目次

  1. <本文理解>
  2. 〈蚭問解説〉問 傍線郚()察・()乃のここでの意味ずしお最も適圓なものを、それぞれ䞀぀ず぀遞べ。
  3.  問 奚孝矩之勀若歀(傍線郚A)から読み取れる杜甫の状況を説明したものずしお最も適圓なものを遞べ。
  4. 問 非敢圓是也(傍線郚B)は、ずんでもないこずですずいう恐れ倚い気持ちを瀺す衚珟である。なぜ杜甫はこのように語るのか、その理由ずしお最も適圓なものを遞べ。
  5. 問 凊楹之東南隅者吉(傍線郚C)の曞き䞋し文ずその解釈ずしお最も適圓なものを遞べ。
  6. 問 我甚是存、而姑之子卒(傍線郚D)の説明ずしお最も適圓なものを遞べ。
  7. 問 県君有焉(傍線郚E)の説明ずしお最も適圓なものを遞べ。

〈本文理解〉

出兞は杜甫の『杜詩詳蚻』。著者は盛唐の詩人。詩仙 李癜ず䞊び、詩聖ず称される。挢文は、䞭囜文語を日本語の叀語で蚓読したものである。叀代以来、わが囜の゚リヌト局に広く芪したれ、倧陞的な䞖界芳や合理的なものの芋方は、日本人の思想圢成に倧きな圱響を䞎えおきた。そうした芳点から、珟圚の囜語教育においおも、挢文は「叀兞」の䞀぀ずしお、語孊的に、か぀思想内容的に孊ばれおいる。
挢文解釈においおは、以䞋の䞉぀のレベルに着目し、「小から倧」「倧から小」ず芋お総合的に刀断する。

①語句のレベル(頻出語、掚枬語)
②䞀文のレベル(基本構文、句法・語法)
③文章のレベル(察句・比喩などのレトリック、論理展開)

〈本文理解〉
(前曞き) 唐代の詩人 杜甫が叔母の詩を悌んだ文章である。杜甫は幌少期に、この叔母に育おおもらっおいた。

①段萜。ああ、哀しいなあ。故人の兄の子(杜甫)が喪に服し、故人の埳を蚘録し、墓誌を刻む。ある人がこう蚀った。あの孝童さんの甥ですよね。奚孝矩之勀若歀(傍線郚A)。私は泣いお察(傍線郚())蚀った。非敢圓是也(傍線郚B)、亊為報也。私は昔、叔母さんのずころで病気で寝蟌み、叔母さんの子どもも病気になりたした。女性の巫女に尋ねたずころ、巫女は『凊楹之東南隅者吉(傍線郚C)』。姑遂易子之地、以安我。我甚是存、而姑之子卒(傍線郚D)。埌に乃(傍線郚())、このこずを䜿甚人から聞きたした。か぀おある人にこの話をしたずころ、涙が出そうなほど、長いこず感じ入っおいたした。(そこで)二人で叔母さんの諡を矩ず定めたのです。

②段萜。君子は、こう考えたのである。考魯の囜の矩姑ずいう女性は、町倖れで敵囜の軍隊に遭遇した際、手を匕いおいた兄の子を、自分の子ず抱き代え守った。私愛を断぀、ず。県君有焉(傍線郚E)。

③段萜。是以(ここをもっお/そういうわけで)先の䞀぀の逞話をずり䞊げお、故人のあらゆる善行を明らかにする。銘而䞍韻、蓋情至無文。墓誌にこう刻む。ああ、唐王朝に矩姑あり。長安の杜氏の墓。

〈蚭問解説〉問 傍線郚()察・()乃のここでの意味ずしお最も適圓なものを、それぞれ䞀぀ず぀遞べ。

語句の意味。頻出語ず掚枬語双方の出題が想定される。()()は、ずもに頻出語。()は或人の疑問に杜甫が答える堎面。よっおこたぞテ(いハク)(cf 察話)ず読み、意味もそのたたで③。

