目次

  1. <本文理解>
  2. 〈蚭問解説〉問 傍線郚()〜()の解釈ずしお最も適圓なものを、それぞれ遞べ。
  3.  問 波線郚〜の敬語は、それぞれ誰に察する敬意を瀺しおいるか。その組み合わせずしお正しいものを遞べ。
  4. 問「うらやたしく芋絊ぞり」(傍線郚)ずあるが、宮は䜕に察しおうらやたしく思っおいるか。その説明ずしお最も適圓なものを遞べ。
  5. 問「぀おならでこそ申すべく䟍るに」(傍線郚)ずあるが、尌䞊はどのような思いからこのように述べたのか。その説明ずしお最も適圓なものを遞べ。
  6. 問「笑みゐたり」(傍線郚)ずあるが、この時の女房たちの心情に぀いおの説明ずしお最も適圓なものを遞べ。
  7. 問 この文章の内容に関する説明ずしお最も適圓なものを遞べ。

〈本文理解〉

出兞は『小倜衣』、䞭䞖の擬叀物語である。擬叀物語ずいうのは、平安時代の王朝文孊に擬(なぞら)えお䜜られた物語である。平安埌期の院政時代以降、藀原時代を頂点ずした颚雅な朝廷・貎族文化が衰退する䞭で、その時代を懐かしむ歎史物語や新しい時代に焊点を移した軍蚘物語が倚く残される。さらに時代が䞋っお、実態をなくした朝廷・貎族文化の代わりに、『源氏物語』などその時代の倧文孊に取材しお描かれたのが擬叀物語ずいうわけである。よっお『源氏』などに繰り返し描かれるような兞型的な筋を蟿るこずが倚く、蚀葉遣いも保守的になり、か぀受隓生には初芋であるこずが普通だから、高校で孊習した叀文単語・叀文法・叀文垞識に則った解釈力・読解力を詊す䜜問がしやすい。実際、これたでのセンタヌ詊隓で最も倚く採甚されおきたゞャンルである。本問は物語の冒頭にあたる「垣間芋」の堎面。和歌の莈答を機に物語が(それなりに)独自に展開する前の郚分なので、地道な孊習を積み䞊げおきた受隓生には既芖感があり、取り組みやすい出題だったのではないか。

䞀般に、叀文の読解においおも、䞀文を正確に解釈する力ずずもに、党文の倧意を玠早く぀かむ力が求められる。倧意を぀かむ䞊での着県点は以䞋の通り。

①堎面を把握する。②「を・に・ば・ど・が」などに着目し意味のたずたりを把握する。③「䞻䞀述」を䞭心に文の骚栌を぀かむ。④述郚(敬語衚珟も含む)ずの関係で䞻語や目的語などの省略郚を補う。⑀文意を転じる付属語(助動詞・助詞)や心情・刀断を衚す圢容衚珟に着目する。

〈本文理解〉
前曞きに「寂しい山里に祖母の尌䞊ず暮らす姫君の噂を耳にした宮は、そこに通う宰盞ずいう女房に、姫君ずの仲を取り持っおほしいず蚎えおいた。本文は、偶然その山里を通りかかった宮が、ある庵に目をずめた堎面から始たる」ずある。

①段萜。(宮は)「ここはどこか」ず埡䟛の人々に問い「絊ぞば」(宮ぞの尊敬語、よっお地の文においお宮は敬意察象者)、(埓者は)「雲林院ず申す所でございたす」ず申し䞊げるので、(宮の)お耳には残っおいお、「宰盞が通う所「にや(あらん)」(→であろうか)」ず思い、「この頃は(宰盞は)この蟺りにいるず「こそ聞きしか、」(→私は聞いおいたが、) (宰盞の通う姫君が居凊は)どこであろうか」ず、「ゆかしくおがしめしお」(傍線郚())、牛車を停めお倖を眺めおいらっしゃるず、どこも同じ卯の花ずは蚀っおも、それが垣根を連ねるように咲いおいる様子は卯の花の名所である玉川を芋るような心地がしお、「初倏を告げる)ほずずぎすの初音を聞くにも「心尜くさぬ」(→やきもきするこずもない)蟺りであろうか」ず自然ず心惹かれる思いになられお、(人目に぀かない)倕暮れ時であったので、「やをら」(傍線郚())葊垣のすき間から、栌子などが芋える郚屋を「のぞき絊ぞば」、(以䞋「䞭」の様子) こちらの方は仏前のように芋えお、閌䌜棚は質玠な様子で、劻戞・栌子なども開け攟たれ、暒の花が青々ず散っお、花をお䟛えしようずしお、カラカラず鳎る様も「このかたのいずなみ」(→仏道修行に励むこず)も、この䞖でも「぀れづれならず」(→手持ち無沙汰ではなく)、埌の䞖のためにもたた頌もしいかぎりであるこずよ。「このかた」は自らも心にかかるこずであるから、「うらやたしく芋絊ぞり」(傍線郚)。「あぢきなき」(→思うに任せない)この䞖で、このように仏道に専念しお暮らしおもみたく(思い)、お目を留めおご芧になっおいるず、(以䞋「䞭」の様子) 子䟛たちの姿もたくさん芋える䞭に、䟋の宰盞のもずにいる子䟛もいるのは、「(宰盞が通うのは)ここであろうか」ず(宮は)お思いになるので、お偎に仕える兵衛督ずいう者をお呌びになっお、「宰盞の君はここにおりたすか」ず䌝えお、察面したいずいう意向を(姫君のいらっしゃる方に)「聞こえ☆/絊ぞ/り」(→申し出/なさっ/た)。(宰盞は)驚いお、「どういたしたしょうか。宮が、こんな山里にたでお探しに来られたのでありたす。恐れ倚いこずです」ず蚀っお、急いで出迎えた。仏前の偎にある南向きの郚屋に、敷物などを甚意しお、入れ「奉る」(波線郚)。

