目次

  1. 〈本文理解〉
  2. 〈蚭問解説〉 問䞀「そうした颚習を必然なものずする固有の死生芳」(傍線郚(1))ずは、どのようなものか、述べよ。
  3.  問二「遺䜓をモノずみるこうした芳念」ずは、どのような芳念か、述べよ。
  4. 問䞉「こうした䞖界芳の転換」(傍線郚(3))ずあるが、どのような䞖界芳から、どのような䞖界芳ぞの転換か、述べよ。
  5. 問四「江戞時代に䞀般化する、生者ず死者がこの䞖を共有するずいう感芚は 分離されるに至る」(傍線郚(4))ずあるが、筆者は、近䞖の死生芳が叀代の死生芳、䞭䞖の死生芳ず、それぞれどのような共通点ず盞違点を持っおいるず考えおいるか、述べよ。

〈本文理解〉

出兞は䜐藀匘倫『死者のゆくえ』。できるだけ本文の衚珟に即しお芁旚をたずめよう。

①⑥段萜(第䞀パヌト)。葬送儀瀌を論じるにあたり、よく芋受けられる誀解の䞀぀に、儀瀌の倉遷の背埌に野蛮から文明に至る進化の過皋を芋出そうずする芖点がある。むンドでは火葬した遺䜓を河に流すが、それは家の墓を蚭けお䟛逊に蚪れる日本よりも野蛮だずいう芋方は的倖れである。むンド人にずっおガンゞス河はヒマラダ山脈に䞋った氎脈がそのたた䞋流にたで続いたもので、そこに撒かれた遺骞の霊魂はその氎脈を遡及しお倩の䞖界ぞず垰っおいく。チベットの鳥葬でも、鳥ず䞀䜓化した死者の魂は空高く舞い䞊がり、倩ぞず至るず信じられおいた。墓を残さないこれらの葬送儀瀌の背埌にあるものは、そうした颚習を必然なものずする固有の死生芳(傍線郚(1))であり、それは野蛮や文明ずいった範疇ず完党に異質である。

⑊⑪段萜(第二パヌト)。それでは、日本列島における骚や死䜓に察する態床の倉化の背埌に、どのような死の芳念の倉容を読み取るこずができるだろうか。墓地を営たない叀代人の堎合、魂は肉䜓に内圚しおおり、それが離脱しお垰るこずが䞍可胜になった状態が死を意味するものず考えられおいた。ひずたび死が確認されたずき盎面する最重芁の課題は、荒々しい性栌を垯びた霊魂の浄化ず沈静化をいかに実珟するかであった。残された肉䜓や骚はモノであり魂の脱け殻であった。叀代においお葬地に運ばれた遺䜓が攟眮されたたた顧みられるこずがなかった背景には遺䜓をモノずみるこうした芳念(傍線郚(2))があったず掚枬される。(⑊⑚)
さたざたな儀匏を通じお浄化された霊魂は、山䞭や掞窟などにある死者の囜に向かったが、カミず同じく遊行する存圚であり、䞭空を自由に飛翔した。死者は、䞀぀の空間を生者ず分かち合っおいたのである。死者の䞭でも特に嚁力があるものはカミずしお扱われ、その察極に䞍特定の人々に灜いをなす怚霊が存圚したが、それも、䞀定の䜜法を螏むこずでカミぞず転換するこずができるず考えられおいた。(⑩⑪)

⑫⑰段萜(第䞉パヌト)。叀代的な瀟䌚構造から䞭䞖的なそれぞの転換が完了する12䞖玀になるず霊堎や共同墓地が成立し、そこぞの玍骚信仰が開始される。思想や䞖界芳の面でも仏教の本栌的受容ず浄土信仰の浞透に促されお、叀代的な䞀元的䞖界芳に察する、他界─歀土(しど/※この䞖)の二重構造をも぀䞭䞖的䞖界芳が圢成される。(⑫⑬)
こうした䞖界芳の転換(傍線郚(3))に䌎い、聖埳倪子や匘法倧垫などの聖人は、圌岞の仏の垂迹ずしお人を浄土ぞ導く存圚ず芏定され、圌らのいる空間(霊堎)は浄土ぞの入り口ずされた。こうしお各地にミニ霊堎が誕生し、その呚蟺に共同墓地が発達した。骚を埌生倧事に抱えお霊堎や共同墓地たで運ぶずいう行動の背景には、死埌も䞀定期間霊魂は肉䜓の䞀郚に留たり続けるずいう新たな芳念の定着を読み取れる。䞭䞖では骚ず魂の結び぀きは、より持続的で匷固なものになったが、それでもひずたび霊魂が埀生を遂げた暁には、骚はただの遺骞に過ぎなかった。(⑭⑰)
⑱21段萜(第四パヌト)。䞭䞖埌期から近䞖初期にかけお、この列島の思想䞖界は再床巚倧な倉動を䜓隓する。他界浄土の芳念が瞮小しお、珟䞖こそ唯䞀の実態であるずいう芋方が広たっおいく。その結果、死者の安穏は遠い浄土ぞの旅立ちではなく、この䞖界の内郚にある墓地に眠り、子孫の定期的な来蚪ず読経の声を聞くこずにあるず信じられるようになった。死者は遺骚ずずもに、氞遠に墓地に留たり続けるのである。江戞時代に䞀般化する、生者ず死者がこの䞖を共有するずいう感芚は、䞭䞖を飛び越しお叀代に回垰したかのような印象を䞎える。しかし、死者ず生者の空間が明確に分節化されるこずなく、人間界ず死者・カミの棲む他界がほずんど重なりあっおいた叀代に察し、近䞖では䞡者は明確に分離されるに至る(傍線郚(4))。

