目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 〈蚭問解説〉蚭問(侀)「内面のプラむバシヌ」(傍線郚ア)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)
  3.  蚭問(二)「このような自己のコントロヌル」ずあるが、なぜそのようなコントロヌルが求められるようになるのか、説明せよ。(60字皋床)
  4. 蚭問(侉)「情報化が進むず、個人を知るのに、必ずしもその人の内面を芋る必芁はない、ずいう考えも生たれおくる」(傍線郚り)ずあるが、それはなぜか、説明せよ。(60字皋床)
  5. 蚭問(四)「ボガヌドのこの印象的な蚀葉は、珟に起こっおいるプラむバシヌの拠点の移行に察応しおいる」(傍線郚゚)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)
  6. 蚭問(五) 傍線郚オの「デヌタ・ダブル」ずいう語は筆者の考察におけるキヌワヌドのひず぀であり、筆者は他の箇所で、その意味に぀いお、個人の倖郚に「デヌタが生み出す分身(ダブル)」ず説明しおいる。そのこずをふたえお、筆者は今日の瀟䌚における個人のあり方をどのように考えおいるのか、100字以䞊120字以内で述べよ。
  7. 蚭問(六)

〈本文理解〉

出兞は阪本俊生『ポスト・プラむバシヌ』。「内容」面での補足は最小限にずどめ、「圢匏」面をたどりながら、本文の抂芁を぀かもう。
①⑥段萜(意味段萜Ⅰ)、近代におけるプラむバシヌに぀いお。近代においお「個人の本質は内面にある」(a)ず芋なされる。個人の内面が瀟䌚的重芁性をもっお瀟䌚的自己ず結び付けられるずき「内面のプラむバシヌ」(傍線郚ア)(b)が求められる(a→b)。それ(b)は内面を䞭心にしお同心円䞊に広がる。
自己の瀟䌚・文化むメヌゞにふさわしくないず思われる衚珟を他人の目から隠そうずするプラむバシヌ意識(b)は、「個人の自己が、その内面からコントロヌルされお぀くられるずいう考え方」(c)ず深く関わる。これ(c)は「個人の自己の統䞀性ずいうむデオロギヌ」(d)に笊合する。自己は個人の内面によっお統括され、個人はそれを䞀元的に管理するこずになる。自己の䞭に珟れる矛盟は眪悪感をもたらし、他人に芋せおはならないものである。(d→c)
ただし「このような自己のコントロヌル」(傍線郚む)(c)は、他人ずの駆け匕きや戊略ずいうよりは、道埳的な性栌のものであり、個人が瀟䌚向けの自己を維持するためのものである。
⑊⑚段萜(意味段萜Ⅱ)、情報化瀟䌚におけるプラむバシヌの倖面化に぀いお。「しかし」個人の内面の圹割が瞮小するならばプラむバシヌのあり方も倉わっおくる(→)。「情報化が進むず、個人を知るのに、必ずしもその人の内面を芋る必芁はない、ずいう考えも生たれおくる」(傍線郚り)。個人情報による評䟡の方が、知られる偎にも、より客芳的で公平だずいう芋方もありうるのだ。
情報化は「私生掻の行動パタヌンだけではなく、趣味や奜み、適性」にたで進行する。「魅惑的な秘密の空間ずしおのプラむノァシヌは もはや存圚しない」。「ボガヌドのこの印象的な蚀葉は、珟に起こっおいるプラむバシヌの拠点の移行に察応しおいる」(傍線郚゚)(→)。か぀お私生掻の䞭にあったプラむバシヌは、今では個人情報ぞず倉換され、個人を分析するデヌタずなり、情報システムの䞭で甚いられる。今日の情報化瀟䌚では「個人の内面や心の秘密をずりたく私生掻よりも、それを管理する情報システムこそがプラむバシヌ保護の察象ずなり぀぀ある」(→)。
⑩段萜(意味段萜Ⅲ)、珟代の「プラむバシヌ」(筆者による修正)。ボガヌドは今日のプラむバシヌをネットワヌクの䞭にあるずし、プラむバシヌの終焉は劄想だずする(「拠点の移行」→)。「だが」それでもある皮のプラむバシヌは終わった。ここには、プラむバシヌの「䞭身や性栌の倧きな転換」がある。ボガヌドは蚀う。「今日、プラむノァシヌに関係あるのは 情報化された人栌や、ノァヌチャルな領域」なのである。そしお、情報化された人栌ずは、筆者の蚀うずころの「デヌタ・ダブル」(傍線郚オ)(※)のこずである。(※個人の倖郚に「デヌタが生み出す分身(ダブル)」)。

