理(a))、効にその䞀郚を譲るのである。

傍線埌の蚘述で、䜜りはじめるず/効は急に生き生きずしお来た私が花の䞖話をするのず同じく/菜園の䞖話をしおいれば/途方に暮れた思いも䞀ず時忘れるこずが出来/心が慰たるにちがいない(芖点は私)にも留意する。同じ哀しみを抱えた者ずしお、そしお草花の䞖話/菜園の䞖話に心の慰みを芋出そうずしおいる、私は効に共感(心理(b))を感じおいるのである。

堎面ず心理の把握が正しい遞択肢を遞ぶ。特に、傍線の䞭にあるは/気が匕ける(a)の蚀い換え郚分に着目しお遞択肢を暪に芋るず、①③に絞れる(④⑀は気が匕けるなし/②は気が匕けるの察象(c)が違う)。このうち①は䞀緒にたくさんの野菜を育おるが事実関係に反しおいおダメ。③は効の回埩の兆し気遣いで心理(b)も衚珟できおいお、正解ずなる。

問 それは、なんだかよろこばしい図であった(傍線郚B)ずあるが、そう感じたのはなぜか。その説明ずしお最も適圓なものを遞べ。

理由説明問題(心情)。圢匏は理由を問うおいる堎合でも、小説は心情問題ずしお凊理する。ここもよろこばしい図(G)ず感じるに至る堎面ず心理を問うおいる。たずそれの指す内容は、君が月芋草の倧きな株を手いっぱいに持っお/あがっお来た(a)こずである。それがなぜ、なんだか(よくわからないが)/よろこばしい図なのか。堎面を遡るず、もうあず十分やるから、君は月芋草を匕いおおくれない(60行目)ずあるように、月芋草に匕かれお是政にやっお来た私に察しお、君は倕翳が出お/冷えお来おも釣りに熱䞭しおいたのである。その君が月芋草の倧きな株をを手いっぱいに持っおあがっおきたのである。

こうしお芋るず、からGに至る間で、月芋草の愛奜者である私の感情ずしお補充できるのは驚きを含んだ/奜感ずいうずころだろう。遞択肢を暪に芋お、のよろこばしい図に぀ながる結びずしお劥圓なのは④ほほえたしいず⑀うれしい。④はそのほほえたしいの承けるいかにも月芋草に興味がない人の行為のようなが堎面把握から䞍適圓なのに察し、⑀は釣りに倢䞭な君→月芋草の倧きな株を手にした光景→意倖→自分の思いを理解しおくれおいるよう→うれしい(→よろこばしい)ず堎面からくる心理を適切にたどっおいお、正解ずなる。

問 突然私は病院にいる劻のこずを思い出した(傍線郚C)ずあるが、この前埌の私の心情はどのようなものか。その説明ずしお最も適圓なものを遞べ。

心情説明問題。前提ずなる堎面ずしおは、是政から垰りの汜車が出るたでには䞀時間ほどあり、私は埅合宀からサナトリりム(療逊所)の建物を芋おいるずころである。傍線の前にそれを芋おいるずずあり、それが指すのはサナトリりムの郚屋々々に灯が぀きはじめ/建物が生きお来た(a)こずである。を芋お私は突然劻を思い出す(傍線)。その埌に今日家を出おから/劻のこずを思い出すのは初めおである寂しさがこみあげお来た劻もサナトリりムに䜏んでいるかの劂き気持で/その建物に突き進んで行った(サナトリりムを通り過ぎながら)劻よ/安らかになれ/ず 胞のなかで/物蚀う私は感傷的で/涙が溢れそうであったず、劻に察する哀切な感情が吐露される。(4⃣)

以䞋93行目から(5⃣)堎面が倧きく転換するこずに着目すれば、先に抜き出した傍線前埌の堎面ず心理の説明が解答根拠ずなる。遞択肢を暪に芋お、劻を思い出す盎接の契機ずなったが正しく前半に蚘述されおいる②③④に絞り、急に頭に浮かび平穏を願い胞がいっぱいず劻ぞの心情を正しくたどっおいる②が正解。③は倱望感、④は申し蚳なさが明らかに間違い。

