〈本文理解〉

 
出典は杉田敦『境界線の政治学』。筆者は政治学者。
 

〈設問解説〉問一 (漢字の書き取り)

(1)合致 (2)勘案 (3)眺 (4)至高 (5)顕著

 

 

問二「国民形成(「国民化」)」(傍線部(ア))とあるが、これはどのような政策を指しているか。本文の内容に即して35字以内で説明せよ。

〈GV解答例〉
国力増強のため、国内の多様性を抑圧し国民の平準化・規格化を進める政策。(35)
 
〈参考 S台解答例〉
国民を国家の同質な構成員として定め、国力増強に寄与する存在とする政策。(35)
 
〈参考 K塾解答例〉
一定の歴史的な条件の下で他の人々からある集団を区別し、同質化する政策。(35)
 
〈参考 Yゼミ解答例〉
国家に属する人々の多様性を抑圧し同質化を進め、生活の安定化を図る政策。(35)
 
〈参考 T進解答例〉
一定の歴史的な条件下で選別された人間の集団を、同質化していくこと。(33)
 

問三「動物飼育術としての政治観」(傍線部(イ))とあるが、筆者はこれをどのような政治観と捉えているか。本部の内容に即して40字以内で説明せよ。

〈GV解答例〉
政治家は非理性的人間の安全や物質的欲求充足について責任を負うべきだとする政治観。(40)
 
〈参考 S台解答例〉
国家が安定した生活への欲求を充足することを通して、国民を自ら規律化させる政治観。(40)
 
〈参考 K塾解答例〉
国民の生存に対する欲求を充足し、人口を増加させることを国家の役割とみなす政治観。(40)
 
〈参考 Yゼミ解答例〉
国民の生活を安定させ、人口や生産力といった国力の増加を国家の課題とする政治観。(39)
 
〈参考 T進解答例〉
国を構成する国民人口や生産力といった国力の増強を、国家が管理すべきとする政治観。(40)
 

問四「そうした言説が主導権を握ることで、国家の成立にかかわるいくつかの重要な事柄が隠蔽されてきたのではないだろうか」(傍線部(ウ))とあるが、「いくつかの重要な事柄」とはどのようなことか。本文の内容に即して70字以内で説明せよ。

〈GV解答例〉
社会契約が自発的であるという前提に先立ち国家の統治範囲が暴力的に区切られ、主権者である国民を円滑に管理するため平準化・規格化が図られたこと。(70)
 
〈参考 S台解答例〉
国家の形成は法的な主体の自発的な契約によるという前提において無視される、領域を確定する際の暴力的な経緯の可能性や、国民を管理する権力の働き。(70)
 
〈参考 K塾解答例〉
国家の構成員が契約ではなく征服などの暴力により区切られていることや、国の政治制度が国民のためでなく権力が国民を管理するためのものであること。(70)
 
〈参考 Yゼミ解答例〉
社会契約の主体となる群れがどのように区切られたのかという歴史的経緯や、区切られた群れを単一の国民として管理し国を運営する国家権力の重大性。(69)
 
〈参考 T進解答例〉
国民という集団はその中の人々の自発性ではなく強制的に形成されたものである点と、国家の管理、運営のために国民を誘導する権力が働いていた点。(68)
 

問五「とりわけ二〇世紀において大きな問題となった『国民化』の問題」(傍線部(エ))とは、どのような問題か。本文の内容に即して75字以内で説明せよ。

〈GV解答例〉
国民自身の安全への関心が為政者の国家理性論を支えることで、国民集団の同質性が強調され全体主義化が進む一方、福祉の名の下に内部の異質性が排除される問題。(75)
 
〈参考 S台解答例〉
領域内の同質性を実現するために多様性が抑圧され、国民として平準化・規格化された人々が異質な要素とみなしたものを排除し集団のさらなる全体化を目指す問題。(75)
 
〈参考 K塾解答例〉
国家が国民の生活に責任を持つため国民の同質化と差異の除去が目指され、国民の福祉や国力の増進の妨げとみなされる人間が排除される圧力が強まったという問題。(75)
 
〈参考 Yゼミ解答例〉
集団の同質性を前提とし国家と国民双方が国力の向上を図る体制下においては、国民内部の異質な者や生産性に寄与しない者を排除することを当然としたという問題。(75)
 
〈参考 T進解答例〉
国家における国民の平等性を前提として、国民の同質性から外れた者や国家の発展に寄与できない者を排除することで、国家の内部を全体化する傾向があったこと。(74)