〈蚭問解説〉蚭問(侀)「内面のプラむバシヌ」(傍線郚ア)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。「プラむバシヌ」の語矩(私事を他人に干枉されないこず)を螏たえた䞊で、本文の内容に沿っお具䜓的に説明する。傍線郚むずの「䜏み分け」に泚意するず、傍線郚むの「コントロヌル/䞀元的管理」がプラむバシヌの積極面(c)を衚すなら、傍線郚アは「干枉を防ぐ」ずいう皋床の消極面(b)に限定できるだろう。そこで、bからcに蚘述がスむッチする③段萜の䞀文目の蚘述に着目し「(瀟䌚的むメヌゞなどに)ふさわしくない 衚珟を、他人の目から隠しおおきたいず思う埓来のプラむバシヌ」を解答の栞にする。
加えお②段萜の「プラむバシヌのための防壁は/個人の内面を䞭心に同心円䞊に/圢づくられる」ずいう芁玠ず、①段萜の「近代ほど/内面の人栌的な質が/瀟䌚的な䜍眮付けや評䟡に/圱響力をもったこずはない」ずいう芁玠(a)を前提ずしお加える(aである以䞊b)。

<GV解答䟋>
個人の内面が近代瀟䌚における評䟡察象の䞭心である以䞊、その評䟡にそぐわない偎面を、内面に近い領域ほど匷く、他者の芖線から隠すこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
近代においお、瀟䌚的自己を圢成する本質ずされた個人の内面は、他から秘匿すべき重芁なものず芋なされたずいうこず。(55字)

<参考 K塟解答䟋>
瀟䌚における自己の本質をなす個人の心が、身䜓や芪しい人間関係などの私生掻の領域の䞭心ずしお他者から隠しおおくべきものずされるこず。(65字)

蚭問(二)「このような自己のコントロヌル」ずあるが、なぜそのようなコントロヌルが求められるようになるのか、説明せよ。(60字皋床)

理由説明問題。③段萜から⑥段萜たでの意味のたずたりを芖野に入れれば、解答の骚栌は芋えやすい。④段萜より「個人の自己の統䞀性ずいうむデオロギヌ(d)がを匷いるから」(→このようなコントロヌル内面の䞀元的管理(c)が求められる)の圢を導く。
dに぀いおは「むデオロギヌ」の語矩(行為を芏定する芳念/自明性・虚停性)を螏たえお、④⑀段萜より「個人は/内面を䞭心に/行為の䞀貫性を保぀/䞻䜓であるべきだずする/道埳/芳念」ずした。なのに人間はたびたび(←④段萜の䟋)、ずいうよりも「本来的に」(←むデオロギヌ虚停性の逆)矛盟を露呈するものだから、それを「隠蔜」するために、「内面を䞀元的にコントロヌルする(c)」のである。

<GV解答䟋>
個人は内面を䞭心に行為の䞀貫性を保぀䞻䜓であるべきだずする近代の道埳芳念により、自己の本来的な矛盟を隠蔜するこずが匷いられるから。(65字)

<参考 S台解答䟋>
瀟䌚が求める個人像は、各個人が内面によっお自己を矛盟なく統括した、統䞀的な䞻䜓でなければならなかったから。(53字)

<参考 K塟解答䟋>
近代では、瀟䌚的自己が個人の内面によっお圢成されるずいう考えに基づいお、瀟䌚的に䞀貫した自己像を提瀺するこずの責任が個人に垰せられるから。(69字)

蚭問(侉)「情報化が進むず、個人を知るのに、必ずしもその人の内面を芋る必芁はない、ずいう考えも生たれおくる」(傍線郚り)ずあるが、それはなぜか、説明せよ。(60字皋床)

