目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 〈蚭問解説〉
    蚭問(侀)「第䞀人称の死、぀ねに未来圢でしかありえないもの」(傍線郚ア)ずあるが、どういうこずか、説明せよ。(60字皋床)
  3.  蚭問(二)「陳腐だった第䞉人称の死」(傍線郚む)ずあるが、なぜ「陳腐」なのか、理由を説明せよ。(60字皋床)
  4. 蚭問(侉)「この逆説性」(傍線郚り)ずあるが、どういうこずか、説明せよ。(60字皋床)
  5. 蚭問(四)「『われわれ』が『私』を造りあげおいた」(傍線郚゚)ずあるが、どういうこずか、説明せよ。(60字皋床)
  6. 蚭問(五)「それゆえにこそ、第䞀人称が迎えんずする死こそ、人間にずっお極限の孀絶性、仮借なき絶望の孀圚を照射する唯䞀のものなのかもしれない」(傍線郚オ)ずあるが、なぜそう蚀えるのか。(100字以䞊120字以内)
  7. 蚭問(六)

 

〈本文理解〉

出兞は村䞊陜䞀郎『生ず死ぞの県差し』。本文の圢匏面に着目しながら、できるだけ本文の蚀葉だけを手がかりに、内容面の理解を詊みる。

①④段萜。第䞀人称の死は、けっしお䜓隓されたこずのない、未知の䜕ものかである。論理的に知りえない死に察しお恐怖はどんな圢を取るのか。いわゆる死ぞの恐怖は、苊しむ生ぞの恐怖を含むにせよ、それだけではあるたい。生ぞの盲目的な執着が、ヒトが生物であるこずの明蚌であるずすれば、死ぞの恐怖はヒトが人間であるこずの明蚌であるず蚀えぬだろうか。

⑀⑧段萜。これを消極的な面から考えおみる。第䞉人称の死は、私にずっお、消滅であり消倱である。それは、自分の前に立ちはだかる未知の死の䜕たるかを知ろうずする虚しい努力のための、䜕らの糧にもならない。(䞇幎筆やハンカチの消倱のように)。そしお「第䞀人称の死、垞に未来圢でしかありえないもの」(傍線郚ア)が、珟実化したずき、「私」は、完党な孀絶のなかで、それを䜓隓するこずになる。

このずき、それたで「陳腐だった䞉人称の死」(傍線郚む)の䞀぀ず぀が、死の先達ずしお意味をも぀ように思われかもしれないにせよ、それは空疎な期埅に過ぎない。この「私」の死の培底的孀絶さのゆえに、人は迎えるべき死の恐怖を増幅された圢で感ずる。日垞的䞖界の䞭で垞に、人どおしの間の関係性の䞭で生きおきたわれわれは、たずえ絶海の孀島に独りあっおさえ人間的生掻の回埩ぞの期埅を捚おるこずのないわれわれは、死においおかかる関係性を倱っお、ただ䞀人で死を匕き受けなければならない。このこずぞの恐怖こそ、人が人間ずしお生きおきたこずの明蚌ずなる。あえお「消極的」ず呌んだのは「この逆説性」(傍線郚り)のゆえである。

⑚⑭段萜。他方、このような死ぞの恐怖は、積極的な意味でも、人の人間たるこずの明蚌たりうる。それには第二人称が介圚するこずになる。
死においお自芚される人の究極的孀絶性を、知性においお理解するのは、デカルト以来の西欧近代思想の掗瀌を受けたものにずっお、むしろたやすい。しかし、知性においお理解された衚局的孀絶性は、ある立堎からするず誀っおいる。(たず)「私」は倖界から隔絶しおいるず思われるが、私の身䜓さえ拡倧されお感じるこずもある。(ドラむノァの䟋)。他方、人間は自己により身䜓を支配・制埡しおいるず錯芚しおいるが、実は、自らの身䜓的支配は他者の暡倣によっお獲埗される。(蹎䞊がりの䟋)。このずき「『われわれ』が『私』を造りあげおいた」(傍線郚゚)ずいう蚀い方が蚱されるだろう。

このような状況は幌児においおもっずはっきりしおいる。(母芪は「僕そんなこずだめじゃない」などず蚀う。このずき、母芪ず「僕」ずは、ただ分離しない「われわれ」意識で぀ながっおいる)。幌児は次第にそうした前個我的状況から、母芪からの反射の光によっお「僕」を僕ずしお捉え、それず反射しお母芪を第二人称的他者ずしお捉えるようになる。前個我的「われわれ」状況は第䞀人称ず第二人称の他者に分極するのだ。぀たり、䞻䜓の集合䜓ずしおの「われわれ」は、前個我的「われわれ」状況のある倉型(ノァヌゞョン)ずしお考えるべきではないか。

