目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 〈蚭問解説〉蚭問(侀)「身䜓的移動のなかでの颚景䜓隓」(傍線郚ア)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)
  3.  蚭問(二)「本来身䜓空間であるべきものが抂念空間によっお眮換されおいる事態」(傍線郚む)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)
  4. 蚭問(侉)「それは庭園に類䌌しおいる」(傍線郚り)ずあるが、なぜそういえるのか、説明せよ。(60字皋床)
  5. 蚭問(四)「河川の空間は、時間の経過ずずもに履歎を積み䞊げおいく」(傍線郚゚)ずあるが、どういうこずか、説明せよ。(60字皋床)
  6. 蚭問(五)「颚景こそ自己ず䞖界、自己ず他者が出䌚う堎である」(傍線郚オ)ずはどういうこずか、本文党䜓の論旚を螏たえた䞊で、100字以䞊120字以内で説明せよ。
  7. 蚭問(六)

〈本文理解〉

出兞は桑子敏雄『颚景のなかの環境哲孊』。
「内容」面の補足はできるだけ控えお「圢匏」面に着目しお、本文の抂芁を぀かむ。
①④段萜(意味段萜Ⅰ)、河川の䜓隓に぀いお。人間は、本質的に身䜓的存圚であるこずで空間的経隓を積む。河川の䜓隓は、流れる氎の様態の䜓隓であるず同時に「身䜓的移動のなかでの颚景䜓隓」(傍線郚ア)である。この埌「河川の䜓隓」に぀いお以䞋のように説明を重ねる。「そこを移動する身䜓に出珟する颚景の倚様な経隓」「ひずは歩道を歩きながら、川を䜓隓し 背景ずなっおいる郜垂の颚景を䜓隓し そこを歩く自己の䜓隓を意識する」「河川の䜓隓ずは、河川空間での自己の身䜓意識」「颚景ずは 身䜓に出珟する空間の衚情」「颚景の意味はひずそれぞれによっお異なっおいる」「颚景の知芚が 倚様な経隓を䞎える」云々。
⑀⑧段萜(意味段萜Ⅱ)、身䜓空間ず抂念空間ずの察比。固定化された抂念による空間の再線は、それが指瀺する行為以倖の可胜性を排陀する。「この排陀は 。それは」「本来身䜓空間であるべきものが抂念空間によっお眮換されおいる事態」(傍線郚む)ず捉えるこずができる。
川は、未知なる過去ず未知なる未来を結ぶ珟圚の颚景である。河川の空間に求められおいるのは、新しい䜓隓や発想が生たれでるような創造的空間である(=身䜓空間)。
⑚⑩段萜(意味段萜Ⅲ)、河川空間の自発性。河川工事の竣工は、河川の空間が育぀起点ずなる。「それは庭園に類䌌しおいる」(傍線郚り)。暹朚の怍栜は、育成の起点だからである。川は、長い時間の䞭で、自然の力ず人間の手助けによっお、個性をも぀こずができるのである。
⑪⑬段萜(意味段萜Ⅳ)、河川空間の時間性。「河川の空間は、時間な経過ずずもに履歎を積み䞊げおいく」(傍線郚゚)。その履歎が空間に意味を䞎える。䞀方、抂念的コントロヌルによる意味付䞎は、颚景に接したひずが自由な想像力で固有の履歎を積み䞊げるこずを阻害する。
時間を意識させる河川の空間は、倚くの人びずの経隓の蓄積ず自然の営みを含み、たたそこに立ち䌚うひずが固有の履歎を構築する基盀ずもなる。
颚景は、その人の経隓の積み重ね、そのひずの履歎ず、空間に蓄積された履歎ずの亀差により構築される。「颚景こそ自己ず䞖界、自己ず他者が出䌚う堎である」(傍線郚オ)。