()はすなはチず読む。他のすなはチ(則/即/䟿/茒)ず区別しおおく。乃は、前述の経緯を承けそこでず蚳すのが基本だが、堎合によっおは逆接ずなりそれなのにず蚳したり、感動や匷調の意味になる堎合もある。ここは埌に乃ちを知るずなり、省いおも意味の通るような匷調の意味ずなる。埌にを匷める圢でやっずず蚳すのが適圓であり、④が正解。①すぐにずいう蚳は即の代甚ずしおありうるが、文脈にそぐわない。②い぀も/③こずごずく/⑀くわしくずいう意味は持たない。

問 奚孝矩之勀若歀(傍線郚A)から読み取れる杜甫の状況を説明したものずしお最も適圓なものを遞べ。

状況説明問題(文脈理解)。傍線郚Aは奚ぞ孝矩の勀むるこず歀のごずき(ず)ず曞き䞋し、どうしおこんなに孝矩に励んでいるのですかずいう意味になる。孝矩ずは孝行の倧矩、芪孝行のこずである。それに励む䞻䜓は杜甫(私)で、その察象が杜甫の叔母であるこずは、この埌、杜甫が受けた叔母からの倧恩に蚀及しおいるこずから確定できる。以䞊の敎理により、傍線から読み取れる杜甫の状況ずしおは、杜甫は或人から芋お(杜甫自身は謙遜するのだが→問)実の芪でもない叔母に孝行を尜くしおいるように芋える、ずいうこずになる。答えは②。

問 非敢圓是也(傍線郚B)は、ずんでもないこずですずいう恐れ倚い気持ちを瀺す衚珟である。なぜ杜甫はこのように語るのか、その理由ずしお最も適圓なものを遞べ。

理由説明問題。盎埌の亊為報也(亊た報ゆるを為すなり)がヒントになる。亊(たタ)は通垞、䞊列/もたたを衚す(他の又(その䞊)/耇(再び)ず区別)。ここで/に圓たるものは捉えにくいので、䞀旊保留。報ゆ(る)は盞手から受けたものを(/)/返す(/)こずである。ここでは埌述の内容から、叔母から受けた倧恩を/杜甫(私)が返すこずを意味する。ならば、或人からどうしおこんなに叔母さんぞの孝行に励むのですかず問われお、杜甫がずんでもないこずですず応えた理由は、杜甫ずしおは叔母から受けた倧恩に少しでも報いようずしおいるだけだず謙遜しおいるからだ、ずいうこずになる。答えは⑀。

なお、前述の亊を含む亊為報也の蚳は、(芪からの倧恩に報いるのず同じく)叔母ぞもたた/その倧恩に報いようずしおいるだけですずなるだろう。

問 凊楹之東南隅者吉(傍線郚C)の曞き䞋し文ずその解釈ずしお最も適圓なものを遞べ。

癜文蚓読問題。たず、前埌の文脈を確認する。傍線は、杜甫の幌少期、叔母の元にいた頃、杜甫ず叔母の実子が病気にかかり、それに぀いお巫女に尋ねたこずぞの、巫女の返答の郚分である。その返答に応じお叔母は遂易子之地、以安我、すなわちずうずう実子の堎所を私ず亀替し、それで私を倧事にしたのだず続く堎面である。
次に傍線自䜓の語句を確認する。泚目するのは凊之者。之はの/これ/ゆクの甚法があるが、その前埌が楹(はしら←遞択肢)ず東南隅ず名詞で挟たれおいるこずから、ずりあえず楹の東南隅ず連䜓栌の助詞ずしお読む。者は人以倖にもものこずず蚳す堎合があり、他に䞻題を承けおはず読む堎合もある。ここでは名詞の塊楹之東南隅から動詞凊に返り、その者(人)が吉だずしたら、巫女の台詞ずしお良さそうだ。

凊は遞択肢でしょする(凊分)ずをる(出凊進退)のパタヌンで読んでいるが、しょするでは意味が通じないのに察し、をるず読んだ堎合、柱の東南の隅にいる者は吉ですずいう意味ずなり巫女の蚀葉ずしお適圓だし、次文の意味叔母は実子の郚屋を私ず亀替し、私を倧事にした(→東南の隅に眮いた)にも぀ながる。よっお正解は③。䞊で怜蚎から倖した、之をゆクずずり楹に凊りお東南隅に之く者ず読んでいる②も読みずしおは可胜だが、意味が通じない。癜文蚓読問題は、句法・語法・構文(圢匏)ず文脈䞊の意味(内容)を埀埩しお総合的に刀断しなければならないのである。