②段萜。(宮ず宰盞の察面) (宮は)ほほ笑みなさっお、「この呚蟺を(私は)お探ししおいたずころ、この蟺りに(あなたが)「ものし」「絊ふ」(波線郚 b)などず聞いお、この山里たで分け入っおきたした「心ざし」(→私の気持ち)を、お分かりになっおください」などずおっしゃるので、(宰盞は)「ほんずうに、恐れ倚くもここたで探しおこられた「埡心ざし」(→宮のお気持ち)は、「かたはらいたく」(→きたり悪いほど感じ入っお)ございたす。幎老いた尌䞊が、今が限りの病を患っお「䟍る」(波線郚)ので、最期を看取りたしょうず思いたしお、ここに籠もっおおりたしお」などず申し䞊げるず、(宮は)「(尌䞊が)そのようでいらっしゃるようなこずは、お気の毒でございたす。尌䞊のお加枛も䌺いたいず思いたしお、「わざず」(→特別に)参䞊したしたのに」などずおっしゃるので、(宰盞は)「内ぞ入」っお、「(宮が)こうこうずおっしゃっおいたす」ず「聞こえ」(波線郚)なさるので、(尌䞊は)「そのような者がいるず宮のお耳に入っお、老いの果おに、このような玠晎らしい恩恵をいただきたすこずは、ここたで生き長らえたした呜も、今ずなっおはうれしく、この䞖の面目ず思われたす。「぀おならでこそ申すべく䟍るに」(傍線郚)、このように病気で衰匱しおおりたしお」などず、息も絶え絶えに申し䞊げるのも、「たいそう「あらたほし」(→奜たしい)」ずお聞きになった。

③段萜。「人々」(→女房たち)は、(宮の様子を)のぞいお芋申し䞊げるず、はなやかに出おいる倕月倜に、(それに照らされお)振る舞いなさっおいる宮の様子は、比べるものがないほどすばらしい。山の端から月の光が茝き䞊っおきたような宮のご様子は、「目もおよばず」(→正芖するこずができないほど芋事なものだ)。艶も色もこがれ萜ちるほどのお着物に、盎衣が「はかなく」(→ちょっず)「重なれるあはひ」(傍線郚())も、どこで加えられた気品であろうか、この䞖の人が染め出したもの(「あはひ」)にも芋えず、普通の色にも芋えない様は、「文目」(→暡様)も本圓に珍しい。「わろき」(→それほど良くもない男)で「だに」(→さえ) (女房たちには)芋慣れおいない様子であるのに、(たしお)「䞖の䞭にはこんな玠敵な男の人もいらっしゃるのだなあ」ず(女房たちは)「めでたどひ/あぞ/り」(→みな/うっずりし/おいる)。ほずんうに、「姫君に䞊べたほしく」、「笑みたり」(傍線郚)。宮は、この所の様子などをご芧になるに぀け、郜ずは様倉わりに芋える。人も少なくしんみりずしお、こんなずころにもの思いがちな人が䜏んでいるような心现さなどを、しみじみずお感じになっお、「そぞろに」(→わけもなく無性に)もの悲しく、「埡袖もうちしほたれ絊ひ぀぀」(→埡袖も぀い、涙で濡らしなさっおは)、宰盞にも、「「かたぞお」(→きっず)、ここに来た甲斐があるように(姫君ずの仲を)ずりなし申し䞊げるなさっおください」などずよくよく頌んでお垰りになるのを、女房たちは名残惜しく思わずにはいられなかった。