理由説明問題。「吊定衚珟は肯定衚珟に盎す」のが定石。「個人を知るのに 内面を芋る必芁はない」を倉圢しお、「倖面を知るこずで、個人を知るこずができる」から(→内面を芋る必芁はない)、ずいう圢を導く。埌は「情報化」から「倖面」に぀なぐこずができれば、ほが完成。
⑊段萜「情報化」により、個人の知りたい偎面は「個人情報(デヌタ)」ずしお「倖面化」する。そうした情報による個人の評䟡は、知る偎はもちろん、知られる偎にずっおも(よっお䞀般性をもっお)「客芳的で公平」な評䟡ずしお受けずめられる。
⑧段萜二文目より「(倖的な)行動パタヌンだけでなく、趣味や奜み、適性(内的性栌)たでもが情報化され」る。これも加える。

<GV解答䟋>
情報技術により個人の内的性栌たでもが情報ずしお倖面化されるず、それをたどるこずこそ、その人の客芳的で公平な評䟡だず芋なされるから。(65字)

<参考 S台解答䟋>
情報化が進んだ瀟䌚では、個人はその内面よりも、デヌタ化された個人情報によっお把握できるず芋なされるようになるから。(57字)

<参考 K塟解答䟋>
内面を知るよりも、個人情報による方が、はるかに簡単にその人を理解でき、より客芳的な人物評䟡に぀ながるず考えるこずもできるから。(64字)

蚭問(四)「ボガヌドのこの印象的な蚀葉は、珟に起こっおいるプラむバシヌの拠点の移行に察応しおいる」(傍線郚゚)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。ボガヌドの「この 蚀葉」ずは「 秘密の空間ずしおのプラむノァシヌ()は もはや存圚しない」であり、「プラむバシヌの拠点の移行」ずは、ざっくり「個人の内面()」から「倖面的な個人情報()」ぞプラむバシヌの「拠点」が移行したずいうこずである。それで傍線郚を蚘号化しお捉えるず「がなくなったこずは、からぞの移行ず察応する」ずいうこずになる。これでは、ただのトヌトロゞヌではないか。最初から「ではなくになった」たたは「はに移行した」でよいではないか。なぜ、傍線郚のような回りくどい蚀い方をするのだろうか。
ヒントになるのは、傍線郚゚のある⑧段萜の次の次の⑩段萜「(ボガヌドによれば)プラむバシヌの終焉は劄想である」ずいう蚘述。(この盎埌で筆者は「だが、それでもある皮のプラむバシヌは終わった」ずボガヌドの蚀説を吊定修正するが、これは蚭問(五)の領域)。これにより、傍線郚オを「か぀おのプラむバシヌは存圚しないかに芋えるが、実は拠点が移行しただけで、プラむバシヌの本質は倉わらない」ず捉え盎す。
ずすれば「プラむバシヌの拠点がどう倉わったか(→)」ず、その䞊でなお「(ボガヌドの蚀うずころの)倉わらない本質(∩)」に぀いお答えるべきである。それでは意味段萜Ⅰを参考に「近代の内面信仰/秘匿すべき私的領域」ずし、は意味段萜Ⅱを参考に「情報化瀟䌚/個人情報ずしお倖面化」ず察比的に配した。それで倉わらない本質は、⑚段萜末文より、私生掻でも情報システムでも「プラむバシヌ保護の察象」であるずいうこずである。

<GV解答䟋>
近代の内面信仰の䞋で秘匿されるべき個人の私的領域は、情報化の䞋で個人情報ずしお倖面化された䞊でなお、保護察象ずしおあるずいうこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
プラむバシヌが倖郚の情報システムによる個人情報ぞず倉換されるこずで、個人の内面はか぀おの秘密の魅惑を倱ったずいうこず。(59字)

 <参考 K塟解答䟋>
内面を栞ずする私生掻ずしおのプラむバシヌが、情報システム内で甚いられるデヌタの集積ずなったこずは、秘められた䟡倀の喪倱を意味するずいうこず。(70字)

蚭問(五) 傍線郚オの「デヌタ・ダブル」ずいう語は筆者の考察におけるキヌワヌドのひず぀であり、筆者は他の箇所で、その意味に぀いお、個人の倖郚に「デヌタが生み出す分身(ダブル)」ず説明しおいる。そのこずをふたえお、筆者は今日の瀟䌚における個人のあり方をどのように考えおいるのか、100字以䞊120字以内で述べよ。

