今回は夏の特別イベント第2弾! 一橋大学の中北浩爾先生と そのゼミの学生たちとの交流会です。 GVのレジェンド卒業生で 一橋大学に進学し現在同大学院の 中北ゼミに所属している 大城みきおくんのつながりにより 実現した中北ゼミとGVとの交流会 今年の交流会のテーマは 『Peace Building Project』 沖縄出身の高校生と 沖縄県外出身の大学生とで 沖縄の重要な課題である「基地問題」について ディスカッションをしながら考えました。 ワークショップの流れは以下のようなものです。 最初に「平和」について考えました。 議論を深めていく途中において 意見の対立が生じることもあるでしょうが その目指すところは同じで 対立が存在する場合でも ともに考えていくことができるはずです。 お互いの目指すところを明らかにするために 理想像をつくっていくこと このことが第1のステップでした。 第2のステップは それぞれの立場を理解することです。 基地に近い人、基地に遠い人 それぞれの置かれた環境を確認し 基地の問題に限らず 身近でない問題をどのように考えたらいいのか 身近でない問題を考えることには どんな難しさがあるのかを考えました。 沖縄出身といっても 基地が身近にある人もそうでない人もいて 身近である人たちの中には グラデーションがあるということを 個々人の具体的な経験に基づく話で 理解を深めていきました。 第3のステップとしては 平和を実現する手段としての基地は これが有効なのかどうかを考えて その理想の在り方を模索し 理想実現のための課題を見出した上で その課題に対する解決案を考える。 理想の共有 異なる立場の境遇の理解 異なる立場への共感をもとに 理想実現のための課題発見と解決策の立案 このような流れでワークショップは進んでいきます。
 
 
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今回参加したのは 高校1年生から既卒生まで 基地のすぐ近くに住む生徒から 基地が遠くて実感のない生徒 広島出身の学生、厚木基地の近くに住む学生 北海道出身の学生、中国からの留学生など 多種多様な16〜24歳までの若者たち。 どちらの意見が正解というわけでもなく 大切なことは議論に参加する場にいる人たちで 共に納得できる解をつくりだすこと。 立場の異なる人達が どのようにして納得解をつくれるのか 今回の企画はそれを体感してもらうもので シティズンシップ 教育といえるものでした。 知識が豊富な大学生は 政治や安全保障の知識を付け加えたり 高校生からは身近な経験に基づく語りが出たり。 参加者の感想をいくつかあげると 高校生からは 「住んでいる地域によって考え方や視点が違うから、色々な意見を聞けて他者から見た視点を少し考えやすくなった」 「自分が思っていたより自分の基地問題などへの考えが浅くて、もっと深く考えて自分の考えを持つべきだと思った。」 「相手を尊重し、自分の意見と相手の意見を比較して相手がどんな意見を持っているかを知ることがとても大事だということを学んだ」 「言葉にするのは難しいけど、色んな人と話し合うことで自分のふわっとした考えを昇華していくことの楽しさを知った」 「自分が沖縄県民というだけで基地問題をよく知っていると勘違いしないようにするのが大変だった。自分が問題の中心からどのぐらいの距離にいて、何を知っているのか自覚して話すことの難しさを感じた」 「座学では受動的に感じたがらディスカッションでは自分から物事について考えていくため、人々の意見を通して新しい自分の考え方を見つけられた」 「人と関わり合いながら学ぶと、共感とか納得が伴うので頭に話が入りやすいけど、発言のペースを作るためには座学も重要だと思った。」 「思ったことは言わなくちゃ!と感じ、ディスカッション形式の会話には消極的になってしまう私が、なんと、時間ギリギリまで主張を続けて熱くなっていた自分がいることに気づきビビりました。いつのまにか本気になっていました…」
 
 
 
