目次
- <本文理解>
- 問一「ケアをする者とされる者という一元的な関係とも家族とも異なった形での、ケアをとおした親密性」(傍線部ア)とはどういうことか、説明せよ。(2行)
- 問二「『社会』を中心におく論理から『人間』を中心におく論理への転換」(傍線部イ)とはどういうことか、説明せよ。(2行)
- 問三「選択の論理は個人主義にもとづくものである」(傍線部ウ)とはどういうことか、説明せよ。(2行)
- 問四「それは、人間だけを行為主体と見る世界像ではなく、関係するあらゆるものに行為の力能を見出す生きた世界像につながっている」(傍線部エ)とはどういうことか、本文全体の趣旨を踏まえて、100字以上120字以内で説明せよ。
- 問五(漢字の書き取り)
〈本文理解〉
出典は松島健「ケアと共同性ーー個人主義を超えて」
問一「ケアをする者とされる者という一元的な関係とも家族とも異なった形での、ケアをとおした親密性」(傍線部ア)とはどういうことか、説明せよ。(2行)
〈GV解答例〉
医療機関に加え、家族や地域からも排除され、孤立した感染者・患者が、生存をかけて相互にケアを施した結果、強固な絆が生じたということ。(65)
〈参考 S台解答例〉
見知らぬ間柄だが同じ問題を共有する人たちが、互いを支え合うことでこれまでにない社会的なつながりを作りあげたということ。(59)
〈参考 K塾解答例〉
感染者が医療従事者や家族から世話を受けるのではなく、非感染者を含めて助け合いながら独自の知や実践を培うなかで絆を深めていくこと。(64)
〈参考 Yゼミ解答例〉
病者と治療者、病者と家族という一方的な結びつきではなく、病の中で生き抜くための情報を共有し、互いに生を支え合う相互的な関係性。(63)
〈参考 T進解答例〉
医療における主客の明確な関係とも、血縁関係とも異なる、福祉国家の対象から排除された人々の生の保持のための、相互的な協働実践のなかで生じた共同性。(72)
問二「『社会』を中心におく論理から『人間』を中心におく論理への転換」(傍線部イ)とはどういうことか、説明せよ。(2行)
〈GV解答例〉
社会を防衛するために異質な分子を排除する論理を改め、そこに住まう全ての人を支えるために社会の方を変更する論理を採用したということ。(65)
〈参考 S台解答例〉
市民社会を守るためにそこから逸脱する人々を排除し管理するのではなく、その人々の苦しみに寄り添い共に生きるようにすること。(60)
〈参考 K塾解答例〉
精神障害を持つ人々を社会に対する危険とみなして隔離するのではなく、苦しみを抱えた彼らの生を地域の人びとが支えるようになったこと。(64)
〈参考 Yゼミ解答例〉
精神障害者から社会を守ろうとする社会を軸に置いた論理から、障害者と共に生き、地域で集合的に支える共同的なケアの論理に移行すること。(65)
〈参考 T進解答例〉
公的サービスにおける、社会の安寧のための管理と統治の論理が、苦しむ人々に寄り添う、共同的で公共的な論理に変わったということ。(62)
問三「選択の論理は個人主義にもとづくものである」(傍線部ウ)とはどういうことか、説明せよ。(2行)
〈GV解答例〉
共同性を離れ、行為の責任を一身に背負う近代的な個人こそが、欲望に従い商品やサービスを主体的に選択するあり方を可能にしたということ。(65)
〈参考 S台解答例〉
自らの欲望に従い選択することをよしとする考えの前提には、人を自由な個人と想定し責任を一身に負わせる発想があるということ。(60)
〈参考 K塾解答例〉
当人の主体的で自由な選択を尊重する思考は、人は自己の責任において、自覚的な欲望に基づいて生きるべきだという考えを前提としていること。(66)
〈参考 Yゼミ解答例〉
医療における選択の論理は、医師の提供する情報に基づき、自身の望む医療サービスを個人の責任で主体的に選ぶことを意味するということ。(64)
〈参考 T進解答例〉
自らの欲望に基づき情報を判断し、自己責任で主体的に選択するという論理は、自己の欲望に自覚的な個人の自由を重視する考えに支えられているということ。(72)
問四「それは、人間だけを行為主体と見る世界像ではなく、関係するあらゆるものに行為の力能を見出す生きた世界像につながっている」(傍線部エ)とはどういうことか、本文全体の趣旨を踏まえて、100字以上120字以内で説明せよ。
〈GV解答例〉
人が必要とするものの探究を起点とするケアの論理では、感覚や情動を働かせ状況を適切に判断、調整する必要があるので、世界は単なる人間主体と客体ではなく、身体性を基盤とする人間と周囲の環境全ての共同的で協働的な作業連関として拡張されるということ。(120)
〈参考 S台解答例〉
身体に関わるあらゆるものを調整し苦しむ人の身体感覚や情動に共感し共生しようとするケアの実践は、国家の枠組みの中で個人が自律的に生きることを前提とした近代社会を超えて、身の回りのあらゆるものと支え合いながら共に生きる世界を生み出すということ。(120)
〈参考 K塾解答例〉
苦しむ人をケアするには、単に個人の欲求に基づく選択に応えるのではなく、その人が生きる状況の中で必要とするものを見極めるべく、生を享受する基盤となる身体を感覚や情動に基づいて調整し、そこに関わるあらゆる存在の可能性を探り続ける必要があること。(120)
〈参考 Yゼミ解答例〉
病者とともに生き、適切に状況を判断しつつ、感覚や情動に基づいてその人の身体を整えようとするケアの論理は、近代の個人主義や社会中心主義の思想を超えて、病者とその周囲の人や物とを共同的で協同的な関係において捉える新たな世界認識を生むということ。(120)
〈参考 T進解答例〉
状況を適切に判断し、身体を整えようと関わる総体との調整を不断に図るケアの論理は、主体的に選択を行う個人や社会全体を基盤とする近代の世界観ではなく、生を享受する基体たる身体と関わりを持つ全ての存在とに共同性を認める世界観と親和するということ。(120)
問五 (漢字)
a.診察 b.諦 c.羅針