今回は『健康格差-あなたの寿命は社会が決める』を題材に扱っています。この本は、琉球大の小論文にも出題されており、医療を社会と結びつけて考えていくための素材として今回は取り上げています。
まずは、本書をまとめた資料を生徒に読んでもらい、その要点を整理していきます。そのまとめと感じたことをそれぞれに発表してもらいながら、解説すべきキーワードを拾っていきます。
まずは、健康の定義についてWHOの定義とICF(国際生活機能分類)を紹介し、疾病の有無のみならず精神的、社会的な側面も捉えて「健康」の概念が捉えられていること、その要因として個人と環境の両方の因子があることを確認していきました。
前の授業で、日本における格差の問題を取り扱っているので、それに結びつけながら健康との関連性を本文を追いかけながら、考えていきました
生徒から出てきたキーワードとして「地域とのつながり」の話があり、それをもとにソーシャルキャピタルの概念の説明とその具体的な事例としての高齢者のサロンと地域福祉の身近な実践を紹介していくことで、イメージを深めてもらいました。
また、本文中で社会的な課題である理由として社会保障費の増大があげられており、そもそもの考え方としての福祉分野における「普遍主義」と「選別主義」の違い、そもそも保険とは何か?任意保険と社会保険の仕組みの違いやその財源を整理した上で、医療保険についても解説していきます。
本書の中でも今後力を入れていくべき事柄として、「予防医療」とそのアプローチが紹介されています。そこで紹介されているヘルスプロモーション分野のハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチの手法を学んだ上で、後者に取り入れられた行動経済学やマーケティングの考えの解説もしていきました。
最後に地域の暮らしを支える「地域包括ケアシステム」の仕組みの概要、施設から地域への流れ、を整理して今回の授業はおしまいです。
90分の授業で、たくさんの情報をインプットしていく形にはなりましたが、生徒からは「医療について学ぶだけでなく、福祉とのつながりや地域保健活動の中で行動経済学などの他分野と結びつけて、総合的にアプローチしていくことが重要だと気づけました」といった感想が出てきました。
今後も医療系向けの補講では、疾病構造の変化、地域医療、産前産後ケア、など様々なテーマを取りあげて学んでいきます。
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