 
このような声がでていました。 参加した大学生からは 「自分が思っていたより沖縄の高校生の基地に対する感情が複雑だったことを知れた」 「沖縄の学生にとって当たり前に存在している基地を県外の人が当事者として考えることの難しさを学びました」 「沖縄の若者にとって米軍基地がある種の異文化交流の場であったり、娯楽の場であったりすることをはじめて知った」 「東京で沖縄について学ぶと、どうしても自分の想像力でしか沖縄を理解することはできないが、沖縄の高校生と交流するこおで沖縄の現状に対する理解が深まった」 「論理的な考えだけでなく、実体験に基づく感覚的なものに支えられた考えにも生で触れることができた」 「自分達では生まれない疑問点が高校生から発せられて、それにつあて改めて考えさせられました。視点が違うなと感じるところがいくつかありました」 「沖縄内部でも当事者意識に差があり、特に当事者意識があってもそれが社会的関心に必ずしも結びついていないように感じた」 「自分より当事者意識の高い人達と議論する際、より相手の立場を考えた内容や言葉を選ぶ必要がありました。また、沖縄の若い人がどのように基地問題を捉えているのかを知ることができました」 概ね、以下のようなことを 感じる場になったように思います。 ・答えがないことを考える難しさと楽しさ ・現実的な問題の複合性、複雑性ゆえの難しさ ・考えるための知識や技術の重要さ ・学びを深めることによる成長の可能性 ・様々な人と言葉を交わすことの意義 ・世代や立場、環境の違いにより生じる意見の多様性 ・様々な立場の人と言葉を交わす際の作法 ・当事者性のグラデーションについて
 
 
 
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ワークショップのあとには 一橋大学の学生による 大学での学びについてのプチ講義。 一橋大学の社会学部とはどういうところで 政治学はどんな学問で 大学生活はどんな感じで ゼミを含む大学での学びはどんな感じか。 これを聞いて高校生は 以下のようなことを感じたり考えたりしたようです。 「とても興味深いことを聞けて、これからの社会や政治などに少し関心を持てるようになって、とても良い体験だった!」 「大学生になったら、自分で目標を立てて、興味をもって考えていくことが大切とわかった」 「好奇心を持って積極的に学ぶということ、これは言葉にすることは簡単だけど、いざ自分が大学生になった時には難しさを感じると思う。けれど、この勉強会でどんな問題でも何か普遍的に変わらないものから考えていって、そこから発展させていくという方法があることに気づけたので、とても嬉しいです」 「何をやりたいのか、今ある熱意を忘れずにいろんな方向にアンテナをはって、大学生活を過ごしていきたいです。大学生になるのがどんどん楽しみになってきたので、試験頑張って絶対合格します!」 最後には参加者たちの感想のシェアリングと 中北先生と大岩先生からの講評という形でした。 今回の会は私と国語科の田名に加え 一橋大学のゼミ生の方と3名で考えて、 プログラムをつくっていきました。 プログラムを作成し当日の運営をしながら ずっと私達自身の考え方の枠組みが 参加者の思考を制約し過ぎないように とはいえ自由過ぎると議論が発散し過ぎてしまう。 この両方の葛藤を揺れ動きつつ 私達自身の思考の枠組みを 何度も考え直すことになりました。
 
 
 
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このグレイトヴォヤージュという学び場は 高校生にとっての大学受験という教育機会を 試験を突破することのみに 留めるものではありません。 この機会を活かし教育が本来行うべきものを 実現していくことを目指しています。 生徒一人一人に向き合い 大学進学後の未来に思いを馳せます。 それは彼ら個人のキャリアについてはもちろん 彼らが今後参画していく社会においても その自らの役割を積極的に引き受け より良い社会をつくっていくことを期待します。 より良い社会とは どのようなものかを深く考えることができ その実現のために他者を尊重しつつ協働し 新たな価値を創り出していける生徒。 そのような生徒を育んでいくこと そのための学びの場であることを 我々は目指しています。
 
 
*中北先生は一橋大学大学院社会学研究科教授で 専門は日本政治外交史、現代日本政治論。 著書に『現代日本の政党デモクラシー』(岩波新書)、『自民党政治の変容』(NHKブックス)、編著に『民主党政権とは何だったのか』(岩波書店)などがあります。 中北先生の出演ラジオはこちらのリンクから TBSラジオのsession22より 「一強の自民党、その実像とは」中北浩爾×岩田夏弥×荻上チキ https://www.tbsradio.jp/148396 web中公新書より 著書『自民党-「一強の実像」』中公新書 についてのインタビュー http://www.chuko.co.jp/shinsho/portal/102601.html *この中北ゼミとの交流会の前に GVの高校生は二回の事前学習会を行なっています。 この事前学習会についても 近いうちにブログを書きたいと思います。