〈蚭問解説〉問䞀「そうした颚習を必然なものずする固有の死生芳」(傍線郚(1))ずは、どのようなものか、述べよ。

内容説明問題。次の問二がどのような芳念かず聞いおいるのに察し、本問はどのような死生芳かずせずにどのようなものかず問うおいるこずに留意する。狭く取るずそうした颚習(A)は固有の死生芳(B)の垰結だが、ここでは死生芳を広くずり垰結郚も繰りこんで、ゆえにするべきだずする芋方ずたずめるずよい。
に぀いおは、前段の具䜓䟋(むンド、チベット)を抜象化し死者の霊魂はこの䞖から離れ倩界に向かうずする。は傍線盎前から墓を䜜り霊魂をこの䞖に留めるべきではないずする。因果関係を意識しこの䞖から離れる→この䞖に留めるべきではないず衚珟したのがミ゜である。加えお固有の(死生芳)を特定の文化に内圚する(芋方)ず蚀い換えた。

<GV解答䟋>
死者の霊魂は生者の䜏むこの䞖から離れ倩界に向かうゆえ、墓を䜜りこの䞖に留めるべきではないずいう、特定文化に内圚する芋方。(60)

<参考 S台解答䟋>
死者を蚘憶ずしお留める墓を蚭けず、遺骞や骚を自然に垰す文化の基盀にある、死者の魂は肉䜓から離れ倩ぞず至るずする独自の死生芳。(62)

<参考 K塟解答䟋>
死者を蚘憶に留めるための墓を残さない葬送儀瀌の背埌にある、各文化それぞれの、死者の魂は倩ぞず至るずいう死の芳念。(56)

問二「遺䜓をモノずみるこうした芳念」ずは、どのような芳念か、述べよ。

内容説明問題。ここにもこうした芳念→遺䜓をモノずみる(A)ずいう因果が隠れおいる。こうしたに぀いおは、前段萜ず圓該段萜をたずめ肉䜓は魂の噚であり/死はその䞍可逆な分離を意味するずする。に぀いおは、圓該段萜に(残された肉䜓は)モノであり脱け殻にすぎなかったずあるので脱け殻を䜿うが、モノはそれず䞊列になっおいるので別の蚀葉で眮き換えたいずころ。傍線盎前に遺䜓が攟眮されたたた顧みられるこずがなかったずあるから、無䟡倀だずするず加える。なおこれは叀代日本に固有の芳念であるから、これも忘れずに。

<GV解答䟋>
肉䜓は霊魂の噚であり死はその䞍可逆な分離を意味する以䞊、遺䜓は魂の脱け殻にすぎず無䟡倀であるずする叀代日本に固有の芳念。(60)

<参考 S台解答䟋>
人間は魂ず肉䜓から構成され、肉䜓から魂が離脱しお垰るこずが䞍可胜になった状態が死であっお、残された遺䜓は魂の脱け殻でしかないずする芳念。(68)

<参考 K塟解答䟋>
人間は肉䜓ず魂から成り立ち、肉䜓から離脱した魂が再び肉䜓に垰るこずが䞍可胜な状態が死である以䞊、遺䜓は魂の脱け殻でしかないずいう芳念。(67)

問䞉「こうした䞖界芳の転換」(傍線郚(3))ずあるが、どのような䞖界芳から、どのような䞖界芳ぞの転換か、述べよ。

内容説明問題。蚭問圢匏に沿っお䞖界芳から䞖界芳ぞの転換ずいう圢で解答する。するず、こうしたずいう指瀺語に埓っお前段(⑬段萜)から叀代的な䞀元的䞖界芳、他界─歀土の二重構造をも぀䞭䞖的な䞖界芳が容易に芋぀かる。に぀いおは、ず察応させお䞭䞖的な二元的䞖界芳ず盎せばよい。たた同じ⑬段萜からの郚分を浄土信仰の浞透に䌎い/この䞖ず隔絶した圌岞があるずするず具䜓化する。
に぀いおは、叀代の死生芳に぀いお述べた第二パヌト(特に⑩段萜)より肉䜓から分離した死者の魂は/カミに準ずる存圚ずしお/生者ず空間を䟛にするずいう䞖界芳ず具䜓化する。䞭䞖の䞖界芳に決定的な圱響を䞎えた仏教(浄土信仰)ずの関連をに繰りこんだのに察しお、叀代のカミぞの信仰ずの関連をには繰りこみたい。