〈蚭問解説〉蚭問(侀)「身䜓的移動のなかでの颚景䜓隓」(傍線郚ア)ずはどういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。近いずころから。「河川の䜓隓は、流れる氎ず氎のさたざたな様態の䜓隓(※芖点の固定/倖的䜓隓)である。ず同時に『身䜓的移動のなかでの/颚景䜓隓』(※芖点の倉化/内的䜓隓)である」ずなっおいる。ここから、傍線郚アは、䞻語が「河川の䜓隓」であり、その䜓隓のうち「身䜓の移動に䌎う/内的䜓隓」(④段萜䞀文目も参照)を衚しおいるこずが分かる。
同じ意味段萜Ⅰから「河川の䜓隓」に぀いお蚀及しおいるものを抜出する。これは〈本文理解〉を参照しおほしい。倧筋ずしおは「身䜓の移動に䌎う/川ずその背景の颚景の倉化を/意識にずりこみ/人それぞれの意味を芋いだす」(身䜓移動による芖点の倉化→颚景の倉化→内的意識の倉化)ずいうこず。差が぀くポむントは、解答の締めを「意識にずりこみ意味䞖界を広げる」など内的䜓隓ずしお説明しなければならないずころだ。

<GV解答䟋>
河川に沿っお歩くこずで、河川ずその背景の颚景が広がり倉化しおいく様を、知芚を通しお意識にずりこみ、自己の意味䞖界を広げおいくこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
人は川の流れに沿っお歩くこずで、移りゆく颚景の倚様性を、共に倉化する自己の意識の䜓隓ずしお、身䜓で感受するずいうこず。(59字)

<参考 K塟解答䟋>
川に沿っお動くずきに、さたざたな衚情を芋せながらう぀ろう川ずその呚囲の光景を、個人がそれぞれの身䜓感芚を通しお受け止めるこず。(63字)

蚭問(二)「自然賛矎の抒情詩を䜜る詩人は、いたや人間の粟神の玠晎らしさを讃える自己賛矎を口にしなければならなくなった」(傍線郚む)ずあるが、なぜそのような事態になるずいえるのか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。「眮換されおいる」ではなく「眮換されおいる事態」にたで線が匕かれおいるこずに泚意しよう。前者ならば「空間が空間に眮き換わる」ずしか蚀いようがないが、埌者なら「含み」がありうる。
「事態」は傍線郚を含む䞀文の䞻語「それ」ず察応し、その指瀺内容は前文の䞻語「この排陀」である。「この排陀」ずは「固定化された抂念が指瀺する行為以倖の可胜性の排陀」である。ならば傍線郚の「事態」ずは「身䜓空間には担保されおいた行為の可胜性(a)」が「固定化された抂念(b)」によっお「排陀されるこず(c)」である。
a芁玠に぀いおは⑊⑧段萜より「未知なる自然に觊発された(a1)/倚様な䜓隓の可胜性(a2)」を抜出し、それが「身䜓を媒介」ずしたものだずいう点を加える。b芁玠は、a芁玠ず察比的に、⑀段萜の具䜓䟋から「䞀定の合理性に基づき(b2)/予め蚭定された抂念(b1)」ずする。その抂念により「個々の䜓隓の可胜性は䞀矩的に限定される(c)」のである。

<GV解答䟋>
個々の身䜓を媒介に未知なる自然に觊発され広がる䜓隓の可胜性が、䞀定の合理性に基づき予め蚭定された抂念により䞀矩的に限定されるこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
人間が身䜓によっお出䌚うはずの未知なる自然が、固定化された抂念で人為的に管理され、貧しい空間になるずいうこず。(55字)

<参考 K塟解答䟋>
個々の人間の身䜓に新たな䜓隓をもたらすべき豊かな河川空間が、䞀郚の人間の固定芳念によっお人の行為を支配する貧盞な空間になるこず。(64字)

蚭問(侉)「それは庭園に類䌌しおいる」(傍線郚り)ずあるが、なぜそういえるのか、説明せよ。(60字皋床)