〈蚭問解説〉問 傍線郚()〜()の解釈ずしお最も適圓なものを、それぞれ遞べ。

()「ゆかしく/おがしめし/お」ず品詞分解できる。圢容詞「ゆかし」は「心惹かれる様」を衚し、察象に応じお「芋たい・聞きたい・知りたい」などず蚳す。「おがしめす(思し召す)」は「思ふ」の尊敬語で、同じ尊敬語の「思す」よりも匷い敬意を衚す。ここは、敬意察象者である宮が、宰盞を介しお姫君の居堎所を想像しおいる堎面。正解は③「知りたく/お思いになっ/お」。

()「やをら」は基本単語。叀語では元来「物事がゆっくりず静かに進行する様」を衚し「静かに、そっず、おもむろに」などず蚳す。ここは垣間芋の堎面で、「やをら」は副詞ずしお「のぞき絊ぞば」にかかる。正解は②「静かに」。

()「重なれ/る/あはひ」ず品詞分解できる。「重なれ」は四段掻甚の動詞「重なる」の已然圢。それに接続する「る」は存続・完了の助動詞「り」の連䜓圢(e音に぀く「ら・り・る・れ」)。ここたでで遞択肢は③④に絞れる。「あはひ」は「間」ず衚蚘でき、そこから間の䞡偎の「関係性」の意にに転じ、「①間柄 ②組み合わせ、調和 ③情勢」などず蚳す。ここは宮の埡衣(おんぞ)に぀いおの蚘述であり、傍線郚を含む「 あはひも」は「 ずも芋えず、垞の色ずも芋えぬ」にかかるので、「あはひ」が色調に぀いお述べおいるこずは文脈からも刀断できる。正解は④「重なっ/おいる/色合い」。

問 波線郚〜の敬語は、それぞれ誰に察する敬意を瀺しおいるか。その組み合わせずしお正しいものを遞べ。

敬意の方向を問う問題である。たずは敬語を分類し、䞻客を補う。その䞊で、尊敬語は䞻䜓、謙譲語は客䜓、䞁寧語は聞き手ぞの、それぞれ語り手(䜜者or䌚話䞻)からの敬意である。

の「奉る」は謙譲語で「入れ」の補助動詞。本動詞の堎合は尊敬語の甚法(飲食/着る/乗る)もあるこずにも泚意しよう。「入れ」の䞻䜓は、突然の宮の来蚪に驚いた宰盞で、その客䜓、぀たりここでの敬意察象者はもちろん「宮」。宮は、本文の地の文(客芳蚘述/䜜者基点)においお、ほが唯䞀の敬意察象者である(䟋倖は箇所)。

bの「絊ふ」は四段掻甚・尊敬語で補助動詞。同じ補助動詞で䞋二段の「絊ふ(る)」は、謙譲語(䌚話・手玙文/思ふ・芋る・聞く・知る/䞀人称䞻語/察者尊敬/マス)なので泚意。ここは、宮が䞻䜓の䌚話文にあり、宰盞を察話の盞手にしおいる堎面である。察話においお尊敬語の省略䞻䜓は「あなた」(尊敬語無しの省略䞻䜓は「私」)であるこずが倚いが、ここもそのパタヌンで、敬意察象者は「あなた」「宰盞」ずなる。宰盞は地の文(客芳蚘述/䜜者基点)では、぀の䟋倖を陀いお、敬意察象ではないが、䌚話文(䞻芳蚘述/語り手基点)では敬意察象ずなるこずもあるのである。

の「䟍る」(䟍り)は補助動詞で䞁寧語。「候ふ」ず同様、本動詞の堎合、堎に貎人が存圚するず謙譲語(オ䜿゚スル)になるこずがある。ここは、 bの箇所の宮の発蚀に察する宰盞の答えあたる箇所だから、聞き手の「宮」に察する敬意である。

の「聞こえ」(聞こゆ)は謙譲語の本動詞。宮の催促を承けお「内ぞ入」った宰盞は、尌䞊に「 ず聞こえ/絊ふ(尊敬の補助動詞)」ずいう堎面である。これから「絊ふ」が動䜜䞻䜓の宰盞に察する敬意で、「聞こえ」は客䜓の「尌䞊」に察する敬意である。なお、ここは地の文(客芳蚘述/䜜者基点)にあるので、宰盞、尌䞊に察する䜜者からの敬意ずなり、他では敬意を払っおいないから唯䞀の䟋倖ずなる。宮のいない宰盞ず尌䞊の堎においお、盞察的に䞡者の地䜍が䞊昇したず考えられる。なお、もう䞀぀の「䟋倖」①段萜の☆「聞こえ」は庵で最䞊䜍の存圚である「姫君」に向けられおいるずみなすのが劥圓であろう。正解は①。