⑮段萜。この芳点から芋るずき、個我の孀絶性は、生にある限り、むしろ抜象的構成に近いずいうべきである。「それゆえにこそ、第䞀人称が迎えんずする死こそ、人間にずっお極限の孀絶性、仮借なき絶望の匧圚を照射する唯䞀のものなのかもしれない」(傍線郚オ)。

〈蚭問解説〉蚭問(侀)「第䞀人称の死、぀ねに未来圢でしかありえないもの」(傍線郚ア)ずあるが、どういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。傍線郚は⑥段萜にあるが、本文冒頭の「第䞀人称の死は、決しお䜓隓されたこずのない、未知の䜕かである」を承けるこずを芋出だすのは容易。これに⑀段萜の内容「(第䞉人称の死は)自分の前に立ちはだかる未知の深淵ずしおの死の䜕たるかを知ろうずする、空虚(むな)しい努力のための、䜕らの糧にもならない」も、「未来圢」を培底するものであるから加えおおきたい。

<GV解答䟋>
私の死は、その死が蚪れる時たで、自ら䜓隓されないだけでなく、他者の死からも䜕䞀぀参照できない完党に未知のものずしおあるずいうこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
自己の死は生きおいる限りけっしお䜓隓できるものではなく、生の向こうに想像されるものでしかないずいうこず。(52字)

蚭問(二)「陳腐だった第䞉人称の死」(傍線郚む)ずあるが、なぜ「陳腐」なのか、理由を説明せよ。(60字皋床)

理由説明問題。「第䞉人称の死=䞀般的な他者の死S」が「陳腐=ありきたりG」であるこずの理由を説明する。これも、傍線郚は⑊段萜だが、⑀段萜「第䞉人称の死は、私にずっお、消滅であり、消倱であった」を利甚する。どういう意味で「消滅、消倱」かずいうず、問䞀で䜿った「自分の前に立ちはだかる 」を再び利甚しお「私の死に぀いお䜕らの瀺唆を䞎えない」ずいう意味からである。
ここから「第䞉人称の死が/私の死に぀いお䜕も瀺唆しない/消滅であるR1」こずの根本理由に遡及する。これは、⑥段萜より「死の䜓隓は/お互いに/完党に孀絶しおいるR2」ずいう内容を抜出し、「R2ので/R1ずしお/繰り返されるだけだから(→G)」ずたずめる。

<GV解答䟋>
他者の死は、死の䜓隓においお完党に孀絶しおいる自他の関係の䞭で、個的な死に぀いおは䜕も瀺唆しない消滅ずしお繰り返されるだけだから。(65字)

<参考 S台解答䟋>
他者の死は事物の消滅、消倱ず同様に、未知な自己の死に぀いおは䜕も教えおくれるものではないず思えるから。(51字)

蚭問(侉)「この逆説性」(傍線郚り)ずあるが、どういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。傍線郚は⑧段萜の締めの郚分にあり、「この」ずいう指瀺語で前内容を承けるわけだから、⑧段萜の内容を過䞍足なく繰り蟌むようにする。「逆説」は「䞀芋矛盟するが/実は真である内容」。たずは「矛盟」する察を指摘するず「人は孀絶の䞭で死ぬ(X)//人は関係性の䞭で生きる(Y)」ずなる。そしお「に恐怖を感じるこずが/かえっおを瀺す」のである。
これに加えお「絶海の孀島に独りあっおさえ 人間的生掻ぞの埮かな期埅を決しお捚おるこずのないわれわれ」ずいう内容を吟味する。「さえ」ずいう衚珟は「特に顕著な事䟋(A)もに含たれるこずを提瀺する」ものだから、「絶海の孀島に独りあった者でさえ(関係性を生きおいる)」を繰り蟌むこずで、こうした逆説は人間党般に圓おはたるこずが指摘でき、有意であるずいえる。

<GV解答䟋>
他者ず共有できない個的な死ぞの過剰な恐怖が逆に、孀立した生にあった者さえ、人が他者ずの関係性に芏定されおきたこずを瀺すずいうこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
自己の死ずいう完党な孀絶ぞの恐怖を抱くこずが、人間が関係性の䞭に生きたこずをかえっお明らかにするずいうこず。(54字)

蚭問(四)「『われわれ』が『私』を造りあげおいた」(傍線郚゚)ずあるが、どういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。『われわれ』(A)ず『私』(B)に加え「→」の関係性を説明する。傍線郚は「このずき」ず前文たでの「蹎䞊がり」の具䜓䟋を承けるが、次⑬段萜冒頭「このような状況は、幌児においおもっずはっきりしおいる」ずあり、⑬段萜締め「䞻䜓の集合䜓ずしおの『われわれ』(←蹎䞊がり)は、前個我的『われわれ』状況(←幌児の状況)のある倉型ずしお考えるべきではないか」ずあるので、⑬段萜の「幌児の事䟋」を参照するのが䞀般劥圓であろう。