理由説明問題。「それ」河川空間()ず庭園()が類䌌しおいる理由。ずの類比を問う問題で、2012幎 第䞀問 蚭問(侉)が同じような問題だった。本問も〈分離型〉「は(p1,p2
)であり、は(q1,q2
)である」ではなく〈䞀括型〉「ずいう点でずは同じ」で端的に瀺す。
たず傍線の前埌に「竣工は、河川の空間が育぀起点()」「怍栜は 育成の起点()」ずあるので「人間による蚭定が起点ずなり/育っおいく(∩)」を抜出するのは容易。しかし「どう育぀のか」に぀いおはの偎しか觊れおいない。その堎合、の蚘述ずがどこたで重なるのかは、(庭園)に぀いおの「自明性」をあおにしなければならない(よっおむメヌゞできなければ蟛い)。
に぀いおは、⑩段萜より「時間をかけお/自然の力で/人間の助けを借りお/個性を実珟」が拟える。これは(庭園)においおも同じだろう。解答では「抂念空間」ずの察比を意識しお「自然自身の力で」ずいう点に力点を眮いた。

<GV解答䟋>
人間による空間の蚭眮を起点ずしお、人間ずの関わりの䞭で、時間をかけお自然自身が個性を実珟しおいく点で、河川空間は庭園に通じるから。(65字)

<参考 S台解答䟋>
河川空間は、庭園ず同様、竣工をむしろ起点ずしお長い時間をかけた自然の力ず人の手助けで初めお豊かな颚景ずなるから。(56字)

<参考 K塟解答䟋>
河川も庭園も、人為的な敎備を基盀ずし぀぀、その埌自然の力が長い時間をかけお個性を育成するものであり、人間はその手助けをするだけだから。(67字)

蚭問(四)「河川の空間は、時間の経過ずずもに履歎を積み䞊げおいく」(傍線郚゚)ずあるが、どういうこずか、説明せよ。(60字皋床)

内容説明問題。河川空間が、時間をかけお「履歎を積み䞊げ」るこずを説明する。同じ意味段萜にある蚭問(五)ずの「䜏み分け」を考えお、(四)は「人(ず自然の営み)が空間に履歎を加える」(人→空間)に蚘述を限定し、(五)は「空間が人に履歎を加える」(空間→人)を䞭心に蚘述を構成する(もちろん(五)は芁玄問題なので「人→空間」も前提ずしお加える)。たた、⑫段萜の締めに「こうしお積み䞊げられた空間の履歎」ずあるから、傍線郚゚が匕かれおいる⑪段萜から⑫段萜たでが、基本的に解答範囲ずなる。
以䞊より、傍線郚の蚀い換え自䜓は「河川空間は、立ち䌚う人々の経隓ず自然の営みを含みながら倉容しおいく」くらいで良い。ただ、これでは䞍十分である。⑪段萜末文にあるように、抂念空間に接するずき、颚景はそれに接した人が「固有の履歎を積み䞊げるのを阻害」するからである。よっお、解答では「抂念空間」でないこずを明確に瀺した。
加えお⑫段萜より、河川空間は「時間を意識させる空間ずしお存圚する」ずいう蚘述も螏たえた。぀たり、河川空間の氎の流れは「時の流れ」を象城し圢態化しおいるずいうこずだろう。

<GV解答䟋>
時の流れを象城する河川空間は、固定化した抂念に支配されない限り、立ち䌚う人々の経隓ず自然の営みを含みながら倉容しおいくずいうこず。(65字)

<参考 S台解答䟋>
河川は、自然ず人間の営みの長い蓄積によっお、人々に固有の経隓を䞎え埗る個性的な意味をも぀颚景ずなるずいうこず。(55字)

 <参考 K塟解答䟋>
河川が自然の力ず人為によっお倉貌するなかで、人間の倚様な経隓を可胜にするそれぞれの川の個性がかたちづくられおいくこず。(59字)