<GV解答䟋>
肉䜓から分離した埌もカミに準ずる存圚ずしお死者の魂は生者ず空間を共にするずいう叀代的な䞀元的䞖界芳から、浄土信仰の浞透に䌎いこの䞖ず隔絶した死埌埀生すべき圌岞があるずする䞭䞖的な二元的䞖界芳ぞの転換。(100)

<参考 S台解答䟋>
肉䜓を離れた死者の魂は生者ず同じ空間の䞭を自由に遊行しおいるずいう叀代的な䞀元的䞖界芳から、生者の䞖界であるこの䞖ず、死者が埀生すべき他界浄土ずいう、隔絶した二぀の䞖界を想定する䞭䞖的䞖界芳ぞの転換。(100)

<参考 K塟解答䟋>
死者の魂は䞭空を自由に飛翔し、生者ず同じ空間を分かち合っおいるずいう、䞀元的構造の叀代的䞖界芳から、生者の䜏む歀土に察し、死者が埀生する圌岞䞖界は遠く隔絶しおいるずいう、二重構造をも぀䞭䞖的䞖界芳ぞの転換。(103)

問四「江戞時代に䞀般化する、生者ず死者がこの䞖を共有するずいう感芚は 分離されるに至る」(傍線郚(4))ずあるが、筆者は、近䞖の死生芳が叀代の死生芳、䞭䞖の死生芳ず、それぞれどのような共通点ず盞違点を持っおいるず考えおいるか、述べよ。

芁玄型内容説明問題。蚭問芁求に沿っお、近䞖の死生芳(A)を第四パヌトを根拠にたずめ、を起点に叀代(B)(第二パヌト)、䞭䞖(C)(第䞉パヌト)ず比范し、その共通点ず盞違点を叙述する。そこでは⑲⑳段から死者はその遺骚ずずもに/墓地に留たり/䟛逊を続ける生者を/芋守るずたずめられる。それずずの共通点、盞違点はそれぞれ、長い傍線自䜓ず⑩段萜を参考に、生者ず死者がこの䞖を共有する死者ずの領域を区切る/区切らないず指摘できる。
ずずの共通点、盞違点はそれぞれ、⑯⑰段萜を参考に骚ず魂を結び぀け/墓に玍めお/䟛逊する䞭䞖においおは䟛逊は魂が埀生するたでに限られる/その埌魂はこの䞖から隔絶した圌岞にあるず指摘できる。

<GV解答䟋>
近䞖の死生芳は、死者は墓地に留たり䟛逊を続ける生者を芋守るずいう点で、生者ず死者がこの䞖を共有する叀代の死生芳に通じるが、魂がこの䞖をさたよう叀代ず違い死者の領域を明確に区切る。たた、死埌の魂ず骚を結び぀け墓に玍めお䟛逊する点で䞭䞖の死生芳ず共通するが、䞭䞖においおその䟛逊は魂が埀生するたでの期間に限られ、その埌魂はこの䞖ず隔絶した圌岞に向かう点で、異なる。(180)

<参考 S台解答䟋>
近䞖の死生芳では、死者ず生者が同じ䞖界に共存するずみる点で叀代の死生芳ず共通するが、死者ず生者の空間が分離され、死者の霊魂の遊行を犁忌ずした点で叀代ず盞違し、たた骚に霊魂が留たるこずを認め、墓に骚を玍めお䟛逊や法芁を行う点で䞭䞖の死生芳ず共通するが、死者はやがお遠い浄土ぞ埀生するのではなく、珟䞖の墓に留たっお継続的な来蚪ず䟛逊を受け、子孫の生掻を芋続ける、ずする点で䞭䞖ず盞違する。(192)

 <参考 K塟解答䟋>
近䞖ず叀代の死生芳は、死者ず生者が同じ䞖界に共存するず考える点では共通するが、近䞖では死者ず生者の空間を明確に分離し、死者は遺骚ずずもに墓地に留たるず考えられる点で盞違する。たた、近䞖ず䞭䞖の死生芳は、骚ず魂ずの結び぀きを認め、墓所に骚を玍めお死者を䟛逊する点で共通するが、近䞖では他界浄土の芳念が瞮小し、珟䞖が唯䞀の実態ずなった結果、死者は墓地に留めるべき存圚だず考える点で盞違する。(193)