問「うらやたしく芋絊ぞり」(傍線郚)ずあるが、宮は䜕に察しおうらやたしく思っおいるか。その説明ずしお最も適圓なものを遞べ。

心情説明問題。「䜕に察しお」うらやたしく思っおいるか。たずは、近く盎前の「  已然圢ば」のがうらやたしくの理由。さらに広く芋お、傍線は「うらやたしく芋絊ぞり」ずあり、前の郚分が垣間芋の堎面だから、「のぞき絊ぞば、  」のも根拠になる。は、庵の䞭の仏前の食りや仏道に励む様子に぀いおの蚘述である。特に「この䞖におも぀れづれならず/埌の䞖はたた頌もしきぞかし」ずあり、それを承けお「このかたは心にずどたるこずなれば」()ずなっおいるずころに着目する。ここでの「このかた」ずは「仏道に関する方面」ずいうこずで、それに心惹かれる宮は庵の暮らしが「うらやたしい」のである。正解は③で、たぎらわしいものはない。

問「぀おならでこそ申すべく䟍るに」(傍線郚)ずあるが、尌䞊はどのような思いからこのように述べたのか。その説明ずしお最も適圓なものを遞べ。

心情説明問題。堎面を確認するず、目圓おの姫君の祖母、尌䞊の病気を聞いた宮は宰盞に、「その埡心地をうけたたはらんずお、わざず参りぬるを」ず述べ、尌䞊ずの察面を求めるずころである。それに察しお、尌䞊が答える発蚀の終わりに傍線郚がある。ここから傍線郚を逐語蚳するず、「぀お/なら/で」の「぀お(䌝手)」がここでは「人づお」であるこずに留意しお、「人を介さず盎接に/宮に/申し䞊げる/べきで/ありたす/のに(このように衰匱した心地でそうもできない)」ずなる。この前の郚分で「かかるめでたき埡恵み」「この䞖の面目」ず蚀っお宮の意向に感激しおいるこずも螏たえる。以䞊より⑀が正解。ここで②「姫君」や④「仏道」は宮ず尌䞊の話題になっおいないので陀倖する。叀文の解釈は、語矩ず文脈を埀埩しながら緻密化しおいくのである。

問「笑みゐたり」(傍線郚)ずあるが、この時の女房たちの心情に぀いおの説明ずしお最も適圓なものを遞べ。。

心情説明問題。堎面を確認するず、女房たちが「月の光のかかやき出でたるやうなる埡有様」をのぞき芋、その矎しさに皆が攟心するほどに感激しおいる(「めでたどひあぞり」)堎面である。そしお、盎前に「姫君に/䞊べ/たほしく」ずあり、笑っおいるのである。ここで「姫君に/䞊べ/たい」のはもちろん宮だが、それは若い男女のこずだから、結婚盞手ずしお䞊べおみたいず思っおいるのである。叀文䞖界の男女の亀際においお、女性の偎が䞀旊ためらうこずも倚いが、ここは山里に隠棲しおいる姫君の盞手ずしお、身分秩序の最高䜍にある皇族の貎公子。姫君付きの女房ずしおも二人の結婚を想像するのは、倢芋るような心地であろう。「䞊べたほしく」の正しい解釈から正解は②ずなる。

問 この文章の内容に関する説明ずしお最も適圓なものを遞べ。

内容合臎問題。先に遞択肢に目を通し、そこから必ず本文の該圓箇所を参照しお、明らかに矛盟するものは消しおいくずいう方針をずる。①は「仏事にいそしむ矎しい女性の姿を芋た」が、①段萜の垣間芋の堎面の描写に反する。この地点で「矎しい女性」(姫君)は登堎しおいない。②は「宰盞は、兵衛尉を、呌んで、どのように察応すればよいか尋ねた」が、①段萜埌半の内容に反する。兵衛尉は宮の埓者で、宮が呌んで宰盞ずの仲介を呜じたのである。③「尌䞊は、宰盞を通じお自分の亡き埌のこずを宮に頌んだ」は、②段萜埌半、宰盞を介した宮ず尌䞊のやり取りに芋られない蚘述であり、䞍適切。④「宮は 山里で出家し、姫君ず暮らしたいず思うようになった」は、①段萜の傍線郚の盎埌「あぢきなき䞖に、かくおも䜏たたほしく」ず䞀郚察応するが、出家する願望はあっおも、その状態で姫君ず暮らすわけではないので䞍適切。⑀の蚘述「姫君ぞの同情/宰盞ぞの䟝頌/女房たちの䜙韻」は、本文最埌の䞉行ず正しく察応しおいる。よっお⑀が正解。