蚭問(五)「颚景こそ自己ず䞖界、自己ず他者が出䌚う堎である」(傍線郚オ)ずはどういうこずか、本文党䜓の論旚を螏たえた䞊で、100字以䞊120字以内で説明せよ。

 傍線郚を簡単に蚀い換える。(解答の足堎)
「足堎」に぀ながる必芁な論旚を取捚し、構文を決定する。(アりトラむン)
 必芁な小芁玠を党文からピックし、アりトラむンを具䜓化する。(ディテヌル)

ずなる。

傍線郚は「颚景こそ 堎である」ずなっおいるが、長い文を名詞で締めるず文が硬盎し、必芁な情報が盛り蟌みにくくなる。そこで、堎合によっおは構文を入れ換え、同内容を衚珟するず良い。
「颚景の䞭で、自己は䞖界ず出䌚い、他者ず出䌚う」(ä»®)。
ここで「颚景」は「河川空間」、「䞖界」は「河川空間の履歎の総䜓」、そしお「他者」ずは「河川空間の履歎の䞭に含たれおいる固有の履歎」ず捉えおおく。

たずは傍線のある⑬段萜から。「その人の履歎ず/空間に蓄積された空間の履歎ずの/亀差こそが/颚景を構築する」が傍線郚ず重なる。蚭問(四)でも怜蚎したずおり、人ず空間の履歎の亀差(人空間)のうち、盎前の具䜓䟋からも⑬段萜では「空間→人」の面に焊点があおられおいる。ならば前段たでの「人→空間」の論旚ずどう぀なぐか。この時、⑫段萜末文に着目できる。
「こうしお積み䞊げられた空間の履歎が/その空間に䜏み、たたそこを蚪れるそれぞれのひずが固有の履歎を構築する/基盀ずなる」
぀たり「人→空間」が「空間→人」の「基盀(条件)」ずなる。これらを螏たえお次のような構文に決定する。
「河川空間が/抂念に支配されず(a)/人々の履歎を受容するならば(b)/人は/履歎の総䜓ずしおの颚景ず出䌚い(c)/履歎に含たれる固有の他者を発芋するこずができる(d)」(ä»®)。

意味段萜/蚭問ごずの考察を利甚する。ab芁玠は(四)の解答を再利甚すればほが足りるが、a芁玠に(二)で考察した「抂念が空間利甚を䞀矩的に決める」こず、b芁玠に(侉)で考察した「自然は人間ず協調しながら自身で個性を実珟しおいく」こずを加えよう。
c芁玠には(侀)での考察から「身䜓の媒介による倉化する颚景の感受」を、d芁玠には⑧段萜から、颚景ず他者性の感受により「新しい䜓隓や発想が生たれる(創造性が啓発される)」ずいう芁玠を加え、解答の結びずする。

<GV解答䟋>
河川空間が、そのあり方を䞀矩的に決定する抂念に支配されず、人々の想像力を受容しながら生成するものならば、人は自らの身䜓を介しお移りゆく颚景の倚様性を感受し、そこに蓄積された固有の他者性に啓発されお自己の創造性を高めるこずができるずいうこず。(120字)

<参考 S台解答䟋>
颚景ずは、限られた抂念によっお管理されるべきものではなく、個々人が自己の身䜓を通しお、自然ず人間による営みの蓄積ず自己の固有の経隓ずを亀差させお共有するこずで、他者ずのかかわりによる新たな䜓隓ず発想が生たれる創造的な堎であるずいうこず。(118字)

 <参考 K塟解答䟋>
河川空間の蚭蚈に際しお重芖されるべきものは颚景である。それは、人びずの経隓や自然の営みの䞭で倉化しおきた個々の河川を、固有の身䜓的経隓に即しお捉えるずころに成立するものであり、そのなかでこそ人は思いもかけない倚様な経隓をするずいうこず。(118字)

蚭問(六)

a.跳 b.断片 c.抑圧 d.阻害