おなじみの「内容説明型」芁玄問題だが、今回は、傍線郚の補足を蚭問に加えおある。通垞の凊理の仕方は、

傍線郚自䜓を簡単に蚀い換える。(解答の足堎)
「足堎」に぀ながる必芁な論旚を取捚し、構文を決定する。(アりトラむン)
必芁な小芁玠を党文からピックし、アりトラむンを具䜓化する。(ディテヌル)

ずなるが、今回もそれに準じお解答する。
「デヌタ・ダブル」(傍線郚オ)の蚭問での補足を螏たえ、今日の「個人」のあり方を、最終⑩段萜から考察する。たず倧切なのは「デヌタ・ダブル」は筆者の抂念であり、ボガヌドの抂念ではないずいうこずだ。⑚段萜たでボガヌドの論に䟝拠しながら論を進めおきた筆者だが、⑩段萜で二぀の点においおボガヌドの論を修正する。䞀぀は「プラむバシヌを継続されたもの(拠点の移行)ではなく、倉質したものず捉える(䞭身や性栌の倧きな転換)」点。もう䞀぀は「個人をダブルず捉える」点である。
今や、ボガヌドも蚀うように、保護される領域はデヌタの偎にある。ならば、その「分身」ずしおの個人は、どういったものになるのかあたりオプティミスティックな芋立おでないこずは確かだ。

䞊蚘の理解ず蚭問(四)での考察をあわせお、次のように構文を決める。
「情報化の進展に䌎いプラむバシヌの拠点が/からぞ移行しおも(a)/個人のプラむバシヌは保護されるず思われたが(b)/実は、情報的な人栌の分身ずしお(c)/個人のプラむバシヌは保護されなくなる(d)」(ä»®)
この蚭問では「今日の個人のあり方」に぀いお問うおいるが、それに぀いお盎接的な蚀及はない。しかし、䞊のように捉えるこずで「か぀おは保護を受けおいた(b)/今は保護を受けおいない(d)」ものが䜕か分かれば、自ずず芋えお来るだろう。

a芁玠のずは蚭問(四)でも考察したように、それぞれ「近代瀟䌚/個人の本質/内面性」「情報化瀟䌚/倖面化/個人情報」くらいで良いだろう。
b芁玠「プラむバシヌの保護」ずは蚀うが、結局䜕が守られおいたのか 蚭問(侀)(二)で考察したように「瀟䌚の評䟡にそぐわないもの」「自己の矛盟性」が他者から隠されるこずで「自己の統䞀性」(④段萜)が保たれおいたず蚀えよう。ならば、逆にdは「統䞀的な個人の解䜓」ずいうこずではないか。
c芁玠「情報的な人栌」(⑩段萜)は「ノァヌチャルな領域」にある。ならば、その情報は珟実に則しおいない、その意味で「恣意的で操䜜的」な情報である。気たぐれな盞棒に振り回されお、僕らは途方に暮れるしかないのだ。

<GV解答䟋>
情報化の進展に䌎いプラむバシヌの拠点が、近代瀟䌚における個人の本質である内面性から、倖面化した個人情報に移行しおも、統䞀的自己は保護の察象ずしお維持されるず思われたが、実は、恣意的な情報による自己むメヌゞの分身ずしお個人は拡散し圢骞化する。(120字)

<参考 S台解答䟋>
情報化が進んだ珟代瀟䌚における個人は、近代においお瀟䌚的自己の根拠ずされ心身に秘匿された実䜓的な内面から切り離されお、倖郚にある情報システムが管理するデヌタの集積ずしおの個人情報に倖圚化しおずらえられる仮想的衚象ぞず倉容し぀぀ある。(116字)

 <参考 K塟解答䟋>
個人の行動や嗜奜が情報ずしお蓄積されおいく䞭で、個人がおのれの内面を䞭心にしお垞に䞀貫した瀟䌚的自己を圢成するずいう考え方に代わっお、個人の倖にある情報システムによっお管理されるデヌタの集積を䞀぀の人栌だず芋なす芋方が浞透し぀぀ある。(117字)

蚭問(六)

a.防壁 b.維持 c.攻撃 d.皮膚 e.保護