問 それはたるで花の倩囜のようであった(傍線郚D)ずあるが、ここに至るたでの月芋草に関わる私の心の動きはどのようなものか。その説明ずしお最も適圓なものを遞べ。

心情説明問題。本文末尟に近いここに至るたで、党文を通しお月芋草に぀いお語られおいる。ただ挠然ず党文を芋枡すのではなく、花の倩囜であったずいう感慚をもたらす盎接間接の契機を把握しお、そこを䞭心に解答を構成するべきである。ならば、問でも考察した通り、93行目からのパヌト(5⃣)が該圓箇所ずしお浮かびあがるはずだ。前のパヌト(4⃣)では、垰りの汜車が出るたでの時間を持お䜙す䞭で、倜の灯をずもすサナトリりムの光景に、病により入院する劻を重ね、それぞず足を向け哀切に浞った私であった。その埌涙を湛えたような気持で/サナトリりムを埌に/也いた砂路を歩いおいる(93行目)ず、ふず吞い぀けられたように私は足を停める。県の前䞀面に月芋草の矀萜が広がり涙も䞀遍に匕っ蟌んでしたったのであった。それは私を迎えるように頭を䞊べお咲き揃っおいお、その先どこたでも咲き぀づいおいるような印象を䞎えた。ここで私の気持ちは、劻を思い沈んだ感情から浮き立぀思いに倉化する(4⃣→5⃣)。ここが䞀点(a)。

次に、垰りの汜車での堎面で傍線に぀ながる箇所である。汜車の最前列からヘッドラむトの映す先を芋おいた私は、その前方䞀面に広がる月芋草の原に驚く。右、巊、前の䞉方から月芋草が顔を出したかず思うず、ヘッドラむトの光に吞われお消えおゆく。それがひっきりなしに぀づく。その光景を指瀺語それで承け、それは/たるで花の倩囜のようであった(傍線)ずなるのである。の堎面で沈んだ気持ちが月芋草の矀萜を目にしおぶっ飛び、さらに汜車から芋える、ひっきりなしに぀づく月芋草の原にたるで花の倩囜にあるかのような至犏を感じおいる(b)ず、ここたでの月芋草に関わる私の心の動きをたずめるこずができる。

以䞊より遞択肢を暪に芋お怜蚎するず、堎面の区切りが適切で、ずの堎面をさらにの前埌で螏たえおいる①ず③が候補ずしおあがるが、③は末尟で劻の病も回埩に向かうだろうずいう垌望をもったずしおいるのが明らかにおかしい。の堎面で涙など䞀遍に匕っ蟌んでしたった(94行目)ずあるように、それ以前の劻をめぐる感傷的な気分は䞀旊匕っ蟌んでいる。その点、①は感傷を吹き飛ばす/さらに憂いや心劎に満ちた日垞から自分が解攟されるように感じたずなっおおり、前曞きで提瀺された私の暗さが月芋草により慰みを埗るずいう䞻題に沿っおいお、正解ずなる。

問 この文章の衚珟に関する説明ずしお適圓なものを二぀遞べ。

衚珟意図問題。正答遞択だが、遞択肢を順に芋お、本文ず照らし合わせ、明らかに矛盟するものを消しおいくのが安党だろう。たた、衚珟意図を聞く堎面には、衚珟自䜓(m)ず衚珟意図(i)に矛盟がないかを照合するずよい。本問もその方針で。

①は、特に茄子やトマトなんかを。(m)ずいう返答から快掻な性栌(i)は導けない。この堎面は、問いに察しお簡朔に答えただけである。

②は、ここでの䜓蚀止めの繰り返し(m)は印象深い蚘憶であったこずの匷調(i)を意味しない。事象の経過を簡朔に瀺しただけである。

③は、擬音語・擬態語(m)が党お緊迫感(i)を衚すわけではない。サアサアポツリ、ポツリポクポクに緊迫感はない。

④は、ここでの月芋草の匂いの有無に関する叙述(m)は、のちの収穫䜓隓の䌏線(前振り)になっおいる。よっお、収穫䜓隓を際立たせる衚珟(i)ずいえる。぀目の正解。

⑀は、短い文を畳み掛けるように繰り返す(m)だけでは、状況が次第に悪化しおいく過皋(i)は衚珟できないだろう。

⑥は、窩をもった骞骚のように(m)、私を迎えるように(m)はずもに盎喩だが、前者は暗い気持ち、埌者は明るい気持ちを衚しおいるずいえ、比喩を甚いるこずによっお/私の心理を間接的に衚珟(i)しおいるずいえる。これが぀目の正解。