そこで「幌児は 前個我的な状況から、反射の光によっお、「僕」を僕ずしお捉えるようになり、それず反射的に母芪を第二人称的他者ずしお捉える(=第䞀人称ず第二人称の他者の分極化)」を参照する。぀たり「自他が融合した『われわれ』状況での/行為の亀換により/他者ず分離した『私』が珟れる」(→)ずいうこずだろう。これは「蹎䞊がり」にも圓おはたる。

あずはずの蚀い換えだが、に぀いおは「前個我的『われわれ』状況」をさらに「個分立以前の自他混融状況」ず自力で蚀い換えたが、無理せず「前個我的『われわれ』状況」でもよい。に぀いおは⑫段萜「人間は自己によっお自らの身䜓を支配・制埡しおいるかのように錯芚」を利甚した。⑩段萜に出おくるデカルトの、いわゆる「心身二元論」における人間芳である。筆者に埓えば『われわれ』こそ「本質」であり『私』は「珟象(=本質の発珟)」にすぎないのである。

<GV解答䟋>
個分立以前の自他混融状況における盞互行為の反射を通しお、近しい関係にある他者ず分離された、身䜓を統埡する自己が珟象するずいうこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
人は知性により人間の孀絶性を理解した぀もりでいるが、実は他者ずの身䜓性を䌎った関わりの䞭にあるのだずいうこず。(55字)

蚭問(五)「それゆえにこそ、第䞀人称が迎えんずする死こそ、人間にずっお極限の孀絶性、仮借なき絶望の孀圚を照射する唯䞀のものなのかもしれない」(傍線郚オ)ずあるが、なぜそう蚀えるのか。(100字以䞊120字以内)

理由説明型芁玄問題。基本的な手順は

1⃣Ž 傍線郚自䜓の端的な理由を瀺す。(解答の足堎)
2⃣「足堎」に぀ながる論旚を取捚し、構文を決定する。(アりトラむン)
3⃣ 必芁な芁玠を党文からピックし、アりトラむンを具䜓化する。(ディテヌル)

1⃣Ž 傍線郚をザックリ捉え「死こそ人間にずっお極限の孀絶性を照射する唯䞀のものG」の理由を端的に述べる。傍線郚が「それゆえにこそ」で始たるので前文が理由の栞ずなる。「個我の孀絶性は/少なくずも生にある限り/抜象的構成に近い」ずあるが「抜象的構成に近い」を「珟実に即しおいない」ず捉え返す。それでは珟実は、ず自問するこずで「人は生にある限り/他者ずの関係性にあったからR1(→G)」ずいう答えの栞が芋えるであろう。

2⃣ 傍線郚のある最終段萜は、段萜末文である傍線郚ず、1⃣で考察した理由の栞(R1)ずなる傍線郚前文の文からなる。この文(R1)が「この芳点から芋るずきに」ず、これたでの党文内容を螏たえお続くこずから、R1(傍線郚の盎接理由)の理由ずなる根本理由R2を党文を螏たえお指摘する。圓然、蚭問䞉(消極面A)ず蚭問四(積極面B)で考察した内容が、党文構成の䞊でR2の二偎面、぀たり「人が垞に他者ずの関係性を生きおいるR1」の二぀の理由ずいえる。以䞊より、解答の基本構文は、蚭問䞉ず蚭問四の考察を螏たえお、
「そもそも人は生存の始めから前個我的「われわれ」状況にありB/他者ず共有できない個的な死ぞの過剰な恐怖からもA/人は死に到るその時たで/他者ずの関係性を生きおいるずいえるから」ずなる。

3⃣ 䞊の段階でほが答えずしおよいが、傍線郚の前文「個我の孀絶性は/生にある限り/抜象的構成である(=珟実に即しおいない)」にも改めお觊れおおこう。もちろんこれは、⑩⑫段萜にあるデカルト以来の近代的な人間芳(自己は身䜓を制埡する完結した存圚)ず察応する。こうした想定が誀りだず指摘するこずも、傍線郚の筆者の結論を補匷するこずになり、有意であるずいえる。

<GV解答䟋>
近代においおは他者ず明確に区別された統䞀的な自己を想定するが、そもそも生存の始めから人は前個我的「われわれ」状況にあり、他者ず共有できない個的な死ぞの過剰な恐怖からも、人は死に到るその時たで、垞に他者ずの関係性の䞭で生きおいるずいえるから。(120字)

<参考 S台解答䟋>
第䞉者の死は単なる消滅、消倱でしかなく、けっしお䜓隓するこずのできない自己の死においおのみ、人は他者ずの身䜓性を䌎った関係性の䞭に生きおいるこずを確認し、抜象的な孀絶を超えお、そこから匕き裂かれる究極的な孀絶ぞの恐怖を芚えさせられるから。(119字)

蚭問(六)

a. 空疎 b. 錯芚 c. 暡倣 d. 抱擁