問 我甚是存、而姑之子卒(傍線郚D)の説明ずしお最も適圓なものを遞べ。

内容説明問題。傍線の曞き䞋し文は我是れを甚(もっ)お存し、而しお姑(叔母)の子卒(しゅっ)す。是れが指す内容は、姑遂易子之地、以安我。これは、問で考察したように、叔母は巫女から東南の隅が吉だず聞いお、ずもに病気を患う実子の堎所を甥の杜甫ず亀替し、甥を瞁起の良い東南の隅に眮いた、ずいうこずだ。是れを甚っお、我(杜甫)は存し、子は卒した、ずいうこずになる。杜甫はそのこずを、埌に䜿甚人から聞き、そのこずで叔母に匷い恩矩を感じおいる。

こう文脈をたどれば、存が生存を意味するのに察し、卒は死を意味するず掚定できる。぀たり叔母は、私愛を断ち、わが子の呜に代えおたで、兄から預かった甥の呜を守ったのである。この理解から正解は⑀に決たる。もちろん、卒の意味を知識ずしお知っおおけば早く解ける。卒には、䞋玚の兵士(兵卒)にわかに(卒䞭)おわる/おえる(卒業)死ぬ(卒去)の意味がある。しゅっすず読む堎合は死ぬを意味するのである。

問 県君有焉(傍線郚E)の説明ずしお最も適圓なものを遞べ。

内容説明問題。県君ずは、泚に婊人の称号で、ここでは叔母を指すずある。ならば、傍線は叔母様には、焉(これ)があるず盎蚳でき、焉(これ)の指す内容が焊点ずなる。その内容は前文で玹介されおいる、魯の矩姑が実子を身代わりにしお兄の子を守ったずいう゚ピ゜ヌドず、それに察する君子の私愛をた぀ずいう評䟡である。぀たり、叔母は魯の矩姑のように、私愛すなわち個人的な情愛を断ち実子を犠牲にしおたでも兄の子(杜甫)の呜を守った、(その行為は矩ずいう諡にふさわしい)ずいうこずである。正解は②。

挢文では、公ず私を察比し、個人的な事情を犠牲にしおも囜家的な利益に服するこずを君子のあるべき姿ずしお説くこずが倚い。ただし、珟代の民䞻瀟䌚においお、自らは公的な利益を省みず私的な関係や事情を重んじる公人が、囜民に察しお公的な矩務を匷調するのは筋違いも甚だしいが、よく芋られる珟象であるから嘆かわしいのである。

問 銘而䞍韻、蓋情至無文(傍線郚F)に぀いおの説明ずしお最も適圓なものを遞べ。

内容説明問題。傍線は銘しお韻せず、蓋し情至れば文無しず曞き䞋せるが、文の読み・意味がポむントになる。

傍線は最終段萜の結論郚(是以(そういうわけで)以䞋)にあり、茲(こ)の䞀隅を挙げお、圌の癟行を昭(あきら)かにす(先の䞀぀の逞話をずり䞊げお、故人のあらゆる善行を明らかにする)に続く。文無し以倖の傍線の蚳は泚を参考にしお、銘文を䜜り故人ぞの哀悌を瀺すが、韻は螏たない。情が極たるず、文無し。続いお、墓誌には唐王朝にあの矩姑がいる(それは叔母さんのこずだ)ず(だけ)刻む、ずいう内容で終える。泚には通垞は修蟞ずしお韻を螏むずある。

以䞊の文脈ず泚を参考にするず、文無しずいうのは文章が無いずいうこずではなく、情が極たれば、韻などの修蟞は芁らないのだずいうこずになるのではないか。これに぀いおは、文はあや/かざりず蚓読みでき、衚珟䞊の技巧/文食ずいった意味を知っおおくのが望たしくはある。正解は、(韻を螏たないのは)うわべを食るのではなく、真心のこもったこずばを捧げようずしたためずある、③ずなる。